まるでダメな男の日記

このブログでは趣味のゲームや読書感想など非生産的な駄文を書き連ねていく予定です。

第421回 蔵書管理2013年4月

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蔵書管理 2013.04

 月イチの個人ネタ。単なるメモである。4月に読んだ本をチェックする。
 ACCCESSデータベースに登録した蔵書は2013年4月30日で 20,904冊(先月増+43冊)となった。
 先月よりはだいぶ持ち直した。

 内訳は
 小説  6,529冊
 コミックス 13,938冊
 エッセイ、NF他 437冊 である。
  

・5月の予定

 買い置きのハードカバー「史記 武帝紀」全7巻を読もう読もうとしている間に、文庫版1巻が出てしまった。早く読まねば。
 
 氷と炎の歌第4部「乱鴉の饗宴」と第5部「Dance with Dragons」は第3部から3年後の話で、本来、ひとつのパートだったのが、膨らみすぎて2パートに分けたというので、なるべくまとめて読みたい。
 8月発売なので、まだ時間があるな~と先送りにする。

 ペリーローダンが溜まっているので消化したい。翻訳版は第900話からの「宇宙城」サイクルに入ってしまった。
 本国版は第2697話が発表され、あと2話で「ニューロバーズ」サイクルが終了する。


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 味噌カレー牛乳煎餅

味噌カレー牛乳煎餅

 B級グルメ「味噌カレー牛乳ラーメン」の煎餅版である。
 「カレーのスパイシーな刺激、牛乳のまろやかさ、隠し味の青森県産にんにく、そして黒ゴマの香りのバランスが絶妙」という謳い文句だが。どうせなら「味噌カレー牛乳ニンニク黒ゴマ煎餅」にしたほうが良かったのではないか?

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第420回 境界線上のホライゾンⅣ(31)

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川上稔「境界線上のホライゾン Ⅳ(下)」 Horizon on the Middle of Nowhere
Episode Ⅳ-Part 3 適当ダイジェスト③


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「第六十四章 急ぎ場の謝罪者」
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 土下座が突っ走ってくるのを、正純は見た。術式で加速する、白狐のオーラを纏った土下座が陸橋の上で軽く跳ね、スキール音を立てながらドリフトを敢行。そのまま大久保の後ろにアクセルターンで一回転して止まった。
 そして、土下座が各関節を人間用に伸ばし、人間に変形(トランスフォーム)した。さらに昇降口から面倒なのが追加で走ってくる。面倒なのの女の方が、大久保の横に立ち、正純に向かって
 “私達を見れば解るけど今回はクーデター? みたいな? そんな感じで「武蔵」を貿易用の航空金銭に変えようと画策中なのよ!”
 “正純、言っておくが、私達の攻略法を知りたければ、金を払えば教えてやろう。九八0円でどうだ”
 “無理を言うな”
 “では三百円ならどうだ”、“昨日の私に言え”
 “では八十六円では”、“はあ? 私に夕食を抜けってのか? 無茶言うな” 

 “あの《副会長》、今、議題とは別でもの凄く問題のある発言が連続しとらん・・・?”
 後輩から心配される先輩になってしまった正純は、オリオトライに向こうの人数が増えたのでナルゼと直政を相対戦に呼んでくれと言うが、冗談聞かないような連中を呼ぶと殺されるとハイディに却下される。
 あのう、と言ったのは大久保だ。彼女は右の手を軽く上げ
 “一応、私の方で御二人にお金を払う事で契約したので、もうちょっと真剣に”
 契約? と疑問する正純に、大久保がJud.と頷く。現「生徒会」から大久保側に鞍替えしないかと誘ったのだ。裏切者を見る目で二人を見る正純に、待遇の良い方へ行くだけよと女商人が答える。
 “じゃあ、私も金を払えばいいのか?”
 “それは違う。いいか正純。私とハイディが目先の金に目が眩んだのは正しい。金は眩しいものだからな。簡単に言えば、私達の鞍替えは「武蔵」の経済の掌握権を得る、という条件が付いている。貿易艦となった「武蔵」の商業を、どのようにしてもいい、という訳だ”
 シロジロ・ベルトーニが顎に手を当て、話を続ける。
 “貴様が私の前に夕食代を置いたところで、有り難く受け取るだろうが無駄使いは行かんぞ。金は計画的に浪費すべきだ。○ベ屋がいいぞ。実践的な金の払い方を伝授してやろう”
 “貿易艦にしてどうするつもりだ。防衛から何から、プランを言え”
 “簡単だ。「武蔵」の神道を全て商業神の稲荷系で固め直す。金を払うことで、あらゆる術式の代演を行えるようになる”

 ミトツダイラは思わず声を挙あげた。
 “これまで「武蔵」の防護術式などは流体燃料を使用して、自動人形達の管轄で行われてきましたわ。それが表示枠(サインフレーム)や携帯社務からの振り込みで、金銭で代演で賄えるならば、各艦、各町や各区画の自立化が可能ですわ”
 ミトツダイラは表示枠に「武蔵」各艦の概要図と収入内訳を出してホライゾン達に見せる。
 “投資金額と関係神社の数次第では可能ですが、「武蔵」は莫大な金を消費していく事になります。結局、使用される金は住民からという事になり、各艦に自治連盟が出来て、税金からなる防衛費を一括管理、各艦毎の防衛を行うことになり、上位となる「武蔵」全体の防衛を全艦自治連盟が統括することになります”
 “すると、その全艦自治連盟が金と権力の集まるところになるわけで御座るな”
 点蔵の言葉に、メアリが困ったような笑みで
 “それでは各地の領主が疲弊していきます。「英国」でも同じように疲弊していった領地の自治権を、王室が買い取ったり、借用したりして直轄地にしていった訳ですが、シロジロ様達も「武蔵」全土の会計直轄化を考えているのでしょうか”
 “メアリ殿、シロジロ殿もハイディ殿も野生の守銭奴なので、本能的に金を求めているだけで御座るよ”
 そういうものなのだろうか、とミトツダイラは内心で思う。
 “金銭防御は面白いアイディアですわね。短期の自立化は可能でしょうが、継続は難しいですの。「武蔵」を潰そうと思ったら、貿易を拒否すればいいだけですの。二、三国がその対応で攻撃をしたら「武蔵」は持たないと思いますわ”

 “―――という訳で、領主や王族の意見を聞いたが、無理だろう。「武蔵」の金銭資本化は”
 Jud.とシロジロは頷き、正純に視線を向けると、力強く揉み手をする。
 “無理と解っていても、人は金のためにやらねばならん事がある・・・”
 “無いよ! 本気で考え無しだろお前ら!!”
 しかし、正純はふと考えた。防御とか攻撃の形態として、研究しておくのは有りかもしれんな。ネシンバラがいれば、いろいろ案も出るだろうが。それに
 “「武蔵」は浅間神社が主社だぞ? 金銭系の神に一元管理だなんて言ってるが、どうすんだそのあたり”
 “あのね正純。オッパイ神社より金銭神社の方が良くない? 稲荷系で可愛いしさ、シロ君が代理主になって、さい銭箱の向こうに立って、投げられるのを全部キャッチするの”
 その言葉が終わった瞬間、正純は自分と商人たちの間に、一本の矢が勢い良く突き刺さったのを見た。

 光を帯びた高速の一撃は、振動を残しながら、堅い音を響かせる。その矢の上に表示枠(サインフレーム)が浮かび
 あさま:すいません、外しました。ダクトからの誘導難しいですね。正純、ツキノワにハイディ達を映させて下さい
 Jud.と正純がオーゲザヴァラーを見た。
 ”し、神事の争いは神様同士もやってるから撃ってもいいんだっけ? アサマチ!”
 あさま:神道勢力内の争いならオッケーですから。撃って散らばったら、それが別の神様になる故事もあるので、やるときゃは派手にやる方針みたいですね
 ”ひ、ひどいこのオッパイ! そうやってオッパイ勢力を伸ばしてきたのね!!”
 あさま:いやあ、先夜の話といい、全く否定できませんねえ、あはは
 ● 画:オッパイが開き直ったわよ
矢がハイディの右靴、親指と人差し指の間を縦に床まで貫通した。慌てて靴を脱ぐ。

 ふむ、と正純はどうする? とオーゲザヴァラーとベルトーニに問うと、二人はゆっくりとこちらの背後に回ってきた。二人は大久保を見て
 ”まさか《代表委員長》が我々の「生徒会」に反旗を翻すとはな、――許しがたい話だ”
 ”そうだね、シロ君! 私達を買収しようなんて!”
 大久保は二人に切ってもらった領収書があると言うと、正純は会計組を見た。
 “正純、実は我々は騙されていたのだ。金に目が眩んでな”
 “騙されてないだろソレは!”
 正純は会計組に下がるように手で指示をして、眼下の人々に向き直る。
 ”では、3.の苦言について、話をしようか”

3.ヴェストファーレン会議で、暫定支配の解除と、世界の拡大を要請すること。
  ×:各国の協力の確証が無い。
  ×:支配解除の気配が一切無いのに、本当にそれが出来るのか。


 “「各国の協力の確証が無い」と言うが、ヴェストファーレンで各国の協力が得られるか否かは、それまでの積み重ねによる。既に我々はヴェストファーレン戦勝国である「M.H.R.R」改派(プロテスタント)領、「六護式仏蘭西」、それとムラサイ諸派の協力の応答を得ているのだ。つまり、私達は今まで通りを為す事で、ヴェストファーレンの勝利に至る。

 3.ヴェストファーレン会議で、暫定支配の解除と、世界の拡大を要請すること。
  ○:各国と協力の確証はあるし、他国との協働は既に前提となっている。
  ×:支配解除の気配が一切無いのに、本当にそれが出来るのか。


