第1337回 追想五断章
米澤穂信 「追想五断章」 Cinq Fragments de la Mémoire
経済的な事情で大学を休学中で、伯父の古書店に厄介になっている青年・菅生芳光。
亡くなったとある大学教授の蔵書を引き取ったことから物語は始まる。
叶黒白と言うペンネームで書かれた5作の掌篇。
叶黒白こと北里参吾の娘だという可南子は、その5篇のリドルストーリーの答えだけ書かれた5枚の原稿用紙を所蔵していると言う。
では、そのリドルストーリーはどんな話だったのか?
一篇目は引き取った蔵書の中から発見された「奇跡の娘」。
ルーマニアが舞台の母親が娘を盲信している話。
芳光は北里参吾の足跡を追ううちに、彼がある殺人事件の容疑者であったことを知る。
「アントワープの銃声」と言われた事件の。
芳光は僅かな手掛かりを頼りに掌編から参吾の意図を推察する。
二篇目は「転生の地」。インドが舞台の父親が一人で罪を被るか、妻と子も道連れにするかと言う裁判の話。
三篇目は「小碑伝来」。中国が舞台の夫が妻の命を差し出すか、自裁するかの話。
北里参吾は最初からリドルストーリーを模していたわけではなかった。
一度書いた掌編の、結末を抜いた話をリドルストーリーらしく書きなおしていたのだ。
四篇目は「暗い隧道」。南米ボリビアが舞台の夫がやって来ない妻と娘を探しに行く話。
最後の一篇は「雪の花」。
1970年。北里一家に何が起こったのか。
5篇が揃った時、すべての謎が紐解かれていく。
最期まで一気に読みました。メモは2度目に読み直しながら書きました。
リドルストーリーとは結末をわざと書かないお話ですが、伝えたいこと、書きたい部分を取っ払ってしまったものとも言えます。
主人公がちょっと鬱屈していて人嫌いな感じがしますが、語り手としては逆に思慮深い印象を与えていますね。
ヒッターの評価は「優」ですね。
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