まるでダメな男の日記

このブログでは趣味のゲームや読書感想など非生産的な駄文を書き連ねていく予定です。

第452回 宇宙戦艦ヤマト2199(7)

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アニメ「宇宙戦艦ヤマト 2199」第五章 望郷の銀河間空間

 第五章を観る。もうリメイクとは言えません。

 第15話「帰還限界点」(旧第20話に相当)
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 前回を引きずって、岬百合亜に憑依したのはイスカンダル人ユリーシャなのか?
 森雪の身辺調査を始める保安部長、伊東真也と、それに協力する情報長、新見薫。
 女の武器を使って島大介に接触する新見と、謎の行動をとる保安部員、星名透。
 デスラー暗殺計画の真相とは?
 ヤマトはドメル上級大将の包囲網を敗れるのか。
 この艦隊配列は銀英伝よりもカッコ良くて素晴らしいな~

 地球滅亡まで、あと298日

 第16話「未来への選択」{旧第16話に相当)
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 ヤマトの補修状況を見ていると、「彷徨える艦隊」が足の遅い工作艦を必ず連れてい理由が良く解りますね。
 補修部材やら装甲板を、どこから出してきたんだろうと思っちゃいます。
 百合亜ちゃん、虫さんに食べられちゃいますよー。
 銀河間空間にある星系ビーメラ。その第四惑星ビーメラⅣは人類に居住可能な惑星であった。
 艦内で叛乱を起こすイズモ計画派。
 ビーメラⅣで発見されたイスカンダルの宇宙船。400年前に不時着したらしい。
 ユリーシャ・イスカンダルは百合亜に憑依した精神生命体なのか?
 それとも森雪なのか?
 
 地球滅亡まで、あと287日

 第17話「記憶の森から」(旧第18話に相当)
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 一気に数万光年を跳躍する亜空間ゲートの存在。
 そのゲートを作った種族とは別に、ゲートを管理する種族があった。
 その種族の名は「ガミラス」
 失脚するドメル。逮捕される妻のエリーサ。それを見つめるメルダ。
 行程の遅れを取り戻すため。ヤマトは亜空間ゲートを目指す。
 真田が明かすユリーシャ・イスカンダルの真実。

 ううううっ真田さぁぁぁん!・゜・(ノД`)・゜・

 地球滅亡まで、あと275日

 第18話「昏き光を超えて」(旧20話に相当)
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 亜空間ゲートの先で待ち構える、一万隻の大艦隊に殴り込みをかけるヤマト。
 この亜空間ゲートに出入りする絵って、スターゲイトみたいだね。
 (後でスターゲイトもネタにしよう)
 総統、おかえりなさい。
 沖田艦長。亜空間ゲート・ネットワークのハブ・ステーション、バラン星壊しちゃって、帰りはどうするんですか?
 次回はいよいよドリルミサイル登場ですか!

 地球滅亡まで、あと273日

  ハッ∑(゚ロ゚〃) 今回はヌードシーンがなかった!
 次章は第六章「到達!大マゼラン」
 第19話「彼らは来た」
 第20話「七色の陽のもとに」
 第21話「第十七収容所惑星」
 第22話「向かうべき星」


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第451回 エルフを狩るモノたち2

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矢上 裕「エルフを狩るモノたち2」第1巻

エルフを狩るモノたち2

 エルフを狩るモノたち、復活!
 故郷へ帰るためエルフ(♀)を脱がす大義名分で脱がしまくった連中が帰ってきた!

 今回は新メンバー追加です。
 召喚条件が特殊だったため、帰還呪文探しの条件も、特殊になってしまいました。
 すなわち

 妹(エルフ)は脱が~~~す!!

 どこぞの鬼ぃちゃんが飛んできそうなプロットですね(笑)


 既刊
 エルフを狩るモノたち 全21巻
 エルフを狩るモノたちDX 全1巻
 エルフを狩るモノたち リターンズ 全1巻
 アゲハを追うモノたち 全4巻
 ヒッカツ 全3巻
 Go West! 全4巻
 打撃女医サオリ 全2巻
 環境保護隊モッタイ9 全3巻

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第450回 境界線上のホライゾンⅣ(41)

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川上稔「境界線上のホライゾン Ⅳ(下)」 Horizon on the Middle of Nowhere
Episode Ⅳ-Part 3 適当ダイジェスト⑬


「第八十一章 空上の先駆け者」
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 北の夜空に、赤い色の花が咲いた。巨大な浮上都市の北側で、西に防御展開した「P.A.Oda」のガレー艦と、北側から東に並んだ「上越露西亜」の、青いハルク系戦艦が砲撃を交差する。青の艦隊の先頭は、艦首に巨大な表示枠(サンクトアグノー)を展開し、「愛」の文字を映した直江艦隊だ。
 “さあ! 皆の愛をぼぉくに頂戴――――”
 艦首で投げキッスする直江の旗艦に、黒のガレー艦群から実弾の連射がぶち込まれた。
 “死ね―――!”、“ムラサイでは、衆道禁止だ!”、“一夫多妻はオッケーだがな!!”
 だが、打撃を受ける艦の艦首で、直江・兼続は何故かスクワットを始めた。直江旗艦の各所に表示枠が展開していく。打撃エネルギーを動力変換する、「愛の体罰」術式。直後、直江旗艦の全砲門が、返答の流体砲撃を放った。その連射される弾丸は、流体による五m四方のピンクカラーのハートマークがついている。
 黒のガレー艦群はピンク弾を連続で叩き込まれ、その着弾の破片も小型のハートマークだった。
 後退していくガレー艦群で遅れるものがある。明らかに囮だ。直江の補佐が注進するが、直江は構わないよと言って、伏せ目笑顔でポーズをとる。直後。直江艦から大型の術式弾が、計八発、放たれた。巨大なハートマークが、遅れている艦を包む。
 “ハートショック・兼続!!”
 直江が両腕でハートマークを作り、四股を開いて腰を落とした瞬間、夜の大空に、ハートマークの光が爆散した。轟音と共に沈んでいくガレー艦の向こう。「ノヴゴロド」西側で、敵艦隊は壁のような交差陣を汲んだ。
 “ふうん”と直江は口の端を歪める。
 “ここの担当は佐久間さんだね!? そういうことは、森君もいるね!?”

 佐久間艦隊は夜空に大きく映った直江の姿を見ていた。直江はこちらに指火縄銃を向け、ウィンクすると、“Ba―――ng・・・♪”とキメる。
 “さ、佐久間様! 佐久間様! ぼ、僕、あの人苦手です! あ、あの人、いつも僕が生でいると突っ走って来て殴ったり蹴ったり術式ベンチ出して隣にそっと座ったりするんですよ!!”
 “おうおう、安心しとけ! 得意なのいないから。相性いいんじゃないの? どうなのよ?”
 “ぼ、僕は男です! 純愛に生きると決めているんです! あの暗黒邪神教に囚われて四六時中犯され続けたトラウマ回復してくれるような、そんなムフフな、優しく導いてくれる人と結婚するんです!!”
 艦の上空に術式防護障壁が張られた。直江艦隊を先頭とする「上越露西亜」の艦群が、揚陸のために「ノヴゴロド」の北に回り、こちらに砲撃をかけて来たのだ。南にいる柴田艦隊との直接戦闘は避けるつもりらしい。

 直江艦隊は「ノヴゴロド」の北の空に到達した。敵は既に南の陸港から上陸しているのに、北の陸港は空いたままだ。ただ、佐久間艦隊が「ノヴゴロド」の北西の空にゆっくりと展開しつつある。防御に定評がある佐久間だけあって、緩やかだが分厚い進行だ。
 戦場に乗り込むという事は、移動と上陸という二手順を踏む。上陸直後は人員も少なく、ろくな布陣も出来ない。そこを狙うのが常道である。これは罠だ。兼続は上杉・景勝に連絡を取った。

 後詰艦隊である第四艦隊の先頭艦。本庄・繁長の「福島城」は本来の外交艦から装備類を換装し、防御艦となっていた。「ノヴゴロド」への上陸は《副長》直江の艦隊が防御、《第一特務》の斉藤が上陸部隊として先行するようだ。
 繁長は「武蔵」の《第一特務》の忍者に、そちらは「武蔵」待ちだな、と確認する。彼は一つ頷き、傭兵としての能力は「武蔵」を基礎としているので、「武蔵」を離れ、単独で動くのは難しいと答える。
 「武蔵」の《総長》はどうしているか問うと、彼は艦の厨房で鉄鍋を振っていた。
 “おっし、今日はキャベツ料理ってことで「上越露西亜」だと漬物とかで保存があるから、ちとそれを利用して鶏と一緒に炊き込みご飯だな。戦場から帰って来てガッツリ米食いつつ、家庭の味も有りだろ。ゴマ油差しとくから、置いといてもそこそこ保存利くからよ。全員帰って来いよ”
 その言葉に、別の表所枠(サンクトアグノー)で景勝が小さく笑った。
 “―――楽しみであるな。たまに極東仕立ての食事も悪くなかろう”
 彼の言葉を許可とするように、上陸していく斉藤の艦群から声が上がった。
 “GлваТовайщ(栄光あれ同志)”
 部下に「同志」と言わせるようにしたのは、斉藤なりの照れだろう。あの人も、奥州や「上越露西亜」の停滞を嘆いたものであるしな。
 先陣が北部陸港に上陸した。「ノヴゴロド」は南部が田園地帯だが、北部は倉庫街が多い。南側を高い崖に阻まれているので、東から回り込む必要があり狙われやすい。案の定、東側の斜面から上陸部隊に向かって「P.A.Oda」の砲撃が始まった。
 繁長は応ずるように砲撃の合図を出した。

 「上越露西亜」戦士団は斉藤・朝信を先頭に進軍する。行先は「ノヴゴロド」市庁舎。そこに至ることが、「七尾城」奪還を為したという条件になる。北の陸港から東回りで市壁の東門に向かう。敵の砲撃と、味方の援護砲撃が行く先や周囲で破裂している。夜の浸りの中では魔神族といえど、恐怖に駆られるのだろう。
 斉藤は遅れてついてくる戦士団に発破を掛けながら、東回りの沿岸ルートを突っ走った。そこは、今は麦と野草が膝ほどの高さで伸びている麦畑。応撃の「M.H.R.R」長銃部隊や「P.A.Oda」鉄砲部隊、東側に少数展開した佐久間艦隊の砲撃艦から。照明術式の砲弾が「ノヴゴロド」の夜空に上がる。白く尾を引いて落ちる照明に照らされるのは、先行して一時突出した斉藤だけだった。
 「M.H.R.R」の射撃部隊は、身を固める射撃用機動殻を纏っていたのが不幸だった。
 「P.A.Oda」の鉄砲部隊は、軽さ優先で身を守る迎撃武器が短刀しかないのが不幸だった。
 斉藤は右から応撃部隊に跳び込み、背から右腕の後ろにあるものを展開する。四枚折りの屏風。絵は「鐘馗」。大陸由来の鬼武者である。邪気を払うとされ、名前から「勝機」の願掛けになるもの。その屏風の一枚一枚が分厚い四角い刃物として外れた。屏風の底部にある柄を握り、抵抗のない、空気を滑り抜くような四撃が、走りながら放たれた。
 “汚れ無し” 彼の駆け抜けた背後で破壊と切断が並んだ。束ね直した屏風刀には血も何もついていない。斉藤は第二陣に向かって走る。応撃は一列だけではない。先程の照明弾の捕捉で、斉藤に一軍匹敵の攻撃が放たれる。斉藤は、ただ走った。草の上を跳ねる様に、時折、身を反らし、回し、軽い動きを加えるだけで、何もかもを回避していく。後続は彼の後をついて行くだけだ。
 《越後の鐘馗》。年期と経験によって、戦場を見るだけで何処に敵がいるか、何処から攻撃が来るか、夜であろうと何であろうと、全て解ってしまう。その斉藤の右を砲撃が通ろうとした。回避可能だが、避ければ後続が着弾の爆風を受ける。
 斉藤は高く飛んで身を独楽のように回し、屏風刀を縦二枚、横二枚の極厚刃を作り砲弾を横薙ぎした。上下に分かれた砲弾が、自ら大気に激突して砕け、その爆風に乗って斉藤は敵の第二陣に跳び込んだ。
 先行する斉藤達と、後続の上陸部隊を断ち割るように、西の空の佐久間艦隊が動き出す。だが、佐久間艦隊の中央の夜天に赤い花が咲いた。「P.A.Oda」のガレー艦が幾隻か炎上、爆発する色だ。
 本庄・繁長が「挨拶(プリヴェート)」を掛けたのだ。 

 “なかなか面白い。そう思わないか、トビー” 「ノヴゴロド」の中央。丘の上に立つ白樺の市庁舎内。白樺で壁と床を作った白い廊下の北に面した窓に立ち、マルファは執事のトビーに言った。
 佐久間艦隊に被害が出ているが、「P.A.Oda」の佐久間も信盛、盛政の二重襲名者だ。「退き」と「鬼」の両佐久間が、このまま、ただで済ます訳がない。
 マルファは客人はどうした? とトビーに問う。執事は、地下の機密区画に向かったと答えた。そこには、歴代市長にも、マルファにさえも理解出来ない場所であった。黎明の時代、「非衰退調律進行」を示す図面のその先。あれはイメージなのか、象徴なのか、それとも別の何かなのか。
 マルファは市庁舎の中央ホールを指差し、扉を開けておけとトビーに命じた。わざわざやって来る客人は、尊大に向かえてやらなければならない。そして、トビーに振り返る。
 “・・・身内が死んだか?” 
 トビーは首を下に振った。彼の身内は充分に己を果たしたらしい。
 マルファはトビーの暇乞いを許す。よく、今まで仕えてくれたと。「聖譜記述」によれば、彼も「上杉」を追い出される身だ。深く一礼したトビーに、元気でなと声を掛けた直後、足音も無く、空気も動かさず、トビーは去った。
 身内が一人、去った事に苦笑した直後、北の空で大音が響く。鉄の響きと爆発音。「挨拶」を仕掛けに行った繁長艦隊の艦が、宙に激突し、破砕した音だ。
 “広域展開する強固な防護障壁。「聚楽第」がこちらに届いたか。――六天魔軍の一人、丹羽・長秀の参戦か。これはまた、賑やかになるな”

 空に激突破壊の火が散った。大型のハルク系戦艦の「挨拶」が拒否されたのだ。クラーケン級八百mの巨体が防護障壁に衝突し、自分の長さを半分に縮める。艦内出力が後部機関に逆流し、許容量を超えた駆動機から活性化した流体燃料が燃料層へ流れ込んだ。
 強大な防護障壁を持つ「聚楽第」の到着を受けて、佐久間は旗艦の船首甲板上で小柄な身体を回す。拡声術式の旧派(カトリック)聖術符を丸めてメガホンにし
 “前進!・・・、総射撃!!”
 分厚い壁のようなガレー艦の陣が前に出る。「ノヴゴロド」北から東に掛けて、やや直列に並んだ「上越露西亜」艦隊を、佐久間艦隊が押し潰すように削りにかかった。

 佐久間艦隊がゆっくりと「上越露西亜」の艦隊を砕いていく。だが北の陸港から上陸中の、斉藤の第二艦隊十二艦は逃げられない。専念防御しても、上陸部隊への援護を疎かにできない。ゆえに動けぬまま、佐久間艦隊の砲撃に削られていく。
 だが、佐久間艦隊は必要以上に前進しなかった。上陸部隊に砲撃が有効な距離を保ち、それ以上、率先して前に出ず、動きを止めたのだ。
 「上越露西亜」艦隊の編成は、直江の第一艦隊、斉藤の第二艦隊、景勝の第三艦隊、繁長の第四艦隊となっている。景勝の声が表示枠から飛んだ。
“我が第三艦隊を第二艦隊の保護へ。第一艦隊、上空から佐久間艦隊を破壊する手順を付けろ!”

 斉藤は「ノヴゴロド」東の丘に辿り着いていた。南では「P.A.Oda」陣営、「M.H.R.R」陣営が各所に群れを作っている。布陣は佐久間が考えたのだろう。ぶ厚く、敵を誘い込んでは撃つという、“退きの佐久間”らしい陣構えだ。
 今、問題なのは南から西へ回っていく「聚楽第」だ。高加速からの制動で信空旋回を行っているが、その防御艦としての性能を佐久間艦隊に回し、強化を与えている。 そして東西に延びた自陣営の艦隊が削られている。
直江艦隊が佐久間艦隊を上から砲撃しているが、「聚楽第」の力を借りた佐久間艦隊に、効果的な打撃を与えられていない。景勝の判断が鋭いのは、斉藤の艦隊を上手く見捨てた事だ。陸港に停まっている無事な艦すら、全て放棄し、上陸部隊を景勝艦隊に避難させた。放棄した艦は佐久間艦隊への壁となり、もし、佐久間が上陸を望んでも障害物となる。更に、裏で幾つか布石を打ったのを斉藤は見た。
 敵の戦力はこちらの二倍以上だ。だが、景勝はそれを穿つ事を諦めていないし、不可能だと思っていない。ならば、自分達が時間を進めねばならない。「ノヴゴロド」市庁舎への到達。それで「七尾城の戦い」は終わり、「ノヴゴロド」は「上越露西亜」に奪還され、「P.A.Oda」の敵に回る。
 ふと、丘の麓で斉藤は足を止めた。百m程背後の位置で部下達も足を止める。彼らに近寄るな、と手で制し、斉藤は前を見た。「ノヴゴロド」の東の荒れ地から市街のある丘上に行く街道。今は手入れをされぬまま、草群となっている場所に一つの影がある。
 「P.A.Oda」の女子制服をシンプルに着込み、巻き布を身体の各所や髪に巻いた姿。その制服に「2」の文字がある。
 “「P.A.Oda」、六天魔軍、五大頂、共に二番を預かる丹羽・長秀だ”
 “「上越露西亜」、《第一特務》、―――斉藤・朝信”
 斉藤は両腕を浅く広げて、身構えとする。用心の為、今まで見せていなかった屏風刀の左展開から刃を滑らせ、斉藤は跳び込んでいった。

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第449回 ザクⅡ

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ザクⅡ アナベル・ガトー専用機

 プレミアム・バンダイからアナウンスが来たので見に行ってみる。
 うーん、色はブルーですか~、グフみたいだな。
 でも、こういうの見ると、欲しくなるのはガンプラファンのサガだろうか。
ザクⅡ01
ザクⅡ02
ザクⅡ03


 MG 1/100 RX-78-2 ガンダム Ver.3.0
 これも欲しいなー
http://bandai-hobby.net/site/mg_evolution/index.html

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第448回 第零話 虚刀・鑢(一)

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「刀語(カタナガタリ)」 第零話 虚刀・鑢

 本伝の20年前を語る全十二章の物語

 第一章「鑢六枝」 朗読:田村ゆかり(とがめ)
第一章

 初代、鑢一根(やすりかずね)から五代、鑢五幹(やすりいつみき)までの情報はほとんど明かされていなかった。
 六代目虚刀流当主 鑢六枝(やすりむつえ)は、飛騨鷹比等の大乱で名を上げ、後に「大乱の英雄」と呼ばれる。
 しかし、その情報は、とてつもない大男だった、獣のように獰猛だった、か弱い女子供のようだったと言われ、人によって評価の変わる謎に包まれた人物。
 妻であり、二人の子まで生した徹尾家の娘、砌(みぎり)の評によれば、芸術品のように磨かれた鏡のような刀であり、見る人はその刀鏡に映り込んだ自分を見ているのだと言う。
 千人いれば千通りの鑢六枝が見えるという、砌の話は虚勢だったのだろう。
 本当の鑢六枝とは?

 尾張城地下の武器庫。旧将軍の刀狩りで集めた四季崎記紀の通常形変体刀などを収めた場所。
 背が高く、虫のナナフシに似た痩せ細った男。その棒のような男はこの武器庫の管理人だった。
 その男、「僕」は、前から見ても後ろから見ても球体のような男と会話していた。
 さらにその場には他の人間もいた。
 ナナフシのような棒人間の「僕」、球体人間の「俺」、刃物が突き刺さることを許さない、鎧のような筋肉の塊の男「私」、背の高い露出の多い青白い肌の女「あたし」、背の低い千歳の子供のような「拙者」、刃のような牙を持つ喋るマダラ模様の犬「儂」。
 その会話は会話として成立しているようで、独り言のようだった。

 奥州の大大名、飛騨鷹比等の反乱を収め、首級を上げろと言う鑢砌の指令が下る。
 五人と一匹、いや、根っこの部分が同じ六つの枝、鑢六杖はかつての友の首を取りに向かう。
 鑢六杖、六代目にして唯一の「六刀流」の使い手である。
 その刀の所有者は、鑢砌(やすりみぎり)。

 田口さん、一人6役、ご苦労さんです(^^
 

 第二章「飛騨鷹比等」 朗読:宮本充(宇練銀閣)
第二章

 難攻不落と言われた肥後の国、暗黒城は落城寸前だった。全身傷だらけの男、飛騨鷹比等は策略により戦乱を起こし、戦乱に飽いていた。
 才能に溢れ、その己の才能に憂いている鷹比等。生まれてから一度も嘘をついたことのない男。真実しか話さない男。
 その鷹比等に影のように守護する”首”という男。
 全身に鎖を巻いた忍び装束の男は、はるかむかし真庭毒蛇と言われた男は、恰幅のいい体格の首から上が四尺ほどの巨大な刀になっていた。
 どうやって見たり、聴いたり、喋ったりしているのだろう。
 ”首”は鷹比等に問う。何故ここにいるのか。今、鷹比等は奥州の飛騨城で篭城している筈だ。
 鷹比等は答える。いくつかの節目となる戦いを、責任者として見学に来たという。
 彼は、自分がこの大乱で最も不幸になる人間だと”首”に告げる。
 彼は何のために、この大乱を起こしたのか?
 予知能力にも似た、天才の見たものは、見通したものは。

 突如現れた、手鞠を抱えた金髪碧眼の少女。
 和装がなぜか似合う否定的な少女は、鷹比等に敵が現れると告げる。


 第三章「敦賀迷彩」 朗読:湯屋敦子(敦賀迷彩)
第三章

 大乱の最中、飛騨鷹比等が肥後から奥州に戻るのに通過した国、出雲。
 戦災孤児の少女が出会ったのは、痩せ細った棒のような男だった。
 男は人を探していると言う。探している相手の名は飛騨鷹比等。
 いつの間にか青白い肌の女に入れ替わっている相手に、父を助けてくれと少女は言った。
 少女の父は千刀流の使い手だったが、この国を通っただけの飛騨鷹比等に手も足も出なかったらしい。
 会話の途中でまマダラ模様の喋る犬になったり、ころころ入れ替わる男。
 突然、死体の絨毯が爆発した。その下から現れたのは、この国を通過したはず飛騨鷹比等と”首”。
 千歳の子供と対峙する飛騨鷹比等。二人の戦いは、ここで口火を切った。


 第四章「錆黒鍵」 朗読:緑川光(錆白兵)
第四章

 手持ちの火薬玉を持って、自爆のような特攻する飛騨鷹比等。それは奥州の大名の戦い方ではなかった。
 筋肉の鎧に覆われた男と鷹比等は、近況報告をしながら殺し合う。
 一刻以上、戦い合ったのは、六枝が迷彩を抱えたまま片腕を封じられていたからだ。
 その戦いを超遠距離から見つめる女がいた。
 幼女にしか見えない三十過ぎの女、錆黒鍵(さびこっけん)。剣聖の中の剣聖とも言われる最強の剣士。
 家鳴将軍家御側人十一人衆にひとりで匹敵する彼女は、棒状の細長い物体であれば、なんでも刀として使える全刀流の使い手だった。
 将来、息子の妨げにならぬようにと六枝の抹殺を図る。
 拾った木の枝を素振りのように振っただけで、鑢六枝、飛騨鷹比等、”首”、敦賀迷彩を暴風に巻き込んで戦いを終了させた。

 戦いの後、起き上がった青白い肌の女。そして脇に抱えた少女。二人とも無傷であった。
 少女が握る1本の木の枝は、錆黒鍵が使ったものなのか。敵の刀を奪い取り、自分のものとして使う脱刀術・千刀流。
 無意識にやったとすれば、将来、七実や七花の敵になるかも知れない。
 だが、今回は助けられたと、気を失った少女をその場に残し、六枝は飛騨鷹比等を追う。
 

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第447回 境界線上のホライゾンⅣ(40)

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川上稔「境界線上のホライゾン Ⅳ(下)」 Horizon on the Middle of Nowhere
Episode Ⅳ-Part 3 適当ダイジェスト⑫


「第八十章 時代の追撃者」
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  それは宙に広がる光の滝だった。数は八つ。夜空にある白の平面下から、爆発にも見える光の噴出が生じた。
 《“有明”より報告。「武蔵」を下方展開により出港補助します。権限完全独立の後、「有明」の射出術式に乗ってください。―――以上》
 《“武蔵”より報告。「武蔵」、下方展開により、出港次第、権限完全独立。「有明」の射出術式に乗ります。―――以上》

 声が重なる内に、一際大きな滝の爆砕が起き、光が咲き、音が震え、「有明」の底からそれが下降してきた。長大な黒塗りの底部を空に露わにするのは八艦。
《「武蔵」、これより艦名を正式には「武蔵・改」、称呼としては「武蔵」と継続します。―――以上》
 緩衝術式により、大気の圧迫破裂を波音に変え、白と黒の艦影が光る賢水(オレイネーロ)のたなびきを空に伸ばし、「有明」の底を通過する。「有明」の天面が術式の表示枠(サインフレーム)と共に下がった。複合トランスフォームを折りたたみ、内部の大気を押す。下部展開口で内外の大気が激突し、「有明」と「武蔵」の間の水平域に巨大な水蒸気爆発の天輪を生んだ。
 僅かに後部を下げて降下しながら、重力航行用に各部を展開していく「武蔵」に対し、「有明」はその降下の終端となる高度に、「武蔵」を超える大きさの鳥居型加速術式千二百枚を、西方への誘導路として展開した。
 《「有明」。「武蔵」射出用術式カタパルト「大彗道四十二式」、展開―――、行先は「ノヴゴロド」、地球の歪曲補正順応、慣性残存計上補正順応、目的地までの観測範囲の天候良し、―――最終誤差二百m内の予測。この不始末、御手前で補正を御願いします。―――以上》
 《「武蔵」より報告。充分な自己補正範囲です。見事な誘導、感謝致します。―――以上》


 根津は降下緩衝術式の効果を危険域まで落として、由利が放たれた北方向へ身を流しながら叫ぶ。
 “穴山先輩! どうして伊佐先輩は降りて来ないんです! 何故、未だに戦闘を行っているんです!?” 
 “簡単な話です。由利君と同じですよ。仕事をやり終えるまでが忍道です。自分の仕込みを見届けるだけなく、あの場所に居続ける意味があるのです。私達が「要らず」ではないと、――歴史に名を刻むために!”
 