 “次に「支配解除の気配が一切無いのに、本当にそれが出来るのか」については、暫定支配の解除と外界への進出を各国に要請し、受け入れさせる事、その為の進出の基地となる極東の安定が必要だ。進出のための物資の生産と確保、運搬の大規模手段が確立していることが必要となる。”
 ここに、やはり大久保は噛みついて来た。
 “異議があります。各国が外界への進出を行う確証があるのですか?”
 これには正純にも準備があった。
 “暫定支配を続けるには、人口増加が壁になる。戦国時代以後、開墾と水田の奨励が進み、戦いが無くなった後、食料が潤沢になって人口が増える。戦国時代末期で千二百万人だったのが、千六百年代半ばで二千万人になる。欧州も三十年戦争以後、大航海時代となり右肩上がりで人口が増え続けるのだ。”
 人口が増えれば食糧生産用の土地も増えるが、極東の米作と欧州の麦作を共用できる土地は無い。さらにヴェストファーレン会議で各国の境界が確定され、「松平」の世になれば土地の整理が始まる。人口に対応した土地を持てない国は外に進出して行くしかない。必然的に暫定支配が解除されるのだ。

 正純は緩い風の中で、皆の沈黙を聞いていた。この沈黙は、悪いものでは無いと思う。
 “最初の、私達の「目的」に対する苦言に対し、応えておく。「大罪武装」の回収と「末世」の解決によって極東の地位を戻し、平和を獲得する、という事は、「三河」での《副王》ホライゾン奪還を入り口とし、その後の極東を「武蔵」が作っていく事に繋がる。そして、これは「武蔵」だけで出来る事ではない。他国との協働を必要とする。世界は「松平」の治世として征服され、世界をあるべき姿に戻す。
 それが私達、「生徒会」と「総長連合」の望みだ”

 正純は表示枠(サインフレー)を映す。そこにあるのは、否定を潰した自分達の「目標」と「指針」だ。
 ●副会長「抵抗派」
 ・目的:「大罪武装」の回収と「末世」の解決によって極東の地位を戻し、平和を獲得する。
  ○:この大義名分は《副王》ホライゾン奪還から始まり、今も続くものである。
  ○:「武蔵」だけの手に負えヌがゆえ、各国との協働が必要である。
 1.「羽柴」の抑制を行う事。
  ○:「羽柴」には歴史再現として敗戦し。今後、その機会は無い。
  ○:「羽柴」の抑制は歴史再現を守る事で、各国協調の義務である。
 2.「武蔵」の戦闘力を確保し、その力で各国に協力していく事。
  ○:歴史再現としての大国との戦闘が主であり、やはり、大国との協働が得られる。
  ○:「武蔵」が各国と関係していく限り、存続は可能である。
 3.ヴェストファーレン会議で、暫定支配の解除と、世界の拡大を要請すること。
  ○:各国と協力の確証はあるし、他国との協働は既に前提となっている。
  ○:支配解除は「松平」の治世とともに始まるもので、それは聖譜に適っている。


 “「武蔵」は各国と対等な位置を保ち、協調することで発言権を正しく得ていく。そのための抵抗の準備は出来ており、最大の「敗戦」は終わったのだ。これから先は、私達が主となっていく番だ。それを総員、信じなくていい、―――ただ、今までどおりの事、いつもの事と、そう思ってくれ”

 “―――扇動やな”
 大久保が驚くほどの小さな声で言った。しかし張りは失われていない。声が拡散されない分、まるで見えるもののようにこちらに飛んで来た。もう前を見ていない。身をこちらに向けている。
 来たか、ここからが本気か。討論と言葉の通り、論の討ち合いとして、とりあえず持論は守った。次に来るのは論ではなく、政治家としての在り方を討ち合うのだ。
 “ならば、話を聞こう。―――大久保”

 人々は見て、聞いた。《代表委員長》が《副会長》を見上げ、言うのを
 “前向き思考、「武蔵」の人々が自分の信じたいことをしている、そこに御偉いさんが支持を表明する。―――それは、扇動や。「英国」に入る前、砲撃食ろうたん、覚えてますか?”
 大久保は肩から羽織っていたストールを落とし、下のインナーシャツの左の長袖を外す。
 “戦争をするとどうなんか、私は言えるで”
 大久保の左腕は白い義腕だった。大久保は覚えている。砲撃を受けた区画は大規模な破壊を受けたが、作業員はほとんどが無事だった。自分が退避を促したからだ。そして、自分はただ、逃げ遅れただけだ。
 公務の負傷だが、それは二重襲名者だからといって避け得るものでは無い。「三河」が消失し、各国が敵になり、人手が足りないので雑用から何でもやって「武蔵」を助けようと動き続けた。しかし、襲名者を砲弾から守ってはくれなかった。これだけ、人を弄ぶ「聖譜」って何なのだろう。

 “なあ“、と大久保は言った。
 “歴史は、先まで決まっとっても、運命は守ってくれへんのやで。何もせんでも、何やしたでも、運命は手遊びにこちらを傷つけるんや。ヴェストファーレンまでじっとしとったら、私らの勝ちは転がり込んで来るんやで。―――それなのに、短期間で「羽柴」や「織田」を追い込んで・・・、私みたいになったら、どうすんのや”
 正純は大久保の言葉に相対していた。誰からも表示枠(サインフレーム)が来ない。それは、この状況を、皆が避けているという事ではない。そう信じられる。「武蔵」の政治担当者として、任されている。だから、クラスの皆や、馬鹿が何も言ってこない。
 だから、正純は真っ直ぐに大久保を見据えて、言葉を作った。これが、自分の、「三方ケ原の戦い」の敗戦に対する答えだ。正純は静かに、確かに告げた。
 “痛かったろうな。大丈夫だ。―――幾度でも、どのような形でも、受け継いでも。・・・抗い続ける覚悟を、私達はお互いに支持し続ける事が出来る”

 右の手を差し出す正純に、大久保は眉を立てて口を開く。声が震えているのは怒りか、悲しさか解らない。
 “なんやそれ・・! 傷つくんやぞ! 解ったような事言うて!、実際に傷ついたら・・・”
 直後、正純はタックルするような腕の構えを見せると
 “ハイ、チェック―――!”
 いきなり大久保のスカートを掴んで引き下ろした。


「第六十五章 頂上の決意者」
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 大久保は何が起きたのか理解出来ていなかった、腰が軽くなったのは解る。サイドスカートを強引にハードポイントから外されたのだ。
 “あー、すまん、大久保。慣れていないので力入れ過ぎた。良かった、紐式の女式か。あまり売ってないんだよな”

 あさま:あのー、意味は大体解るんですが、大久保さんは多分、正気度も普通で、あまり無茶しない方がいいんじゃないかと
 賢姉様:ククク、練習無しで出来ると思ったのが失敗ね。今度うちにきなさい、浅間やミトツダイラと一緒に練習台になってあげるから
 ● 画:あら、練習はなかなか興味深いわね。それによって、いろいろ得られると思うから、私の描いたとおりにするのよ正純

 “きゃあああああああああああ!!” 膝を合わせ、手を脚の間に突っ込み、大久保はしゃがみ込んだ。手が震えて、上手くパンツ部分の左右を留められない。こちらを隠すように《副会長》が正面に立った。
 “あー、すまん、大久保。「武蔵」の「生徒会」だとこれくらいは普通の事だ。気にすることは無い”
 待てや、何やねん、謝るくらいならしなければいい、びっくりで目尻に浮かんだ涙が、喉の震えで毀れそうになった。
 “お前の言ったことを私は否定しない。お前の提案を考慮し、必要なら組み、不必要なら外す。お前も政治側の身なら、自分の意見が取捨選択される事を含めての仕事だと、それは解っているだろう”
 正純はツキノワに大久保の主張を表示させる。

●大久保「非戦派」
 ・目的:戦わず、「三河」動乱以前の状態に極東を戻し、平和を再獲得する。

 “非戦はなるべく堅持したい。極東の地位を回復した上で、「三河」から続く歴史の流れを戻し、平和としたい”
 1.「羽柴」勢、「P.A.Oda」との同盟を経た上で、「聖連」指示による歴史再現を推進する。
 “「羽柴」と「織田」の歴史再現を急がせる際、前提交渉は必須となる。お互いが戦闘を含み、必要な形を求められる交渉を優先したい”
 2.「武蔵」を「有明」に格納し、それ自体を極東の抑止力とする。
 “為すべきを為した「武蔵」は、何処にいようと抑止力になるだろう”
 3.あらゆる戦闘を拒否、ヴェストファーレン会議にて、全て議論により決着を望む。
 “非戦は基本だ。そして、ヴェストファーレンが議論の決戦場となるのは同意だ。――大久保、お前の望んだプランは、大体において私達と矛盾しない。その考えを内包できる。だから、合わせられる部分で私達を手伝ってくれ。―――出来るか?”

