まるでダメな男の日記

このブログでは趣味のゲームや読書感想など非生産的な駄文を書き連ねていく予定です。

第1322回 伊藤計劃トリビュート

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早川書房編集部 編「伊藤計劃トリビュート」 Project Itoh Tribute

                 伊藤計劃トリビュート

 「テクノロジーが人間をどう変えていくか」というテーマの短編中編集。

藤井大洋「公正的戦闘規範」
 進化していく高性能AI(人工知能)搭載のドローンは、人質に傷をつけすテロリストのみ選択して狙撃する。
 その安価な戦闘マシンはすぐに模倣され、人間不在の非人道的な戦いに進んでいく。
 はたして戦場に人間は不要なのか?

 設定がいいですね。スマホのソーシャルゲームに見せかけたマンハント・プログラムというのは、アニメ「Psycho-Pass|2」にもあったな。
 無人戦闘機械群VS人間が制御する戦闘マシン。勝つのはどっちか?

 伏見完「仮想(おもかげ)の在処」
 双子の姉妹の生まれてすぐ死んだ姉は両親の依頼で「メモリアルAI」として登録された、
 嬰児の脳の神経配置を記録し、実際の赤ん坊のように情報を与え育てていく。身体を持った妹と共に育っていく仮想の姉。
 そして妹の恋人が本当に愛したのは。

 仮想空間のアバターが筐体から出て、現実空間にレイヤーとして活動する未来。
 しかし公共リソースを利用しているサービスである「メモリアルAI」は、次第に経済的圧迫を家族へかけていく。
 そりゃまあ、何十年も情報を蓄えて成長していく情報生命体は。どこかで削ってやらないと無限にリソースを食いますからな。
 問題は家族の一員として暮してきた(仮想)人間を、契約を切って消滅させたり、縮小させることが感情的にできるかどうか。出来なければ永久にお金を払い続けなければならない。
 課金ゲームの最たるものだな。
 作者が「ハーモニー」に捧げた作品。テーマは「百合」だそうです。(笑)

 柴田勝家「南十字星(クルス・デル・スール)」
 世界は二つの民族に別れた。脳にナノマシンによる可塑神経網(プラスティック・ニューロン)を移植し、同じ文化、同じ言語、同じ価値観、同じ認識を得る者達と、そうでない者達。
 パーソナル・データを人類という種の巨大な海にアップデートし、「共有された自己」に絶えずフィードバックすることで平準化した集合自我とい総体を得て、自己相(I-Pha)という補色調和により個人の差異を引き出して他者との区別を持つ。
 これが究極の相互理解であり、紛争は起こらなくなるのだろうか?

 軍人として異民族を殺しても戦闘ストレス症としてトラウマにならず、経験値として認知するシステム。
 「虐殺器官」+「ハーモニー」のような世界観ですね。
 これは続きを読みたい。1冊分書いてくれないかな。

 吉上亮「未明の晩餐」
 時代は22世紀。大規模気候変動であらゆる食材の入手が困難になった時代。
 味気ない合成食品を補完するため、《神経系と一体化した情報端末》で食品情報企業のデータクラウドから食材の調理方法を指定すると、嗅覚、食感、風味の演算(エミュレート)が行われ、脳に直接入力する調味拡張技術が創られた。
 死刑囚が「最後の晩餐」で食べたいと望むものを作る料理人・壬生観憐は、ある日、双子の変わった男女の浮浪児を拾う。 
 死刑が決まっても本人が本心から望まない限り執行されない司法制度で、心残りなく処刑台へ向かわせる料理人にある条件が課せられた。
 死刑囚が望んだ追加食材とは?
 異常な身体代謝と味覚分類能力を持つ少女と、類稀な調理の才能を持つ少年を助手とし、難題に挑むカレン。

 料理の描写がいいですね。しかもちゃんとSFになってる。
 うん、面白い。これも連作にして1冊書けるのではないだろうか。

 仁木稔「にんげんのくに」 Le Milieu Humain
 大規模森林破壊による気候変動により、人類は飢餓の時代を迎えた。
 それを乗り切り、植林を始めた頃、植物は自己防衛のためアルカロイド物質を溜め込み始め、広大な毒の森となる。
 しかし、その森に住む、毒に耐性を持つ生き物もいた。
 異人と呼ばれる少年は森に住む「人間」の調査のため送り込まれた「目と耳」の資質を備えていた。
 祖母の代に送り込まれ、遺伝していく「目と耳」の能力は、成長するにつれ解放されていく。
 
 精霊の住む森で暮らし、殺し合う“人間”たちには「原罪」というものを感じました。
 プログラムされた“風”の精霊を守護霊とする異人って、生体送受信機でもあるのかな?
 南米が舞台ですが、「風の谷のナウシカ」の腐海の森をのイメージも少しあるかな。

 王城夕紀「ノット・ワンダフル・ワールズ」
 究極の進化を目指す社会。進化とは環境の変化に適応出来た種だけが生き延びて先に行けることだ。
 しかし、環境を自在に変えることができるようになった種は進化するのだろうか。

 結末にあるトリックがありますね。
 進化の最先端を行くのは、やはり肉体を捨てた者なのか。

 伴名練「フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪」

 第一原則:高度に発達した人造人間は、外見上、人間と区別つかない。
 第二原則:魂を所有するのは、人間だけである。
 第三原則とは! そしてすべてが始まった第零原則とは!! 

 切り裂きジャック、ヴィクター・フランケンシュタイン、クリミア戦争、白衣の天使フローレンス・ナイチンゲール。ヘンリー・ジキル博士、沖田総司、シャーロック・ホームズ、ルイス・キャロル他、19世紀の有名人物の名が登場する「屍者の帝国」へのトリビュート作品ですねえ。
 もうひとつの「屍者の帝国」」と言っても良いでしょう。
 From the Nothing with Love.
 
 長谷敏司「怠惰の大罪」
 麻薬王カルロス・エステベス。
 彼の生涯を描く長編の第1章ということで、これは好い所で終わっているので続きを読みたい。


 このトリビュート作品群はとても読みごたえがあった。
 なにせ厚さが27mmもある(笑) いや、内容も濃かったので非常に満足した。
 続けてもう1冊読むか。

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