 伊佐は降下する「武蔵」上の風の中で、空から降ってきた力と激突した。砕かれた人形が《見越入道》の砲撃で炎上する熱気の中心。向かい合うのは朱の装甲服を纏った女性型武神だ。
 “来たね、「地摺朱雀」!”
 伊佐は、由利と共に発射した鉄腕の対になる腕を格納し、先端部が杭型になった削岩用鉄腕を展開した。対して「地摺朱雀」は最低限の動きで鉄杭の内側に跳び込んできた。
 ・・・速っ!!
 否、これは速度ではない、と伊佐は思った。忍術に近い動作だが、《第六特務》は忍者ではない。格闘術と体術、そして、・・・「舞」だね?
 “昔から、馬鹿に振り付け手伝わされたり、浅間のところでバイトしてりゃ、ある程度のものは身に付くさ”
 つまらなそうに言う声が、懐に入ってくる。武神ではなく人の身である自分は低い位置にあるのに、「地摺朱雀」は腰を落とし、バランスを崩さずに打撃を繰り出してくる。撃音が響いた。

 直政は、相手の厄介を感じた。こちらの初撃はベストのタイミングだったが、伊佐は更なる鉄腕を召喚した。杵槌型のハンマーを打ち出すタイプの鉄腕だ。恐らく整地や開墾用の、生活に根ざした武装だ。
 だが、厄介と思うのは武装だけではない。直政は呟いた。
 “お前さ・・・、このまま機関部に行くつもりだったろ。この小等部の正面、縦町のリフトをその鉄腕で抜けば、機関部へ一直線だ。何故、そこまでして戦うのさ?”
 “解ってる。バレてるんだよね? 私の仕込みが。私を捕まえて、解除方法を吐かせる?”
 周囲の火炎に照らされ、身体の前で鉄腕をクロスさせている伊佐の表情は見えない。

 小等部の校庭。伊佐は「地摺朱雀」を相手に立ち回った。召喚した六本の鉄腕で、通常の鉄腕は朱雀を捉えようとし、杭が穿とうとし、ハンマーが打撃する。しかし、朱雀は捕え切れず、腕は弾かれ、杭は避けられ、ハンマーはガードに回される。
 出航まであと三十秒弱。自分の仕込みは重力加速器に流体燃料が送られた時に発動する。連動機関部に仕込んだので、一つの加速器を強引に停止すれば、それ以外の加速器までもが大部分使用出来なくなる。そうなれば、「武蔵野」の加速が失われ、「武蔵」はカタパルト上で大気の衝突を食らう。自分は、あと三十数秒耐えれば良い。「真田十勇士」が「武蔵」を手に掛けたのだと世界に喧伝出来ればいい。
 脇腹から力が毀れていく。「武蔵」の《第三特務》と《第四特務》の狙撃が抉っていった。非常用の七つ道具から鎮痛用の符を取り出して貼ると、痛みが消え、痛覚減衰によって五感が鈍らないよう、感覚系の強化が行われる。神経系の反射速度が上がる。あと十二秒、・・・遅いなあ。

 直政は眼を鋭く細めた。敵が己を加圧した。符使用による短時間決戦だ。
 一秒目で打撃が交差し、伊佐が前に出て来た。
 二秒目で伊佐が身を振り、右の鉄腕三本を重ねてこちらに叩き込んで来た。
 三秒目で右三連射を捌く。鉄掌を左肩で弾き、杭を左肘で弾き、槌を左手首で外に弾く。
 四秒目で伊佐が全身を右に振り、左鉄腕三本をこちらの正面に放って来た。
 五秒目で右手首のフック鉄掌を弾き、内側に回す右肘で杭を弾く。
 六秒目で最後のハンマーを、右前の半身になって躱す。
 七秒目で朱雀が右前に出す肩から、スマッシュアッパーを伊佐に叩き込んだ。
 八秒目で伊佐が両手の符を構えた。十枚を超えるそれを全て貼った。
 九秒目で伊佐がこちらの打撃を生身で受けた。全身の傷口が開き、血が霧に散った。
 十秒目で伊佐が笑った。仲間を投げ出した鉄腕の逆腕を召喚し、朱雀の腕を取ろうとする。
 十一秒目で《見越入道》の単眼流体砲が光を得た。朱雀の腕を取るのと同時に射撃する動きだ。
 十二秒目・・・。

 伊佐は、最後の一秒で己の動きがいきなり止められたのを悟った。朱雀の腕を取りに行った、右の鉄腕を操作する腕に引っ掛かりがある。力任せに振り抜くと、自動人形のものらしい下腕だ。右の鉄腕の動きが遅れ、朱雀が回避運動に入っている、だが、流体砲の照準光は《第六特務》に向いている。だから――
 “撃て・・・!”
 その瞬間、風が飛び込んで来た。
 “ハンタァ―――チャアンス・・・!!!”

 右下腕を失った加納は、柳生が流体砲にカウンターを入れたのを見た。小柄な柳生だが膂力は充実している。「武蔵」の改修が始まってから、人の動きに不穏な動きがあると気付いたのは彼だった。《第一特務》は《書記》襲撃の現場に調査終了後も来ており、柳生の存在に気付いていた筈だ。
 “・・・一年、柳生・宗矩! 行きます!!”
 今まで己を隠してきた柳生は、全てを発揮し、叫んだ。打撃が光砲を上回った。伊佐の背後で全てを支えていた 《見越入道》の鉄の胴体と頭部を、柳生が撃沈した。
 伊佐が、何が起きたのか理解出来ないまま、浮いてふっ飛ぶ。直後、朱雀の左腕が伊佐を正面から打撃した。
 加納は朱雀の動きに違和感を感じた。打撃の直前まで、朱雀は左腕で《第六特務》を流体砲からガードしていた。違和感の正体は、・・・「地摺朱雀」が自ら《第六特務》を庇った?

  水を叩いたような音を、伊佐は聞いた。今の音は自分の身体から響いたのだ。符によって痛みは無い。
“とっくに、十二秒、過ぎてるよね・・・。結果はどうだい?”
 朱雀の拳を両腕で押し、己の身体を粘り剥しながら、伊佐は笑った。問うた直後、「武蔵」の直上に幾枚もの極東式大型表示枠(サインフレーム)が開き、一人の人物を映し出した。大久保だ。彼女はゆっくりと一礼し、こう言った。
 “「武蔵」はこれより重力航行に移行します。《代表委員長》の私、大久保が「生徒会」、「総長連合」の許可を得た上で、「武蔵」の最終点検を指揮させて頂きます。
 以前、「英国」で発生した、重力加速航行時における、加速器破損の修復。新しい「武蔵」はあの屈辱を拂拭出来る存在だと、証明出来なければなりません。―――ゆえに、これより、「武蔵野」左舷加速器群にて、不用加速器の実践的破壊と、航行時における修復訓練を行います“
 表示枠に機関部長と、その孫娘が映った。
 “これはある人が私達に与えてくれた課題なんだ。「武蔵」自身が、どれだけ破壊されても、航行し続けられるか。ありとあらゆる破壊と破損を、当然として行けるかどうか、そんな課題だよ。―――今は、もう「武蔵」の住人ではない、課題者さん。聞いてる?―――応えるよ”

 大久保はそれを見ていた。機関部による最大の抵抗を。
 “いいか野郎ども! いい機会だ! 「真田」の度胸ある技術者が、俺達の「武蔵」を破壊しようとした意味、解るか? そんな面白い事、俺達だってやってみてえに決まってるだろうにな! 設計、管理、全部において、俺達が一番、「武蔵」を破壊出来るってわけだ。解るか?―――やってやろうじゃねえか!!
 「英国」で食らったのと同じレベルの再現。あれを拂拭してこそ、「武蔵・改」だ!!”
 Jud.と誰もが応答するのを大久保は聞いた。防護術式によるシールドで囲まれた「仕込み」の加速器の周囲。機関部の出力経路を確定した上で、加速器へ流体燃料を供給する。足元から高鳴るような加速器の機動音が響いてきた。
 “該当器の爆発まで七秒、六、五、四、三、二、一”
 正確に零で爆砕が生じた。

 カタパルト上で加速を始めた「武蔵」の中央。中央前艦「武蔵野」の艦体が跳ねるような震動を得、左舷側の重力加速翼部と艦体の隙間から、流体光の飛沫が宙に舞った。対爆シールドの防護術式内で生じた十二の爆発は、流体伝導管を通じて駆動系に浸透。制御器のみならず全体が火薬庫になり、一瞬で火炎と破裂の塊になる。
 蓄積された衝撃波の第二波、第三波が防御シールドを割り、機関部内部でその力を直撃させる。閉鎖場で反響する打撃が、新たな爆発を起こし、警報と消火管理による放水が放たれる。

 「武蔵野」艦橋部。加速する「武蔵」の管理を確認していた“武蔵野”は小さく頷いた。「武蔵野」艦底部、左舷後部加速翼部に至る加速器の内、十四器が大破、三器が中破。左舷出力低下は七パーセント推移で保たれている。九パーセントを超えると加速への影響が出るが、補修が進行すれば加速航行は可能だ。

 正純はアリアダスト教導院前の橋上で、“武蔵野”の声を聞いた。
 “全艦に通達します。当艦は射出カタパルトから射出後、重力加速にて「ノヴゴロド」へ直進します。皆様、久しぶりの航空をお楽しみ下さいませ。―――以上”
 言葉と同時に“武蔵野”が、一度跳ね上がった高度を押さえに掛かった。重力航行に移行したのだ。
 “「真田」の仕掛けた破壊工作を受けて、行けるんだな・・・”
 加速する「武蔵」が、こちらの背を押す。加速していくのだ。自分達の行くべき場所に。

 柳生・宗矩は一つの終わりを見ていた。火炎に照らされていた小等部の校庭は、ゆっくりと闇に落ちようとしている。警護隊と外縁で戦闘していた人形達も、動きを失っていた。
 校庭の入り口付近に、最後の動きがあった。七本の鉄腕に支えられた伊佐が、ぎこちなく、肩をすくめる。自分以外の何かによって動かされているような状態だ。
 “馬鹿だねぇ・・、いいかい? 今のだけじゃない。まだ、爆砕術式は残っているんだよね”
 “貴様・・・!” 宗矩は息を吸って前に出た。この忍者を倒すのは自分の役目だ。暫定襲名のこの名に対し、後世の評価は芳しくない。やった事の実質は認められているが、暗闘の政治力の方が評価される、―――汚れ役だ。そんな役目を持つのが柳生の人間なのだ。
 “お止めなさい、生体反応による起爆術式など、感知在りません。自爆というのはブラフです”
 片腕の加納が左手でこちらを制した。それを、女忍者は小さく笑った。
 “なんだ、やっぱり引っ掛かってくれないのか。ホント、詰めが厳しいよね。・・・自爆する振りをして、「失わせない」方針の「武蔵」に、「失わせてやろう」って思ってたのに。・・・だから「要らず」は詰めが甘いんだ”
 伊佐が身体を前に折り、塊のような血を吐く。符の効力の残り滓で動いているようなものだ。
 “すまないね、私は死に場所を「武蔵」にしたくない。忍者は草さ。――頑張りな、「武蔵」の生活は楽しかった。笑っていられた。私はそれを見送って、退場させて貰うよ”
 言った瞬間、七本の腕が地面に射出系の術式陣を展開した。
 “「真田十勇士」、四番。伊佐! 忍びとして、最後の仕事を果たしに行くよ!”
 風を破裂させ、七本の腕に抱きかかえられるように、一直線に「武蔵野」の艦橋へ跳んだ。

 「武蔵野」艦橋上方。垂直の壁面に直立ポジションで狙撃態勢を取ったナイトを、ナルゼが後ろから腰を抱いて支えている。
 ● 画:《総長》、一人の忍者が、草に戻り、去って行くのを、私達で見送るわ
 俺 :そいつ、笑ってたか?
 うん、とナイトが魔女帽を軽く下げる。
 金マル:「武蔵」に来て良かったと、そう思ってる筈
 そうか、と彼は言った。
  俺 :じゃあ、見送り頼む。――もう、ずっと笑ってていいんだと、そう伝えてやってくれ
 Jud.と頷き、ナルゼはポケットから黒いナイフを取り出した。ナイトも同じように白のナイフを取り出す。二人は「M.H.R.R」の国章が入ったナイフを逆手に持ち、自分に刃を向ける。互いにタイミングを合わせて
 “すべからく、戦いに抵抗しなかった者、背を見せた者は、最低の魔女(テクノヘクセン)なり”
 逆十字を切り、“Nema 全てが逆であった事を頷きます” 帽子の鍔に手を当て、下げる。
 ナイトは、下方、迫る敵の姿を見て言った。
 “―――Herrich”
 だが、硬貨弾が敵に届くより先に伊佐の命が尽き、力を失った鉄腕と共に、失速して風に去った。

 最後の一瞬、己の全てを終える鼓動が、意識を覚ました。立ち去りの高空で、「武蔵」の全容を見る。去って行く姿は強大で、揺るぎも無い。
 “・・・そうだよね。私は一矢を与えた筈だ。・・・あの一撃で、私は「武蔵」を強くした!!
 それは、これから先、極東の歴史を作っていく「武蔵」の中に、己の為した事が組み込まれたと、そういう事だ。
 視界の中、理解出来るものがある。「有明」内で見ていた時には理解出来なかったが、こうして全体として見れば、伊佐には解る。「武蔵」が、恐らく、全世界で最強クラスの決戦力を装備した事を。
 伊佐は心からの笑みを浮かべた。こんな楽しい事は無いと。ああ、皆、根津も、由利も、心配しなくて良いよ。
 “私達は、幸いの道にいるさ・・・!”
 伊佐は校舎の扉をくぐった。光の中へ迎え入れられていった。どうせ、後から、どんな風にか知らないけど、来るだろうしねえ・・・と、扉を閉めずに、笑みのまま、光の中へと進んでいった。

 由利は、泣き声で目を覚ました。夜の空が見え、自分は草群に寝かされている。引っ張るような突っ張りが身体中にある、符を貼られているのだ。
 身を起すと、傍らに根津が膝を着き、俯いていた。その向こうに、伊佐先輩の鉄腕があり、それに肘をついて空を見上げている穴山先輩がいた。伊佐先輩がここに居ないという、その意味を理解した。
穴山先輩は、西の空へと遠ざかって行く巨大な影に視線を向けたまま
 “伊佐君は、よくやってくれました。―――伊佐君は、忍びとしての仕事を全うしました。美化じゃないですよ。解りますか?・・・私達は「要らず」ではなく、もう、本物です。伊佐君はそれを証明した”
 さあ、とこちらを向いて穴山先輩は言った。
 “「要らず」の方がどれだけ楽だったかという、プレッシャーの日々の始まりです。だから、「真田」の戻り、皆に報告をしましょう。そして、―――「武蔵」が「ノブゴロド」に向かう最中から始まる、「P.A.Oda」と「上越露西亜」、「武蔵」の戦闘を見極めに戻りましょう”


 午後八時二十一分。「武蔵」が先行する「聚楽第」を追って西進を行う先、「ノヴゴロド」に黒のガレー艦隊が南部の空から上陸しようとしていた。歴史再現として「ノヴゴロド」中心部を「七尾城」に重ねての行いだ。「七尾城」は元々、上杉側であったものが、寝返りによって織田側につき、また上杉側に奪い返される。更に柴田勢がそれを奪い返そうとする「手取川の戦い」に繋がっていく。
 前線役として出て来た前田・利家は「ノヴゴロド」南端の陸港にいた。“おうおうっ、久しぶり、飴食う?”と駆け寄って来る、小柄な「M.H.R.R」制服の少女が飴玉の缶を差し出す。先輩格の佐久間に頭を下げて二つ貰った利家は、赤い方をおまつにやり、白い方を口に運ぶ。佐久間は幽霊戦士団が輸送艦から降ろしている袋を見て
 “小麦粉かなんかの袋? あんなにたくさん、何にするんだい?”
 “ちょっとした防護用ですね。使う時が無ければいいんですけど”
 言ってる間に、彼女の後ろに影が来た。周囲の皆が一瞬、ひい、と引く。その正体、「M.H.R.R」の制服を着るというよりも纏ったものに、利家は言った
 “森君、・・・相変わらず触手っぷりが凄いね”

 無数のミミズが束になったような姿。触手系種族だ。全長三mを下らないそれを、佐久間が見上げた。
 “こっち寒かったろー、長可(ながよし)。羽柴がお前を救助した暗黒大陸とはえらい違いだもんなあ。垢切れとか起してないか? 飴いるー?”
 “あっ、や、止めて下さい佐久間様。こ、こすられたら、ぼ、僕、変貌しちゃいます! ほら、今も寒いから、全部の先端にウールキャップ被って! 可愛いでしょう? 粘液とか凍ると皮膚呼吸出来なくなっちゃいますからね。あっ、キャップの先端に穴開いてますからー”
 “ははは帽子被った姿も犯罪だよ、森君。犯罪度が上がるから穴は閉じられるようにした方がいいよ”
 佐久間が連続して弾く飴玉を、森が空中でキャッチする。
 打合せしよっか、と言う佐久間に、利家と森・長可がついて行ったのは、陸港の脇の広場だ。現在、「ノヴゴロド」は市街の門を閉じ、その上で防護障壁を掛けている。女市長マルファ達は市役所に固まっている。そして、恐らくそこに、世界初の教導院があり、「創世計画」を勝手にバラそうとする、「阿蘭陀」の《抵抗総長》オラニエがいる筈だ。

 午後八時四十一分。「ノヴゴロド」の東の空に、「上越露西亜」からの無数の艦影が来た。応じるように「ノヴゴロド」南端の黒のガレー艦隊が、砲撃を開始した。
 「七尾城の戦い」が始まったのだ。

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第446回 終わりのクロニクル(1)

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川上稔「終わりのクロニクル」The 1st AHEAD 全竜交渉(レヴァイアサンロード)記録

  GENESISシリーズ「境界線上のホライゾン」の新刊が待ちきれないので、AFEADシリーズ「終わりのクロニクル」を読み始めようかと考える。
 どうせ読むなら、また、ダイジェストメモを取りながらやろうかと思うのだが、あれはケッコウしんどい。
クロニクル  ヘヴィノベル!!

 第二次世界大戦という歴史の裏側にもう1つ、決して表に出ることのない戦争があった。
 平行して存在したその全てを歯車に例え、ギア(G)と呼ぶ10の世界が生き残りをかけたその戦争は、全ての物事の究極の理由「概念」を奪い合い滅ぼすことから概念戦争と呼ばれた。
 戦争後、全てが隠蔽されてから60年、ある問題が起きた。

 自ら悪役を名乗る少年、その名を佐山・御言。
 全ての遺恨を収め世界を救うための交渉、全竜交渉(レヴァイアサンロード)が始まる。、

「都市世界」年代史
 1.FORTH(前望の時代) 現実の現在の世界。基礎世界。
 2.AHEAD(前進の時代) 基礎世界が、元々この世界に無かった技術により変容していった時代。:「終わりのクロニクル」
 3.EDGE(大先端の時代) AHEAD時代の技術を自らのものとして行った時代。人類は地球を出て外宇宙へと進出している。
 4.GENESIS(大基盤の時代) 人類が地球に戻ってきた時代。最終的にEDGE末期の時代を終える契機となった戦争が再発し、世界は滅びる。:「境界線上のホライゾン」
 5.OBSTACLE(大障壁時代) 基礎時代をベースに様々な要素が追加されたり削られたりした世界が無数の構築と崩壊を繰り返した時代。
 6.CITY(都市の時代) 基礎時代とOBSTACLEにあった全ての技術が集約された時代。:「都市」シリーズ


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第445回 暦物語

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西尾維新 「暦物語」
暦物語

 ファイナルシーズンに、突然、割り込んできた本書は十二本の短編が収められました。
 今回はVOFANさんのイラストが12枚も!

 第一話 こよみストーン
 羽川翼と知り合い、同じクラスになったばかりの四月初旬。
 地獄の春休みの数日後、天才委員長が突如、言い出した「石像」の謎とは?
 忍野の言う「あの人」と「あいつ」とは。
 「石」に纏わる謎の答えは?

 第二話 こよみフラワー
 戦場ヶ原ひたぎと奇縁が生じた五月初旬。
 忍野への借金返済のため、怪異譚を売りつけようとするひたぎの言った、立入禁止の校舎の屋上にある「花束」の謎とは?

 第三話 こよみサンド
 いつものように道を歩いていた八九寺真宵に、声を掛けた六月中旬。
 忍野メメは既に学習塾跡から出て行っていた。
 彼女と知り合った、名前も読めない公園とは別の公園。
 その「砂場」の異常現象とは?
6月

 第四話 こよみウォーター
 七月某日。阿良々木暦は神原駿河の部屋の前の廊下に立ち尽くしていた。
 ひと月ちょっと前に片付けた筈の、駿河の部屋がゴミ溜めと化していた。
 掃除で汚れた体を洗えと、風呂に入れられた暦は、神原の父親と「井戸水」のいわくを聞く。

 豆知識:英語には「お湯」という概念が無い。確かにそうだな。
     日本人の「お湯」という概念ではなく、温かい「水」だもんな。
 
 第五話 こよみウインド
 八月初旬。夏休み。約束通り、千石撫子が阿良々木家に遊びに来た。
 暦が撫子から聞いた”知らないうちに知っていた”「風の噂」とは?

 豆知識:パンデミック三原則
     ① 感染速度が速い
     ② 感染範囲が広い
     ③ 歯止めが利かない
 なるほど、風邪も、風の噂も同じようなものか。
 貝木泥舟の語るパンデミックの最重要条件とは?

 第六話 こよみツリー
 九月下旬。
 阿良々木火憐の通う、空手道場の裏庭にある一本の「木」。
 兄の頭に巨大なおっぱいを乗せる妹はさておいて、この「おっぱい」、もとい「木」は誰にも知られておらず、ある日、突然、生えていることに気付いたと言う。
 そして暦がとった行動とは?
 羽川翼の言う、パンデミックを止める方法とは?

 第七話 こよみティー
 十月某日。阿良々木暦は、自宅で妹の月火から、お菓子とお茶と相談事を振舞われていた。
 月火の通う中学校の「茶道部」に出るお化けとは?
 七人しかいないはずの茶道部員の八人目とは?

 第八話 こよみマウンテン
 十一月一日。阿良々木暦は忍野メメの姪、忍野扇と北白蛇神社のある「山」へ登っていた。(いつの間にか)
 彼女の言う、初期設定のミスとは何なのか?

 豆知識:コンコルド効果-これまでの努力が無に帰すのは嫌だっていう効果か(笑)

 第九話 こよみト-ラス
 センター試験を翌月に控えた十二月。
 戦場ヶ原ひたぎ自家製のドーナツを差し入れられた暦の影から、忍野忍が飛び出してきた。
 果たして消えたドーナツの行方は?
 12月

 第十話 こよみシード
 一月中旬。センター試験二日目の帰り道。阿良々木暦は斧乃木余弦と接近遭遇した。
 彼女の探し物に付き合わされた暦は、自分とひたぎの運命を、自分の蒔いた「種」だと語る。
 だが、本当に「種」を蒔いたのは誰なのか?

 第十一話 こよみナッシング
 二月下旬のある日。神様「不在」の北白蛇神社。
 最近、人死にがあったこの場所で影縫余弦は暮らしていた。
 彼女と手合わせをしてぼっこぼこにされた暦は、自分は童女と幼女に守られていると言われる。
 では、暦は何から(誰から)守られているのか?
 
 第十二話 こよみデッド
 三月十三日。受験当日の朝。北白蛇神社。
 所在不明の忍野メメ。
 排除された影縫余弦。
 自業自得となった貝木泥舟。(「花物語」の貝木幽霊説は信憑性が増したな)
 臥煙伊豆湖に斬られ、バラバラにされて「死」ぬ阿良々木暦。
3月


 うおおおおおっ。ラストに彼女が!!!!

 物語シリーズ ファイナルシーズン
 13 憑物語 第体話 よつぎドール 
 14 暦物語
 15 終物語 第完話 おうぎダーク 夏頃発売予定
 16 続終物語 第本話 こよみブック 未定
 残りはあと2冊!!(でも、あとがき読むと、まだなにか挟まりそうな?)

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第444回 境界線上のホライゾンⅣ(39)

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川上稔「境界線上のホライゾン Ⅳ(下)」 Horizon on the Middle of Nowhere
Episode Ⅳ-Part 3 適当ダイジェスト⑪


承前

 “決まったのう” 祭りの音を聞きつつ、雪の大地と「ノヴゴロド」跡地を見据え、義光が言った。
 “「伊達」、「上越露西亜」、そして「最上」が歴史の羅針盤を未来に向けたぞえ。後は行き先に追う風を得られればいいだけかのう”
 義光を見るアデーレは、煎餅を齧りながら義光の視線を追う。義光は「ノヴゴロド」の跡地のやや上側を見ていた。椀状の底ではなく、本来ならば大地があった場所だ。
 “来たぞえ” え? とアデーレが義光の視線を追い直す。笛の音が聞こえる。ややもすると乱暴な、しかし、遠くまで響く、自分達の居場所を定めるような加護の音色が何処からか聞こえる。義康が慌てた視線を、青白い流体光で出来た大地に視線を向ける。
 “あれは何だ!?”
 その大地を、流体光で出来た人影が歩いている。人種も種族も多々あるようだが、装備品が違う。「神槍」や「神刀」と呼ばれるレベルの物を、皆が持っているのだ。義光は告げる。
 “あれは黎明の時代、「環境神群」に会いに地下六千kmの位相空間に乗り込んだ「七百人隊」。その光景が未だにこの空間に刻まれて、このように再生されるのよ”
 「大碗」を囲む祭りの踊りが動きだす。列を作り、「ノヴゴロド」跡地に向かい寄せ、引いてくる動き。これは、ただの鉱掘の祭りではない。地下へ乗り込み、帰って来ることを願っての祈願祭だ。七百の英霊が行く。帰って来るのは三十数人だと、アデーレは知っている。それだけの犠牲を払って、自分達の祖先は「環境神群」とのアクセスを可能としたのだ。
 ・・・あれ? アデーレは気が付いた。物語では、彼らが洞窟に入っていくイメージが一般的だ。しかし、彼らが行くのは、地下に向けて作られた門構えの入り口。あれは、教導院の門だ。
 解ったかえ? と義光が空を見上げ、言った。
 “この土地に作られた、世界最初の教導院。「環境神群」への謁見が可能ならば、他者がアクセスせぬように、洞窟を封じ、教導院を土地ごと空に上げたのだえ”

 “決まりだな” 夜の色に薄暗く沈み始めた「有明」内部。「奥多摩」の教導院前の橋上で正純は呟いた。眼下の屋台の並びと、その間を行く人々の流れを見ながら
 “葵、祭りも宴竹縄だ。使う金は極東だから円だけなわけだが”

 ホラ子:・・・今、正純様が何か言いませんでしたか
  俺 :うん、俺も聞いた・・・。力が・・・、抜け・・・、て
 +ZO:トーリ殿!トーリ殿! 気を確かに! ほら「上越露西亜」のエロゲがここに!
 “お前ら、真面目にやれよ”
 約全員:お前だあ―――!

 そうだっけか、まあいいか、ツキノワも可愛いしな。ええと、伝える要件は
 “葵、「武蔵」の出航命令を出してくれ。行先は「上越露西亜」、「ノヴゴロド」。目的は、示威的に歴史再現を行おうとする「P.A.Oda」に対し、「上越露西亜」の歴史再現補助のために傭兵として参加、抑制する。尚、これは試験航行である”
  俺 :へえ、やる気かセージュン! やっぱ戦争だな!
 Jud. ああ、そうだ。もう、否定する気も起きやしない。
 “今は戦争だ。それもまた、政治的解決の手段だからな。葵、「武蔵」の《総長》兼《生徒会長》。お前が先頭にまず出て、私達が共に行き、前に出て行く!”
  俺 :おう、じゃあ、とっとと来いよ。「武蔵」こっちに持ってな
 Jud.と正純は頷き、通信用の表示枠(サインフレーム)を開く。画面内の“武蔵”が頷き、各艦への一斉通神補助をする。正純は右の手を振り上げ、外へと振り下ろし、声を上げた。
 “「武蔵」乗員総員に告げる! 「武蔵」は試験航行として、これより、「ノヴゴロド」へ出航する!!”


「第七十八章 狩り場の証明者」「第七十九章 破損場所の挽回者」
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 出港合図。機関部内、出力区画で、直政は聞こえてきた正純の声と“武蔵”の通神を聞いた。
 “皆様今晩は、現在の当艦の状況は航行能力九割二分、武装稼働状態八割七分、居住系七割七分の状態。―――出港可能です。搭乗に間に合わない居住者については、「水戸」陸港に残存頂き、また帰港の際に搭乗手続きを取るように手配させていただきます。ゆえに―――”
 “武蔵“の声が一拍の間をもって言った。
 “制限時間二分二十秒です。それまでに搭乗御願い致します。―――以上”
 艦外から、わあという声の群が響いた。そして地響きという、有りうべざるものが機関部を揺らす。「有明」から乗り込んでくる人々の、重なる足音や踏込の響きが、甲板から雨音のように鳴る中、機関部中央の橋上から三科・泰造が声を張り上げた。
 “「有明」はこれから下方展開する。ぶっ飛ばされるから、逆流しないように構えとけ!” 