 大久保は内心で息を吐いた。忘れていた訳ではなかった。気付かなかった訳でもない。この人はかつて「三河」で、文字通り、身を削ったのだ、しかし、「三河」という国の方針がそれを許さなかった。彼女も、自分のせいではなく、自分の描いていた未来を、どうしようもない力で奪われたのだ。
 《副会長》は表示枠を肩のアリクイに消させ、こちらだけに言葉を通じるようにしてから
 “困ったことにな。中途半端でやって行こうと思ってたんだ。「三河」まではな、だけど、・・・困った馬鹿がいて、その馬鹿は大事なものを自分のミスで失って、それを忘れもせず、しかし、何とか先に進もうとして、恐らくは何度も挫けたり、諦めたり・・・。でも、その馬鹿は誰もの味方なんだ。一人でも救いに行く馬鹿なんだ。――お前だって、被弾の現場に一人で行ったな? 私は知ってる”

 “来い”と左の手を取られた。
 “お前はこっちの人間だ” そして、右の手も取られ、身を起される。視界を高くして、眼下の人々を見る。この人達にも、きっとやりたい事があって、それを認めて欲しかったのだ。機関部の作業員達も来ている。もし、彼らがあの時負傷していたら、自分は、今、痛かっただろう。《副会長》も「三方ケ原の戦い」で、大事な、将来の仲間となれたかもしれない指導者達を失ったのだ。
 大久保は目尻から頬にかけて何かが落ちるのを感じた。襲名者だろうと《代表委員長》だろうと、運命には守られないのだ。それらをすべて含めた上で、自分達の為す事を肯定する。
 大久保は小さな、しかし、消えぬ声で泣いた。

 臨時生徒総会の終了と同時に、それは来た。
 三体の自動人形が手に刃物を持ち、大久保と正純に向け、突っ込んできた。

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第419回 未来福音

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奈須きのこ「空の境界 未来福音」 the Garden of sinners / recalled out summer

空の境界 未来福音

 両儀未那(りょうぎ まな)
 両儀式と黒桐幹也(両義幹也)の娘。
 性格は叔母の黒桐鮮花に似たもよう。

 父親にR元服な感情を持っているらしく
 「はい。いつかお母様を倒して、パパを取り戻すのがわたしの目標ですから」と向日葵のような笑顔で宣戦布告をする。
 ちなみに、パパは幹也でお父様は両儀織である。

 「劇場版 空の境界」再始動ということで、夏に「第一章 俯瞰風景3D」が、秋に「未来福音」(2D版)が上映される。
 3Dってどうなるのだろうと思うが、そうなると7月10日発売のBOX(全7章+終章)の購入が躊躇われるな。
 売り上げに響くんじゃね?
空の境界3D

 この記事で{Fate/zero」を途中からまだ読んでいないかったことを思い出してしまった。
 3巻は何処に行ったんだろう。6冊まとめ買いしたはずなのに・・・

 久々にKARAFINAを聴きたくなった

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第418回 海街diary

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吉田秋生「海街diary」 既刊5巻

 1巻を読んでる間に、3回ほど目から液体が流れ出ました・・・ ゚(゚´Д`゚)゚

 鎌倉に住む香田 幸、佳乃、千佳の三姉妹の両親は十五年前に離婚し、婿養子だった父は家を出ていった。
 母も再婚すると言って、娘たちを置いて出ていき、三姉妹は祖母の家で暮らしていた。
 その祖母も亡くなったころ、出て行った父の訃報が来る。
 再婚した父は、相手と一女を設けたがその母親は病気で死亡。
 再々婚の相手は、男子二子を連れていた。

 葬儀の席で異母妹の存在を知った三姉妹は、その、末の妹、浅野すずを引き取ることにする。
 (第1話「蝉時雨のやむこ頃」)

 四姉妹を軸に物語は進んでいきます。
 涙腺が緩いヒッターには拷問のような5冊でした・・・(Mだからいいか)

 あれ? なんか懐かしい名前が・・・、
 藤井朋章って前にも出てこなかったか? 他にも見知ったキャラがいる!
 「ラヴァーズ・キス」と同じ世界設定なのか。読み返したくなったが、どこのダンボールに入ったのか、わからんな。

 「ビブリア古書堂の事件手帳」も鎌倉が舞台だが、本当に坂の多い街なのね~

 なんか久しぶりに、吉田秋生(あきみ)さんのコミックを買ったような気がする。
 だが、巻末の作品集を見ると
 「きつねのよめいり」
 「夢見る頃をすぎても」
 「河よりも長くゆるやかに」
 「吉祥天女」
 「カルフォルニア物語」
 「BANANA FISH」
 「ラヴァーズ・キス」
 「YAKSA -夜叉-」
 「イヴの眠り」

 うーん、全部持ってるじゃないか。
 十年くらい、新作を買っていないような気がしたのだが・・・

 マンガ大賞2013受賞作品です。
 表紙が良いですね~

 海街diary 1 蝉時雨のやむ頃
  「蝉時雨のやむ頃」「佐助の狐」「二階堂の鬼」
海街diary 1 蝉時雨のやむ頃

 海街diary 2 真昼の月
  「花底蛇」「二人静」「桜の花の満開の下」「真昼の月」
海街diary 2 真昼の月

 海街diary 3 陽のあたる坂道
  「思い出蛍」「誰かと見上げる花火」「陽のあたる坂道」「止まった時計」
海街diary 3 陽のあたる坂道

 海街diary 4 帰れない ふたり
  「帰れない ふたり」「ヒマラヤの鶴」「聖夜に星降る」「おいしい ごはん」
海街diary 4 帰れない ふたり

 海街diary 5 群青
  「彼岸会の客」「秘密」「群青」「好きだから」
海街diary5 群青


 これが安っぽいTVドラマ化なんてされて、穢されないことを祈ります。



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第417回 境界線上のホライゾンⅣ(30)

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川上稔「境界線上のホライゾン Ⅳ(下)」 Horizon on the Middle of Nowhere
Episode Ⅳ-Part 3 適当ダイジェスト②


承前

 二代は言葉を失った。“自分は戦い方を持っていない?” 思った瞬間、額から後頭部へ衝撃が抜けた。視界が揺らぎ、膝から力が抜けるほどの一発だった。
 自分の戦い方も持っていないようならば、これから巨大な敵と相対していく「武蔵」に、己が参戦して何になるのか。正面に立つ踊り子は、こちらの思考の深部まで見透かすように、鋭い視線をこちらに向けたままだ。
 “温室育ちの花は、短いサイクルで枯れ、また咲くものよ。アンタはきっと、野に放たれる事を望んで育てられ、しかも選択を与えられた花だから、私が一つ、アンタの花咲きを試してあげる。ここでアンタを植え替えてあげるわ。”
 “いい?”と喜美は二代に問うたのではなく、言いわたす。
 “アンタは相手のやり方に合せるタイプ。本多・二代。女侍。これから私の舞が終わるまで、これからも、相手に合せるかどうか、考えるといいわ”
 直後、二代が見たのは空の青い色だった。喜美に爪先一発で吹っ飛ばされたのだ。その視界に、空に浮いた表示枠の中、自分と同姓の姿が、声をあげるのを見た。
 正純が戦っているのだ。

「第六十三章 点数踏切の正否者達」
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 耳に鉄の音が響くのを感じつつ、正純は大久保からの苦言を眺めていた。

●副会長「抵抗派」
・目的:「大罪武装」の回収と「末世」の解決によって極東の地位を戻し、平和を獲得する。
  ×:この大義名分は《副王》ホライゾン奪還のためのものではなかったのか。
  ×:「武蔵」の手に負えるものではない。
 1.「羽柴」の抑制を行う事。
  ×:「羽柴」に敗戦してるではないか。
  ×:「羽柴」の天下を認めないのは聖譜に対する反抗ではないか。
 2.「武蔵」の戦闘力を確保し、その力で各国に協力していく事。
  ××:「羽柴」の勢力下にある無数の大国との戦闘が不可避である。
  ×:「武蔵」事態に後が無いのに、賭けのような事をするのか。
 3.ヴェストファーレン会議で、暫定支配の解除と、世界の拡大を要請すること。
  ×:各国の協力の確証が無い。
  ×:支配解除の気配が一切無いのに、本当にそれが出来るのか。


 随分と出て来たものだ。まず言うべきは
 “「生徒会」、「総長連合」の代表として、告げておくことがある。現在、私達の「目的」に至る道は、成功の途上にある。”
 大久保がJud.と頷きもせず、促しのために審判を口にした。“その証明をどうぞ”
 正純は、階段の下にいる人々を見渡して言った。
 “では、まず、1.「羽柴」の抑制を行う事 について言おう。―――「羽柴」に敗戦してるではないか とのことだが、「武蔵」は「羽柴」に敗戦していない。約三週間前に行われたのは「三方ヶ原の戦い」だ。歴史再現によって『我々の敗北が決まった戦争』、そしてその相手は「清・武田」だ。”

 “現実から目を逸らしている!!” 不意に大久保が声を強く放った。敗戦という最大の攻撃要因を、こっちは一気に切り崩しに行ったのだから当然だ。でも、大久保にとっては読めていた事だろう。大久保の方を振り向く気は無い。大久保の一括は注目を集めるためのものだ。
 正純は人々の方へ左右の腕を広げ、話を続け、大久保を無視する。
 “「三河」を抜けて以来、「武蔵」は「清・武田」の傭兵になった前田・利家と、それに協働する「羽柴」の攻撃を受けた。「武蔵」は損害を受けたが、本来、「清・武田」とは、解釈によって安全な敗戦が導かれる予定だった”
 横にいる大久保が、やはりこちらを見ていないのは視界の隅で確認できる。彼女とて自分と同じだ。一挙動でさえ、聴衆を前に注目を集める駆け引きとなる。
 “それが崩れた理由を説明してください” やはりそう来たか、と思いながら言葉を生む。
 “改派(プロテスタント)の協力を得、「六護式仏蘭西」、諸派の友好を得るために「マクデブルクの掠奪」参加し、住民の避難、略奪の安全な完遂を行ったからだ。
 立場の違う「P.A.Oda」勢は報復として、「K.P.A.Itaria」の占領による《教皇総長》の獲得という手段で、「武蔵」への干渉を行った”
 大久保は前を、人々を見ながら言う。
 “成程、《副会長》は「マクデブルクの掠奪」に関与する事で、現状がこうなってしまう事を予測出来なかった。―――そういう事ですか。”
 
 “無茶を言うわね” 校舎の屋上で黒の六枚翼が言った。ナルゼは既に《白嬢(ヴァイスフローレン)》装備で侵入者検知の符を確認していく。“あんな展開になるなんて、予測できた人がいると思うの?”
 金マル:まあ、だからこその物言いだよねえ。とりあえず、答えるみたい。現状がこうなることが予測できなかった釈明かなあ。そんな予測が出来る人間は何処にもいないだろう、とね
 「武蔵野」の橋上艦橋上にいる《黒嬢(シュヴァルツフローレン)》装備のマルゴット・ナイトが、表示枠の中から応ずる。
 “でもそれって、自分の無能を棚に上げて、更には他の誰もが自分と同じ無能だろうって、そう言ってるようなものよ? ベストは、自分の落ち度だと認めて、そこから、どう対策したかを述べて挽回していく事かしら。“
 どうするかしら? ナルゼは校舎の上から正純の背を見る。謝罪するだろうか。土下座だったらレアだから、急いで上から素描しておきたい。視線の先で正純が動いた。

 “いいか? 「マクデブルクの掠奪」に関与して現状がこうなる事など、私は充分に予測できていたとも。そのくらいの予測、当然出来るからこそ、「武蔵」の《副会長》をやっているのだ。―――現状も、全て、その予測の上だ”
 言い切った!

 ホライゾンが、横に座る女装の肩に手を置いた。
 “トーリ様。あまりに酷い事なので言葉を選んで言いますが、正純様が緊張感でトーリ様と同じキチガイになりました”
 “おいおい、正純は女装じゃねえし全裸でもねえぞ。俺の方が上だ”
 えっとぉ・・と俯くミトツダイラの横で、メアリが笑みで横の点蔵に言う。
 “流石は、正純様ですね。私達が信じてみたい言葉を、ちゃんと言って下さいました”

 笑い声が石作りの広間に響く。
 “よく言った、政治の場を己の舞台と捉える「極東」の代表者よ。「女王の盾符(トランプ)」! 「武蔵」の《副会長》の言葉が嘘だと思うか?”
 エリザベスが椅子の上で足を組み、問う。皆が、ややあってから○の表示枠(サインフレーム)を上げる。それを見た《妖精女王》は、“全員ハズレだ”と、笑みの顔になるとジョンソンの足元に穴が開いて落ちて行った。ウォルシンガムが指折り数えていると水音が聞こえた。
 “全員、落としてはクイズが続かないからな、全員、ジョンソンに感謝しておくがいい”
 水泳パンツとゴーグルキャップとスカーフのホーキンスが手を挙げて、“《妖精女王》、ジョンソンより水に慣れた私の方が、適役ではないでしょうか”
 ホーキンスの足元に穴が開いて落ちて行った。
 “最悪の状況を想定しない政治家はいない。そして、政治家とは、その上で存続のために働いていくものだ。ならば正純、言ってやるといい。全ては自分の想定内だった、と”

 正純は大久保に振り向かず、しかし答えた。
 “そう、全ては私が考えていた、最悪の状況の中にあった。現状は、最悪に至る状況の一つとして、想定している範囲内だ”
 “だったら何故、それを避けようとしなかったのです? 最悪の状況を避けるようにしていれば、現状はもっと良くなった筈でしょう?”
 正純は、眼下の人々を見ながら答えを返す。
 “今が最悪の状況?――言っている意味が解らないな。一つ言っておく。私が考える最悪の状況とは、―――それは、この「武蔵」が撃沈される事だ。「三方ケ原」における「武蔵」の撃沈は回避された。それを切り抜けた今後は、もう、こちらが敗戦するという枷は無い。心おきなく、こちらの攻撃を叩き込む時代が近づいている。――目の前にある””
 正純は本音でそう言った。だから、
 “私達は歴史再現で見事に「敗戦」した。あれは「敗北」ではない。最初で最後の好機を、敵は逃したのだ。歴史が、「聖譜連盟」が、莫大な戦力が、全てが敵に回って、それでいて「武蔵」を捉え切れなかったのだ。―――よく凌いでくれた、諸君。「武蔵」の改修もほぼ終了し、出港を急ぐ状況となっているが、その段階まで、よく持ち直してくれた”
 右の手を胸に当て、正純は頭を下げる。
 “「敗戦」を「敗北」とせず、次に繋げてくれた「武蔵」の総員に、《副会長》として礼を言う”

 “この子は一つ間違うと悪女だね”
 セグンドの呟きに、フアナは眉を上げ、房江が小さく笑う。
 “どういう事です? 「武蔵」《副会長》は自分視点の現状説明をしていると思いますが”
 セグンドの代わりに房江が答える。マクデブルクから脱出し、疲弊や損害を受けて、敗戦した「武蔵」の中で、皆、不安だったはずだ。それを拂拭しようとして、鍛練やら改修やらをしていた筈だ。それは形となって残る事だ。
 フアナが数秒、思案する。アルマダ前の「三征西班牙」と似ている。いろいろ準備したが、それは、最初から「敗戦」と「衰退」が見えている未来に対し、自分達がしている事が無駄ではないと信じたかったからだ。「武蔵」の《副会長》が言ったことは、彼らの行ったことが無駄ではなく、その行いがあるから「武蔵」の今があり、未来があると告げ、国の代表が礼まで言ったのだ。不安と懸念を、今の遣り取りだけでひっくり返してしまった。
 自席で野球情報誌を読んでいた隆包が、不意に呟いた。
 “俺なら「武蔵」の《代表委員長》にはついて行かねえな。あの《代表委員長》が言ってることは、今まで「武蔵」がやってきた事を、全部無しにしようってんだ。だが、《副会長》の方について行ったら、今後、地獄見るかもしれねえんだけどな”
 言葉を失ったフアナに、セグンドは言う。
 “「武蔵」の《副会長》は人々の望む、自分に有利な評価をして礼を言っただけだ。もし、解った上でやっているのなら、悪女か、・・・人心と自分のやりたい事を重ねられる政治家を、何て言うべきだろうか”

 頭を上げ、正純は無音を聞いた。人々は動きを止め、何も言おうとしない。正純の言葉を待っているのだと気付くまで、数瞬が必要だった。
 “言おう”
 私を支持する馬鹿が望む事を、それを叶えるために私は働こう。
 “私達の1.に対する苦言について。――「羽柴」の天下を認める事と、「羽柴」の抑制は矛盾しない。抑制するのは各国側の歴史に対する「羽柴」勢の横行、歴史再現の行き過ぎ、死の強要に対してだ。「羽柴」が天下を取るのは決定事項なので、それを認めなければ、「松平」の天下も認められない事になる。各国は歴史再現ついて協力せねばならん”

 正純はツキノワに表示枠を出させ、苦言を訂正する。
 1.「羽柴」の抑制を行う事。
  ○:「羽柴」には歴史再現として敗戦し、今後、その機会は無い。
  ○:「羽柴」の抑制は歴史再現を守る事で、各国協調の義務である。


 “さて、2.3.の方も砕いていこうか”、
 “待ってください、想定していたとか、皆よくやったとか、不都合から目を逸らしてませんか。前「六護式仏蘭西」《総長》のアンヌや、松永公、義経公、里見《総長》まで失っています。―――それの何が、「想定内」なんですか?”

 里見・義康の口から、思わず出た言葉がある。
 “おい”、なにが“おい”なのかは自分でも解らない。しかし、
 “やめろよ・・・”
 彼の死を、変な評価や貶めるようなことはしないでくれ、飾ったり、意味が無かったなどと、勝手に定義しないでくれ。俯いている間に声が聞こえた。

 “私の想定は、「武蔵」における最悪の状況だ。それを拂拭するために、各国の代表が尽力したのは確かだが、それは私の想定ではなく、彼らや彼女達の想定だろう。
――最悪の状況の回避法として、己の望む事を為し、私達は救われた。私がその意を汲む事もあれば、彼らの国の中に、その意志を継ぐ者がいるところもある。彼らは私達のものではない。私達の想定で彼らを語ることは出来ん“

 「武蔵」《副会長》の言に、義康は内心で大きく息を吐いた。義光が浅く頷き
 “「武蔵」の《副会長》は厳しいのう、―――貴様に、もう先代を継いで動けと、そう言っておるぞえ”

 “さて”と正純は人々に向かって指を二つ立て、2番目の苦言を提示する。

 2.「武蔵」の戦闘力を確保し、その力で各国に協力していく事。
  ×:「羽柴」の勢力下にある無数の大国との戦闘が不可避である。
  ×:「武蔵」事態に後が無いのに、賭けのような事をするのか。


 眼下の群衆が、わずかに身構えた。そんな気がした。昨日も戦闘状況があったし、「里見」と「江戸」に対する「羽柴」の攻撃は、「有明」の住民も理解している。大国を相手にする、という意味を
 だから、正純は胸を張って、両の手を浅く広げた。
 “「武蔵」は今後、大国との戦闘を行う可能性がある。だが、「松平」の歴史再現に限定するならば、もはや、大規模な「敗戦」は無い。他国の傭兵として動く場合は、先に内容確認は可能だ。大規模な損害の可能性は低いと考えている”
 正純は西から北の方へ手を振った。
 “今、三国へ大使が外交役として行っている。自分達がここまで来れたのは、「英国」、「六護式仏蘭西」、「M.H.R.R」改派領、「清・武田」、「里見」など、各国の協力があったから。私達が歴史再現を正しく行い、外交するならば、各国は協働し、その成果に応じてくれる。―――大国との戦闘は調整が効くという事だ。

 2.「武蔵」の戦闘力を確保し、その力で各国に協力していく事。
  ○:歴史再現としての大国との戦闘が主であり、やはり、大国との協働が得られる。
  ×:「武蔵」事態に後が無いのに、賭けのような事をするのか。