 大久保は、自分でもよく理解できない所に居た。作業用の装備を身に着け、頭上防御用の簪を着けている。ここは機関部の、出力系の大本という重要な位置だ。この第六女子班には加納もいる。後輩の柳生・宗矩は、機関部の男子班に振り分けられている。
 副班長から作業内容を聞いた加納が、“御嬢様。仕事の時間です”と声を掛けてきた。

 ネシンバラは教導院前の橋上で、“浅草”からの通神を開いていた。秀次艦隊の旗艦「聚楽第」の観測結果だ。現在、「聚楽第」は準重力航行で「ノヴゴロド」に向け、航行中だ。その戦闘外交艦としての能力は防御術式系が高く、出力から逆算すると防御範囲は七km範囲。広域展開した攻撃艦隊二艦隊を一艦で防御できると推測される。
 馬鹿げたレベルの防御艦だ。恐らく、「安土城」クラスの攻撃を一艦で防御出来るだろう。ネシンバラが対応を考えている間に、宙に鉄の匂いが漂い始めた。「有明」が下方展開の準備に入ったのだ。ネシンバラと正純の足元に、身を固定する足場術式が展開する。そして、ネシンバラは実況通神び告げた。
 未熟者:頼むよ魔女(テクノヘクセン)、ここが勝負だ

 “罠ですね。僕でも解りますよ。穴山先輩” 薄暗い照明が連続する通りにて、少年の声が響いた。
 応じるように、「真田十勇士」の穴山・小助の声が告げる。
 “ですけど、今がベストタイミングでもあるんですよ、根津君。ここで顔を見せておくのも、宣伝になりますしね。―――祭りは終わりだという事です。そして僕達の祭りはこれから。その号砲を、一度終えるきっかけとなった僕が放てるんですから”

 ナルゼは教導院の屋上に伏せていた。頭上の浅い位置に展開した《周知萌》から、手元の魔術陣(マギノフィグーア)に情報が送られてくる。「真田十勇士」の襲撃が再度来る、と進言したのはナルゼだった。
 二代が襲えわれた時の事を考えると、臨時生徒総会後の襲撃では狙撃が行われなかった。狙撃手が既に逃亡したとも考えられるが、ナルゼの勘は再襲撃を予想する。「M.H.R.R」内の対魔術(テクノマギ)部隊の家系であるナルゼは、黒魔術(シュヴァルツテクノ)による狙撃や砲撃への対策を、子供ながらに父から教え込まれている。
 マルゴットも専科は違うが、そういう部隊の家系だ。正純を囮にすれば完璧だと進言する。正純の猛抗議をスルーして、防御術式無し、警護無しの囮作戦が始まった。

 根津・陣八は祭囃子の流れる通りで、大型表示枠に流れる出航までのカウントダウンを見ていた。残り1分を切った。仕込みは万全だと思っている。失敗は許されない。かつて試合とも言える相対戦があった。そこで、自分のミスを発端に自分達は敗れ、本来いるべき場から出て、“要らず”となった。それを受け入れてくれる場所があった。「真田十勇士」は長引く戦国時代に高齢化が進み、自分達が来た事を喜び、“先生”となって、自分達が役を継ぐ形になった。自分達は忍びだ。
 カウントが5を切った。

 ナルゼは瞬間を読んだ。カウンターがゼロになった時、ナルゼの耳は狙撃の着弾を聞いた。

 “馬鹿な・・・!” 根津は大通りの路上で声にならない声で呟いた。狙撃の狙いも、タイミングも完璧だった。今も出航の揺れで転びかけ、尻餅をついている《副会長》は、艦上でのバランス慣れしてないのは解っていたので、ターゲットにするのはやめた。狙いはもっと、不動の持ち場にいる者――。
 根津は教導院の屋上を見る。そこには《第四特務》がいる筈だ。そこに白い色が見えた。それが散って、ゆらりと揺れる。
 “由利・・・!”

 ナルゼの周りには防御術式に転換発動させた《周知萌》と、防ぎ切った八発の弾丸があった。弾丸となっていたものはネジや釘、石やガラス片といった、どこにでもあるもの。襲撃箇所で弾丸が見つからなかった訳だ。そして、このタイミングで狙われるのは自分だ。先に正純達を襲ったのは陽動である。だから、こちらも正純を囮にしたのだ。そして、敵は来た。それも、狙撃だけではなく。
 “どう?”
 床から振り返り、仰ぐ背後にフードを被った二刀の女がいた。自動人形ではない。生身の女が、右のわき腹から濃い赤い血を流している。「清・武田」女子制服の防弾性能でも防ぎ切れない、マルゴットの狙撃術式だ。

 「十勇士」の一人、由利・鎌之介は右腕の一刀を振りかぶった。まず相手の懐に飛び込んで突いていく。当然、相手は回避するが、敵の横を刃が抜けた瞬間、手首を回し、敵の背に刃を向け直し、引き切る。
 白魔女(ヴァイス・テクノヘクセン)が回避を行った。だが、この忍術には先がある。刃を引く動きと共に一直線に真空を作る、不可避の一撃。
 だが、その真空が消えていた。
 “残念ね。その仕掛けなら、「西国無双」が見抜いていたわ。だから、後は――”
 白魔女の背の主翼が閉じかかった状態になっている。その羽の内側に溜めた空気を爆発させ、真空を潰し、白魔女が宙に舞った。衝撃が由利の身体を押しのけ、右の一刀が砕かれ、指が妙な方向に曲がるのが見えた。さらに左の一刀も砕かれる。マルゴット・ナイトの狙撃が、まだ続いているのだ。

 黒魔女(シュヴァルツ・テクノヘクセン)は「武蔵野」の橋上艦橋の上に俯せていた。《黒嬢(シュヴァルツ・フローレン)》を狙撃状態にし、右肩のハードポイントに接続。照準術式の魔術陣(マギノフィグーア)を《黒嬢》の長い船首部に何枚も展開し、硬貨弾を放出する。
 刀を砕き飛ばし、宙にある間に柄も破壊する。人体も同様に、肩を穿ち、膝を削ぎ、速度を落とした非貫通弾で脛を打撃する。片膝が折れ、両膝が折れ、肩への衝撃で上半身を振り仰がせる。
 “仲間が大事だったら、どうするかな、こういう時”

 根津は動きを止めていた。こちらの不手際なら、仕掛けに甘いところがあるなら、まだ良かった。だが、こちらの戦術を、思考を読まれ、上回られた。根津は考えた。由利を救う方法を考えた。
 “駄目ですよ、根津君。自分の不始末は自分で返す。それが、私達のルールです”
 穴山が擦れ違い、こちらについて来いと手招きを寄越す。
 “伊佐君も、既に脱出の場にいます。内部の情報は得ました。「武蔵」は出航と同時に爆散破損します。それを外から眺めましょう”
 伊佐の仕込み。その爆破を隙として由利の逃亡機会とする。由利だって、黙って殺されはしないだろう。根津が考えた時、「武蔵」の床面から響いていた震動が、横揺れに変わった。

 北西の夜に向かって行く戦闘外交艦「聚楽第」の甲板上。淡く光る霊体の人影。狐の耳を持つ少女は駒姫だ。今は秀次の代わりに艦長代理をしている。背後の展望台から出てきた丹羽に振り向き、注意を促す。
 “旋回している「有明」から「武蔵」を射出するようです。下方には緩衝術式を掛けていると思いますが、あれだけの質量が動くと、大気変動が生じます。水平方向には―――”
 駒姫が見る視線の先、「有明」の各部先端から、白い霧の爆発が起きた。それは波打ち、一直線にこちらに伸びてくる。
 “衝撃波来ます! 衝撃波の後、向こうに吸われますから、艦隊各部は後部を「有明」に向け、そのまま、惰性航行で! 出力入れてると吸われて失速します!!”
 衝撃波が艦の表面装甲を振るわせた後、引き波が来た。巨大な「聚楽第」が宙を後ろに滑る。
 “緩衝術式展開! 防護障壁を内部展開で!!”
 駒姫の指示で随伴艦八艦全てを防護障壁の束に包む。周囲五kmの範囲に展開した防護障壁で艦群は安定するが、「有明」はまだ旋回運動を三分の一も終えていない。
 “丹羽様、あの秀次様は―――”
 “「青竜」が消え、静かに眠っておられますよ。「青竜」から解放されたら、残念が消えてしまうかもと思ってたのですが・・・”
 “「伊達」家の今後を憂えたものだと、私は思っています”
 防護障壁の向こうから音が聞こえた。「有明」に新たな動きが生まれている。
 “下部が、開いていきます・・・”

 「武蔵」中央前艦、「武蔵野」の橋上艦橋内で、艦長“武蔵野”が各所の進行状況を知らせる流体の花壇を見ている。八つの花壇が表示枠(サインフレーム)付きで流体の茎を伸ばし、花弁をゆっくりと広げていく。 
 “左右一番艦、先行して出力限定解除。「有明」側。左右一番艦ドックに流体プールをお願いします。「有明」旋回四割推移。―――三分二十秒後に当艦を射出します。―――”武蔵“様、「武蔵」の呼称を、共通記憶内で暫定的に変更御願い致します。以前の艦体に対し祖語が生じる可能性があります。比較時に若干のノイズがあります。―――以上”

 揺れの底、旋回の中心軸とも言える場所で、作業は続行されていた。「武蔵野」下部、重力加速機関の制御区画で行われていた各部の最終調整だ。全ての加速器をチェックしていく作業だが、その作業を二桁ほど進めたところで大久保は違和感を感じて、手を止めた。
 目の前にある加速器は、部品も何も、正確にはめ込まれ、締め込まれている。原因不明な違和感に首を傾げていると、床がずるりと回った。「有明」の旋回が始まったのだ。加速器に倒れ込んだ大久保は、制御器に義腕の手を着く。揺れの中、制御器にはめ込まれた部品群は、外れもせず確固としている。
 大久保は違和感の正体に気付いた。
 “機関部長・・? 万が一があります! 精査を御願いします!!” 
 “どういう事だ”? 説明できるか御姉ちゃん!“
 Jud.と大久保は頷いた。周囲の者がこちらを見るのに構わず、加速制御器を義碗で勢いよく殴りつけた。打撃音が響き、制御盤が揺れる。部品がどれもズレない。本来、後の整備を考え、「外す」事で「外せる」ように固定してある筈だが、これは「外せない」ように固定してある。何故か?
 橋上から機関部長が飛び降りて来る。
 “ここの担当は、チェックシートによれば伊佐美という女性。戸籍上は「武蔵」の住人です。御願いします。私の恥になるなら構いません。既にその身です。この件については、解らないのです。だから、精査出来る人を、手の空いている人を御願いします”
 “そんなの俺しかいねえじゃないか。七秒寄越しな、コツがあるからよ。――他、伊佐美ってのがやったのをリストアップしろ! 他に手の空いてるヤツも精査に回れ! いいか、俺達がテキトーにやってんのが、政治家の御嬢ちゃんにバレちまってんだ! 今くらいはしっかりやって口止めだぞテメエら!!”

 右回りに旋回する「有明」ドック内は騒然としていた。教導院前の橋上の手摺りに身を寄せている正純は、薄暗い浮きドック内部を見渡していた。「武蔵」とドックの間に、垂れ幕のように緩衝術式の表示枠が現れては消えていく。高速で緩衝アジャストを掛けているのだろう。
 時折、壁の方で金属の激突する音が聞こえる。壁を昇るリフトが、レールの歪みで一気に滑り落ちたのだ。資材置き場の資材が崩れる音も、大型木箱(コンテナ)が重層を崩す音も聞こえる。それでも回す。
 「武蔵」のような巨大な艦は、出港直後が一番危険だ。速度は上がらないし、回頭もままならない。だから、「有明」に「武蔵」を射出させる。賢水(オレイネーロ)が各艦に浮力を与えていく。その不安定さに、懐かしいと安堵するような感覚に、正純は口元に笑みを浮かべる。
 「有明」の天面の縁部が開き、気厚差調整で大気を取り入れる。「武蔵」の側面ブロックが開き賢水を掻き分けるように重力加速器を展開する。
 妙な気配を頭上に感じた。白の色と黒の色。白は衣装の色で、黒は髪と翼の色だ。
 “ナルゼ!!”
 宙に飛び出したナルゼが、教導院校舎の屋上を見ている。そこに、艦首側から一直線に揺らぎのようなものが飛び込み、爆発した。マルゴット・ナイトの砲撃だ。

 「武蔵野」艦橋上部のナイトは、「奥多摩」艦尾側からの光学砲の攻撃に応射した。二艦の間の空間に光瀑が拡散する。アリアダスト教導院の屋上に見えるのは、膝を着いていた二刀の女剣士を手にした、武神のようなもの。確か「IZUMO」で見たものだ。武神の上半身と縦に長い頭部。野太い四本の腕。その前に立つのは、「真田十勇士」の一人。三好・伊佐だった。

 伊佐は右の手甲にフィードバックされる巨大義腕《見越入道》の力を感じた。大きな掌の中には、血塗れの由利が握られている。先輩・・、と呼びかける由利に伊佐は眉尻を下げた笑みを見せた。
 “脱出、行くよ。目的地は「有明」艦首側側通路。大気圧調整用の床面ダクトだ”
 伊佐は両の手を開き、叫ぶ。
 ”真田教導院! 「真田十勇士」の四番、――伊佐!! 「武蔵」の威力偵察に行くよ!!“
 言葉と共に、武神の腕に投げられた伊佐は、一瞬で百数十mを跳躍した。「後悔通り」の艦首側に着地し、黒魔女の射撃部隊を《変わり身の術》で躱して、横丁に潜む。直後、押さえるような重い風を感じる。「有明」が旋回の制動を掛け始めたのだ。「武蔵」の浸かっている格納槽を浸す賢水(オレイネーロ)が、下部展開扉の動きに反応し、噴き上がる。

 機関部では泰造が加速器の部品を解除していた。迂闊に外そうとすると爆発する仕掛けがある。駆けつけてきた三科・大(ヒロ)が肩を落とす。伊佐美を受け持っていたからだ。祖父の泰造に、いいから働けと言われて大久保を見る。
 “《代表委員長》、ちょっと機関部じゃ出来ない仕事をやって欲しいんだ。御願いできる?”

 伊佐と由利は「武蔵野」後部に到着していた。無数の弾丸と、爆発を受けて走ってきた。無傷ではない。だが、半分来られたのだ。あと半分、行けるだろうと考える。「武蔵野」の広い楼閣上から、表層部の町並みを見下ろす。「真田」では、有り得ないアングルだ。
 伊佐は鉄腕に背中を押させて大跳躍を放つ。落下軌道の先は、高台に作られた小学校の屋上だ。衝撃を逃す緩衝術式を靴裏に展開し、着地して、由利を掴んだ鉄腕が追随してくるのを確認する。そして、屋上から校庭へと跳躍した。
 しかし、伊佐は校庭を囲むように包囲した警護隊を視認する。着地と同時に鉄弾の射撃が来た。鉄腕でガードし、弾丸を砕きながら、その内側で己の腕を振った。
 “準備は万端だよ・・・!”
背後の小学校の校舎から、二百体を超える雑用品で出来た自立状態の自動人形が飛び出してきた。
伊佐は走りながら、小さく、“御免ね”と言って、由利を掴んだ鉄腕を、右斜め上、「有明」が吸気に開けた大型ダクトに向けて放った。

 飛距離二kmの鉄腕発射。由利は高加速のブラックアウトの中、伊佐と自動人形達が警護隊に突っ込んでいく光景を見た。飛び込み、鉄腕を突き抜かせ、《見越入道》の単眼流体砲が、敵の防御前列を薙ぐ。
 “先輩、御無事で・・・”
 ブラックアウトと共に、伊佐の鉄腕ごと、「有明」から夜の空へ飛びだした。意識が完全に落ちる直前、由利は、夜の空に莫大な水量の爆発音を聞く。
 「武蔵」が「有明」の底部から下方展開によって潜航出港したのだ。

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 やっと下巻も半分くらいまで進んだ。
 ここから激戦が続きます。
 まだ先が長い・・・、のこり二十七章。


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第443回 BLACK STONE

Posted by ヒッター7777 on   0 comments   0 trackback

焼酎 ブラックストーン

 お酒好きなヒッターですが、普段はウィスキーか焼酎を飲んでおります。
 夏場、暑い時はビールも良いですが、キリッと冷やした焼酎を飲むのが好きです。
 銘柄として気に入ってるのは、秋田の焼酎「BLACK STONE」。
 米焼酎ですがアルコール分が41度もあり、ストレートで飲むのはきついはずなのに、スルッと飲めたりするので酔いの廻りが早いです。
 冬はお湯割りにすると、非常に香りが良い。

 値段もお手ごろなんで、お試しを。

                   BLACK STONE

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第442回 大帝国

Posted by ヒッター7777 on   0 comments   0 trackback

アリスソフト「大帝国」

 デスクトップ上のアイコン整理をしていたところ「大帝国」のショートカットを発見。
 ああ、2ルートくらいやって最後までやってなかったな~
 宇宙横綱を倒してないな~
 と、SAVEデータを引っ張り出して遊んでたら4時間経ってた・・・

 

 地域制圧型シミュレーションなので、どのルートで制圧していくかでシナリオが変化していく。
 初期の進行ルート選択や、ターン制限(一定ターン以内に到達しなければならないポイント有り)で選択肢が別れる。
 2011年度、一番売れた美少女ゲーム。



 あ、18禁です!

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第441回 境界線上のホライゾンⅣ(38)

Posted by ヒッター7777 on   0 comments   0 trackback

川上稔「境界線上のホライゾン Ⅳ(下)」 Horizon on the Middle of Nowhere
Episode Ⅳ-Part 3 適当ダイジェスト⑩


承前

 “え?・・・” 成実は心の中に巨大な空白を得た。言われた意味が良く解らない。
 “ちょ、ちょっと・・・” 涙が止まり、顔に熱がたまってきた。
 “貴様の事は年鑑で調べた。誕生日が六月二十一日か。拙僧の誕生日は九月七日だ。―――結婚して家族になれば、拙僧は貴様の夫であり、弟である。つまり、貴様は拙僧の姉になるのだ”
 ――、成実は思った。思った事を口にした。
 “頭おかしいと思うけど、今更驚かないわ。でも、いつからなの?”
 “初見からだ。拙僧が何といったか、覚えているな? 伊達・成実。半竜は弱い生物には興味が無い。強く、気高く、欲を言うと、こういう装甲を纏って、格好いい方が良い。更に欲を言うと、中身は柔かく、捕食感を煽る方が良い”
 成実は覚えていた。私が姉なら、決まりだった、と・・・
 “私は、・・・「伊達」の・・・”
 “「武蔵」に来い。拙僧は貴様でなければ嫌だ。伊達・成実、出奔の歴史再現があるのだろう?”
 “違うわ、そうじゃない。「青竜」と政宗の事があるのよ”
 “それを片付ければ、貴様は拙僧の元に来るのだな。―――「青竜」退治、貴様と拙僧で成し遂げるぞ。そして、「青竜」がいなくなれば、「伊達」は「武蔵」と協働するのだ。大事なのはそれだ。違うか?”
 身体の各部にある加速器が陽炎を立てている。彼もまた、照れているのだ。
 “私はまだ、失敗していないと、貴方はそう思ってくれるのかしら?”
 “拙僧は、貴様を「武蔵」に連れて帰る。貴様は「伊達」の問題を解決する。全てはこれから成功する。そして始まる。―――拙僧を信じろ。伊達・成実”
 “馬鹿・・・” 苦笑が漏れ、目尻に残った涙が落ちた。成実は言葉を作った。
 “《不転百足》、―――再起動!”

 鈴は鳴り響く警報を聞く。「仙台城」内部に危険因子が出現した事を示す警報だ。二つの姿がゆっくりと立ち上がる。半竜と《不転百足》だ。二人はある方向に全てを向けいた。
 ホールの上座側。流体の風が流れる源。鈴の周りを武装した「伊達」家の戦闘団が取り囲んだ。
 “「武蔵」外交官。昨夜、貴女は「青竜」の間近であの暴圧を知覚していた筈。我らの道を教えていただけまいか”
 “じゃ、一緒に、行こ?” 即答には僅かな震えを感じる。だが、周囲の者は顔を合わせ、ややあってから頭を下げた。
 “音に聞くアルマダ以降、こちらまであの巨艦の運航を指揮し、生存させた「武蔵」《艦長代理》の指示下であるならば” 

 ベ ル:あ、あれ、だよ、ね? 単に、風とか、他の艦の動きとか、どうなるか、ええと、読んで
 武蔵野:補足致しますと、鈴様は重力航行時に誤差二十七cm前後で艦の挙動を管理出来ておりますので・・・。ええ、とりあえず鈴様いないと三回くらい吹っ飛んでます。―――以上

 良く解らないけど、とりあえずいつものアレはアレでいいらしい。
ウルキアガの声がこちらを向く。“さて、どうキメる?” 
彼の横に立つ《不転百足》は、視覚素子の補助光を灯らせて応じた。
“「武蔵」《艦長代理》は政宗の確保に行って、こちらは―――”

 成実の対「青竜」の作戦は明快だ。叩きのめす。既に昨夜、鎮めている。破損部も明確で、弱点である逆鱗も破損状態。これ以上、力が通じないという事実を叩き込み、弱体化させる。だが、手負いの獣である事も確かだ。 
 「青竜」の上半身が、玉座に座る政宗の背後に出現している。片倉の推理では、「青竜」は政宗を確保するつもりだ。下手をすると流体の門に政宗ごと下がって、二度と出て来ないかもしれない。
 “「青竜」を倒すわ” Jud.と半竜が頷いた。
 “・・・なあ、誰だあんな厄介な武神を政宗に押し付けたの。―――企画として失敗だろ”

 「最上」領の「大碗」の縁。祭囃子の中。従士が狐の女王に問うた。
 “あれ?義光さん。今、「伊達」家の実況、盛り上がって来てるんですが、何で視線逸らしてるんです?―――え? 鋭い事言われた?”

 “一応、義姫学長の同意があっての事なのよ?”
 “保護者判断では仕方ないな。行くぞ!!”

 「第七十七章 川縁の宿竜」
077.jpg

 距離にして、わずか七十m程。既に流体の風が生まれ、雷光も放電現象を作りだしている。「武蔵」外交官側も準備が出来たらしい。先頭の班長が手を揚げて見せた。
 成実は、もはや迷いなく、全力で不転した。

 鈴は暴風の中を進んでいた。周囲は「伊達」家の戦士団が術式の盾を構えている。鈴は「青竜」の威圧の弱いところを指し示し、皆は術式防盾で風を割って行く。
 先行する半竜と《不転百足》は既に戦闘を開始した。暴圧と咆哮と雷撃が容赦なく二人を襲う。対して二人は剣と打撃で相殺している。「青竜」が咆哮をもって全てを押しのけて前に出ようとする。
 “いい声だ! しかし、もっと鳴けるのだろう!?”
 ウルキアガが竜の声圧を正面から前腕の打撃でぶち割って行く。泡の破裂のように八方に裂ける圧にウルキアガが《処刑場転化》の聖術符を乗せている。昨夜、「青竜」が主庭を砕いた事への対応策だ。壁や天井にに貼りついた符が、確かな足場を保ち続ける。
 鈴達の進路に《不転百足》の顎剣が何本も突き刺さった。攻撃用のものでは無い。全長三mの剣の刃に彫り込まれた術式が過熱の流体を放つ。床が固まった。極東式の術だが、昨夜の戦闘で、この時のために用意していたのだろう。「青竜」への道は残り二十m。その時、成実の声が表示枠(サインフレーム)を付けて、皆の正面に来た。
 “伏せなさい!!!”

 雷撃が重連の幕となってホール洗った。極厚の滝のような「青竜」の瀑布の響きの叫びに、青白い雷光が怒涛する。それは一瞬で数十の横列となり、政宗に近づく者達に連続で激突した。無数の光源から弾け照らされるホールは激震し、半竜が縫うように打った符は焼かれ、百足が刺した刃もそのほとんどが砕かれた。
 波打つように壁の石材が崩れようとした時、“止まれ馬鹿!!” 片倉の声と共に、一直線に並んだ表示枠がそれを止めた。“半分は止める! だから行け!!” 防護障壁に震動と雷光が激突する。ホールのどこを見ても光の散らぬ場所は無い。だが、その光を叩き切る影がある。
 百足は顎剣を幾重にも抜き、半竜は三mはある鉄棒を二刀に構えた。対大規模霊障破砕装備の大鉄棒だ。
 “・・・何処から出したの? 貴方・・・”
 “神の御手は何処にでもあるぞ。知らんのか”
 半竜と百足は同じタイミングで左右に分かれ、全力で「青竜」に激突する。宙に浮かぶ「青竜」の左右両腕への攻撃。徐々に広げられていくそれは、中央に座る政宗を無防備にするという事だ。
 鈴達は、風の底、竜の正面、威圧の中央に飛び込んだ。だが、鈴は知覚した。竜が腕を左右に広げた。ウルキアガと成実の攻撃を受けていたのと違う動きだ。
 ・・・息、を、吸う? 
 《爆圧咆哮》の前哨だ。「青竜」の竜砲ともいえる咆哮攻撃。それが、正面に立った自分達に向けて爆圧した。

 一瞬で「青竜」正面の大気が消散し、放電現象と霧を生み、扇状の衝撃波によって拡散する。だが「青竜」の正面に立つものがあった。「青竜」より頭一つ小さいが武神ではない。対雷相ではなく、対打撃型の防護障壁が分厚く重なり、巨大な人型を作っている。片倉の構築した、人型防護障壁だ。
 人型防護障壁は全身で《爆圧咆哮》に飛び込んだ。莫大な数量の防護障壁が光に散り、衝撃波の拡散によって全周へと散る。その結果として、《爆圧咆哮》の中心撃が消費された。
 やった、と誰かが叫んだ。これで前に行ける、政宗のところへ行ける。しかし、鈴の知覚は、遂に「青竜の門」から青の巨体がその足を踏み出すのを捉えた。

 「青竜」が決めたのだ。もはや逃げず、ここを勝負の場にすると。政宗を手中にして、己のものにすると、そう決めたのだ。「青竜」の背後で門が閉じる。両腕を外に封じられ、一度下げられた身を強引に前に送る。両足を床に付き、押さえにかかっていた半竜と百足を突き飛ばす。
 「青竜」は見た。正面の眼下。そこに自分の主がいる。たどたどしい動きで政宗を抱擁しようとした時、壁に叩きつけられた百足が叫んだ。
 “留守さん!”
 叫びと同時に、「仙台城」の正面側の壁が爆発と共に剥がれた。「仙台城」管理システム:留守の声で、外壁、内廓部の非常用パージが成されたアナウンスが入る。
 竜の咆哮と流体によって内圧の高まったホールの大気が、気圧差で外へとぶちまけられる。政宗を拾おうと身体を前に倒していた「青竜」は、強引な大気の本流に、前に大きく一歩踏み出した。政宗をまたぎ超えるようにだ。それをウルキアガは隙と判断し、叫んだ。
 “向井! 行け!!”