 “こうして考えると、「武蔵」に後が無いわけではない事が解るだろう。「英国」の時のように懐に入り、中間貿易で、協働国に関係する国とも接することが出来る。そうして「武蔵」が動き続ける事で、「武蔵」には「抑止力」が生まれていく。
 ――だが、動かなければ、「武蔵」は抑止力を古びさせ、後が無くなり、相手にされなくなるだけだ“

 2.「武蔵」の戦闘力を確保し、その力で各国に協力していく事。
  ○:歴史再現としての大国との戦闘が主であり、やはり、大国との協働が得られる。
  ○:「武蔵」が各国と関係していく限り、存続は可能である。


 “疑問があります“と、大久保が言葉を挟んだ。
 “「武蔵」を抑止力として存続させる際、莫大な費用が必要となります。ならば、今までどおり、貿易船として振舞った方がいいのではないでしょうか? 戦闘による損害も無く、資産も増えます。そして、貿易力を拡大して各国に保護して貰う。その方が安全では?“

 成程、私が「英国」で言った案の一つに近い。正純は大久保がインチキ方言を使わなくなっている事に気付く。そして、だが、と言葉を繋げる。
 “ヴェストファーレンを短期目標として視野に入れた場合、今からそれは難しい。私の望みとしては、抑止力外交をしながら、中規模の貿易を行っていくのが良いと考えている。”
 しかし、大久保は退かない。
 “一つ、他から提案があったので、考慮としてここに上げる事にします。「武蔵」は貿易を主にしても、抑止力になれるのではないか、という事です”

 は? 正純は大久保の言っている事の意味が、一瞬、理解できなかった。
 “貿易が抑止力になる?“
 まて、何かが違う気がする。この違和感は何だろう。いや、理解しているが、認めたくないだけだ。認めても無駄だからだ。
 “また、貴様らか!”
 正純が叫んで後ろを振り向くと、昇降口が勢いよく開いた。

 “毎度―――!”
 陸橋の上を高速で土下座が滑走してきた・・・

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第416回 刀語

Posted by ヒッター7777 on   0 comments   0 trackback

西尾維新 「刀語(カタナガタリ)」

 再放送が始まった。
 新OPもなかなか良いではないか。

 拍手喝采歌合


 前は12ヶ月かけて1話ずつ放映だったが、今回は毎週見れるというので嬉しい(^^

 エンディングは各話で違っていたはずだが、今回はピコの「言ノ葉」で統一なのか。
 まあ仕方ないな。なかなかいい曲だ。CD買おうかな。

 原作に引けを取らない出来のアニメだったので、第4話で初めて見る人の反応がどうなるか、楽しみである。
 できれば、完了形変体刀候補、全刀「錆」(ゼントウ・サビ)「あらゆる物体を刀として扱うことができ、刀を使わない虚刀流の対極」と七花の戦いを見てみたかった。
 最後まで四季崎記紀が、虚刀「鑢」(キョトウ・ヤスリ)どちらを完了形変体刀にするか悩んだ刀である。

 海外の反応で一番多かったのは「会話を減らして、アクションをもっと入れろ」というものだった(笑)
 まあ当然ですな。
 西尾維新ものは、海外では受け入れられないパターンが多い。
 まあ、あれをずっと字幕で見ているのは疲れるだろう。

 全12巻
 第1話.絶刀「鉋」(ゼットウ・カンナ)
 第2話.斬刀「鈍」(ザントウ・ナマクラ) 
 第3話.千刀「鎩」(セントウ・ツルギ)
 第4話.薄刀「針」(ハクトウ・ハリ)
 第5話.賊刀「鎧」(ゾクトウ・ヨロイ)
 第6話.双刀「鎚」(ソウトウ・カナヅチ)
 第7話.悪刀「鐚」(アクトウ・ビタ)
 第8話.微刀「釵」(ビトウ・カンザシ)
 第9話.王刀「鋸」(オウトウ・ノコギリ)
第10話.誠刀「銓」(セイトウ・ハカリ)
第11話.毒刀「鍍」(ドクトウ・メッキ)
第12話.炎刀「銃」(エントウ・ジュウ)

 外伝 真庭語

 限定版DVD特典CD 第零話 虚刀・鑢(キョトウ・ヤスリ)


 CM集 おつです


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第415回 ARIEL(2)

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笹本祐一 「ARIEL 完全版03」
ARIEL 03

 第3巻を読む。
 懐かしいな~、文庫版の時代を思い出しました。

 白由希女子学園修学旅行御一行様として、和美とシェラ、ナミ及び、教生・河合美亜は雅の古都・京都を訪れていた。
 古寺名園巡りに枕投げ、深夜の集団脱走と、それは多少退屈ながらも学園生活を彩る罪のないイベントであった。
 天才司令官にして倒錯美少年のニコラスが、ハウザーへの雪辱に燃えて再び現れるまでは・・・
 なんとニコラスは京都ならびに修学旅行の制圧を敢行したのだ。
 女子高生、SCEBAI、ゲドー社、フログレンスと関係者すべてが古都・京都に集結して四すくみの大騒ぎとなる。

 オルクス艦長アバルト・ハウザーと、経理部長シモーヌ・トレファン。
 三流弱小企画のボロ戦艦オルクスにあって、二人は時に百年来の仇敵のように衝突し、時に無二の同志のごとく団結して目的―平和な地球の侵略―に向かってきた。
 だが、ついに決裂の刻が来た。
 双方の意地の張り合いと周囲の思惑によって、シモーヌが退職、見合い、結婚への一本道を驀進しはじめたのだ。
 ハウザーは機動要塞結婚式場・銀英殿から、花嫁を奪い取れるのか!

 第17話 女子高生西へ(前編)
 第18話 女子高生西へ(後編)
 第19話 キャリア・ガールは振り向かない
 第20話 ロング・ディスタンス・コール
 第21話 たった一人の侵略
 第22話 ウェディングベルは誰のために


 作者さえも、書く2行前まで知らなかった設定が飛び出すという、いよいよ、キャラが動き始めた感のある完全版の3巻です。

 本編は、まあ文庫で読んでいたので、さておいて、巻末描き下ろし
 「-3話 昭和十五年のからくり天狗」

 岸田と天本、おハナの青年時代。
 いや~、菊池秀行のトレジャーハンターか、インディ・ジョーンズですか!
 立ち上がる戦艦とか、南極の光の巨人ってなんですか(笑)

 この時にファースト・コンタクトしてたんじゃないか!!
 これが後の侵略会社のカタログに乗る原因となるとは・・・

 文庫版の中身をほぼ忘れているので、読み返せて良かった。

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第414回 境界線上のホライゾンⅣ(29)

Posted by ヒッター7777 on   0 comments   0 trackback

川上稔「境界線上のホライゾン Ⅳ(下)」 Horizon on the Middle of Nowhere
Episode Ⅳ-Part 3 適当ダイジェスト①


 下巻は中巻の1.34倍あります(ノД`)シクシク
 表紙は奥州伊達教導院《総長》兼《生徒会長》伊達・政宗ちゃんです。
境界線上のホライゾン4〈下〉―

 承前

 「有明」右舷後部。白の絶壁にも見える外壁の上。20m程の大きさに展開した鳥居型表示枠の中に映されるのは、「武蔵」《副会長》本多・正純と、《代表委員長》大久保だ。二人の相対を見上げる視線の一つ。夏服姿で外壁の外、空中に立っているのは喜美だった。
 作業用の硬化竹の足場が、空に筒状の先端を提供している。竹の太さはどれも30cmほど。範囲にして100m四方に立ち並んでいる。喜美は外壁から十数m離れた竹の上で身を回す。眼下には雲が薄く流れ、地上までは3km程か。
 軽くステップして足首の動きだけで3m程向こうの一本に跳躍した。振り向く先、「有明」の外壁に三つの影がある。半目の浅間と、腰に手を当てて歯を見せている母親と
 “女侍、気分の整理がついたら来なさい”と、本多・二代に声を掛ける。母親が言うには、彼女の修業の相手をしろという事だ。喜美の見る限り、このところの二代は、確かに考える時間が多かった。でも、スランプではないらしい。
 “女侍、―――ここに以前より深く刺してみなさい”と、己の胸に右の手を当てる。「三河」で相対した時、二代はこちらに刃を完全に届かせる事が出来なかった。二代は一礼し、軽く跳んだ。一気に十数mを越え、喜美の正面の足場に着地した。

 二代は、自分の跳躍と同時に、「有明」上の大型表示枠に動きがあったのを見た。正純と大久保が向かい合っている。同じ「三河」出身者。正純は「武蔵」を背負う《副会長》として、「武蔵」の知の代表者として、自分達の為すべきを守ろうとしている。自分を取り戻せていない己では格が違う。自分とは距離が空いてしまったと二代は思った。
 “では、改めて、相対させてもらおう”と正純が言った。
 ああ、と二代は足場に着地し、前を見た。喜美がいる。
 “いいだろうか“と正純が言う。
 いいで御座るよ、と二代は心に頷きを作り、前に身を倒す。初速を入れるための初動だ。
 正純も、他の者も、自分も“悪かった事など、一度も無かった筈に御座る”
 告げて二代は身を加速し、前に出た。

「第六十二章 遠方の応援者」
062.jpg

 丘の上。白い天幕の中で「六護式仏蘭西」女子夏服に身を包んだ毛利・輝元と、夏全裸のルイ・エクシヴは、《副長》の人狼女王テュレンヌと今後の動きを話し合っていた。
 現在、「M.H.R.R」との国境近くで交戦中である航空輸送艦「鳥取城」は、歴史再現に則り、二百日の兵糧攻めに遭っているが、随伴艦と共に砂状防壁を展開している期間もそろそろ終わる。機械式ボディに換装した「鳥取城」担当のMouri-32bは二百日、何も食べずに働いていて、東側に布陣した「羽柴」勢の方が疲弊していたそうだ。Mouri-32bは時折、出店を出して食料供出していたらしい。
「P.A.Oda」は「K.P.A.Itaria」、関東まで手を出して勢力を三割ほど広げたが、かの大艦隊も艦数が足りなくなってきている。「六護式仏蘭西」を攻めるために、「鳥取城」の輸送力、備蓄力は是非、欲しいところだ。
 輝元はそれを餌にすると言う。「鳥取城」を「羽柴」勢に与え、引き換えに人狼女王に極東側の武将を襲名させる。これで、毛利側の戦闘に人狼女王が介入出来る。

 “無敵だね、輝元! 朕は君の聡明さに戦慄を得たとも!”と言う全裸に、単に腹が冷えただけだそれ、と返し、《総長》ルイ・エクシヴを戦場に出す手もあるが、それはまだだと言う。
人狼女王は自分が前線に出る場合、兵糧攻めに遭った「鳥取城」をそのまま使うことは無いだろうと問う。輝元は、狼は鼻が利くな、とMouri-32bの出店を出させながら、間者の集めた情報を話す。
 関東へ向かった「安土城」が「江戸」から物資を積んで、琵琶湖の信長の下へ戻ってくるらしい。輝元は手元の表示枠(シーニャカドル)を開く、そこに映るのは「M.H.R.R」女子夏服に身を包む、黒髪の鬼型長寿族の霊体、巴・御前だ。「羽柴」の動きを追っていたらしく、「K.P.A.Itaria」から「P.A.Oda」の本拠、琵琶湖に戻ったらしい。光学観測で柴田艦隊は「ノヴゴロド」南方に展開しているそうだ。
 平和な関東に有り余っていた備蓄を、「安土城」で一気に運び、途中で柴田に補給して「鳥取城」まで物資を届ける。柴田の「上越露西亜」侵攻と、羽柴の「毛利」攻めを確実とする訳だ。
 「聖連」を手にした「羽柴」が恐れるのは、「武蔵」と奥州、「上越露西亜」の協働だ。信長、羽柴の死後の歴史再現をされれば、信長暗殺を推進しなければならなくなる。問題は、今行われている「武蔵」の臨時生徒総会で、現「生徒会」が勝ち、三国会議を成功させることが出来るかだ。
 輝元は「有明」から経由される通神に映る「武蔵」《副会長》に視線を絡める。
 “正面から会ってみたい相手だぜ、女が攻め気になっていくのは、ぞっとするほど先行かれた気分になるものさ”

 白く広大な天井の下。正純は表示枠で諸処の情報を確認しながら、大久保の苦言を外す準備をする。正純は内心、言葉を作る。“大久保、お前、随分とこの「武蔵」や極東に対し、本気なんだな”
 自分が今の己を構築するいろいろがあったように、彼女にもそれがあった筈。それが何であったか解れば、大久保の真意や本音が理解できるだろうに。一体お前は、何を思って、ここにいるのだ。
 心の中で一息入れた時、表示枠が顔横に開いた。ツキノワが両の前足で掲げてくる。私宛の限定防護(プロテクト)付き?
 眼 鏡:やあ「武蔵」《副会長》。こちら、馬鹿な作家志望者を復元中のボランティアだよ。とりあえず、復元を進めながら情報を分析していたら、一昨夜に纏められていた通神文が出てきてね。

 正純の疑問の先、文字が高速で流れていく。シェイクスピアは、今、ネシンバラの自宅でプレス状態の彼を復元しているはずだ。ネシンバラの通神文とは「大久保・忠隣/長安の謀反の可能性と、その真意」というアイディア・ノートだった。その意味に対し、言葉を失った正純の正面で、表示枠は告げる。
 眼 鏡:これでトゥーサンのいる価値は認められるかい? 足りない作家希望者が、一国の運命を変える存在でなければ――、ボクを目標とする人間ならば、志望者の段階でそのくらいでいてくれなければ困る。将来的な釣り合いが取れないからね。

 どういう理屈か解らないが、記録しておいて後でハイディかナイトに渡そう。昼飯代くらいになると有り難い。内容は、と聞くと
 眼 鏡:見ていない。トゥーサンから君へのものだ。トゥーサンは馬鹿で足りないし、眼鏡と見たら誰それ構わず手を出すどうしようもない性癖のようで、まあそれはいいんだけど、あまりよくないけど、―――力の無いものは作らない。

 じゃあ、という言葉を置いて、シェイクスピアの表示枠(サインフレーム)は消えた。正純はネシンバラに感謝しながら、オリオトライへと振り返る。
 “先生、―――ちょっと、すいません。自分の中で、情報を整理させて下さい”


 狭い四畳部屋の中で、白衣姿のシェイクスピアはベッドに背から倒れ込んだ。大の字になって、毛布を広く掴んで、丸まって、ベッドの上で左右にローリング。視線の先にあるのは本棚ばかりの壁と、必要以外の部分を切り取られたネシンバラの装甲板がある。
 シェイクスピアは、口の端を歪めて装甲板に近づき、ん、と口を付けてから、一息を入れる。そして、喉、襟元に手を当て、インナースーツの合わせをほどいた。
 “今の内、少しくらいなら、いいよねえ――”と呟いた時、不意に、その長い耳を動かした。
 “いいリズムだ。――「有明」の上、西側で誰かが踊っているのか?”

 「有明」西側の表面に動く、装甲や防護術式のストッカーを入れ替え作業をしている軽武神達は、三派に分かれた。一番少ない一派は仕事をつづける者達。一番多いのは、「有明」上部に展開する幾つかの大型表示枠(サインフレーム)で、臨時生徒総会の中継を見ている者達。最後の一派は、“おい”、という呼びかけによって、少しずつ増えだした一派。
 彼らが見る先では、硬化竹材のパイプの上を、二つの影が移動している。どちらも女だった。二人はお互いの位置を交換し、移動し合っている。踊りの練習、または遊んでいるように見えるが、それは、追う方の女が、槍を振り回していなければ、だ。

 喜美は、口に笑みが浮かぶのを自覚していた。ようやく、自分の方がノってきた。大きな、舞として成立する動きが取れつつある。これは「訓練」だ。相手に「合わせる」ことが必要で、相手がこちらの動きについて来られるまで、本来の動きを封印していた。
 それが、徐々に解除出来つつある。二代の動きが、大きく速くなってきているのだ。だけど、まだまだだ。二代も慣れていない大跳躍を連続しているに過ぎない。喜美は、時折、跳躍のタイミングを遅くする。方向転換や、次の跳躍のための全身の動きを整え、繋げる事を忘れない。
 二代の足音は大きくなっている。跳躍に力が入り始めた。しかし、まだ《加速術》を使っていない。こちらも同様だ。ステージの端から端へと連続して跳ぶのは、舞の初歩卒業のレベルだ。こちらは身体のバネを、行きつ戻りする振り子のように使っているのに対し、二代は溜めて弾いてという動きを何度もやり直している。
 理由は良く解る。大跳躍のみを連続する戦闘など、まずあり得ないからだ。だから―――
 “フフ、《翔翼》。―――それで思い切り跳んで来なさい”
 後ろを向く視界に光が見える。流体光。《術式》の宿る光だ。

 二代は連続の大跳躍の為、前に出る足先、膝、肩の前に《翔翼》の術式陣を展開し、一瞬で進行方向の祓禊を行う。身体の前方に、澄んだ水の冷たさが空間として発生した感覚がある。
喜美を追う。彼女の跳躍技術は舞による体術だ。それを《副長》ともあろうものが、術式を使用して追い掛けねばならないとは、情けない以外の何物でもない。
 しかし、今は修行の身。師事しようとしたヨシキが、構えてくれた時間だ。《翔翼》による加速で、跳躍を倍加して追うに御座る―――!
 直後、二代は喜美が後方に大跳躍を放とうと、身を沈めるのを見た。そして
 “!?“
 二代は何もされた訳でも無いのに、宙に吹っ飛んでいた。

 “誾さん。――《副長》は、どうやら、真っ正面から自分の勝負に入ったようですね。どう思います? 《副長》の訓練について”
 “あの女は、いつも真っ正面過ぎて厄介です。下手に仕掛ければこちらが喰われます。”
 臨時生徒総会の現場。警護役の立花・宗茂と誾は橋上階段の奥端で、「有明」の装甲を震わせる二代と喜美の戦闘音を聞いていた。どうなる事でしょうか、と問う宗茂に、誾は呟くように言った。
 “――誰も彼も、遊びに誘うように戦場へ連れて行く、厄介な国です。”

 浅間は、目の前で何が起きたのか解らなかった。《翔翼》を発動させた二代が、いきなり彼女の進行方向右斜め上に、20m程の放物線を引いて「撥ね上げ」られたのだ。望んでそうなったのではない事は、彼女の身がバタついているので解る。
 横のヨシキが腰に手を当てて笑っている。“元気でいいねえ、若い子は”
 “若いと吹っ飛ぶんですか・・・”と、浅間は手元の表示枠(サインフレーム)を見る。
 浅間神社で契約を請け負っている《術式》と《拝気》関連のリアルデータは、喜美と二代のものを映している。それによると、二代が《翔翼》を使った後、喜美は後方に大跳躍をしただけだ。
 