 鈴は、宙に浮いて支えられている状態だった。正面から「青竜」の爆圧が来たのは覚えている。
 ・・・立って、る?
 “大丈夫かい「武蔵」外交官のカワイ子ちゃん? ぼぼぼ僕、仙台伊達教導院《副会長》に片倉・景綱って、い、言います。す、すいません、リアル女子と話すのあまりにもレアなもので、すっかりアガリ調子でして! ボ、僕、おかしくないですよね? ですよね? そうでしょう?”
 大分、変かも・・・と思ったが、クラスの皆と比較すると
 “フツー、かも”
 “え!? フツー ! やった! 告白して良かった! ともあれカワイ子ちゃん、正面わかるか? 君は風が見えてる筈だ。流体の圧も、何もかもが知覚できる”
 鈴は、自分が無事でいるのは片倉の指示だと悟った。彼が自分の事を守らせたのだろう。倒れ、身体を起そうとしている皆に対し、無事な背を見せられるように、外交として、堂々と行けるように
 “お願い,――真っ直ぐ、行かせ、て”
 鈴は歩き出した。一歩一歩は確実に、時折来る流体の圧には軽く顔を傾けるだけで、見切りとする。髪が靡き、竜が頭上で姿勢を戻そうと唸りを上げる。壇に足が掛け、昇った。そして、次の壇へ。

 ウルキアガは、身を起そうとする「青竜」に激突していった。前に踏み出し、前後に伸びたバランスを横から打撃して崩す。推力任せに「青竜」の右半身、上腕を打撃する、百足も同時だった。左に大きく傾いだ「青竜」が背の翼を動かし、バランスを強引に取り戻そうとしている。
 更に、その動きを利用して左腕の打撃が返ってきた。狙いは百足だ。回避が間に合わない。

 成実は、打撃音と己が宙を飛ばされるのを感じた。瞬間的な連続防御も間に合わない、いきなりの一撃だったが、自分は無事だ。宙を一回転する己の左側に、壁の石材を大きく砕いてぶち込まれた半竜の姿があった。何が起こったか解る。彼が「青竜」の一撃を受けつつ、こちらを突き飛ばしたのだ。
 ―――馬鹿・・・。思う事はいろいろある。感情も多く湧く。だけど、今、「青竜」が身を起そうとしている。
 “頼むわよ! ――鬼庭さん!!”
 直後、身を起した「青竜」に、外から一直線の激突が来た。

 激突は一瞬だった。「青竜」をただ押さえるだけの構えで激突した、重装の武神「左月」は、装甲が割れ金管楽器をぶちまけたような音を発し、「青竜」もろとも、奥の壁に激震した。
 “最後の最後で鬼使いの荒い家だな! 「伊達」は!!”
 「青竜」は腰を落とし、両の腕と腰の撥ね上げで鬼の武神を床側に叩きつける。咆哮が響き、今度こそホールが崩壊を始めた。だが、一つの成果が生じていた。
 鈴が、意識を取り戻しつつある政宗の目の前に辿り着いたのだ。

 鈴は政宗の手を掴み、絞るような力を込めた。うなされたような反応があり、それは声となり、瞼の動きとなり、政宗がこちらに顔を向ける。
 “君は、・・・” 誰? といわれるより先に鈴は声をあげた。
 “嘘! 嘘、つかない、で・・・! 忘れてない! 忘れてなんて、無いよ、ね・・・”
 政宗が眉を立てた。背中に迫る「青竜」を置いて、彼女は鈴の手を引き剥そうとした。
 “駄目! 昔の事、悲しかった事、嫌だった事、忘れてないよ、ね・・・? 忘れ、た、事に、しないで!! 忘れたら、本当に、いなくなっちゃう・・・”
 もう既に、彼女の大事な人はいなくなっているのに、そのことを忘れてしまったら、どうなるのか。今、もなくなってしまう。自分の大事な存在を失ったことを忘れずに、しかし、今を思い続けた人がいる。彼は後悔を抱え続けたが、今を見据えて、私達と一緒にいてくれた・・・。
 “後悔の、何が、悪い、の・・・? 今を、選ん、だ、証しだよ!”
 政宗は顔を歪めて、声も歪め、息が漏れ
 “だが・・! 私が小次郎を殺した事実は変わらないだろう・・!!”
 鈴はもう、答えを知っている。過去に浸るのを止め、今を行く踏切板の上に立とうとする者に対して、どうすべきか。鈴は政宗の手を引く。倒れ込んでくるのも構わない。鈴の背には支えてくれるものがある。それは片倉の表示枠(サインフレーム)であり、駆けつけてきた戦士団の皆だ。
 “大丈、夫。辛い事実が、あった、ら、もっと、幸いな、事実、を重ね、行けばいいよ。――辛い事の、上、幸いは、多く積もる、よ”

 成実は豪風の中で、泣き声を聞いた。竜の力を継ぐ「伊達」の長が、目の見えぬ異国の娘の腕の中で、仲間達に支えられるように産声のような叫びをあげている。
 終わった、と成実は思った。自分が「伊達」家に残る理由の最たるが終了したと確信した。
 「青竜」は乱れている。半竜の動きはまだ生まれていない。床。崩れていく崩壊の中で、仲間達が床を術式で固め、「青竜」に向かって射撃武器を連射する。成実が狙うは「青竜」の逆鱗だ。万全で行く。成実は初めて真正面から「青竜」を見た。
 “行ってくるわ“

 「青竜」は加速してくる《不転百足》に気付いた。逆鱗を隠すように首を前に倒し、両の翼を広げる。既に政宗は意識を取り戻し、主導権は彼女に大きく傾いている筈だが、もはや、竜は独自で政宗を取り戻そうとしている。
 迫る百足に今までの中で最大の《爆圧咆哮》を放つ。放たれた瞬間に可聴域を超え、壁や天井、床を洗い流すような流体の衝撃波が、不意に変化した。次第に収束し、細くなる。それは正に竜砲。
 《爆圧竜砲》とも言える流体基礎の竜砲が、「青竜」の口蓋から一直線に放たれた。

 「仙台城」がその正面上部から真正面まで一直線に切断されるのを見る、二つの視線があった。夕食中の喜多方ラーメンの丼を手に飛び出した、真田十勇士の佐助と才蔵だ。
 店主の“器は返せよ!”の声に頷きながら、夜空を距離三kmまで断ち割った流体光を見上げる。
 “あんな剣みたいに長時間持続する流体砲がどこにあるってんだいアンタ!”
 “それがまあ、目の前に見えてるからなあ・・・。つーか、あれだ。もうちょっと、中にいるべきだったな。たまんねえな”
 “ありもしない血が騒ぐよ。あの中で、間違いなく、歴史が進んでる”

 《爆圧竜砲》の力の行先は、首を振る「青竜」の視線に等しい。最終的な行き場は、真正面から攻撃を掛ける《不転百足》だ。その間には崩落する天井から落下する石材がある。百足が石材を避ければ、竜砲が先に百足を捕捉する。
 鈴の腕の中の政宗が身震いを作った。
 “迷惑をかけた。だから―――、幸いを積む歴史を、私から進めよう”
 目尻に涙をためた少女が立ち上がり、両の目で夜空を見た。そして、背後の竜に言った。
 “有難う、ずっと私を守ってくれて、救かった。――これからは一緒に行こう。だから、誓いとして、私達が欠けたものを一緒に得よう!”
 彼女は懐から短刀を引き抜き、刃を己の右目に突きたて、引き切った。
 “受け取れ! 独眼竜の証だ!!”

 同時に「青竜」の右視覚素子が破砕した。首を仰け反らせる。政宗からのフェードバックのある動きだ。それは、成実の前に喉の逆鱗を露わにした。
 “行くわ!”
 引き抜いた三十七の顎剣を竜の喉にぶち込む。喉を塞がれ、行き場を失った《爆圧竜砲》が「青竜」の胸部を爆発させた。

 成実は「青竜」の姿が流体の光の中に消えていくのを見た。「青竜」は敗北し、政宗の持つ二律空間の門の向こうへ封じられたのだ。今後は大きく変わる。「青竜」は自己修復さえ済めば、ずっと彼女を守っていくだろう。
 成実は、泣いているような背を見せる政宗を見る。彼女は虚空に吠えた。涙のような血を衣装に散らし
 “奥州覇王、伊達・《独眼竜》・政宗・・・! ここに己の歴史再現の確認を終了し、「羽柴」からの要請を果たしたものとする!”
 この宣言は、一つの未来を「伊達」に示した事になる。「羽柴」の次の「松平」との未来を選択したのだ。思う成実は、《不転百足》を落下に任せた。既に燃料計が危険域の赤を示している。数秒後には、自分は床に落ちて動けなくなるだろうが、落下する天井が退場する自分を隠してくれるだろう。

 成実はおかしな事に気付いた。《不転百足》の落下が、床上1.5mで止まっているのだ。そして、燃料切れで二律空間にもどった《不転百足》の後に、破れた赤いドレス姿の自分が、仰向けに浮いている。背と膝裏を誰かが支え、こちらを抱き上げている。
 散り積もった莫大な流体光と、荒れた大気の霧雲が巻く中、そこに居たのは半竜ではなかった。
 “貴方・・・”
 白い髪の男だ。細身の、しかし、引き絞られた筋肉の、細面。こちらを不愛想に見る瞳は、金の竜眼。思わず視線を合わせた成実は、吐息をつく。
 “まったく、竜神の流体を取り入れすぎたようだな。格好いい姿が台無しだ”
 “え? ちょ、ちょっといいかしら? ・・・まさか、中の人とか―――”
 喋り方も、声も、まさしく彼だ。成実は、どういう事か意味が解らない。
 “失礼な話だ。「伊達」家の者であろうに。竜神の力を継いだ政宗が、人の姿で生まれた理由など、悟れぬ訳ではないだろうが。竜族は条件さえ合えば、人の姿を取ることも可能だ。貴様のところの学長。、間違いで竜神の子を授かったなどと、嘘だぞアレ。人の姿を取った御当地の竜神と、楽しくイチャイチャした後の結論だろう。そうでなければ人の姿では生まれん”
 
 半竜の姿に戻ったウルキアガに抱き上げられたまま、成実は政宗達の元へ戻った。政宗は治療用の符を右目の上に貼り、誓いに使用した短刀の鍔を、紐で右目の覆いとした。
 近づく成実達に気付き、“似合う――”か?と言い掛け、ぞ、と言い換える。成実は胸の内からの笑みを感じた。そして、ホールの外に待機していた皆が
 “・・・!”
 爆圧とは違う、歓喜の咆哮を斉唱した。

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第440回 彷徨える艦隊 外伝1

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ジャック・キャンベル 「彷徨える艦隊 外伝1 反逆の騎士」
The Lost Stars:Tarnished Knight

彷徨える艦隊 外伝1 反逆の騎士

 謎の種族との最初の戦いをブラック・ジャック・ギアリー達が行ったミッドウェイ星系。
 崩壊が進む惑星連合(シンディック)に反乱を起こす、女性司令官グウェン・イケニと陸上軍司令官アルトゥル・ドレイコン。
 別々に、極秘裡に計画を進める二人だが、まだ、互いに信頼しきれていない。
 政治、経済、軍事が統合されている官僚社会、シンディックでは裏切りは当たり前なのだ。
 内政保安局(ISS)の監視の裏をかき、ISS本部ビルを制圧するドレイコン。

 一方、共闘して宇宙空間の機動部隊を反乱させたイケニは、シンディック新政府側の司令官コラニの機動部隊と対峙している。
 戦力はほぼ五分。
 イケニは考える。倒すのはコラニだけでいい。多くの戦闘艦まで失えば、この先、補給される見込みもない。
 新政府と異星人に対する自衛力を残さなければならない。
 星系同盟(アライアンス)のブラック・ジャックは、どうやって惑星連合(シンディック)を破ったのか?
 戦闘情報は極秘だった。シンディックは味方にも重要情報を知らせなかったのだ。
 イケニが取った策とは?
 クーデターは成功するのか?

 本書の最終章で、本伝8巻の十六章の場面、ギアリー達がスパイダーウルフ族を連れてミッドウェイ星系に戻ってきたところに重なります。

 外伝2巻 The Lost Stars:Perilous Shieldsは、今年10月に刊行予定だそうで、翻訳版は早くて来年後半でしょうね。
 本伝9巻 The Lost Freet:Beyond the Frontier:Guardian は、この5月に刊行されたようで、翻訳版は年末から年明けごろ、発売予定だそうです。

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第439回 加速の頂点

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川原礫「アクセル・ワールド」
アクセル・ワールド14 ―激光の大天使―

 来月7日発売の「アクセル・ワールド14 ―激光の大天使―」
 予定通り≪四神セイリュウ≫からのアクア・カレント救出作戦決行のようだが、タイトルからすると、≪大天使メタトロン≫討伐ミッションまで進むようだな。
 もう一冊追加で15巻あたりで「大天使メタトロン攻略編」というか、その後のISSサーバー破壊まで行かないと11巻からの一連のパートが終わらない気がする。

 アニメ2期やらんのだろうか?


 先日、OVA「EX02 Vacation:温泉」を見たのだが、OP、EDは第2クールのやつの転用なのねw
 領土戦6戦で勝率7割5分って?
 体質改善温泉(混浴)。師匠に呼ばれてアッシュさんも登場。
混浴
混浴2

 知らない間にハルユキは、リアルのアッシュローラーに出会う。 
温泉3
温泉4

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第438回 境界線上のホライゾンⅣ(37)

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川上稔「境界線上のホライゾン Ⅳ(下)」 Horizon on the Middle of Nowhere
Episode Ⅳ-Part 3 適当ダイジェスト⑨


「第七十四章 終わり場の見者」「第七十五章 舞踏会場の出撃者」
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 “「上越露西亜」は良い。減封で済むからのう。景勝もまだ若い。しかし、「最上」は違うのだぞえ? 駒姫はもはや霊属。「最上」の王は途絶える。そして「最上」に新しく王を作り、管理者とするのか「松平」よ。それは体のいい乗っ取りではないかえ?”
 義康は、それは違うと思った。いや、義光が言いたいのは、「最上」がいいようにされるという事ではなく、駒姫が失われるのが嫌なのだ。だから、辛いから・・・。
ああ、姉や義頼の思いも、こうであったのか。失われる運命に乗ってしまう。駒姫はそこに意味を持ち、義光を救ったつもりだが、残されたものは違う。だから、義頼は言ったのだ。笑え、と。いつも笑っている義光は表情を消している。それは、泣いているのと同じだ。
 “・・・義光” 我知らず、義康は言葉を作っていた。同じなのだ。この狐の女王と自分は、等しい部分を抱えてしまっている。何故、自分が「最上」の担当になったのか、今更ながら理解した。否、大体解っていたのだ。
 “義光、一つ、「里見」の代表として、お前と「武蔵」《副会長》に提案したい事がある。「武蔵」外交官としてではなく、「里見」の《生徒会長》として提案したい。「里見」と「最上」を共同統治する事は出来ないだろうか?”

 義光は、一瞬、言われた意味が解らなかった。自分は「最上」の行く末の話をしていた筈だ。
 “共同統治。正式にという訳ではなく、実質上の形で、義光、お前にも「里見」の政治を見て欲しい。そして、私も「最上」の政治を学びたい。つまり、お互いの家の誰かを共に二重襲名する”
 義康の言葉に、義光は、馬鹿な、と思う。
 “駒姫がいなくなった後の「最上」の権限を、奪おうというのではないのかえ? 「最上」はいずれ、多くを失う国だぞえ? そこから何を学ぶと?”
 義康は器用な人間ではない。義光にもそれは解っている。だが、誰かの入れ知恵かも知れない。しかし、義康は静かに言った。
 “「里見」は既に亡国だ。いずれ、「最上」のように消えていく国でもある。私には姉も、兄のようだった者も、仲間も、―――何も無いのだ”
 “ならば、後悔するなえ?”
 義光は懐から《鬼切》を抜く。何も無い。その言葉が本当であるならば、《鬼切》は何も切らない。今の言葉が嘘であり、ただの同情や甘言であるならば―――。
 瞬間的な抜き打ちで、義光は義康を断った。「穏を切る」。その者自体ではなく、その者を陰で支えている係累を断つ。「古式神格武装」は、正しく義康の「穏」を割った。

 義康はただ立っている。《鬼切》を横一直線に振った義光を見据え、言葉を生む。
 “義光、勘違いをするな。私と「武蔵」の連中との関係は、支え合うものでも、仲間でもない。未熟な私でも、並ぶことを許し、ただ同じ方向へ行く。―――今は、私の失った者達が見せたものを、共に見ているだけの連中だ”
 遠く聞こえる祭囃子を背に浴びて、義康は言葉を継ぐ。
 “ただ同じ方向を見て、潰される事があっても、不安に抵抗し、再起を諦めない馬鹿な連中。いずれ、並ばねばと思う私にとって、その事自体が大事なんだ”

 “仲間と言うより、「そうなりたい」という目標かえ。確かにそれでは切れぬのう。何故、私を選んだのかえ?”
 義光は《鬼切》を懐へ納めて問う。
 “私は「里見」を奪還するつもりだが、その実際はまだ無いし、確証を得ようにも、信用となる素材さえ無い。私の言葉は提案という事で考えてくれ。「最上」を一代でここまでにした能を借りたい。学びたい”
 “確かにそれでは共同統治が必要かもしれんのう。だが、「里見」を奪回した後、「松平」の治世では平和な世がある筈。「松平」側の誰かに師事をした方が良かろうよ。何故、そうせぬかえ?”
 Jud. 義康は頷いた。
 “ぶっちゃけ、あいつら、何するか解らないし”

 騒ぎ出した「武蔵」側の通神を無視し、義康は続ける。
 “小国である「里見」も、いずれ改易で消える。だから、自分達を少しでも残すように、昔から教導院で作られていたプランを改変して提案する。私はお前を見て学ぶが、もし、お前の目に、私が政治家として適っていると見えたなら、お前の嫡子を襲名させてくれ”
 最上・義光(もがみ よしあき)。その嫡子の名は
 “最上・義康というのだったな。―――私が二重襲名するのに、最適な名だ”

 ・・・馬鹿だのう。ここで最上・義康の名が出てくるとは思わなかった。
 義光は知っている。聖譜記述では、「最上」の嫡子は後継となる前に死亡する。だから、駒姫に最上・義康の襲名を重ねなかった。最上・義光と最上・義康の仲は不和となり、それが企みであったと知った義光は、自害した義康の首を見て涙を流す。奸臣を探し出し、成敗するが、その奸臣は里見の姓を持っていた。
 この事を義康は全てを知って言っているのだろう。だから―――
 “駄目。―――義康、そして「武蔵」《副会長》。私は貴様らの提案には乗れぬ。何しろ、まだ、駒姫が私の手の届くところにいる。後の世の動きも、まだまだ明確ではない。だから、「最上」は、―――保留。「関ヶ原」まで、好きなようにする”

 正純は息を吸い、そして吐く。「最上」の決定はこちらの条件を飲んだも同然だ。実際、ヴェストファーレン後までは全て保留なのだ。
 九尾娘:好きなようにするぞえ? 「里見」の。貴様も好きにするがいいぞえ? 私に師事を乞い、私を手本とするならば、最上・義康の襲名を狙ってみるのも良かろう。そういう未来も、また、「あり」であろう。私が、今よりも先を望んだ場合、北の共同体や「里見」の申し出があった事も、覚えておくともよ。そういった未来もまた、駒姫が望んでいるやも知れぬしのう―――
 正純は義光から告げられる言葉に、母を思った。
 “義光。「武蔵」はこの先、「羽柴」との戦闘において、一つ、約束する。我々は、駒姫に手が届くならば、必ず奪還する。失わせるような事はしない。その出来を見て、判断してもらっても構わない”
 九尾娘:・・・期待値の上げ過ぎぞえ? ―――その心遣いだけでも、充分、覚えになるともよ

 「上越露西亜」、「最上」、共に領土拡大の方針を出した。これは歴史再現的にも正しい。「羽柴」の指示や牽制に従わず、「関ヶ原」後の領土確定と、北の大共同体を目標にするが、現在における明確な協働ではない。しかし、将来を見据え、「武蔵」と足並みを揃えていくという確約は出来た。
 次の問題は対「P.A.Oda」との戦闘関係だ。「P.A.Oda」はいまや「聖譜連盟」を手中にし、大航空艦隊を持ち、《竜脈炉》という兵器を持ち、有能な武将も多く従えている。現状、極東の半分以上を手中にした大国だが、「織田」家には奥州侵攻の歴史再現は無いし、「上杉」侵攻は途中で止まる事になっている。「六護式仏蘭西」、「三征西班牙」、九州、四国勢もそうだ。何故なら織田・信長は暗殺されるからだ。
 それまで「上越露西亜」と奥州勢は持ち堪えなければならない。
 だが、先程から「伊達」側との応答が無くなった。関東の「P.A.Oda」が動き出したのだ。


 「有明」内は警報に満ちていた。教導院の橋の上、正純の背を守るように立つ立花・誾は自分の表示枠(サインフレーム)に視線を向ける。
 “「聚楽第」を中心とした艦群が。北西に航行を開始した?”
 “先行のようです、誾さん。物見によると「安土城」も補給物資の搭載を急ぎ行っているようです”
 恐らく、「聚楽第」は対「上越露西亜」、「安土城」はその補給と「毛利」攻めに動くのだろう。「江戸」と「里見」の防護は、「北条」を監視している滝川・一益に任せるつもりか。
 望遠拡大した表示枠には「聚楽第」の艦首に立ち、こちらを見ている丹羽・長秀と駒姫がいる。
 “「ノヴゴロド」だ”
 幾つもの表示枠を開いている正純が告げた。その表示枠の数が、誾の見ている前で膨大に増えていく。アリクイ任せに無造作に開いていく表示枠を、正純はどれも消さない。その数は数百枚を超え、指で要点と言えるところをなぞり、確認を終えたものを重ねていく。時たま、分割したり、間に挟んだりするのは
 ・・・理解して、把握しているというのですか?
 フアナも同様の事を行うが、情報全体から要点を抜き出す、卓越したセンスを持っていた。この《副会長》は違う。速読と、莫大な理解量のプロファイリングだ。
 “さあ、大体、見えてきた”
 アリクイの出す表示枠に、「上越露西亜」周辺の概要図が映し出される。リボンラインが「上越露西亜」の西側から柴田艦隊が「ノヴゴロド」に移動している。「上越露西亜」南部国境からは佐久間、森の艦隊、そして、関東から丹羽の「聚楽第」。「P.A.Oda」の手空きの戦力が「ノヴゴロド」で柴田艦隊と合流するのだろう。
 「武蔵」と「阿蘭陀」のオラニエ公の合流を恐れているのか。「ノヴゴロド」には、最古の「天津乞神令教導院」が在るかも知れない。そして、オラニエ公は「創世計画」の何かを知っている。
 “《副会長》、「武蔵」を出航させますか?”
 “いや、まだだ。三国会議はまだ終わっていない。「伊達」の態度が明確になっていない”

 鈴は両義腕、両義足の赤いドレスを纏った人影と向かい合っていた。
 “成美、さん・・・。まだ、駄目、なの? 「武蔵」と、いっしょ、・・駄目、なの?”
 “そうね、正直、こっちが出した無理難題を、ああいう方法でクリアしてくるとは思わなかったわ”
 そうだね、と片倉が壁際に移動して言う。
 “「武蔵」が武力で何かをするのではなく、未来の図を見て、僕達三国がどうするのか、どうしたいのかで決断させた。そんな交渉の仕方は、圧倒的な勝者の未来を持つ勢力にしか出来ない事だ。羨ましい話だ”
 ホールの奥の、玉座のような椅子に座っている政宗が、俯いている。動かず、力無く、眠っている様だが違う。鈴の知覚には、彼女の背後、頭上の位置に風の線がある。「青竜」の出口だ。鼓動のテンポで、風と、大気の厚みが流れてくる。それが、段々と大きくなってくる。
 「聚楽第」で眠る小次郎が離れた為、枷を外した完全実体の「青竜」が来る。その空気を浴びて成実が口を開く。
 “私達、「伊達」家の者は聖譜記述を鑑みた時、「松平」無しではやっていけない。解って・・・。
親密な関係になるものほど、最初の関係構築が大事なの。最初から、対等に、ともに歩める関係が必要なの。「伊達」家は、将来の極東覇者と、肩を並べて行きたいのよ”
 成実は苦笑し、鈴から顔を逸らす。
 “だけど、無理そうね。きっと貴女達は先に行き、「羽柴」を追い越して行く。だけど、私達はこの「青竜」がいる限り、まともな交渉など出来ず、倒せる明確な戦力も無い。だから、言っておくわ。急ぎ、「武蔵」に戻りなさい。「伊達」は「武蔵」とともに行く事が出来ないと、伝えに帰りなさい”
 「青竜」を止められない、と成実は言っている。「武蔵」と共に行けない、と言っている。そして、鈴は思う。それは、嫌だ。その鈴の背を軽く叩き、ウルキアガが前に出る。
 “随分とヘタレだな、伊達・成実。一昨日の威勢はどうした”

 成実は半竜を前に、背後から毀れ洩れる竜の息吹を感じていた。昨夜の戦いで「青竜」は疲弊状態にある。しかし、政宗を守ろうとして全力で来るだろう。小次郎が遠ざかったことで、実体と流体が重なった状態で出てくるに違いない。「青竜の門」から漏れてくる流体光と風が、昨夜の比ではない。出現したら、近づく事すら至難だろう。
 “ヘタレ、ね。言ってくれるわ。ヘタレていないわ。悲観的なだけ。――やる事はるのよ。早く、去りなさい。ここは「伊達」の戦場に―――”
 “行くな、成実。貴様一人では勝てん。拙僧が助力しよう”

 言われた言葉は《副長》としての恥だ。力が無い、と言われている。だが、自分ですら、そう思っていた事でもある。だが―――
 “「青竜」の案件は「伊達」の長に関わる問題。ここで「武蔵」の介入を許せば、借りを作ることになるわ!”
 ウルキアガが全身の加速器を待機状態に展開する。
 “拙僧を傭兵として雇えばよい、と言っても貴様は納得しないだろうな。―――相対戦を望む。「伊達」《副長》。―――「武蔵」の《第二特務》の申し出、受けてくれるだろうな”
 “な・・・、今がどういう状況か、解っているの!?”
 “貴様と拙僧の相対の状況だ。負けたら帰る。勝ったら、拙僧の言葉を聞け!”
 ・・・この馬鹿。こちらにも立場があるのだ。負けたら帰ると言うのなら、そうして貰った方がいい。
 成実は《不転百足》に搭乗する。赤いドレスが巻き込み防止装置に手間をかけたが、成実は全身を駆動させた。彼と踊るのは、きっとこれが最後だと、思いながら。


 「第七十六章 知覚外の踊り手達」
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 《不転百足》と半竜。両者の身長とリーチはほぼ同じ。加速は半竜が上、小回りは百足の方が立つ。だから、両者の攻撃は基本、半竜が押し、百足が捌く。縦百m、横五十mの「仙台城」内部のホールでは、百足の顎刀を長尺状態で出すことが出来ない。連続の高速射出で手数に変えていく。対して半竜は、その装甲と小型の術式防盾を展開する。
 そして服の袖から、長さ1m程の真鍮のハンマーを取り出し、左右に構える。
 “異端審問キットその三百十一。《聖母の踵(マリアタコン)》!!”
 竜の力でスナップする高速の双撃は、百足の手数には足りないが威力は上だ。防御としての百足は腕をぶつけていく。連続射出される腕に弾かれたハンマーが、半竜の手から離れ、宙で回転するが、半竜はさらに二本の打撃物を取り出した。そしてさらに二本。
 “追加するぞ、踵踏み踊る事が捕縛の粋よ―――”
 全部で十六本の金鉤が、両者の攻防の中で踊った。

 鈴は知覚の中で二人の動きを捉えたが、把握できない。二人が立ち回り、高速の打撃や蹴り、身を捩ってのフェイント、一回転してのキック、お互いを行き来するハンマーの数は十六本だろうか。腕、手首、肘、肩、首や足に絡んで回っている内に数えられなくなった。
 鈴は色が解らない。光も闇も解らないが、どういう風に「綺麗」かは解る。だが、「綺麗」を知覚することは出来ない。だから、この知覚で把握できないものを、「綺麗」なのだろうと、信じた。
 二人が更に速度を上げる。密度の上がった十六の転輪の中、剣斬と防御の応酬が跳ね上がる。半竜の術式防盾は、もはや防御用ではなく、シールドアタックで打撃するものだ。ウルキアガは半竜とは最強の種族だと信じている。航空系半竜は、空も高速に飛べて格好いい。強いから、諦める必要もない。強いのだから、正義を持つことで、己の強さに意味を持たせるべきだ。我々の祖先は、未熟な人間を保護し、守る役だったという。捕食対象と見ているという者もいるが、人間も好きだ。
 半竜は強い。拙僧は正義の人だ。弱い者をどうとも出来ぬ。だから強い女が好きだ。姉が好きだ。

 両者の距離が近づき、火花が散り、光が弾け、咲き拓いた巨大な花のようになる。だが。《不転百足》の手数が増えている。徐々に攻撃パターンを変えている。
 鈴の知覚に「綺麗」が無くなった。
 “ウルキアガ、君、捉えられて、る!”
 仕組まれた攻撃パターンに、半竜の右側が無防備になった。伸びきった右翼腕に、成実が十六の打撃物のタイミングを読み、一瞬で追加召喚した十六本の腕に、ハンマーを握る。直後、己の三本の顎剣と十六の打撃武器が全て半竜にぶち込まれた。

 成実は手を抜かない。正式な相対の場で、それが礼儀だ。この相手にとっても、それで諦めがつくだろう。そして、それは、―――自分にも。だから―――
 “終わりよ!!”
 時間差つきで剣戟と打撃を打ち込む。こちらの左腕を巻き込む事は前提だ。それくらいでなければ、この相手は倒せない。半竜が左の翼椀を上げた。顎剣の方を危険と判断したのか、術式防盾のシールドアタックが、顎剣に激突する。砕ける盾の光が散る前に、成実は予測の外の攻撃を受けた。
 受けた感覚は爆発だ。避ける間もない。霧と圧力の爆砕が、全身を殴打した。

 ウルキアガは右半身と前面の加速器を開放し、飛翔の力を超至近距離から成実にぶつけた。半竜の全身を飛翔させる力。竜であるならば、本来、竜砲として口から敵を穿つ爆発力。音、熱、力を片肺分、確実に消費して、自分自身もろともに相手を打撃した。
 成実の左腕が肩から外れ、ホールの天井に突き刺さる。《不転百足》の右半身が殴打されたように歪み、右腕、両脚が一度、基部から外れる。身が宙にある間に四肢を新規召喚した百足に、半竜は左の剛腕を加速させた。

 成実は速度と判断の中で澄んだ。爆発の衝撃から《不転百足》が即座のアジャストを行った。
 “・・・負けられない” 自分は「伊達」の《副長》だ。そして、《総長》としての政宗がいる。三週間前、「羽柴」から歴史再現の確認があった時、政宗の弟、小次郎は自害を行うべきかどうか、悩んでいた。数日後、「仙台城」の使われていない茶室で、小次郎は自害を図った。
 小次郎を探していた、政宗と自分が第一発見者だった。小次郎も竜の力を継ぐ身。自分も賢鉱石(オレイメタロ)の刃を使ったが、力が足りなった。小次郎の最後の頼みは、「伊達」のために行動してほしい、だった。そして、動いたのは政宗だった。
 あの時、自分が動いていれば、政宗は「青竜」に記憶を食われず、私を疎んじたかもしれない。でも、「伊達」家は何の問題も無く、「武蔵」との協働を果たせたのではないか。だから―――
 “・・・教えてあげるわ。私のこの両腕と両脚。子供の頃、政宗が誤って呼び出した「青竜」によるものなのよ。私が訓練中にあの子を泣かせてしまった時・・・。あれ以来、政宗は「青竜」を呼び出せなくなった”
 成実は半竜の左突きに、右腕を叩き込み、顎剣を射出しながら言った。
 “それが、今、また「青竜」を呼び出している! これは私にとってのしがらみ、守るべき罰則よ!!”
 答えてくれ、「武蔵」よ。極東の覇者となる者達よ。私達は失敗したのか。私は後悔を抱くままなのか。私は「伊達」を出なければならない。しかし。それまでに「伊達」の全てを取り戻せるのか。
 半竜が近づいて来る。次は逆側の加速器爆発をぶつけてくるだろう。対応は解った。こちらは連続射出の準備をし、ぶつける事で加速を削ぐ。二度目を凌げばホールドすることが出来る。
 
 鈴は勝負の結末を知覚していた。音が凄かったというのが第一印象だ。ウルキアガが放った、第二の加速器爆発に対し、《不転百足》は腕の連続射出で加速を殺そうとした。だが、ウルキアガは停まらなかった。各部の加速器が断続的な加速の連打を吹き、減衰した速度を即座に入れ直す。本来なら流体不足で不可能な技だ。
 だが、ここには政宗の背後に浮かぶ「青竜の門」があった。流体の波が大きく来始めている。二度目の加速器爆発を支えたのはこれだ。そして、ウルキアガは最後に《不転百足》を抱きしめ、その両翼腕から最後の加速器爆発を放出した。

 “伊達・成実。開けてくれ、話がしたい”
 両手、両脚を失った《不転百足》を床に押さえつけ、ウルキアガは静かに言った。
 “馬鹿・・・” 成実は闇の中で泣いていた。《不転百足》は、超至近距離からの爆圧でアジャスト中だ。だから開かない。
 “馬鹿ぁ・・・”もう駄目だ。私は政宗を救う事も出来ず、《副長》として「伊達」家の壁となる事も出来ない。自分は失敗してしまった。それは、恐らく、小次郎を失ったあの時からで・・・、御免なさい。
 涙を、頬だけでなく目尻から髪まで零して、四肢のない身を仰け反らして、悔しい、情けない・・・。
 “伊達・成実。無事か? 開けるぞ”
 彼が《不転百足》の装甲を開けようとしている。心配しているのか。馬鹿、自分は動けないのだ。さっきまで戦闘していたのだ。まず、心配するのは自分の事だろうが。
 いきなりの強引が来た。胸部下側の装甲を下から持ち上げられ、流体の風と波と霧が入り込んでくる。
 涙に顔を濡らし、髪も乱れ、赤いドレスは荒れた呼吸に揺れている。
 “伊達・成実。―――貴様に言っておく事がある。―――拙僧は貴様の事が好きだ。だから、「武蔵」に来い。そして共に世界を救おう”

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第437回 珈琲店タレーランの事件簿 2

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岡崎琢磨「珈琲店タレーランの事件簿 2」彼女はカフェオレの夢を見る
珈琲店タレーランの事件簿 2 彼女はカフェオレの夢を見る

 まさか出るとは思わなかった第2作。
 登場人物は前作と同じ僕(アオヤマ)と切間美星バリスタ。
 猫のシャルルがこの店に来て1年経った頃から始まります。
 相変わらず、京都に住んでる人しかわからない推理だが、こういうのでローカル・ミステリーという、新しいジャンルが生まれていくのだろうか?

 美星さんの妹、美空ちゃん登場。母の名は美月。 
 切間家の事情が徐々に明かされていく。
 そして、終盤で明かされる意外な展開。
 くそう、レトリックか!騙されたぜ!!(これには脱帽 orz)

 タイトルの意味はラストで明かされます。

 全体として、第1作より出来は良かったと思う。
 シリーズ化されるだろうから、次作にも期待します。

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第436回 ジョジョの奇妙な冒険

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アニメ「ジョジョの奇妙な冒険」


 もうTV放映は終わってしまったが、纏めて見る機会ができた。
 原作の第2部までのアニメ化だったが。久々に見ると懐かしい。
 昔の少年ジャンプはこういうノリだったな~

 昔、第3部がアニメ化されたが、これもTVシリーズで作って欲しいな。


 物語はジョースター家、ディオ・ブランドー、柱の一族を絡めて数世代、異なる世界にまたがって進んでいく。
家系図参照
 第1部 ファントムブラッド ジョナサン・ジョースター
 第2部 戦闘潮流 ジョセフ・ジョースター
 第3部 スターダストクルセイダース 空条承太郎
 第4部 ダイヤモンドは砕けない 東方仗助
 第5部 黄金の風 ジョルノ・ジョバァーナ
 第6部 ストーン・オーシャン 空条徐倫
家系図
 第7部 スチール・ボール・ラン ジョニィ・ジョースター
 第8部 ジョジョリオン 東方定助
家系図2

 このゲームはやってみたいな




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第435回 境界線上のホライゾンⅣ(36)

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「境界線上のホライゾンⅥ(上)」を読んで

 「真田」の地における「第一次上田合戦」が終了し、息をつく間もなく、毛利・輝元が北条・氏直と共に現れた。
 「備中高松城の戦い」、「天正壬午の乱」と「小田原征伐」を同時にやろうと言うのだ。
 梅組キャンプに襲来する益田・元祥を襲名した《人狼女王(レーネ・デ・ガルウ)》。
 一方、「毛利」攻略として「巴里」を水攻めにしようとする竹中・半兵衛。対抗する全裸太陽王ルイ・エクシヴ。
 遂に登場。第四の四聖武神「日溜玄武(ひだまりげんぶ)」、操者は《十本槍》の八番、蜂須賀・小六(十二歳)。対するは「六護式仏蘭西」《番外特務》群竜・ベルンハルトと竜族傭兵部隊。
 両足で四の字固めを掛けながら、両腕でトーリの背後からチキンウィングフェイスロックを決めて、本体は隣で目を開けて寝ているホライゾン。
 「北条」攻めを前にノリキは対北条・氏直用術式を得に「諏訪」へ向かう。
 前田・利家の走狗(マウス)モードのおまつから、通常サイズ・モードまつになると、すごい饒舌なんですね~。溜まってるんですね~
 「羽柴」の《十本槍》四番、加藤・嘉明の《白姫(ヴァイス・フェルステイン)》と、五番、脇坂・安治の《黒姫(シュヴァルツ・フェルステイン)》が「小田原」に向かう。
 真田十勇士は「第二次上田合戦・籠城戦」を、滝川・一益は「小牧長久手の戦い・蟹江城籠城戦」を目論み、「武蔵」に一矢報いるべく手を結ぶ。
 「武蔵」も「慶長の役」で、「羽柴」からの関東解放(朝鮮撤退)を画策する。
  談合会談の場に現れる「羽柴」からの使者、通神病原(ウィルス)、大谷・吉継。
「松平」、「毛利」、「北条」、「織田」、「羽柴」、幾つもの勢力が「小田原」へ集結していく。

 次巻ではナルゼとマルゴットの《双嬢(ツヴァイ・フローレン)》VS《双鉄(ツヴァイ・アイゼン)」の対空対地同位階迎撃装備《双姫(ツヴァイ・フェルスタイン)》の空中戦が見れるかな?
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川上稔「境界線上のホライゾン Ⅳ(下)」 Horizon on the Middle of Nowhere
Episode Ⅳ-Part 3 適当ダイジェスト⑧


「第七十三章 スタートラインの咆哮者」
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 繁長は銀狼の速度を見た。速い、が、正面過ぎる。軽いステップのような高速跳躍で、左の膝を上げているのは、こちらの剣の横を抜け、膝蹴りか直蹴りをぶち込もうというのだろう。
 甘いっ!と、剣の後ろに隠れるように半身となる。刃を全身で押し込むように突っ込んでいく視界に、銀の色が広がった。銀狼が上げていた足を真っ直ぐ下に落として床を蹴り跳び、大前転跳躍したのだ。そして、身を捻り、逆側の脚の踵を後方へ高速で振り放った。

 前転跳躍の後方踵落としに対し、繁長は真っ直ぐ掲げていた一刀を押し上げた。金属音を持って柄頭と銀狼の踵が激突し、繁長の刃を床に深く突き刺した。二十cmほど貫通した剣の柄頭に片足で降り立ち、もう一方の足は回転の動きを残している。打音が響き、繁長が身を深く折って吹っ飛んだ。狼は反動で空中に後転する。
 銀狼は、腹を抱えた繁長の左腕の中に小型展開した流体の盾を見た。《本庄盾》が乱れた衣装の中で、繁長を守っていたのだ。銀狼の蹴りは繁長にダメージを与えていない。そして、屈めた身を起し、右腕を突きだす。中段正拳打ちから繰り出された、全長三mを超える大盾の三枚重ねが銀狼へぶち込まれた。

 銀狼は左手を振り、《銀鎖(アルジョント・シェイナ)》で繁長の剣を引っこ抜く。手に握らず、そのまま、《本庄盾》目がけて突きだす。剣先は一枚目、二枚目を砕いたところで折れた。三枚目にショートダッシュした銀狼の右足踵蹴りのカウンターが炸裂した。重量物を《銀鎖》で吹っ飛ばすときに使うピック付きだ。四散した流体光の長大な盾の向こうに繁長がいる。もう武器は無い。《本庄盾》もすぐには構えられないだろう。
 突きだした右足を振り下ろし、左脚の高速サバットで繁長の胸部を刈りに行く。その時、上から影が来た。

 繁長の三連《本庄盾》は単なる防御の為ではない。背後からの斉藤の一撃を隠すためだ。銀狼が《本庄盾》を砕いてくるのは誤算だった。斉藤の姿に気付くのが早くなったが、もうサバットの態勢に入った身では対処が間に合わない。
 いや、違う。左から黒い色が飛び込んで来た。サバットの回転をする銀狼が振り回す《銀鎖》の先、円弧を描いて飛翔してくるもの。黒を基調とし、白い装甲を纏う剣砲。「大罪武装」《悲嘆の怠惰(リピ・カスタリプシ)》。狼の揺れる髪の向こうで、「武蔵」の姫が何処から出したのか、湯呑みの茶を飲んでいる。巨大な剣の軌道は、確実に空中の斉藤を狙っている。だから繁長はガードの左腕を解いた。
左の宙に手の平を叩き込み、“《本庄盾》!!”

 新たに展開した三枚の《本庄盾》を《悲嘆の怠惰》が容易く砕く。だが、軌道が変わった。黒と白の大剣は繁長の頭上へ飛ぶ。ミトツダイラは繁長の顔に、笑みを見た。こちらの攻撃を受けるつもりだ。斉藤を守り、攻撃のチャンスを与える気か。だが斉藤の身体は、まだ繁長の頭上を越えた宙にある。こちらの蹴りの方が早い。ミトツダイラは全身の加速を入れて、蹴りを放った。
 だが、繁長が不意に遠くなった。蹴りのリーチから彼女が外れる。理由は簡単だ。斉藤が繁長の両肩を蹴り、後方に飛ばしたのだ。
 反動で前に飛び越し、ゆっくりと身を沈めるように着地した斉藤。腰を落とし身構えた繁長。《悲嘆の怠惰》を抱き寄せるように着地したミトツダイラ。三人とも、この先の流れを予想していなかった。三人が振り返り、振り仰ぐ視線の中
 “おう、ちと、邪魔するけど、いいか?”
 「武蔵」の《総長》が景勝の玉座の前に立っていた。届いたのだ。「武蔵」の代表が「上越露西亜」の代表に、直接の言葉を交わせる状況に、全てが届いたのである。
 銀狼が剣砲を身体の後ろに回し、片膝を着く。斉藤も狼と同じく雛壇の方へ顔を向け、片膝を着いた。繁長は、雛壇の上で1mの距離も開けず向き合う二人を見て祈った。
 ・・・大丈夫であってくれ、景勝。
 景勝は王に向いていない、そんな魔神の王なのだ。

 景勝は、内心で泣き出しそうになっていた。誰も近くにいない状態で、向こうの代表と言葉を交わさなければならない。どうしたものであるか―――。嫌である。走りだし、すぐにでもこの場を出て行きたい。苦痛というより、あるのは恐れだ。
 何故だ、何故、我はこんな重大な世界の一部を任される・・・? 多くの人々の命を預かるのだ。何故、そんな危険な事を、一人の存在に預けるのであるか。目の前にいる彼は、どうなのだろう?
 “「武蔵」の《総長》よ、貴様は何故ここにいる・・・?”
 笑って、気楽という顔で、彼は言った。
 “いねえよ。――通過点だ。ここ” そうだろ? と彼はこちらの肩を叩く。恐れず、力まず、まるで、何年も知り合いだったかのように。
 “オメエだって、そうだろ? 座ってねえで、立ち上がった。何処か行きたいとこがあんだろ? 行けねえんなら、俺に言え。その不可能も、俺が引き受ける。―――何処へ行きてえんだ? 何を思いてえんだ? それを聞かせてくれよ。―――、オメエが好きなものを、教えてくれ”

 “貴様は恐れないのであるか・・・? 貴様は自分の中の我を恐れないのであるか・・・?”
 王という力の塊、従える者達の全能性を―――
 “恐れたところで、死のうとしたって、許しちゃくれねえ。オメエだってそうだろ? 面倒な事あって、やってらんねえ、って思う事だって、投げ出しそうになる事だってあるよな? な? あると言って下さい。
 でまあ、そういう時、周りが許してくれねえだろ。面倒だけど、厄介だけど、放って置けねえ。だから、自分の力解ってるオメエは適任なんじゃねえの?“
 “・・・適任だと!?”
 ホールが震え、皆が身をすくめるほどの声だった。斉藤までが顔を上げ、こちらを窺っている。
 ・・・ヤバイであるぞ。この咆哮は自分への憤りと恐れだ。嫌だ嫌だと思っていたことに対し、適任などと言われたら、まるで、我を言いくるめて、この役を押し付けているような、逃げ場を断たれる事への恐怖感がある。
 “「雷帝」の力を適任などと計るのであるか?――人間の分際で!”
 全身から流体放出の雷光が発生し、ホールが明るくなる。自分がやりたい事など、王の身では出来ない事ばかりだ。自分には「雷帝」に至る道筋で得た枷がある。我がもっと、勇気か、身勝手か、前向きか、薄情か、何かがあれば、その枷は外せたかもしれない。
 “我は「上越露西亜」の王であるぞ・・!”
 “だって、オメエ、植物園とか動物園とか好きっぽいじゃん。――こういう風に、力は小さく使ってもいいんじゃねえの?”
 笑みの顔で彼が開いた表示枠には、「上越露西亜」生徒会のサイトが映っていた。

 ホールが暗くなったような感覚があった。「雷帝」の放つ雷光が収まっている。
 “オメエさ、いろいろ格好いいこと言ってるけど、息抜きに園芸やったり、動物世話するの好きだったりすんだろ?”
 いきなり事実を指摘され、景勝は鼓動を撥ね上げた。
 “馬鹿な事を! それらは当然の福祉というものだ。王が温情あることを示し、人々の支持を得ようとしているに過ぎない!”
 “ああぁ、もうウサギちゃん、ウサギちゃん、可愛い~。あっ、そっち行っちゃ駄目でしゅー、とかやってんだろ、オメエ。おわあ、お花の芽が出たよ! これがいっぱい咲いたら、花壇凄いだろうなあ、子供達に分けてあげようかな、とかな”
 やってます御免なさいであ――る!!
 “つまり、オメエの不可能ってのはソレだ。園芸ウフフとか、動物キャッキャとかやっていたいけど、「暴君」の体面が邪魔すんだろ? 処刑とか何とかケッコやって、神様に祈って謝ってんだろ? 俺が一緒に謝りに行ってやるよ。 それで、オメエの「暴君」チャラにして、面倒事こなしながら、庭いじってウサギ飼おうぜ”
 “無理だ・・・。我は「暴君」の名を外せないのであるからな”

 “「ノヴゴロド」だ” 景勝は言った。
 “八年前。我、イヴァン四世は聖譜記述によれば、独立性を強い商業都市「ノヴゴロド」を恭順させようとし、従わぬ都市側を大粛清した。「ノヴゴロド」はほぼ壊滅し、人工の四分の三となる六万人を失ったのだ。これは「上杉」側の後継騒動となる景虎事件を前倒しとして、同時に行われた。我、景勝と争って、自害に追い込まれた長尾・景虎。現在も「ノヴゴロド」の市長を務めるマルファの事だ”
 解るか?と景勝は問う。
 “マルファは、魔神の中でも不死型でな。彼女は「私に全て任せておけ」と言った。談合では、彼女は「死んだ」ことにするだけだった”

 しかし、景勝が知らされたのは、マルファ以下、命あるものが全て自害したと言う報だった。マルファですら、一度、己の身を砕いて作り替えたという。術式で「ノヴゴロド」の民の死体を加工し、四人分を一人に繋ぎ合わせ、四分の一を生き残りとする。その魂はほとんど残らず、マルファは、実質、一人で「ノヴゴロド」にいる。
 何故、マルファがそんなことをしたのか解らない。だが、知らせを聞いた景勝は、ベッドで一睡も出来ず、ただ、思った。もう自分は、好きな事をして、良い王になる事は出来ないのだ、と。一つの都市にある命を、全て奪える「暴君」なのだと。

 そっか、と景勝の目の前で頷きが生まれた。そして、勢いよく肩を叩かれた。
 “だったら決まりだ。暇な時教えろ。一緒に「ノヴゴロド」に謝りに行こうぜ”

 “何故だ!”と魔神の王が吠える。すると、人が答えた。
 “オメエの力が必要なんだよ。オメエが誰かから何かを奪ったなら、俺がそいつに取り返してやる。失ったり、無くしたものを、俺が取り返してやるよ。年月かかるかも知れねえから、オメエ、ちょっと力貸せよ。「暴君」、いいじゃねえか。オメエがいれば、物事相当に早く進むって事だもんな!”

 肩を何度も叩かれて、景勝は言葉を失った。この人は・・・、信じてくれるのであるか・・・、共に行こうと言ってくれるのであるか。景勝は「武蔵」の《総長》の肩を、一度、強く、殴るように叩いた。
 “戻れ、「武蔵」の《総長》、―――そこまで「上越露西亜」に肩入れすると言うなら、話を聞いてやらぬ事も無い。―――減封される「上越露西亜」を、如何に北の大共同体に絡める気だ”

 “それはこちらにも興味ある事だえ?” 義光は身を起し、表示枠へ話しかける。
 “聞こうかえ? 嫡子問題で改易となる「最上」を、北の大共同体に組み込むのかえ? 回答次第では、不備を叫び、「武蔵」の敵となることも辞さないぞえ?”
 義光はアデーレと義康に視線を放ち、口端を上げる。扇子で祭りに興じる民や、「ノヴゴロド」跡地を指し、波打たせる。
 “これらの人々の処遇、如何様にしていくと貴様らは言うのだえ?”

 その問いかけに、答えはすぐ来た
 副会長:「上越露西亜」の減封、「最上」の改易は聖譜記述に則り、正確に行う事にする。――聖譜記述に従った動きを取る。それは「武蔵」の基本方針だからだ。

 “ならば、「上越露西亜」は何もかもを奪われるという事ですか!?” 「上越露西亜」の大ホールに斉藤の声が上がる。斉藤は二m四方の表示枠(サンクト・アグノー)を展開し、極東だけでなく全世界の概要図を表示した。
 “「武蔵」は外界への開拓事業を謳っています。なんとか理由を付けて減封や改易を行い、徐々に極東の土地を取り上げ、「松平」の支配力を上げていく。――違いますか!?”
 副会長:そのようにして暫定支配を解除していくのが、歴史再現としては問題が無い。だが、私はここで提案する。「武蔵」と、今よりも強固な国交を結ぶ気は無いか? 「松平」が極東平定後、各国の所領を没収していく。中央集権化だ。しかし、極東は広い。「武蔵」は貿易で拠点を行き来せねばならん“
 一息の間を空け、正純は続ける。
 副会長:「上杉」、「最上」、「伊達」を「松平」家の北方管理担当者とする。「松平」に対する管理力の国税は年度毎に収めて貰うが、領土、権限範囲、地方税については「関ヶ原」以降の話し合いで確定する。それまで、現領土を確定領土としよう。貴方達が外界への開拓を行わない場合は、貴方達が本来得る筈だった土地を、他国に奪われるだけだ。他国は外界開拓を始めているのだからな。
 そして、と正純は駄目押しをする。
 “開拓事業を行わない場合は、「聖譜連盟」が「露西亜」としての存在を剥奪するはずだ。この実施はヴェストファーレン会議以降だ。「上杉」として北方管理を、「露西亜」として外界開拓を。貴方達が「松平」や極東に喧嘩を売りたいなら、外界から頼む。何しろ、極東は平和になるのだからな。歴史に「露西亜」と極東の戦いがあるなら、受けて立とう”

 極寒の地を治めるにおいて、劇的な変化を入れるにはいい機会かも、と斉藤は考えた。支援付きで歴史再現に適い、三国同時に行える。外界の開拓という条件があるので安寧とは行かないだろうが。
 かげV:管理領土は「関ヶ原」以降の話し合いが基礎とは、・・・考えるものである。
 朝の部:「羽柴」を無視して、最大領土をもって「関ヶ原」に来いと言っているのです。国境の不確定な部分を急ぎ開墾し、集落を作り領土を広げておく。「伊達」も「最上」もそうするでしょう。いわゆる、領土戦争ですな。
 かげV:ああ、いいね。それ、好きである。そんな戦争ならば、大好きだ。先頭に立ち、人々を連れ、土地を開き、天候を操り、水を呼ぼう、火を起そう、我の作る領土の国境に花を咲かせ、他国に「上越露西亜」の繁栄を見せたいものである。

 斉藤は息を詰めた。自分達が祭り上げたこの魔神の長が、他者と歴史への気遣いで無く、自分の望む国の姿を述べたのは初めてだ。「上越露西亜」がその形を失いかけ、変わろうとする時に、間に合ったのだ。この王を、もっと王らしくしていくのは自分達の仕事だ。
 朝の部:「雷帝」、景勝様。――我ら臣下、委員長、大貴族ともに、《総長》の望みを支えていくものに御座います。
 「上越露西亜」は行く道を決めた。王が、見てしまったのだ。自分の望む国の形を。ならば、「暴君」の下、自分達が逆らう意味も無い。

 九尾娘:―――いい空気を吸っておるのう「上越露西亜」。景勝坊やは何年ぶりのご機嫌かえ?
 最上・義光が通神で笑う。
 九尾娘:北方の共同体の三国管理。初期支援もあり、なかなか良い条件だえ? しかし、残念よのう。「最上」は駒姫も、嫡子も何も無しぞ。現状では「最上」として残るものは何も無く。ただただ、「松平」に吸収ではないかえ? そのような提案に、私が乗れると言うのかえ?

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第434回 VOLKS

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「ファイブスター物語」の再開に合わせて、なにか新製品が出ていないかとVOLKSのサイトを見に行く。

 お、SPEED MIRAGEが出ているじゃないか。・・・2万5千円ですか・・・orz
SPEED MIRAGE

 お、L.E.D.MIRAGE V3 -INFERNO NAPALMだ。カッコいいなー。・・・2万3千100円ですか・・・orz
LED MIRAGE V3

 お、S.S.I.KUBALKANS the BANG が再販している。8400円か。これなら買えそうだな。
 全高:約361mmって、あのマストが高いからな~
 新名称はザ・ルッセンフリードだっけ?
the BANG

 新デザインのものは作らないで欲しいものだ。ちょっと、あの設定は引くからな~

 ということで、シュペルターをそろそろ引っ張り出そうかと思っている。
 いや、その前にバンシィのデカール貼りを終わらせねば・・・・orz

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第433回 新約 とある魔術の禁書目録 第7巻

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鎌地和馬「新約 とある魔術の禁書目録(インデックス)」⑦

新約 とある魔術の禁書目録(7)

 上条当麻とレベル5第五位、「心理掌握(メンタルアウト)」食蜂操祈(しょくほう みさき)の出会いは何をもたらすのか?
 なかなか便利な能力ですな。

 え~? 土真門舞夏、焼死? マジっすか!
 口先三寸で闇を操る雲川芹亜と、妹を殺された土御門元春の復讐劇は、新たな真実に行き着く。
 舞夏を殺したのは・・・、土御門の敵とは上条当麻なのか?

 黒いサンタクロース(クネヒトルーンプレヒト)とは何者か?
 フロイライン=クロイトゥーネ、あんたどこで寝てるんですか?