 金マル:落ちた? 友人に拾わせよっか?
 ナイトが聞いてきたが、二代は身を回して姿勢制御をしている。周辺の警護の魔女(テクノヘクセン)隊には、万が一の時はと頼んで、空中で強引に側転を入れ、並ぶ足場の縁ぎりぎりに足裏を掛けた二代を見る。
 角度的にも位置的にも、身体を足場の上に持っていけないので、もう一度身を縮め、背後の足場に跳んだ。
 “あの、一体さっき、何があったんですか?”
 喜美は先程の足場の上に身を戻し、緩やかに回っている。片足と両手を外に伸ばし、身を前後にくねらせて回る喜美を見て
 “大跳躍のタメを内包したままかい。ホント、気分屋じゃなきゃ惜しい子だよ。さっきのは、喜美がジャンプするタイミングをズラしただけ。追いかけると相手は逃げる。そのテンポが読めて来て、距離も詰められそうだった。だから、詰めに行った瞬間。喜美が一瞬、止まったのさ。”
 《翔翼》を使うタイミングを完全に読み、祓禊式の術式を乱して自爆させたのだ。

 “やられたで御座る。――流石は喜美殿・・・”
 一般人相手に《副長》が云々、という問題ではない。この相手には、一度、「三河」で負かされているのだ。今、相対しているのは強敵なのだ。手の中の武器、《蜻蛉スペア》には不安がある。自分に対しても、だ。それを可能な限り、拂拭しなければならない。
 再び、二代は《翔翼》を展開し、―――行こうとした、その時だった。目の前が白いもので埋まった。

 “遅いわねえ。――ほらほらほら、気まずいクッション”
 二代は何が何だか解らなかった。いきなり、目の前に白い丸い立体が来て、前に出ようとした顔が埋まる。
 “喜美殿の胸!?“
 有り得ぬ、と二代は思った。デカさなら、浅間殿やメアリ殿が上にいるが、有り得ぬのは動きだ。緩やかなのに、何故かこちらが動くより先に飛び込んで来たのだ。これは、タイミングを読まれ・・・
 前に出ようとした勢いが、胸の弾力で上に持ち上げられた。《翔翼》が想定していない方向転換に対応しようとして、加速の祓禊を上に向ける。しかし、時間的にも方向的にも成り立たない。《翔翼》は砕け、一瞬だけ力を不均衡状態で発生させた。結果、二代は喜美から弾かれるように宙に吹っ飛ばされた。

 “今回は飛距離が大分出てますね”、“智ちゃん、ソッコウで慣れてない?”
 いやまあ、と浅間は言って二代の描く放物線を見る。

 距離にして40mを吹っ飛ばされながら、“どういう事で御座るか”と、二代は思う。自分の技が通じないどころか、封じられている。何も出来ないのは、戦いの質が違うのか、レベルが違うのかも解らない。
 だが、宙を舞う身で思うのは、もし、今までの戦闘で、一度でも喜美のような相手に遭っていたら。
 “拙者は負けて、極東は敗北したので御座ろうな”
 言葉にして、愕然とした。自分の弱さと脆さに、だ。
 “なに浸ろうとしてんの? 起きなさい!” いきなり、宙に落ちる身体が回され、半回転して足が足場の上に立ってしまう。力無く正面を見る視界に喜美の姿がある。
 
 “こぉ―――の、根性無しが!!!”
 頬にトルネード振りかぶり付きの打撃を受け、二代は宙を舞った。

 久し振りに見ましたよ、あれ。ナルゼ以来と言ったらナルゼが嫌な顔をするだろうが、浅間は呆然と喜美のトルネードビンタの動きと結果を見ていた。
 二代が四回転ほど空中でスピンしているが、喜美は自分の身を回す動きを利用して、二代の襟首を掴んだ。そして、大きく一度、髪を振る。
 撃音が響いた。喜美が、二代に頭突きをぶち込んだのだ。
 
 二代は不可避の打撃を受けた。襟首を掴まれ、喜美の腕一本で身体を振り回されている。足場を踏もうとすればバランスを崩され、浮けば回される。喜美の腕の力では無く、こちらの離れようとする体重移動や、不用意な動作を用いただけの崩しだ。つけ込まれているのではない。自分はちゃんとしようとしている。
 なのに―――

 “アンタ、どうしようもない女になっているわよ” 頭突きが来た。
 “――何でアンタ、他人とあわせてばっかりなの” 響くのが眉間に来た、染みるような痛みが鼻の奥まで届く。
 “――どうして、自分の事しか見ないの。他人に合わせたことばかりして、何一つ、自分で決めない。支分については自己評価しか視ない。他人を利用した自己中心のサイテーだわアンタ” 俯いた頭頂近くに一発が入った。
 それは、――仕方ないではないか。自分は未熟で、敵は強大な実力者ばかりだ。マクデブルクで柴田・勝家と相対した時は、防戦一方だった。相手に合せて凌ぐ事も戦術だ。だが―――
 “アンタの敵はアンタとまともに戦いたいと、そう思っていた筈よ。だけど、アンタは、自分の戦い方をしない。いえ、違うわね―――”
 喜美はこちらを突き放すように、一度外に振り、すぐに引き寄せた。
 “アンタはきっと、―――自分の戦い方を、まだ、持っていないんだわ”



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第413回 這いよれ!ニャル子さん W

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アニメ「這いよれ!ニャル子さん W」

 前回のネタはこちら 第110回




 第二期が始まった。
 第1話「進撃の邪神」、第2話「セラエノ図書館戦争」を見る。
 第1期よりパワーが落ちている感じがする。

 今期は蜘蛛邪神アト子さんは出てくるのだろうか?
 OP見ると、クー音はでてきそうだが。

 おそらく、イス香とのタイムワープものの話も出てくると思うのだが、原作のあの話は面白かったからな~

 主人公・真尋くんの隠された能力については、第1期でまったく説明されていなかったので、ぜひ、そっちのネタもやって欲しいものである。
不定形の無貌の神、ニャルラトホテプのニャル子にあの姿態を与えたのは?
いじめられっ子だったクー子をニャル子に助けさせ、ニャル子の攻撃の80%が快感になるほどのニャル子萌えに させたのは?
小学生の時、ハス太を学級委員長に任命したのは?

全部、真尋くんなのですね~

 原作は4月15日に11巻が発売されました(^^
這いよれ! ニャル子さん 11

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第412回 銀の匙 7巻

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荒川弘「銀の匙 Silver Spoon」⑦
銀の匙 Silver Spoon 7

 七月からアニメが始まるそうで、PVが出てないかなと探したらこんなのを見つけた。
 4巻の時の販促ムービーか、知らなかった(笑)



 今回は通常版と、大蝦夷農業高校生徒手帳つき特別版のどちらを買うか迷ったが、予算の関係で通常版を買ってしまった。

 ストーリーの方は、八軒くんとアキちゃんの関係は、一歩前進したようです。 

 ラスト・・・・、どうしたんだ、駒場!!

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第411回 境界線上のホライゾンⅣ(28)

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川上稔「境界線上のホライゾン Ⅳ(中)」 Horizon on the Middle of Nowhere
Episode Ⅳ-Part 2 適当ダイジェスト⑰


 承前
 「武蔵」アリアダスト教導院の正面の橋上、眼下に続く長い階段の下、左右の校庭や広場は、屋台や群衆で埋まっている。中央の階段を二つの影が上がってくる。赤のストールを掛けた大久保と、夏服姿の加納だ。
 “では―――”
 オリオトライの声が聞こえる。彼女は右手を挙げ
 “相対、・・・初めて頂戴!”

「第五十九章 天辺の双者」「第六十章 刻限の進軍者」「第六十一章 比較台の比較者」
04-028.jpg

 緑の丘の上、天幕の中、木製のテーブルセットに座っているのは「六護式仏蘭西(エグザゴン・フランセーズ)」《生徒会長》毛利・輝元と《副長》の人狼女王(レーネ・デ・ガルウ)テュレンヌだ。
 “なあ、人狼女王。「武蔵」の《副会長》と《代表委員長》、どっちが勝つと思う? ああ、Mouri-01、麦茶を頼む。冷えたやつ”
 冷や麦ですね。と言うのを、微妙に違うと思いながら人狼女王の答えを待つ。
 “どちらが勝っても「六護式仏蘭西」の王は、アンヌがまとめた通り、「武蔵」と友好を持つ。代表が変わったとしても、国としての決定は変わりませんわ。”
 それは《副会長》が負けるという事かと聞く輝元に
 “普通に考えたらTes.ですわね。娘の通神覗き見して発覚した事実ですが、――なんとまあ、「武蔵」の《副会長》は、なんでも戦争にして収めますのよ?”
 “・・・なんでそんな国と仲良くしようと思ったんだ、アンヌは。”
 そこへMouri-03が湯呑みを盆に載せて持ってきた。
 “ハイ、冷や麦”と渡された湯呑みを口に持っていき、即座に吹いた。冷や麦のつゆであった。護衛のアンリとアルマンに抱えられて連れ去られるMouri-03と入れ替わりに、Mouri-02が正解を運んでくる。
 「六護式仏蘭西」の当面の問題は、「羽柴」の「毛利」攻略だ。歴史再現による水攻めの無血開城を狙うかどうかが焦点となる。だが、今、人狼女王の広げた表示枠(シーニャカドル)には「武蔵」の臨時生徒総会の中継が映されていた。相対する二人の紹介分は

「武蔵」《副会長》:本多・正純 :貧乳枠
 「大罪武装(ロイズモイ・オブロ)」の回収と「末世」解決を目的とした世界征服と、平和を目標とする
「武蔵」《代表委員長》:大久保・忠隣/長安 :並乳枠
 「羽柴」勢力の歴史再現を非戦で見届け、聖譜記述に基づく平和な極東支配を目標とする


 なんか、いろいろと悪意のあるような紹介分だが、《副会長》は苦労しそうだ。

 「英国(イングランド)」では玉座に座る《妖精女王》エリザベスが、“さて”と言い表示枠(サインフレーム)を表示した。
 「三征西班牙(トレス・イスパニア)」ではフェリペ・セグンドが、“どうなるかなあ”と、表示枠(コルテチエフィルマ)を掲げた。
 「M.H.R.R(神聖ローマ帝国)」北部では、“どちらが勝つか”と巴・御前が表示枠(レルネンフィグーア)を前に腕を組む。
 「K.P.A.Itaria」では玩具の並んだベッドの上で現《教皇》のオリンピアが。
 「M.H.R.R」の小さな都市で、艦群に補給を受けている羽柴とマティアスが。
 「伊達」、「最上」、「上越露西亜(スヴィエートルーシ)」、他、多くの国で、“どうなる? この後、衝撃の展開が?”と、二人の少女を見つめていた。
 突然、「武蔵」《副会長》が右肘から上を上げ、こう言った。
 “先に言うが、今回、絶対戦争しないからな? 私、平和主義だし。”

 ● 画:汚いわね。さすが、政治担当者は汚いわ。先に予防線を張るなんて
 あさま:自分に対して張るのは予防線って言うのでしょうか・・・?
 煙草女:今、機関部なんだけどさぁ。皆、え?って顔してんだけどさぁ
 副会長:う、うるさいな!仕方ないだろ!!このくらいしておかないと、また流れでそっちに行くかもしれないじゃないか!!