 ヒーローと呼ばれる突発的、偶発的に出現する不確定因子的存在。
 そして、対応するように出現する庇護対象の弱者。
 その庇護対象を人為的に作り出し、予測困難なヒーロー達を最小の犠牲で迅速に倒すための消滅計画とは?
 その要となる弱者とは?・・・フレメア=セイヴェルン!!!
 フレメアはヒーローだけでなく、ダークヒーローのレベル4「窒素爆槍(ボンバーランス)」黒夜海鳥、レベル0の浜面仕上まで引き寄せる。

 「人的資源(アジテートハレーション)」プロジェクトにより、フレメアに引き寄せられ、共食いしていく7500人のヒーローたち。
 
 7人のレベル5が同時に「統括理事会」へ敵対鼓動をとった場合の対応策。
 「多重能力(デュアルスキル)の壁」を破り、レベル5、第一位から第六位までの能力を装備し、個別撃破が可能なサイボーグ、恋査(れんさ)。
 彼女は上条当麻の「幻想殺し(イマジンブレイカー)」さえ、コピーできるのか。

 アイテムを引き連れ現れる第四位のレベル5、「原子崩し(メルトダウナー)」麦野沈利。
 恋査にもコピーできなかった原石。レベル5第七位の削板軍覇。
 遂に登場した? ”7人しかいないレベル5”の第六位(偽)の少年、藍花悦。
 上条を追ってくる第三位「超電磁砲(レールガン)」御坂美琴と第五位、食蜂操祈。
 竜巻を背に飛んでくる第一位、一方通行(アクセラレータ)。
 ヘリコプター並みの白いカブトムシから現れる白い少年。第二位「未現物質(ダークマター)」垣根帝督。

 総登場ですね~。
 クロイトゥーネちゃんはゲテモノ食いだったんですね~
 木原さんたちの次の計画は何なんでしょうね~

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第432回 境界線上のホライゾンⅣ(35)

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キーボードにコーヒーを飲ませたらSPACEキーとB,Nキーが反応しなくなる。
キーを外して清掃してもダメで、仕方なくキーボードを新調する。
ワイヤレスキーボード 1480円なり
ついでに本屋さんで、「境界線上のホライゾンⅥ(上)」と「新訳・とある魔術の禁書目録 7」を買ってくる。
まだ読んでません・・・
川上稔「境界線上のホライゾン Ⅳ(上)」


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川上稔「境界線上のホライゾン Ⅳ(下)」 Horizon on the Middle of Nowhere
Episode Ⅳ-Part 3 適当ダイジェスト⑦


「第七十二章 境界線への再起者達」
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 “意味は解るが、本気か?“ 義康は「伊達」家の判断に声を上げた。アデーレは意味が解らないので解説してくれと言う。義光は視線を逸らして遠くの祭りを見ている。説明は任せたという事か。
 “伊達・小次郎の死亡は二週間前だ。その時点で「武蔵」は敗戦直後だった。戦闘力で「羽柴」に勝てず、改修前なので戦力としての保証も出来ない。先程の臨時生徒総会で《副会長》が示した、戦闘関係の交渉材料が使えない、という事だ”

 それは、マズイで御座るな。点蔵は冷えた汗をかいた。これから「羽柴」と戦っていくのに、二週間前の「武蔵」の状況で判断されたなら、「戦闘に勝てると思えない」で全て否決される可能性がある。それを覆すために、莫大な権益を差し出したり、代替行為を要求されるかもしれない。
 〇ベ屋:ヤバイよコレ、だって、コレ、「伊達」だけの条件じゃなくなるもの・・・
 そうだ、今も「上越露西亜」勢が“失礼”と言葉を置いて、景勝の周囲で議論を始めた。
 九尾娘:うちも、そうさせて貰った方が面白そうよのう
 一国だけ有利な条件で話をすれば、他国との差となってしまう。早速で御座るな、と点蔵は冷や汗の量を増やした。「最上」が「伊達」に追随したら、「上越露西亜」も・・・。
 ふむ、と言って何処からか湯呑みを出したホライゾンが頷いた。
 “「伊達」が罠を仕込んできたと、そういう訳ですね。根回しの段階でこちらと協働すると見せかけ、本会議で有利な条件を出して来る。本来なら、こちらから会議自体を流すべきですが、「武蔵」にとって奥州と「上越露西亜」は是が非にでも欲しい一品、いや三品。足元見られて超逆御奉仕を迫られているものと判断できます”

 景綱君:記憶を失った政宗に全てを合わせる。―――同情や茶番だと思わないでくれるかな? これは駆け引きなんだ。「伊達」家は、最後には「松平」側につかなければならない。ただ、――いつからそうするか、が問題でね。先程の臨時生徒総会で君達のやる気や方針は理解できている。が、政宗個人の周囲状況は二週間前のままだ。そのつもりで話してくれ。
 鈴は片倉の声に、どことなく、後ろめたさに似た怒りに近いものを感じた。

 煙草女:「武蔵」の戦力を交渉材料にせず、どうやって「羽柴」と戦う未来を語るのさね
 〇ベ屋:やっぱり来たね。正純宛に「上越露西亜」から、「伊達」、「最上」と同じ条件を貰いたいと斉藤って人の署名付きで来たよ。
 「武蔵」の戦力が使えない。鈴は交渉に一つ変化が生まれると気付いた。
 ベ ル:正純、・・・戦争、出来ないね
 賢姉様:Yeah、鈴も遂に「武蔵」の意思決定の極意を悟ったわね!
 あさま:正純の戦争が封じられたのは確かな事ですね。残念だと思いますが、頑張りましょう、正純
 眼 鏡:うちはこんな国とよく交渉してたなあ・・・
 副会長:くそ! 味方どこだ味方―――!

 正純は内心吐息した。政宗の状況は知っていたが、この仕込みは将来の安定ための貪欲なる抵抗だ。黎明の時代からの領土戦争が、完全に決着する事になる。権力者に屈する事無く抵抗を続けた民が、最大の勝利を狙って勝負を掛けに来た。
 未熟者:「青竜」の問題がある「伊達」としては、無理にここで会議をしなくてもいい、か
 副会長:「伊達」は会議を反故にするなら、自分だけでなく、三国同時でなければならない。だから「武蔵」に下りさせるのが、最上等の手だろう
 こちらの足元を見てそれを隠さず、無茶苦茶を仕掛けてきた。会議を反故にすれば三国は「羽柴」に靡くだけだ。良くて「最上」がこっちについても、やがて改易になる国だ。
 この三国会議は、戦うための力と、協働を願うための会議になる筈だった。だが、向こうはこちらが力を持っている事を否定してきた。それを飲まない限り、会議を行わないと言っている。卑怯だとは政治家として言えない。向こうも自分達なりの損得があり、利益と安堵の行き場所があるのだろう。
 選択肢はある。あらゆる権益を三国に与え、如何なる奉仕もするつもりで協働を取り付けるのだ。そうやって、「武蔵」を犠牲にして極東を救い、「末世」を解決する方法は確かにある。
 “いや、違うな・・・”
 誰かを犠牲にし、救われるのは無しだ。そう決めたのだ。そう諭されたのだ。救い、笑え、と。だが、どうすればいい?

 俺 :なあ、ちょっといいか?みんないるか?
 馬鹿が声を掛けてきた。
 俺 :今、面倒な状況ってやつだな? これ、相当に面倒だろ。よく考えたら、「三河」からこっち、ずっと面倒だったろ、オメエら。「三河」で俺が始めて、オマエらを引っ張っちまったものを続けるために、面倒な事ばっかりだったろ。だが、それはオメエらの夢か?
 俺、何やってるんだろうな。俺の、「王様になる」てのはどういう事なんだろうな。義経は自分の好きにするだけって言ってたし、アンヌは全部を導いて守り継がせる事って態度を見せたし、松永なんて抗うだけ抗ったし、義頼は自分の様になるなって、笑えって言って逝っちまった。でも、ネトママンが、さ、言ってたんだ。――皆の夢を叶えたかったら、俺自身の夢を叶える王様になれ、って。
 皆の夢が叶ったらいいなと思ってる俺のせいで、オメエらが沈み込んだり、座り込んでちゃあ、本末転倒だ。だから、俺は浅間に頼んだんだ。オメエらが自分の夢を叶えられるようになるまで、それまで潰れないように、支持してやるって。オメエら、忘れるな。絶対、忘れるな。いいか?
 オメエらの不可能は、俺が全部持っていくんだ。オメエらはどんな時でも諦めるな。それが、俺の、今できる、王様ってやつだ
 ホラ子:なんでしょう。この死亡フラグの大安売りは
  俺 :ホライゾン。俺がオメエに夢を見させてやる。お前の奪われた全てを取り戻し、俺達と同じ夢を見させてやる。イメエが俺達と並んで、初めて、俺の国の始まりだ。そうしないと、俺の夢は始まらないんだ。なあ、セージュン、俺がオメエよりちょっと前に出る。オメエらは、すぐ俺についてきて、追い抜いて行け。そうしねえと、俺、すぐ死ぬしな。――いいか?
 全 員:Jud.
 じゃあ―――

 冷えた空気の中に生まれた声を点蔵は聞いた。
 “なあ、議論中すまねえけど、格好いい兄ちゃん。ちょっと聞いてくれるか?”
 呼び掛けに景勝は動かず、代わりに斉藤が前に一歩出る。だが、口を開く前に、表示枠から情報収集していた景勝が斉藤を手で制した。
 “ここは会議の場、相手の言葉を止める愚は無い。―さて、何を言うつもりであろう、「武蔵」《総長》・・・?“
 “Jud.オメエもまたいろいろと面倒囲ってるッぽいな? 国動かしていける王様ってのは、大変なもんだ。うちはセージュン達がケッコやってくれっけど、オメエの場合、かなり負担多そうだしな”
 点蔵は内心、頷いた。景勝が二重襲名している「雷帝」イヴァン四世は暴君であり、粛清を躊躇わず、私軍を持ち、気に入らぬ有力者を処刑する、「武蔵」とは逆に近い在り方だ。
 “一つ、言っておくわ、他の国行ってる連中も聞いとけ。俺には何も出来ねえ。だけど、俺の仲間達は何でも出来る。そいつらが極東の戦争を全部終わらせる。さっき、セージュンが確認したからな。
 だから、「武蔵」の戦力を交渉の当てにすることたねぇ。だって、勝つんだからよ。そうだろ? 俺達はもう負けねえ。そういう決まりなんだから、敵も何も気にするこたねぇ。たとえ、どんな事が先にあろうとも、「武蔵」は無くならねえし、抵抗するし、諦めねえ。“
 「武蔵」の《総長》は、「上越露西亜」の《総長》の顔を見て告げる。
 “今から俺達がするのは、――「再起」だ”

 ミトツダイラは王の言葉を聞いた。
 “いいか?―――そのつもりで、こっから先の話は頼むわ。そうでなくちゃ、俺が訳解んねえ。”
 きっと彼は、「三河」で正純に自分のやることが「有り」だと教えてもらい、勝ったけど、王としての自分がどうしていいのかは、解っていなかった。世界を敵に回した王を、皆が一人にしてはいけないと思った。あの時、王も、一人にさせて貰えないし、そうなる必要もないことは解った筈だ。そして、敗戦の時を過ぎ、鬱屈の皆を見て、先達から学んだ事を、自分に重ねた。
 王は、今、自覚した。確かに始まったのだ。彼が、自分の王道を行く歩みが、ここで開始の音を告げた。

 “いいか?オメエら、よく聞いとけ。―――行くぞ、世界征服。来いよ世界全体。俺達はもう負けねえ。そのつもりで相手してくれ。
 馬鹿は言った。この閉じた場所から、皆に言った。
 “夢を叶えに、――行こうぜ皆”

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 正純は口元が緩むのを自覚した。自分を包む状況が大きく変わったのだ。支持だ。支持を寄こす者が居る。ずっと、どのような状況でも、こちらを信じて支持する者がいる。私に支持を寄こす馬鹿は、世界を笑って、敵に回す事すら厭わない。自分は何を焦っていたのか。
 “どのような状況でも、道をつけてやるよ”
 知ってるか馬鹿。王道ってやつを、私がつけてやる。
 副会長:ちょっとそこどけ。―――私が前に出る
  俺 :おお、セージュン、やる気かよ。・・・笑ってっか?
 副会長:想像通りだと思っておけ。――では、会議を再開しようか。三国に「武蔵」《副会長》として告げさせて貰いたい。―――「伊達」家の評価の基準、了承した。今後の交渉において、「武蔵」の戦闘力は一切考慮しない。それを飲もう。

 「仙台城」の大ホール内。片倉・景綱は確かにその言葉を聞いた。「武蔵」が交渉に戦力的価値を含めないと言うのでは、単なる、非戦の輸送艦だ。独立した国と認める事は出来ない。だが、―――まさか。一つの可能性がある。「武蔵」の外交官は、政宗に「期待していいよ」というような笑みを向けている。

 副会長:「武蔵」は提言する。「伊達」、「最上」、「上越露西亜」、奥州諸家。それらが自由貿易を可能とする大規模商業都市を江戸に設け、全国規模での極東側における貿易中枢とする。 

 なるほどのう、義光は口元に扇子を当て、呟いた。面白い、三国に共通しているのは貿易力の低さだ。「武蔵」が陸路の敷設、三国の航空艦の中間駅となる陸港を各所に建設する。陸路、空路の輸送を確保し、三国の資源や生産物、江戸に届く他国の物流を大規模かつ常時輸送。「武蔵」の《副会長》の言うのは、黎明の時代にあったという、奥州と「上越露西亜」の商業と文化交流共同体の再起だ。
 これはあらゆる戦闘行為とは無縁で、三国の協働がなければ実現しない。「羽柴」に逆らう訳でも無く、「武蔵」に与した訳でもない。更に、「武蔵」《会計》の案では「IZUMO」、「堺」、「平戸」、可能なら「三河」にも拠点を広げると言う。北方大共同体に対し、極東全体の貿易を持ち掛けてきたのだ。 
 「武蔵」は陸路の開発に膨大な予算と人員と時間を投資するが、「江戸」を拠点とする「松平」には各国への貿易窓口が開き、初期投資など、あっというまに回収できるだろう。
政治家の図案だが、その基礎となったのは「平泉」の泰衡との会談だろう。黎明の時代にあったものを再起しようと言う。しかし、この絵図面は長く待たぬ。
 “何故か、解るか。「里見」の?” 義光は「里見」の《生徒会長》に問う。 
 “やがて、「最上」は改易、「上越露西亜」は減封となる。残る「伊達」のみが恩恵を受ける事になる”
 “そう、その共同体の話に乗る事は、「最上」と「上越露西亜」には出来ぬぞえ。そして、「上越露西亜」は、もっと解りやすい対抗の手を、今、取れる筈よのう?”

 “悪く思うな。これも国家間の交渉として考えるならば、当然の事である”
 身構えたミトツダイラの正面で、繁長が腰の一刀に手を掛けた。左右の廊下から魔神戦士団が三重の包囲を作る。ホールの天井付近でこちらを狙っているのは「上越露西亜」の術式工房「物知り魔女(ウームヌイヴェージマ)」特有の六角焦点具だ。
 “「武蔵」一行。貴様達の《副会長》の告げた構想は「上越露西亜」にとっては、将来の得になるものでは無い。美味そうな餌を、手の届かぬ空に掲げたに過ぎぬものである。――違うか?”
 景勝の横に立つ「上越露西亜」《第一特務》斉藤・朝信が告げる。
 “「武蔵」の《総長》兼《生徒会長》、「大罪武装(ロイズモイ・オブロ)」の姫。他、二国に対する発言力の確保として、上等でしょうな”

 “おやめになった方が、いいと思うのですが、――如何でしょう?”
 声を作る者がいた。メアリだ。
 “私は、現在、亡命先である「武蔵」で、「総長連合」のお手伝いをさせて頂いています、メアリ・スチュアートと申します。この時代、イヴァン四世は亡命先として「英国」を視野に入れ、両国間には貿易が成り立っていました。「英国」の視線が「上越露西亜」に掛かっているものだと、そう思って下さい”

 ならば、と斉藤は右手で魔神戦士団を下がらせ、こう言った。
 “下がりませ、「英国」の未来。そして手出しは無用。《王賜剣(エクスカリバー)》の加勢も無しとして頂きたい。――それが友好国、「上越露西亜」の気遣いです”
 次の瞬間、雛壇の最下段。その縁を蹴って加速した繁長が飛び込んで来た。

 繁長が魔神の速度で距離を詰めてくるのに、ミトツダイラは焦らなかった。
 繁長は一刀を真正面に垂直に、真下に向けて立てていた。それは刃を楯にした突撃だ。迂闊に突っ込めば、こちらも割られる。だがミトツダイラは迷わず正面から行った。


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第431回 月光学園

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平井和正 「月光学園」
月光学園

 買い置きの本の山をひっくり返していたら、底に方から懐かしい本が出てきた。
 後ろに「BOOKOFF 750円」のシールが貼ってあったので、なんかの折に買ってきて忘れていたものだろう。
 60年代から70年代初頭に書かれた短編学園SFアンソロジー全七篇。ぺらぺらと流し読みをする。

 悪徳学園
 気高い精神をもち、非行グループの凄まじい暴力にも決して屈しない少年、犬神明…。
 彼に興味を持つ女教師、斎木美夜。
 名作・ウルフガイシリーズの原型ですな。
 「女狼リツコ」も収録して欲しかった。

 魔女の標的
 新任の女教師、三輪真名児が平和な高校を恐怖に陥れる殺戮の嵐。
 これ、中学生の頃読んでてすっごく怖かった覚えがあります。

 ママの性教育(セクササイズ)
 この手の腐った教師をやり込める小説は大好きです。

 夢の二つの顔
 夢な中が現実なのか、この現実は夢でしかないのか。
 古典SF短編。

 赤ん暴君
 「ローズマリーの赤ちゃん」という映画が怖かったですが、それのSF版ですな。

 美女の青い影
 幽霊屋敷と呼ばれる古い西洋館に、たった一人で越してきた謎の女性。
 後藤由紀子というその美女と偶然知り合ったことから、ぼく、佐伯高は彼女をめぐる不思議な事件に巻き込まれていった…。
 思春期の少年が抱く憧れと恐れを鮮やかに描いた傑作中篇です。

 転生
 事故で死んだはずの少女たち。行方不明になった同級生。
 今でこそ珍しくないシチュエーションの小説ですが、海外SFにも似たようなものがあった気がする。


 平井和正さんの新作をしばらく読んでいないが、言霊様は降りて来られないのでしょうか・・・

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第430回 史記 武帝紀(一)

Posted by ヒッター7777 on   0 comments   0 trackback

 春、秋の季節の変わり目は、いつも体調が悪い。
 昨年は肺炎にかかり、死にそうな目にあったが、今年も月曜日くらいから鼻水と咳が止まらなくなり、病院に行くと初期の肺炎になりかかっているというので、点滴を受けに通院している。
 呼吸が苦しいので安静にしている間に、買い置きの本の山を崩しておこう。
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北方謙三 「史記 武帝紀 (一)」

 括目せよ、英傑たちの物語を。
 慟哭せよ、天道を求めし漢たち。
史記 武帝紀〈一〉


 ハードカバー全7巻を読もう読もうと思いつつ、買い置きの山に積んでいたら文庫版の1巻が出てしまい、慌てて読む。
 
 漢を興した高祖・劉邦より、恵帝、文帝、景帝らの世を経て七代目の皇帝・劉徹(武帝)の時代。
 紀元前141年。十六歳で即位した劉徹には、祖母、母、大叔母や外戚の圧力があり、まだ権力を握りきれていなかった。
 だが、祖母の太皇太后の逝去から徐々に力を得て、宮廷内の権力を増していく。
 彼の望みは漢を脅かす匈奴の殲滅であった。

 田中芳樹さんの「銀河英雄伝説」が、多くの中国の歴史小説の良いとこ取りをしていることは有名ですが、ははあ、成程なとニヤリとします。
 皇帝・劉徹に寵愛を受けた衛子夫の弟、衛青は姉の七光りで軍属になる。
 しかし、彼はその実力で頭角を現し、軍内に自分の精強な勢力を作っていく。ラインハルトの原型ですな。
 武帝・劉徹と常勝・衛青を足して2で割るとラインハルトになるのか?
 そして衛青は不敗の魔術師ヤン・ウェンリーでもある。衛青の甥、霍去病はユリアン・ミンツか!
 衛青を補佐する友人、公孫敖と桑弘羊はキルヒアイスの原型かな。
 老将・李広将軍はメルカッツというところか。張湯はオーベルシュタインっぽいな。

 前漢十四代の内、全盛を極めた武帝の時代。
 その勢力は北は外蒙古、南はベトナム、東は朝鮮、西は敦煌まで及んだ。
 まずは序章というところです。

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第429回 境界線上のホライゾンⅣ(34)

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川上稔「境界線上のホライゾン Ⅳ(下)」 Horizon on the Middle of Nowhere
Episode Ⅳ-Part 3 適当ダイジェスト⑥


「第六十九章 舞踏会場の準備者達」「第七十章 閉じ場の賢者」
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 正純は浅間と共に、臨時生徒総会が行われた橋の上にいた。あと一時間もすれば三国会議前のパーティが始まる。「英国」でもそうだったが、パーティの段階で会議自体は始まっている。各要人達は「根回し」という工作をするのだが、今回、外交官として出ている皆は、そっちの専門ではない。
 特に向井は良く働いているらしい。子供のように見える外見の為、親切な相手は気遣いを、ナメた相手はブラフを掛けてくる。暫定議員の父達の応答を返す向井に対するギャップは、相手にとって相当酷いらしく、向井の報告にどんどん権益が積み重なっていく。通神文(メール)の遣り取りをしながら、案件を見つつ先の事を考える。
 副会長:外交官、これからの三国会議について、疑問はあるか?
  義 :どのような話し合いになると思う?
 副会長:私達の目的はなんだ。思い出して見ろ
  俺 :戦争だっけ?
 ホラ子:ええ、世界征服とホライゾンの感情戻しに快進撃の大戦争です
 賢姉様:結局、さっきの臨時生徒総会も戦争エンドでしょ? 煽った! 煽ったわよね! 
 〇ベ屋:Jud. 出港だ! まで言ったしね
 ベ ル:だ、大丈夫、か、か、覚悟。出来て、る
 あずま:真面目に大戦争する時期になったという事だね
 金マル:今まで遊びで戦争してたみたいだけど、それでここまで来れたから凄いかな?
 傷有り:あの、皆さん、正純様の戦争嗜好は事件解決のためですので
 銀 狼:何言ってますの皆様! もう会議前ですのよ!?

 ミトツダイラが、一息入れるだけの声を作る。
 銀 狼:いいですの皆様。時間がありませんし、しっかりしましょう。で、正純? 真面目に話しますと、どうやって戦争に持ち込みますの?
 副会長:くっそー、貴様らの頭の中だと、私ってギャグ言って場を和ませた後に戦争に持ち込む政治家というイメージだろ絶対!!!
 ツキノワの首傾げを見ながら、正純は言葉を作る。
 副会長:外交だ! 今、思案しているものを提案できれば、三国はこちらの味方に付いてくれると思う。そして、今後、他の国にも影響を与えるものになる。「羽柴」を倒しに行くぞ
 ● 画:つまり、この外交は、戦争だって事ね?
 Jud. と言いそうになって正純は気付いた。ここで頷くと「最後は戦争」になる。危うく引っ掛かるところだった。他の言葉を探すが思いつかない。
 副会長:いや、う、うん、違うなあ。それは違うなあ、ああ、ははは、違うぞお
 約全員:―――無理するなよ!!

 すると下の通りの方から立花夫妻が来た。
 “立花・宗茂、立花・誾、臨時生徒総会に続き、今夜の護衛に参りました。そろそろ、宴も始まりかと”
 
 鈴は踊っていた。浅間から芸能神による初心者向きステップ補助術を送ってもらってある。ヘッドホンのように着けている《音鳴さん》がどのようにステップするか先回りして教えてくれる。ダンスの相手は政宗だった。昨夜、義姫と成実が、会議の始まる前の時間、近くにいる事になるだろうから、可能なだけ支えて欲しいと言ってきたのだ。
 最初の挨拶からダンスの誘いの時、政宗は「初めまして」と言った。三度目なのに、「青竜」が現れる度に記憶が食われているのだ。鈴は身を震わせた。自分と会ったことも、弟の小次郎が亡くなったことも、政宗の中に無くなっているのか、封じられているのか、鈴には解らない。

 ウルキアガは踊っていた。成実を相手にどう考えても「高速移動」という方法で回ったり、縫ったりしている。
 “馬鹿者! そっちではない! 貴様、何故に拙僧の脚に触れたいのだ?”
 “何言ってるの? 貴方がこちらの進路に踏み込んで来るだけでしょう・”
 成実は完全に戦闘中だった。動く事になるだろうと、余裕のある赤いドレスを選んできて正解だった。今、行っているのは、手の取り合いと、足の置き位置の奪い合いだった。こちらが用いるのは足裁きと、義腕の再射出も利用した両腕の打撃。内から外に弾く。向こうは前腕の縁と、肘による打撃だ。外から内に叩き込む。動きはこちらが有利、速度は向こうが有利という状況だ。
 一応は舞踏会なのだが、緩く身を回し、打撃を打ち、払い合い、手首に上から手が掛かれば、スナップを返して掴みに行き、肘まで取られかかって、空いた逆の手で相手の動きを牽制する。半竜は異端審問官志望だ。手を取り、捕まえようとする技に長けている。武に長けた《副長》と、縛に長けた《第二特務》。
 ふと、成実は、二人ならば「青竜」を止められるのでは、と思った。《不転百足》を纏った自分と同サイズ、同レベルの機動力、戦術眼も確かにあり、自分の役目を理解の上で動きもする。理想的なパートナーだ。
 傭兵として雇うことも考えたが、《特務》クラスになれば個人契約とはいかないだろう。国家間の承認が必要だ。ならば、後は彼が、―――「伊達」に編入される。その場合、「伊達」の何が、彼には魅力だろうか。姉好きと言うが、政宗はいけない。絶対にいけない。政宗にはこれからの「伊達」を率いて貰わねばならず、自分は「伊達」を出て行く必要がある。え? ・・・・・・・自分は、どうだろうか。

 鈴はホールの中央の戦闘が、不意に変わったのを知覚する。高速戦闘の中に成実の迷いの動きが生まれ、前後、左右の力任せの動きが緩んでいる。

 迎撃と攻撃の中で、成実は考えていた。この半竜はどうしようもないが、対「青竜」戦のパートナーとして相性がいい。自分が犠牲になって伊達家を救うというのは有りだろうか。姉好きな性格などは諦めるしかない。こちらが姉ではないと知ると、立ち去ろうとしたし、胸まで揉まれたし、昨夜など下着まで渡され・・・、あら? 彼は、「伊達」に実害のある事をしていない。ずっと協力者だった。
 今のところ、彼はずっとこちらを理解しようとし、「武蔵」側からの要求も言ってこない。彼の協力は個人的なもので、誰かに言われてやっている事ではないのだ。どうして自分は、彼と敵対的な関係に舞っているのだろう。今、頭を下げて助力を願えば、彼は助けてくれるだろうか。
 “貰った!”
 いきなりの声に成美は身を震わせた。半竜がその前腕でこちらの身を抱え込みに来たのだ。

 鈴の知覚は、成実の迷っていた身と心が、ウルキアガの腕に掴まれ、強引に浮かされ、抱き留められた、と感じた。そして、浮いた身が下ろされる。真っ直ぐ立たせるように置くと、ウルキアガは片膝を着いて、一礼した。
 “拙僧、踊りの清澄なテンポに着いていけず、乱してしまった。申し訳ない”

 成実は、跳ね上がった鼓動を押さえるのに精一杯だった。踊りを乱していたのは自分の方だったはずだ。迷い故、と言うところだが、彼は、自分から勝負を壊してくれた。
 小さな声で、“どうして?”と尋ねる自分を、ずるいと思う。
 “姉キャラ攻略のため,――と言いたいところだがな。―――今回は自分の好きなのを着てきたようだな。昨日のものより似あっているぞ、拙僧は良いと思う。伊達・成実”


 「春日山宮殿(カスガガーラクレムリン)」の赤絨毯の通路。足跡もつけずに歩く点蔵は、女装に「上越露西亜」生徒会のサイトを表示枠(サインフレーム)に出して見せる。皆が見ると雷光の逆光の中、長身の魔神のシルエットが映っている。その足元にはウサギ達がいる。
 “トーリ殿、恐らく「雷帝」のイメージ軟化のためか、景勝殿の下、植物園や動物たちの世話なども行われているようで御座るな”
 “これ、逆に恐怖政治が際立っただけじゃありませんの?”
 “顔とかよく見えないのが、一層、煽るで御座るな・・・”
 皆から数歩離れて歩いていた本庄・繁長が声を掛ける。
 ”粗相はするな。「上越露西亜」の《総長》兼《生徒会長》、上杉・「雷帝」・景勝様は魔神族の中でも上位である。貴様らの知るところでは、《人狼女王(レーネ・デ・ガルウ)》に匹敵する。術式能力においては、遥かに超えている筈である。単純な力ではあちらが上だがな“
 繁長はミチツダイラに向かって言う。
 “お互い、異族だが、人類の恐怖心を糧に存在を強化、確立した人狼と、神族から派生して今の形質となった魔神族では、得手も違うものであるな”
 赤の装飾が為された大扉の前に着いた一行は、重装のの警備員が開いた大広間へと入っていった。

 点蔵は、薄暗い大広間の中に異質なものを感知した。これは正純殿が言っていた「花園(アヴァロン)」であろうか? その向こう側から熱も、空気の揺れも来ない。メアリの手を取って前に進む。暖簾をくぐるのに似た感触があった直後、視界が明るくなった。広い石造りのホールだ。
 音が来た。パイプオルガンの重圧とも言える響きが、全方位から浴びせられる。威圧的な雑音ではない。その証拠に、メアリの周囲に小さい流体光の精霊が、音楽に釣られて活性化し始めた。ミトツダイラも精霊に近い存在。周囲に流体光が従うように、緩くたゆたうている。
 トーリの《流体供給術式》自体も活性化し、空中にいくつものラインを浮かび上がらせた。ホライゾンがそのラインを掴もうとするが、捉えられない。ラインの行先を決められるのは、この「武蔵」の《副王》だけなのだ。

 ミトツダイラは一歩前に出た。皆の先頭に立つのは騎士の役目だ。左右の壁には「上越露西亜」の各委員会の代表や自動人形達。正面の赤い絨毯の壇上には、金色の椅子に座った百八十cmほどの細身の体躯、左右の角、青白い肌、白い髪に黄色い瞳。この極寒の地を治める魔神の《総長》、上杉・景勝だ。
 ミトツダイラは恐れない。浴びる音の中、声を上げる。
 “武蔵アリアダスト教導院、《総長》兼《生徒会長》の騎士、《第五特務》が先に挨拶いたします”
 一礼に対し、返事は無音だった。パイプオルガンが止まったのだ。そして、景勝はミトツダイラの横前に立っている繁長に視線を向け、頷く。低い、大気がそのまま音を立てているような声が響いた。
 “Tes.よかろう”
景勝の周囲に露西亜聖教式のイコン型表示枠(サンクト・アクノー)が一気に湧いて出る。表示枠の光を下から浴びつつ、鉄の錫杖を右手に取り、肩を軽く叩く。
 “楽にせよ、「武蔵」の代表よ。――「上越露西亜」《総長》上杉・景勝が直々に会議を為そう”

 「最上」領の「大碗」付近。一段高く盛られた雪の壇の上。義康達は断熱素材の絨毯に座りながら、「ノヴゴロド」跡地を半ば囲むように踊り、食い、音楽を奏でる祭りを見ていた。踊りは、数カ所に設けられた櫓を中心に円を描いているが、回っているのではなく中止へ向かい、また戻るというパターンだ。
 義光は鉱掘の踊りだと説明する。
 “解らぬかえ? この跡地を有する「最上」と「伊達」が、どうして他の諸家より大戦力を持っているのか。ここで掘れるのは、単なる鉱石ではない。賢鉱石(オレイ・メタロ)ぞえ”
 アデーレはふと、疑問した。「ノヴゴロド」が浮上したのは黎明の時代の筈だ。戦争跡地なら、賢鉱石が掘れるのは解るが。
 “縦穴掘って掘削してくるなんて、この穴よりももっと深いところ流体関係の何かが行われていたんですか?”
 “まあ、もう少し待つといいぞえ? さすれば、謎も見えるであろうよ。この地域の秘祭と言っていいものを、後で見せてやろうぞえ”


 「上越露西亜」の会議場、「王の間」。冷えた空気の中、本庄・繁長は冷や汗を感じていた。
 大丈夫だろうか・・・?
 景勝と「武蔵」勢の中間に立ちながら、自分にしか見えないように表示枠(サンクト・アグノー)を展開する。 「武蔵」勢に見えないよう、身体に隠して左手で、ふ・れ、と景勝にサインを送る。景勝はそれを見て、“――何かあるか? 繁長よ”
 “Tes.《総長》、まずこの者達からの提案を聞いた方が早いかと”
 “ふむ、そうであるな・・・。ささて、一体、どのような要望だ・・・?”
噛むな! と繁長は思ったが、仕方ない。周囲の重鎮や委員長達も、僅かに身をすくませているが、「武蔵」側は反応がない。上手くいっている。「雷帝」である上杉・景勝が彼らの目に映っているだろう。

 なにしろ、《総長》上杉・景勝は、―――魔神族にして稀な、虫も殺せぬほどの、いい人であるからな。

 上杉・景勝は、暴れるような鼓動を押さえるのに必死だった。
ど、どうしようであるか!? どうしようであるのか!?
 元々、自分は「上越露西亜」の《総長》になる気は無かった。たまたま、他家の次期《総長》達と親交があり、もともと、奥州とは談合で歴史再現を済ませる仲だったので、推挙されて受けてしまった。全ては上手くいってた。謙信と、それに続く景勝の二重襲名をし、安泰の魔神生を送るつもりだった。民衆を労わりながら、他国とは談合による安定を保つ。趣味の学問や料理、庭造りを嗜み、幸せな恋愛結婚をして、子供は三人くらい・・・。しかし、時代は変わった。気が付けば、自分が今の位置を下りる訳にはいかなくなっていた。
 み、皆がフォローしてくれている。わ、我も頑張るのであるよ・・・!!
 景勝は、「武蔵」勢が怖がってくれるといいなと思いながら、低い声を出す。
 “さあ、要望を言ってみるがいい”

 誰が答えるか、「武蔵」側が通神帯(チャット)で揉めている間に、ミチツダイラは血の匂いを感じた。魔神族特有の重金属臭がする血ではない。人間の持つ血の匂いがホール外の廊下から漂ってきた。
 “景勝くぅん!”
 廊下から飛び込んで来た長身の男。「上越露西亜」の制服をTシャツ半ズボン、ソックス、運動靴に改造し、胸とヘルメットに「愛」の紋章。そして血ダルマだった。
 “やぁぁ、「武蔵」の皆! 初めまして!、ぼぉくは「上越露西亜」《副長》兼《副会長》、直江・兼次!
元気いっぱい、愛染の人っていうんですよ!“
 爽やかな血ダルマが屈託のない笑顔で話すのは、新発田を襲名した「ノヴゴロド」を追っかけて、戦場で上四方固めをしている内に、何人かに囲まれたらしい。
 でさぁ、と愛の血ダルマは言った。
 “景勝くぅん!? つい、負けて帰ってきちゃったけど、やっぱり咎める?”
 魔神の王が立ち上がり、鉄の錫杖を振る。
 “きぃ、――さまぁぁぁぁぁ! そんな傷を負って帰ってきおって・・・、ただでは済まさぬぞ!”

 兼次君・・・! 彼は人間でありながら、魔神に匹敵する実力を持つ稀有な存在だ。人柄も良く、弱気な自分の理解者でもあり、補佐役である。だから、彼の負傷は見逃せない。治療術は得意だ。
 “兼次、貴様ぁ!”
 使うのは雷撃を使った治療術式である。「上越露西亜」において、古来、あらゆる疾病と痛みは悪霊のせいだと考えられていた。
 “おおおお・・・!”
 雷を纏わせた鉄の錫杖の治療が、兼次の顔面を真横から捉える。良い手応えだ。確実に芯まで入った。兼次が雷撃を浴びながら石床バウンドをする。雷撃はいい。痺れて感覚がなくなるから、痛みも無くなる。電流で筋肉もほぐれるし、いい事ずくめだ。だが、これはまだ応急処置だ。
 “お前のような――”(悪霊よ出ていけ! と思いを兼次の身にぶつける)
 “糞虫めが―――!”(もっと汚い言葉で罵らなければ、この悪霊は追い出せない)
 “これでもかぁ!! これくらいでもまだ死なぬかあ!!”( 治れ―――!)
 “お前のようなのがいるから駄目なのだ!”(痛いの痛いの飛んでけであるぞ――)

 ホールを幾度も白く光らせ、轟音の稲妻の打撃に意識を失った兼次が幾度もバウンドする。帯電したホールに最後の雷撃が弾け、宙に消えた。動かなくなった兼次に、一度錫杖を当て、息を整える
 “これくらいで許してやろう。《保健委員長》、早く運び出すがよい。フフ・・、手篤くな? ――いいか、負けてなお、生きて帰ってきた事が幸せだったと、手篤く看病してやるがよい”

 未熟者:くそ! 壁画になんかなってないで、そっち行けば良かった! 格好いいなあ! 景勝様! 理想の魔神王だよね!!
 眼 鏡:当事国の家臣団の身になってみたら? 

 景勝は玉座に戻り、繁長に視線を向ける。
 “どうだ、繁長・・・、今のは? 負けて帰ってきた者には、十分な施しであったか”
 
 繁 子:聞くな---! ビックリしたぁ! なんで《総長》はそうなのでありますか!? とっとと会議終わらせてボロでない内にシメるでありますよ!
 朝の部:あのう、繁長君? 不敬は良くないですぞ。兼次には学食特級券とウォッカ大吟醸を出しておきましょう。風呂は何時から入れるでしょうか?

 繁長に注意したのは、兼次の後から入って来た初老の男だ。《第一特務》、斉藤・朝信(さいとう とものぶ)は景勝に尋ねた。

 カゲV:今夜から大丈夫であるぞ。怪我や痛みも全部とれてる筈である。今言うのもなんだが、植物園や動物園の拡大化はどうにか出来ぬか? もうすぐ戦争状態になるのであろう? 領内の子供たちも不安であろうから、「楽しい場所」を作っておいてやりたいのだ。
 朝の部:いい指示かと

 すぐさま、今の指示が「上越露西亜」のサイトにアップされる。「雷帝」イヴァン四世の「強権」が叶えられているのだ。皆の頑張りに応えようと、改めて景勝は「武蔵勢に問い掛けた。
 “改めて聞こう。何が要望だ? ―――「武蔵」の民よ”

「第七十一章 問題点の配点者達」
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 ―――要望か。正純は三枚の表示枠(サインフレーム)を前面に置き、まず「上越露西亜(スヴィエートルーシ)」から始めようと考える。
 副会長:「伊達」、「最上」、「上越露西亜」、他諸家代表。私が武蔵アリアダスト教導院《副会長》、本多・正純だ。現在、「武蔵」は歴史再現のため、各国の協力を得つつ、「羽柴」との交戦状態にある。この事を前提とし、貴方達の協力を得たい。

 お待ちを、と言ったのは、先程入って来た斉藤・朝信だった。朝信は背に長方形の板を背負った姿で、髭を撫でる。
 “協力を得たい、と言うのは解ります。そちらの方針も、先程の臨時生徒総会を見ていましたゆえ、理解できますぞ。しかし、こちらにはまた別の方針があります”
 斉藤は景勝に呼びかけた。
 “《総長》、この者達に「上越露西亜」の方針を”

 カゲV:え? ほ、方針って、な、何であるかその無茶振り? 我はそんなの聞いてないであるぞ!
 繁 子:何やってるんでありますか斉藤さん! 後から入ってきて打合せに無いことするの止めてくださいであります! どうするのですか!!
 朝の部:ええ? うっわ御免んなさーいですぞ。マジ御免。《広報委員長》、情報纏めてソッコで《総長》にお願いします!

 “ククク、「武蔵」の者達よ・・・。現在、「上越露西亜」は「P.A.Oda」の柴田勢と南西部で抗争中である。東部ではそこの繁長が、「最上」勢の攻撃を凌いでいるという状況だ。これが何を目的としているか、解るか?”

 正純は頷いた。「上越露西亜」は「羽柴」の行う極東の国境画定作業「太閤検地」と、「奥州惣無事令」を考慮しているのだ。現時点では「武蔵」側につくのは、羽柴」の時代で、領土縮小の制約を受ける可能性がある。今、「羽柴」側に逆らう訳にはいかない。
 副会長:「上越露西亜」と衝突中の「最上」家。そちらにはそちらで言い分があるな?

 そうよのう、と最上・義光は二つの月の下、祭囃子を聞きながら応える。
 “「伊達」も「最上」も、「羽柴」時代の領土確定は別に気にしていないぞえ? 何故ならば、「羽柴」の「北条」攻略に手を貸すが故、領土は安堵されているからのう”
 ただ、と椀を掲げた義光に、鮭延が徳利の酒を注ぐ。
 “「伊達」も「最上」も、その後、「羽柴」勢を裏切る。駒姫の一件、でな。「上越露西亜」にとって、最後の大規模戦闘は、「関ヶ原の戦い」とセットになった「出羽合戦」。「松平」の指示によって、我ら「最上」と「伊達」が、「上越露西亜」の「関ヶ原」助勢を止めるためのものぞえ?”
 それに、と義光は里見・義康を見て言う。
 “奥州の戦域は変わり、「里見」とて「関ヶ原」の折りに関東を空ける「松平」の代わりに関東守護を預かる”
 “義光、貴様、何処までを見ている!” しかし、義康は視線を逸らされた。

 正純は思う。一代で大領土を得た「最上」は、義光の政治的手腕や判断力が高かった事によるが、後継者問題はどうしようもない。「松平」の世になり、「武家諸法度」が行われれば親「松平」の国でもルールに基づかなければならない。「最上」改易後は「水戸」の目付けのような家臣も輩出するのだが。
 だが、現在は駒姫の死により、「最上」は身軽になった。「羽柴」に服従する意味がなく無くなったのだから。思うがままに行動できる。そして、駒姫も解っていて義光を自由にしたのだ。
 最上・義光は告げる。「羽州の狐」として、相応しい態度を見せよう、と。

 「仙台城」の大ホール。雛段の上の椅子に座った伊達・政宗は、腿の上に護身用の短刀を置き、両手で握りながら声を発する。
 “我が、「伊達」家としては、―――当然、「松平」との友好を結べれば、と思っている”
 鈴は、それは「松平」側につくって、そういう事? と思う。しかし
 未熟者:その言い方だと、友好をいつから結びたいかには触れてないね。それに、「結べれば」という事は、友好を結ぶには条件が必要だという事だ。
 鈴にも十分理解できる。政宗の言った内容に対し、周囲の反応が無いのだ。
 “「伊達」家も、お解りの通り、これから忙しい。弟の小次郎の廃嫡手続きとか行わねばならんからな。一段落したら、前向きな検討は可能だろう”
 “やっぱり、―――記憶を食われているのか”、 鈴を護るように背後に立つウルキアガが小さく呟く。
 副会長:想定内だ。先程までの折衝で、政宗公の発言における現実的ではない部分は、考慮しなくていいと話し合いが出来ている。
 「伊達」側も政宗を外した状態で二重会議をするつもりだ。鈴の顔横に表示枠が現れた。
 《伊達家通神帯:《副会長》、片倉様より通信です》
 受諾を小さく告げて、回線を繋ぐ。
 景綱君:――繋がったようだね。ここからは本当の会議と行こうか、いいかい?
 副会長:Jud.「伊達」家の判断を頼む。
 景綱君:では、「伊達」家の見解を述べようか。「伊達」家は長である政宗の意志に準じる。全ての判断の基準は政宗が機能した通り、小次郎存命時を基礎とし、現在の環境を基準としない。――つまり、二週間前を前提とする。以上だ。
 鈴は片倉の言った意味が、一瞬、解らなかった。三国や「武蔵」の状況を二週間前のものと想定する。
 それは、「拒絶」の決定だった。

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第428回 カンブリア爆発の謎

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宇佐美義之 「カンブリア爆発の謎」
カンブリア爆発の謎 ~チェンジャンモンスターが残した進化の足跡

 スティーヴン・グールドの「ワンダフル・ライフ」は面白かった。
 古生物好きのヒッターにとって、カンブリア紀のバージェス・モンスター群の奇怪な形態は心奪われるものでした。
 アノマロカリス、ハルキゲニア、オパビニアなど、現在の地球上の生物とは違う進化系列にあった生き物たち。
 最古の脊椎動物と認められたミロクンミンギアなど、様々な形態に多様化していったカンブリア紀。
 本書は中国のチェンジャン地方から出土した、チェンジャン・モンスター群を交えて解説していきます。
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 イラストも多く読みやすい本でした。

 先日、日本で発見された化石のフタバスズキリュウという首長竜は、恐竜ではなく大型海棲爬虫類だと言われ驚きましたが、進化の拡散収束の事例を見ていくと面白いものがありますね。
 そういえばパンダは哺乳類で、コアラは有袋類だなあ。
 ティラノザウルスはトカゲっぽいのより、長谷川裕一さんの極彩色の羽毛が生えた奴が好きだな。
ティラノザウルス

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第427回 西原理恵子の人生画力対決 ⑤

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「西原理恵子の人生画力対決 ⑤」

西原理恵子の人生画力対決 5

 ヒッターは「まあじゃんほうろうき」以来のさいばらファンである。
 買い損ねていた5巻を見つけたので買ってくる。

 第65回 VS高井研一郎先生 生前葬編
 酔っ払い高年齢層漫画家の集まり。
 さいとう・たかおの描く女性のブラジャーは何故あんなに太いのか? の謎が、本人から明かされる!!  

 第66回 VSさいとう・たかお先生 カチコミ編
 さいばらが事務所にカチコミ(殴り込み)を掛ける。
 「鬼平犯科帳」のナマ原稿にいたずら書きを!
 さいとう・たかおの語る「ゴルゴ13」秘話。ゴルゴ13は連載最初の10週くらいで死ぬ予定だった!!
 さいとう・たかおは「ゴルゴ13」の眉から描き始める!!!

 第68、68回 VS山口晃先生
 対決の場は熊本市現代美術館
 なぜ、宇宙戦艦ヤマトを何も見ずに、あんなに上手く掛けるんですか! 山口先生!!

 第69~72回 VS島本和彦先生&藤田和日郎先生
 決戦の場は札幌
 なぜこの二人は宇宙戦艦ヤマトをあんなに上手く描けるんだ!
 この世代の漫画家はヤマトをヤマトとガンダムを描けないとダメなのか?

 第73回 VSヤマザキマリ先生
 おなじく札幌でバトルロイヤル。
 放浪の漫画家ヤマザキマリは北海道でDJをやっていた。
 番組が突如、打ち切りになり、後釜に入ったのが島本和彦で、この二人が2010年のマンガ大賞を争い、「テルマエ・ロマエ」で雪辱を晴らしたという因縁がある。 

 第74回 白馬の王子様編
 サイバラ、生放送で放送禁止用語。TV降板事件の裏が解る。
 世の中、金の力だ。

 第75、76回 VS安彦良和先生
 サイバラの描いたシャアが今回の表紙である。
 対決中に焼酎おかわりする安彦先生。会場から、かわいいーの声が上がる。
 さらに安彦先生の描く、「怒ってるザク」、「怒ってるガンダム」公開!

 第77~79回 VS安彦良和&福本伸行&板垣恵介&吉田戦車&伊藤理佐&ヤマザキマリ&藤田和日郎
 会場にさらに漫画家集結! バトルロイヤル画力対決。
 安彦良和と大友克洋の影響を受けたという、吉田戦車さんが上手い!(それであの絵なのか?)
 ヤマザキマリ、ローマ神殿の前に立つオバQを描く。
 原稿を回さないと絵が描けない板垣恵介は、画面を回せないので自分が回っていた。

 第80回 ホリエモン面会編
 長野刑務所にホリエモンに面会に行く。
 刑務所ダイエットで96kg→68kgに減量。(この手があったか)
 捕まらないコツを会得したそうで、次は捕まらないそうだ・・・

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第426回 境界線上のホライゾンⅣ(33)

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川上稔「境界線上のホライゾン Ⅳ(下)」 Horizon on the Middle of Nowhere
Episode Ⅳ-Part 3 適当ダイジェスト⑤


承前

 二代は見た。「有明」の外縁で、こちらに弓を向けている浅間がいる。矢は威力のない訓練用の一発だったが、その意味は解る。
 “解る? マクデブルクで食らった「大罪武装(ロイズモイ・オブロ)」《飽食の一撃(フィオゴス・ガストリマルジア)》の再現よ。良かったわね。もう二度とあんなことは起きないわ。アンタが自分で証明したのよ。浅間クラスの射撃手が不意打ちしたって、もうアンタには通じない。さあ、――最後の試練よ。”
 引き寄せられ、浅く抱かれて
 “諦めをアンタに返すわ”
 言われた瞬間、二代は全ての速度が失われたのを悟った。《翔翼》が消える。暴発ではなく、速度を落としたために出力の支えを失い、無効化されたのだ。 
 “―――諦めないで”
 言葉と共に二代は宙に押し切られた。喜美が立つ足場から、何もない宙へ、落下の放物線で、底のない空へ、身を突き飛ばされたのだ。

 浅間は、射撃用の弓、《片椿》を収めて、二代がゆっくりと落下していくのを見ていた。喜美が腰を曲げ、額に手を翳して二代の落ちを見ている。―――ああ、突き落としたんですね。
 “え!? ちょ、ちょっと! 落ちましたよ!!”
 喜美は二代の落ちた先を見て、右手を強く握った。その瞬間、撃音が響いた。

「第六十八章 階層内の展望者」
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 二代は穏やかな目覚めを感じた。だが、この目覚めは眠りからの目覚めではなく、疲労からの覚醒に近い。苛酷な訓練を行い、気を失い、しかし身体が生き残るために覚めるという、そんな覚め方だ。痛い、体中の筋肉が枯れ枝のように軋みを上げる。だが、意識を失うような訓練は、確実に成果を掴んでいる。身体に染み込ませ、疲労によって倒れる事で完成とするのだから。

 “起きたのね? フフ、可愛い花が咲いたというべきかしら。でも、それよりも何よりも、感心したわ。本多・二代。アンタ、こっちに上がって来れる人間だったのね”
 喜美の言葉に、浅間の膝の上に頭を乗せた二代は息を深く吸った。二代の目から耳の方に、仰向けの涙が落ちた。右手で顔を隠した二代の乾いた声で告げられたのは、“かたじけない”であろうか。浅間は後ろを振り向くと、ヨシキの姿はいつの間にか消えていた。今、教えるべきことは無くなった、ただ、それだけなのだろう。
 浅間の顔横に表示枠(サインフレーム)が開く。
 ホラ子:浅間様、二代様が奈落の底に落ちたと聞きましたが
 あさま:あー、大丈夫ですよ。上がってきましたから

 起き上がり、喜美に背を支えられた二代が、ずっと前を見ている。「有明」の西縁からここまで百mはある。二代が落ちた足場からだと二百m弱であろうか。その距離を測るように見ている二代に、喜美が言った。
 “覚えてないの? ひょっとして。フフ、こりゃ、もう一回突き落としたほうがいいかしら”
 喜美が二代の肩に身を寄せた。先程まで自分達がいた足場からここまでを、指した指先でなぞるように
 “アンタが、自分でここまで来たのよ、―――上がってくるために、ね”

 里見・義康は燻っていた。臨時生徒総会も終わり、《副長》と《総長》・姉の訓練も終了したとの事だ。先輩格というべき連中が、何らかの結果を出して行く。それに対し、自分は。
 “貴様もまた、面倒なヤツよのう。 前を歩いていた最上・義光が振り向き、扇子の上に乗せた表示枠を見せる。映るのは武蔵アリアダスト教導院の右舷側食堂だ。
 そこに、霧? 否、「隠れ里」のステルスか? 白いたゆたいが食堂周辺にて風を表現している。画面に表示されるテロップは、 「《副会長》、食事か怪奇現象か。謎の霧!」と出ている。来ているのだ。奥州「平泉」代表、藤原・泰衡が。この会議を持って、彼らは《副会長》を中心に動き出すだろう。
 “いや”と、義康は思う。《副会長》が中心ではないのだ。《副会長》が掲げたもの、《副会長》を支えているものは、全て、あの馬鹿が示したものだ。義頼が笑えと言った、あの馬鹿が示したものなのだ。
 《副会長》の動きが先端にあり、一番後ろから皆を支えているのは、あの馬鹿なのだろう。「有明」到着以降、あの馬鹿は普段と変わらず笑っていた。それはある一つの意味を持つ。―――諦めなかったし、焦らなかったのだ。
 “義光、何故、私の燻りは、今、ここで強くなったのだろう”
 狐が笑みを作る。
 “「武蔵」から離れたからであろう”
 “なあ、義光、抵抗の意志は誰にでもあり、消えないものだと、そう思うか?”
 “奥州に住むものならば当然のように頷くだけぞえ”

 解ったと、今、思える事がある。死んだ義頼にとって「武蔵」とは、諦めぬ、焦らぬ場所だったのだろう。だが、小国の「里見」と違い平和な場所だった。それをあの馬鹿が抵抗を叫び、失われる運命を否定した。義頼は「羽柴」との激戦を予想していたのかは解らないが、馬鹿に笑えと言って、馬鹿はその通りにしている。くそう!、卑怯じゃないか。男同士だから? 国を預かる者同士だから? 自分が泣いて燻っている事しか出来なかった間、義頼と馬鹿はお互いの最適を確かに送り、受け取った。
 自分は何も解っていない。腰の《村雨丸》の柄は動かない。自分には抜けない。姉もいない。義頼もいない。国も無くなった。私が馬鹿の国の住人になって、馬鹿の笑いを止めぬために出来る役目とは何だ。
 前を歩いていた義光がその思考を遮る。
 “今夜の会議の会場はここぞえ。「伊達」、「最上」の暫定国境にかかる「大椀」。直径十km、地か四km、大賢石(オレイメタロ)の大産地であり、―――もともと、ここに「ノヴゴロド」の本体があったと言われている。重奏神州が出来る以前、奥州で何があったか知らぬ訳でもなかろう?”
 義康は頷く。奥州の古き者達。純系長寿族の連中は、地上側に里を持ちつつ、航空艦を都市のように使っている。それが元々、ここから「浮上」した本体の風習だったのか。

 武蔵アリアダスト教導院の校舎横、大食堂の中。正純は泰衡と向き合っていた。窓や出入り口に指向性の防護術式を掛けてある。
 葵姉が、髪に巻いた術符を三角巾として巻き直し、厨房に入る。食堂の調理士とも面識があるのか、調理師免許の表示枠を掲げるだけで文句を言われない。
 “食堂で食事だなどと、何て豪勢な・・・。野菜関係で大皿料理が出たら神だな”
 正純はそう思いつつ、表示枠(サインフレーム)で接続確認を行う。三国に派遣した外交官達との情報共有会議だ。「最上」との相互映像通神で、義頼達から送られてくる「大碗」の映像を拡大する。最上・義光から検閲許可は得たらしい。
 泰衡はそれを見て、記録によれば、かつて奥州陣営の基地があった場所だと言う。黎明の混沌期、世界の姿勢を纏める前の時代の事だ。奥州戦勝後、制圧されたが、「非衰退調律進行」後、基地の返還と共に制圧軍の臨時の航空母艦戦力用浮上設備を利用したらしい。
 その「ノヴゴロド」が何故、「上越露西亜(スヴィエートルーシ)」の西に向かったのか。「里見」の《生徒会長》は表示枠越しに言う。
 “源平時代への準備のためだな”  
 長寿族=源氏の宿敵、平家は聖譜歴825年から台頭し始める。その時、長寿族の祖先達は何をしたのか、解るか、と藤原・泰衡は正純達に問うた。

 しまった、と正純は泰衡の笑みを見て思った。試された。昨夜の会議の後、この部分の調査を怠った。その時、不意に。食堂の正面玄関から声が掛かった。
 “奥州の長寿族が八~九世紀に重奏世界のシベリアで、どうしたか? って、そんなの決まってるじゃないか”
 歩いてくるのは、夏服姿の少年だ。彼は眼鏡をかけ直し
 “「ノヴゴロド」の前身が出来るのが854年前後。蛮族に占領され、都市化するのが862年。そして、極東側の平氏の発生が825年。つまり、東方シベリア近辺の開拓は軌道に乗ったが、西方側が上手くいっていなかったんだ。だから長寿族達は、浮上都市を「上越露西亜」に委譲し、自分達は航空艦隊を率いて奥州に戻った。西方では浮上都市を「ノヴゴロド」として改造し、開拓を支えていく事になる”
 正純の横に立ち、ポージングを取った少年が名乗りを上げる。
 “武蔵アリアダスト教導院、《書記》、トゥーサン・ネシンバラだ。藤原・泰衡公、サイン下さい。色紙あります”

 眼 鏡:あ、ボクの分も頼むよ。術式解除した分はちゃんと払って貰う
 未熟者:別に頼んでないから半額で頼む。あと、僕は君が返るまで家に帰らないつもりだ。いろいろ諦めたからベッドの下のエロ草紙は、回収に出しておいてくれ
 あさま:帰っちゃうんですか?―――もったいない
 眼 鏡:しつこいのを表に出す人間は嫌いでね。―――さっき、ベッド見てたら思い切り鼻血出しちゃって、毛布汚したから持って帰る。いいよね
 約全員:ひいいっ

 さて、と正純は、サインを貰っているネシンバラと、携帯用の毛筆セットを畳んでスカートに収める泰衡に問い掛ける。
 “昨夜の話題の続きだ。「天津乞神令教導院」、これは何処にあったんだ? 否、現存しているのか? 義経公は、何処にあるか知らん、と言っていた”
“私の知る限りでも、それが何処にあるかは解りませんものでな”
 正純はふと、思いついたことを尋ねてみる。奥州の土着の信仰とは何か、と。一瞬考えて泰衡は答える。
 “首塚とか環状列石とか全裸土偶、巨石立て、擬音で言うとオンバシラァとか、山登ったり、奇形大好きとか・・・”
 ● 画:単なる邪教じゃないの?
 正純は、その答えに、質問の仕方が悪かったのだと気付いた。
 “泰衡、一つ聞き直そう。「天津乞神令教導院」とは実在したのか?”

 “なかなか鋭い” と泰衡は応える。このジャンル男装政治担当者には一つのセンスがある。―――それは「疑い」だ。「疑念」ではない。物事に対し、その在り方を決めつけていないという事だ。先程の土着信仰について聞いてきたのは、奥州の過去について、神道のように隠すのではなく、単に人の経歴を聞くような物言いだった。義経公、貴女は気まぐれだったが、人については、確実に気まぐれを得なかった。
 だから、そうですなあ、と言い、致し方ないと、心で思いながら
 “私が調べる限りでは、「非衰退調律進行」が始まった後、各地に作られた初期教導院の基本名称ではないかと。極東に作られた無数の教導院。それが「天津乞神令教導院」と言うのではないかと考えております”

 初期の教導院を「天津乞神令教導院」と呼んだ。義経公もそう言っていた。あれ? 変だ。正純は浅間を見ると、浅間も頷き返してくる。表示枠の中のミトツダイラも同じく。葵姉はオッパイを持ち上げ――、無視する。泰衡は話を続ける。
 “天津乞とは、天は雨に通じるがゆえ、未開地を生き抜くための雨乞いを代表した、技術開発の場でしょうな。天津で神令とならば、帝の命令で建てたという事になりましょう”
 正純は浅間に促しの会釈を送る。

 “ならば、何故、神道側にその教導院の記録が残っていないのですか? 帝の作ったもの。雨乞いや技術開発は神道の領域です”
 応じるように、泰衡も首を下に振った。
 “詳細はこちらにも解りませんぞ。何しろ、その教導院はほとんど現存しませんからなあ”と、手元に極東の概要図を出す。その上に幾つもの赤い点が描かれている。指先でトスされてきた三十cm四方の極東概要図を、浅間は急いで通神帯(ネット)で会議参加者に送る。
 赤い点は「天津乞神令教導院」があったのではないか、と予想された地点だ。数は優に五十を超える。何故、これだけあったものが残っていないのだ。
 “これ、―――重奏領域・・・?”
 鈴が、首を傾げる間を持ちながら言った。浅間はハナミに「武蔵」の基本航路から、重奏領域を表示枠に出させ、重ねてみる。赤の点は全て重奏領域に重なっていた。さらに、赤の点の規則性に気が付いた。どれも密集しておらず、極東を、奥州北端から九州南端まで、三列ほどの定点ポイントとして置かれている。そして、もう一つ。神道で言う地脈の分かれ目とか、溜まり場だった場所だ。
 「天津乞神令教導院」とは、地脈を扱う場所だったのか。その場所には現世の神州と、重奏世界の神州を結ぶ「門」が在った筈。長い間に「門」の管理場所は神社や城に変わって行き、「重奏統合騒乱」の時、「門」を基礎に落ちてきた重層空間に潰されたのだ。
 浅間と泰衡は、情報の共有により謎解きに夢中になっていた。浅間と向かい合う泰衡も、お互い、視線を窺うように合わせて、小さく笑い合う。ただ、と泰衡は言葉を繋げる。
 “ただ、「門」の管理場所である「天津乞神令教導院」は失われました。しかし、可能性として、一カ所だけそれが現存しているかも知れません
 その場所は、“―――「ノヴゴロド」です”

 義康は巨大な「大碗」を見ながら、ここに「天津乞神令教導院」が在ったのかと思う。可能性はある。奥州の基地であった場所は、地脈の集積地だったろう。義光に知っていたかと問うと、知っていた訳がなかろうと応えがある。奥州の者達にとって、制圧組の名残は消しておきたかった筈だ。ただ、「ノヴゴロド」は未だに浮いている。内部の流体駆動系統が生きているという事。
 謎を解くには行ってみるしかない。


 影の場所は影に満ち、中央に青の光を置いていた。少年が眠る寝台の脇に駒姫と、丹羽・長秀が立っている。眠っている少年の上に、波紋のような流体光の動きがある。「青竜の門」だ。丹羽が「伊達」に放っている間者の報告では、昨夜、「青竜」と「伊達」勢のかなり激しい遣り取りがあったらしい。《第二特務》の鬼庭が重傷を負ったようだ。
「青竜」の消耗は伊達・政宗と小次郎の消耗も引き起こしている。「伊達」の《副会長》片倉は、恐らく「青竜」の出現プロセスが薄々解っていたのだろう。その確認のため、昨日の「有明」砲撃に政宗を同行させたのだろう。政宗に何も知らせず、「青竜」が実体と流体に分かれていることを計算して。
 走狗(マウス)が使用者を操っているようなもの。この状態を合一させるには、実体状態の「青竜」を屈服して、政宗のものとするしかない。小次郎の側では不可能だ。だが、「伊達」の戦力と言えるのは、もう《副長》の伊達・成実しかいない筈だ。
 丹羽は表示枠(インシャ・コトプ)を開く。「有明」からステルス状態の艦群が去ったと連絡が入る。丹羽は駒姫にそれを告げ、恐らく、奥州「平泉」は「武蔵」と協働の動きを取るだろうと言う。
 “三国は、五時から外交官を招いたパーティを開くそうです。その後、七時から会議が始まるそうです。その結果次第では、この「聚楽第」も、「安土城」も、対抗や警告の為に動く可能性があります”
 覚悟の上です、と答える駒姫に、「P.A.Oda」軍、五大頂の二番、丹羽・長秀は告げる。
 “駒姫様。戦場が生じるならば、それはここではなく、遥か移動した先になると思います。―――「有明」から「ノヴゴロド」まで、ちょっとした旅行になりますね”

 武蔵アリアダスト教導院の前、長い階段の下の中央通りは縁日状態だった
 “さっきの襲撃、あんなんで良かったかねー?” 伊佐の問いに、どこからとなく、三好・伊佐だけに聞こえる声がある。
 “良すぎますよ伊佐君。《代表委員長》側が和解すれば、柳生や《風紀委員長》の持つ情報から。私達の存在は露見してしまいます。隠していても意味ないです。ただ、これで警備体制はフル稼働になるでしょう。”
 穴山・小助の声は言った。
 “もうしばらく、この空気を楽しんだら動きましょうか。由利君や根津君にもそのように伝えておきます。動くべき時に動きますよ、とね”


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第425回 バンシィ(13)

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バンシィ(13)

 GWに入り、デカール貼りをシコシコ再開する。
 ショルダー部と腕部。
 ショルダー部のパターンがいくつかあり、悩む。
 デストロイモードとユニコーンモード用である。

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 いつものようにマークセッターを塗り、ぺたぺた。

 前面部
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 背面部
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 まだトップコートが固まっていなかったらしく、デストロイモードにしようと力を入れると、指紋が付いた。
 半開き状態。
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 作業時間6時間。のこるは胴体部、腰部、頭部だけ。

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第424回 聖✩おにいさん

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中村光「聖✩おにいさん」

聖 おniiさん

 もうすぐ映画公開だが、ちょっとヒッターの住んでるとこから上映映画館が遠い。
 なんで市内でやらないんだヽ(`Д´)ノ
 DVD化されるのを待つか・・・



 作者・中村光さんが出産のため、「荒川アンダー ザ ブリッジ」とともに、一時中断していたが、現在も連載中である。
 「このマンガがすごい! 2009」オトコ編1位作品。
 2009年(平成21年)、手塚治虫文化賞短編賞受賞。

 コミック第9巻は7月発売です。
DVD付き 聖☆おにいさん(8)特装版

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第423回 境界線上のホライゾンⅣ(32)

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川上稔「境界線上のホライゾン Ⅳ(下)」 Horizon on the Middle of Nowhere
Episode Ⅳ-Part 3 適当ダイジェスト④


「第六十六章 渡り場の偽物」「第六十七章 渡り場の本物」
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 それに最初に気付いたのは立花・宗茂だった。影は上から飛び込んでくる。数は三。影の下をくぐるように大久保と正純の方へ身を跳ばす。背後の階段から、加納が駆け上がってくる足音を聞く。
 《瓶貫》を防御姿勢で構えた直後、艦首側から宙を貫き、三つの衝撃が突っ走った。「武蔵野」艦橋からのナイトの狙撃だ。しかし、三つの影は衝撃に撓んだものの、壊れなかった。飛び込みながら受けた狙撃を、一切無効化した。その理由は
 “糸制御の自動人形です!”

 下側警戒を始めた立花・誾の横を駆けあがりながら、加納は敵の正体を見た。メインの部品は木材、鉄材、布、机や椅子のフレーム、箒や雑巾、屑籠を寄せ集めて糸で制御する自動人形。超極細の動物性繊維で操りながら、ある程度、自律性も与えている。昨夜、立花・宗茂が討ち取ったものより、技術的に一段上だ。
 狙撃によって撓んだのは、糸と素材の群でしかない。着地した三つの影。二つは細身の木材人形。もう一つは艤装のキャンバスをフードのように被った、二刀の女だ。三体は一斉に身を低く、突撃を掛けた。

 校舎屋上のナルゼは迎撃に飛びこまない。自分が行かずとも、あの現場の者達ならば何とか出来る。今、己がすることは
 “周知燃”
 観測術式を全周に水平展開。観測情報を「武蔵野」艦橋の“武蔵野”に送る。自動人形を操っている者が居る筈だ。眼下を見ると視界の下隅に一つの人影を見た。見届け人のオリオトライは、襲撃を前に動いていない。何故? と疑問したナルゼは、二刀の女の纏ったキャンバスに描かれているものに気付いた。
 “六文銭?”
 真田教導院の紋章だ。真田十勇士は《特務》以上の役職者であり、《副会長》の正純に対して相対権限を持っている。教導院間抗争にオリオトライは手を出せない。既に、臨時生徒総会は終わっているので、邪魔している訳ではないのだ。
 オリオトライへの牽制だ。やってくれる、とナルゼが思った瞬間、墨の紋章が消えた。自動で消える建材塗料のようだ。これで、真田教導院と言う証拠はオリオトライと自分しか見ていない。
 ナルゼの視界の中、濃い色の肌の自動人形、加納が敵に突っ込んでいくのを見た。左の一体だ。彼女は左の手を眼前に振りかぶり、砲撃と見えるものを発射した。自動人形は内燃拝気を持たないので術式は使えない筈だ。
 左側の細身の人形は、自らを構築する糸を緩め、衝撃緩和に入る。しかし、瞬間という時間の後、人形の全身が校舎に叩きつけられた。加納の一撃が命中したのだ。マルゴットの砲撃すら回避した人形を完全に確保する、《風紀委員長》としての捕獲砲撃。その技は
 “重力制御式の射出義腕?”

 加納は既に次の動きを取っていた。放った左腕のスペアを、スカート裾から右手一本で宙に弾く。特注の義腕の手首には、こちらの視覚や測方位システムがが連動しており、視線に合わせて宙で照準を精査する。もう一体の細身の人形が、二本目の左腕によって左舷側の校庭端の植木の根元に突き刺さった。
 残りは二刀の女だが、―――出すしかありませんね。これがいい機会なのだろう。
 “出なさい、柳生―――”
 振り返り、叫ぶまでも無かった。既に結果は出ていた。二刀の自動人形は打撃武器に、真正面からぶん殴られていた。

 正純は、立花・夫が全身でカバーする背後から、いきなり飛び込んで来た小柄な影を確認した。その武器はハンマーだ。シェイクスピア経由で来たネシンバラの通神文(メール)情報に、大久保、加納の後輩にひとり、忍者とも侍とも言えない人材がいる、とあった。
 それはやがて「松平」の御庭番となる者。諜報組織を司り、更には剣術指南役ともなる存在。
 “姓名は柳生・宗矩(やぎゅう むねのり)、暫定襲名です。使用武器は神格武装――”
 小柄な少年が叫んだ。
 “穿て、《金槌》!”
 加熱した金色の流体が宙を弾劾した。衝撃が広がり、二刀の自動人形を直撃する。部品が爆ぜ、糸は途切れ、纏っていたキャンバスが宙を舞った。
 “ハンタァ―――、チャンス!”

 誾は背後の階上で起きた音に、一つの頷きを見せた。柳生家は小野家が剣術指南役を外れた後、諜報などもこなす総合的な警備組織を統括する。小野家の剣術は戦国時代からの戦闘用であったが、「松平」は平和な時代に向け、情報戦などをこなせる忍びの技術を持った組織を欲したという。
 思えば、《書記》や《副長》への襲撃にも、この少年は関与していた筈だ。《代表委員長》達は要人襲撃に薄々、気付いたのだろう。《副長》が「青雷亭BLUETHUNDER」に戻っていたのは、小野家と柳生の連携があったのだろう。《副長》襲撃を捏造とされた時、大久保が表情を変えたのも解る。
 “簡単ですね。――《代表委員長》達は私達の味方だったという事です”
 今はまだ、「松平」が天下を取るかどうかに争点があるため、小野家の存在も明確になっていない。だが、次代の柳生まで動き出しているというのは
 “宗茂様、時代は早く私達に舞台へ上がれと、そう言ってますよ”


 浅間は、臨時生徒総会が決着し、終わり際に襲撃があったのを理解した。しかし、視界の中で起きている事に身動きが取れなくなっていた。喜美が足場の上を渡るようにして踊っている。瞬発と停滞、高速と弛緩、直接と間接。相反する動作を「舞」という中に収めている。そして、その足捌きや身のこなしに翻弄されているのが二代だ。喜美に連続で宙に舞わされ、引き戻され、快音と共に撥ね上げられている。
 “上機嫌ですね、あれ” 
 響く打ち鳴らしが、停まらなくなっているのだ。

 喜美の攻撃は、単にステップだ。二代が着く足にタイミングを合わせてステップを踏みこむ。相手を吹っ飛ばすのに、その重量を超える一撃を入れる必要はない。相手の動線、身体や四肢の軸線を転ばせばいい。撃音と共に宙に浮く二代を、喜美が腕を引いて元の位置に戻し、また飛ばす。再び、喜美は二代を宙で拾って手を取り、引き戻して飛ばす。今度は襟を掴んで振り回すようにスイングして跳ね飛ばし、回っていくのを追いかけてカウンターを入れる。停まらない。
 ふと、浅間は気づいた。
 “これ、喜美が作ってた新曲です”、“ろくに勉強もせずまーた”

 二代は現状がどうなってるか解っていなかった。
 吹っ飛ばされているが、衝撃が無い。
 吹っ飛ばされているが、強引が無い。
 吹っ飛ばされているが、痛みが無い。
 ただ、自分は宙を音のように舞わされ、空を風のように飛ばされ、天を雲のように仰がされているだけだ。何もかも抵抗が無意味のような、高速で連続する軸線転化のエスコート。立花・宗茂がバランス感を己に収める天賦を持つならば、この踊り子はバランスを他者に見切る天賦だ。
 二代は、悪意も邪気も無く、険も威も無い音の流れの中で吹っ飛ばされ、回される。一瞬でも足場に触れた瞬間に身体の軸を回される。どう抵抗すればいいのか、落としてもくれぬで御座るか!
 爪先や踵から撥ね上げられ、腕や肩を取られて振り回された時には、身が立ち、背筋が伸び、顔が前を見るようにされてしまう。身体の軸線、姿勢を整える力のラインを通してくる、その通し方があまりにも率直だ。拙者、ここまで自分を制御出来ていなかったので御座るか! 自分の中にある軸を、精密に通すという事が、出来ていない。
 どうしてか、という疑問の答えはすぐに出る。このレベルの近接戦を行った事がないからだ。父も槍使いで、鹿角もそれを基礎とした。刀を使っての戦闘訓練もしたが、今、行っているのは組技や投げ技の間合いに近い。《翔翼》や加速術を、こんな状態で使うことは想定されていない。出来なくて当然だ。
 “しかし、この状況でも成せる実力が、必要に御座るか!”
 必要でなくても、出来ていなければならないのだ。そして、自分の不可能を、今、可能に変えようという御仁が居る。葵・喜美。こちらの諦めを己のものとすると言った。
“不可能を、持っていくので御座るか・・・”  
 他人の不可能を持っていく姉と弟。二代は吹っ飛ばされる視界の中で、師事の相手を見た。
 小野・善鬼――。夫が小野・典膳であるとするならば、その子は「松平」の剣術指南役、小野・忠常だ。「松平」の書院役という警護役についた立花・宗茂達の隊長であり、剣術指南役として大流派である「小野一刀流」を大成する存在。――馬鹿がそうでないなら、今、こちらの相手をしている喜美が・・・
 “反応しなさい女武者。武者だったら見覚えくらいは出来るんでしょ? ほら、声、合わせて、一度、先行くから、いい? 3、2、1、GO――”
 吹っ飛ばされるなり、二代は動きが変わった事に気付いた。

 “始まった。喜美の舞台術式《転機雨》・・・”
 浅間はハナミに指示して録音と計測の態勢を取らせる。《転機雨》は術式であるが、単なる音響、照明の術式だ。加護も特殊効果も無いが、特徴は、とにかく軽い事。余分なものを削ぎ落として作った《転機雨》は《高嶺舞》など、他の術式のベースとなるものだ。そして、単体でこれを出すという事は 
 “相当に速い曲の試し打ちですよ、コレ”
 二代を吹っ飛ばす音を鼓の四打ちとして、唄が始まる。そして、二代の動きが変わってきた。浅間は隣りのヨシキを見る。
 “大きな進歩さ。唄に合わせてだけど、少なくとも足から落ちるようになってるよ”
天気雨

 二代は走っていた。音が導いてくれる。このリズムは、――喜美がこちらの動きに合わせた唄を選択したのだろう。そして、今更ながら気づいた。喜美の右手が、こちらの左手の《蜻蛉スペア》を持っていない手を握っている事を。
 “フフ、三周目行くわよ?――掴めてるわね? テンポ上げるわ。着いてきなさいとは言わないけど、意味、解るわね?”
 “Jud. 必死に、先に応じるで御座る”
 直後、二代は、今まで以上の速度で吹っ飛ばされた。

 喜美と二代の拝気状況などをモニタしていた浅間は、身を連続して翻している二代が術式を使っていない事に気付いた。ヨシキは、いずれ、使うだろうが、今は一からやり直しているんだと答える。

 あさま:ほ、ほら、こういうの解らない私、戦闘センス無いですよ! 誰ですか、私の事を射撃巫女とか狙撃巫女とかジェノサイドシャーマンとか言うの!!
 金マル:センス無いのにそんだけ破壊出来るから危険なんじゃないかな?
 ● 画:そうねマルゴット。大事なのはセンスじゃなくて結果よ。危険な巫女だわ・・・

 二代の動きは段々と整いつつある。今まで吹っ飛ばされるだけだったが、自分から身を回している。ヨシキは、段々と自分のパターンが出来てきたと言う。二代が使うのは神道の出雲系カザマツリの加速術式だ。《翔翼》は加速を繋げ続けなければならない。ならば、自分で加速ルートを造らなければならない以上、あらゆる場所を己の道としなければならない。
 喜美に吹っ飛ばされるが、そこから先に変化があった。二代の回転が明らかに加速している。音楽はもう五周目。どこに何が来るかは解ってきた。後は、音が来るのを待って動くのではなく、音楽を超えて先に行かねばならない。
 堅音が鳴る。二代が跳ぶ。身を回して、黒の結び髪が、―――初めて、乱れない回転運動として、きれいな円弧を描いた。

 超えたので御座るか?
 二代は身体が動く事を悟った。既に五周を超えて、曲と舞の流れは解ったが、喜美自体は動きに対して僅かなアレンジを加え、単純な上回りが出来ないように仕向けている。しかし、その中で自分の軸線が見えてきた。力の脈動に合わせ、関節の曲げに合わせ、大きさや熱を変えるこの軸線は、――最も力の通る場所。その力を放つのではない。もっと向こうに真っ直ぐ通すのだ。
 “喜美殿、―――貴殿はこれを伝えるために、拙者を「諦め」させなかったので御座るか!”
 正面、踊り子は笑っている。唄っている。踊っている。ただ、それだけが踊り子の役目だと言うように。
 “フフ、いい加減、私一人で踊らせないでよ”
 喜美の伏せ目気味の、困ったような表情。その言葉の意味は解る。来い、と言われているのだ。
 だから、二代はJud.と頷き、それを用いた。
 “―――《翔翼》!”
しょうよく

 喜美しかいなくなった、と浅間は思った。だが、
 “え?”
 二代の姿が、喜美の正面や横、後ろへと出現しては回転して消える。足場をロングロングステップして移動する喜美を、二代が追っているのだ。
 喜美の声が、唄が届く。二代には続く歌詞が解っている。次の動作が解っている。先を読み、喜美の動作を抑えるため、二代は飛び込んだ。

 喜美は足場の上に、二代が突き刺さったのを感じた。真正面からの一発だ。鋭く、殴りつけるように弧を描き、爪先から来た。その足先を支点に身体を腰から撥ね上げていく。曲のパターンでは、次は二代が吹っ飛ばされるところだが、それを先読みし、自ら空中前転する動きだ。しかし、二代の足や膝に《翔翼》の術式陣が出ている。このまま前転すれば《翔翼》は進行方向を違えられ、暴発する。
 どうする気? 喜美は今まで同様、二代の足を払いに行く。そこはこちらが踏むべき場なのだ。これでもはや、二代は回るしかなくなった。
 直後、喜美は二代を見失った。いなくなった訳ではない。前転の動きから、身体を背後に振り上げ、強引な空中後転を放ったのだ。

 高速で前進しながらの後ろ一回転の宙返り。二代にして、初めて行うような曲芸動作だ。発想は単純だ。《翔翼》は前に行くことを拒まれると自爆する。ならば、跳躍回避するには、足から前に出る回転運動しかない。そのため、前進する脚に、それ以上の加速を叩き込まねば、一回転するほどの跳躍力は出ない。
 身体を仰け反らせれば、上を向く腿や膝にとって、空こそが「前」だ。《翔翼》の術式表示枠には
 《状態:発動――継続中》
 《続行累積:――可能:確認》
 二代は震えを感じた、ただ単に、昔馴染みの術式が低速域での加速続行可能を知らせているだけなのに。
  
 “フフ、新技追加出来たなら、――続くわよ” 喜美の脚が膝から来た。正面から薙ぎ払うように。

 喜美は見た。二代がこちらの回し蹴りに対し、上半身を倒して頭から空中側転に入った。胴体部正面の軸線を動かさず、脚の行く方向を「前」にアジャスト。着地寸前に胴体先行のスピンを入れる。《翔翼》の表示枠に一瞬ノイズが走るが、――成り立った。だが、次の動作に入ろうとした時、不慣れな動作の連続でバランスを崩した。難度の高い動作をセンスで切り抜けた直後で、気が抜けたのだろう。
 喜美は次の場面が解る。動きを制御できず、戸惑って吹っ飛ぶのだ。

 二代は己の失敗を覚悟した。二度の連続する難所をクリアした直後の気抜けだ。ここからこそが自分の動作のスタートとなる筈だった。超至近距離での《翔翼》。初手がこれでは――、無念。

 “フフ、馬鹿ね。アンタの諦めの権限は、私が預かっているのよ?”
 喜美がバックハンドで回した手がこちらの腕を取り、全身を的確な形に捩じられ、二代は足先の軸線から正しく再着地した。それも喜美の正面に、次の一歩を踏める姿勢でだ。
 ああ――、拙者は、自分を、諦めなくていいので御座るか・・・
 “おお・・・!”
 目尻から不意の涙がこぼれ、二代は喜美よって保たれた速度を行使した。己の全力を使いに行った。

 撃音が音楽に重なる。既に「有明」西舷の空には、高速移動と旋回による薄雲が巻いている。動きの中心を作る二人は、足場の上を回り、身を振って跳び移り、ステップと手と脚の取り合いを行っている。
 踊り子は水平方向への移動と回転、くねるような動きを核とし、女武者は縦や側面に高速の旋回を連続でぶち込み、刺すような動線で機動する。だが、お互いは舞っていた。強引な女武者の動きを、時に踊り子が掴み、回してみる。整えれば、流れはまた生まれ、連続し、重なり、手を伸ばし、払われ、その動作で回り込み、加速する。

 浅間とヨシキの周囲に、作業員達が集まって来ていた。彼らが見ているのは「舞」だ。回り、飛ぶように踊っている喜美の周囲を、二代の姿が飾っている。その姿は、残像含みで二桁を超える数だ。どれも、喜美の手を取ろうとして、動きを追い、捕まえよとしている。
 幾度となく繰り返されるフレーズ。幾度となくリピートする望み。不器用な少女は己の動きに覚醒していく。撃音の大きさと長さが全てを教えてくれる。二代が喜美に追いつき始めたのだ。

 図形が空に生じた。喜美を中心に伸縮機構と《双翼》を重ね、行きては戻る高速の交差を描き始める。それは、喜美周辺で踊ろうとする二代と、外縁の足場で加速する二重円の残像を生んだ。見る人々が呆然としている。まるで羅針盤だ。回る運命の担い手。踊りの巫女は中央にて、確かに手を前に掲げた。
 来い、と。この手指の先こそ羅針盤の指す方向だ。
 二代は蓄積した《翔翼》の全てをぶち込み、槍を先端に、舞姫の全てを貫きに行った。自分の師事の先を槍で貫くことに抵抗は無い。ここで手を抜けば未熟者と言われるだろう。
 “喜美殿!!”
 その時、二代は一つの気配を悟った。

 これは、――知っている。この間合い、この雰囲気、確かにこれを経験し、――食らったことがある。
 “おお!”
 二代は宙で身体を捩じり、《翔翼》を止めぬまま《蜻蛉スペア》を振り抜いた。大きく叩き込んだ《蜻蛉スペア》の先端に光が生まれる。宙を飛んで来た一閃が迎撃されたのだ。

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