 “ちょ、待てや”と、教導院前の橋の上でいきなり反応が生まれた。
 大久保は右腕を肘から上を上げて、眉をフラットにした顔で
 “「末世」解決と「大罪武装」の回収において、世界征服をその手段とする方針は、今の「平和主義」というのは矛盾しませんか”
 “先に言っておこう。矛盾しない、と。――線引きをしよう、大久保”
 二人は橋の艦首側へ移動する。眼下にあるのは道や広場を埋める人の群れだ。正純は息を吐き、大久保は息を吸った。そして臨時生徒総会・主催、大久保が宣言を始めた。

 オリオトライは手元の表示枠の鍵盤を叩く。見守る人々の前に広報委員からのインフォメーションが現れる。
 ●大久保「非戦派」
 ・目的:戦わず、「三河」動乱以前の状態に極東を戻し、平和を再獲得する。
 1.「羽柴」勢、「P.A.Oda」との同盟を経た上で、「聖連」指示による歴史再現を推進する。
 2.「武蔵」を「有明」に格納し、それ自体を極東の抑止力とする。
 3.あらゆる戦闘を拒否、ヴェストファーレン会議にて、全て議論により決着を望む。


 続いて正純が現「生徒会」、「総長連合」の方針を延べる。

 ●副会長「好戦派」
 と、インフォメーションの一行目が出たところで、正純がオリオトライに抗議した。
 “せ、先生! 意図していない誤解があります!”
 “あら、「主戦派」の方が合ってるって事?”
 隣の大久保が引いてる気がするが、正純はふと思いついて、「抵抗派」にしてもらう。

 ●副会長「抵抗派」
 ・目的:「大罪武装」の回収と「末世」の解決によって極東の地位を戻し、平和を獲得する。
 1.「羽柴」の抑制を行う事。
 2.「武蔵」の戦闘力を確保し、その力で各国に協力していく事。
 3.ヴェストファーレン会議で、暫定支配の解除と、世界の拡大を要請すること。

 
 “大きく出ましたねえ。世界征服の先、この世界をどうするか、まで行きましたわ”と人狼女王は呟いた。テーブルの向かいで輝元が、大きく出過ぎじゃねえかと答える。
 自動人形のMouri-01の判断では《副会長》側が圧倒的に不利だと言う。極東の権利を「重奏統合騒乱」以前までに戻し、極東を独立させるには現実的な問題がある、と。

 大久保が一歩前に出て、皆に問う。
 “どうやろか皆。今、《副会長》が挙げた目的や三つの案件、――問題ないと思うか?”
 答えは無い。皆は首を傾げるだけだ。
 “ええですか?「末世」解決、暫定支配からの解放、各国への開拓要請、そんなん、各国が飲むと思うてんのか?―――無理やわな。第一に「羽柴」の抑制を行う、言うて、負けとるやないか”
 大久保は《副会長》の提示した方針に苦言を書き込んだ。

 1.「羽柴」の抑制を行う事。
  ×:「羽柴」に敗戦してるではないか。


 続いて
 “「武蔵」や極東は、もう後が無いんやで? 「武蔵」の改修、武装に予算も大きく使うたやろ? 失敗したら終わり。そんな賭け事に、「武蔵」や極東を付きあわせるんか? どないや?”

 2.「武蔵」の戦闘力を確保し、その力で各国に協力していく事。
  ×:各国の協力の確証が無い。
  ×:「武蔵」事態に後が無いのに、賭けのような事をするのか。


 大久保は吐息と共に告げた。“現実みようや。極東を「三河」以前に戻してな。”

 正純は、面倒なやり方を持ち出して来たなと思った。大久保の論には意図的な勘違いがある。もし、理想というものが政治的に許されないならば、「目標」や「方針」すら持てなくなる。未達成だから「目標」なので、それを叶えるための「方針」なのだ。

 あずま:あのさ、ふと思ったんだけど、大久保さんの言うように、絶対、叶えられる事だけをやっていく事は出来ないの?
 ● 画:甘いわね、確実な事ばかりって、そんなことしたら戦争出来ないでしょ? 正純は戦争したくて政治担当者やってるんだから、その辺を理解しておくべきね。極東の政治は地獄を呼ぶのよ
 あずま:あ、そうか!御免、余は本多君の事を誤解してたよ! 
 副会長:怒らない、怒らないぞ・・・

 「上越露西亜」の女子部屋の中で、女装の声が生まれた。
 “セージュン、ミスッてんの? テンション上がってないみたいだし。俺、《生徒会長》だけど、よく解らない部分大きいし、もうちょっと解ると、何か言ってやったり、茶化したり出来るんだろうけどな”
 “我が王”と、ミトツダイラは己の主を安心させるために言う。
 “《代表委員長》は、こちらの掲げている「目標」や「方針」を、「上手くいくか解らない」という、ネガティヴなものに置き換えているんですの”
 女装は、上手くいくかどうか解らないものは、しない方がいいんじゃないかと言う。女子部屋に入れず、ドアの前に立つ《第一特務》は、新製品を一切作らないパン屋は発展していくと思うか、と問う。
 “確かに、国として考えた場合、今までどおりの事だけをやっていては発展がありませんね。「青雷亭 BLUETHUNDER」では、軽食も出しますし、漬物や駄菓子も出しますよ。”とホライゾンが頷きながら言う。本当にパン屋兼軽食屋なのか、怪しい気もする。
 常に同じパンを作っていると、定期収入などで安定しているように思えるが、周りは変化していく。他のパン屋が時代に合わせたパンを作っていくのに、時代遅れのパン屋が作ったものが売れるか?
 では、何故、あの眼鏡代表委員長の言っていることが通じるのか? 発展しない物言いが通じるのは、ほとんどの人が、古い、安定したものを好むからだ。
 ミトツダイラは言葉を繋げる。
 “政治の場合、単に懐古では成り立ちませんの。《代表委員長》は懐古を餌にしつつ、それなりに「時代に合わせたやり方」をやっていくつもりでしょう。パン屋で言うなら、最新の窯で「昔ながらの製法」ということでしょうね”

 “成程な“と正純は思った。この討論の勝敗は、基本的に相手の論を潰し、自分の論を活かすことだ。だが、大久保は更に、世論を考えている様だ。
 大久保の「三河」以前という言い方は、まるで、支配からの解放を得た感がある。自分とて、暫定支配からの解放を「目標」に上げているが、先行きの解らない未来より、過去の情景の記憶の方が、鮮明に想像できる。そして、その物言いが物凄く働く論戦術がある。

 “追加で言わせて貰おか。「三河」以前に戻れば極東は暫定支配下に逆戻り。そういう気もするわな。しかし、この三か月、戦闘と、緊張と、実際の疲弊と、損害と敗戦や! 支配を脱する成果は何も出とらん。「三河」からこっち、疲弊と損失以外で得たものがあるなら、話も聞こうや”
 大久保は正純の方針の第三を見る。

 3.ヴェストファーレン会議で、暫定支配の解除と、世界の拡大を要請すること。
  ×:2同様、やはり協力の確証がない。
  ×:支配解除の気配が一切無いのに、本当にそれが出来るのか。
 

 “どうや、現実、どこにあるんや?《副会長》の「方針」・・・”
 大久保は橋上で腕を振った。既に下側、道路や広場に集まった誰も彼もが、多くの言葉を発しなくなっている。討論の内容として列記された表列。《副会長》側のそれには、自分が異を唱えた分だけの×が並んでいる。
 上から見ると、こちらを交互に見る人々の動きが良く解る。×の多さから「《副会長》が間違っている」と、そう思い、戸惑う動きだ。これが、政治担当者の視点か。三か月ほど前、「三河」では、これを下から見ていたのだ。手は抜かぬ。
 “ええか、苦言追加や、二つ、×は揃えて行きたいしな。「羽柴」を抑制言うて、「羽柴」が極東の支配者に一時なりともなるのは、聖譜記述で確定事項や”

 1.「羽柴」の抑制を行う事。
  ×:「羽柴」に敗戦してるではないか。
  ×:「羽柴」の天下を認めないのは聖譜に対する反抗ではないか。


 まだまだや、手を抜かない。まだ攻めが甘い。
 2と3のどちらにも「各国の協力の確証が無い」が入っている。これを別の物で補強した方がいいだろうか。
 2は「武蔵」が各国に力を与えていくという事だ。
 3は「武蔵」が各国の力を求めていくという事だ。
 2においては「武蔵」側からの動きだけで「協力」と解釈される。《副会長》はそこを突いてくるはずだし、一気に二つの×が消えてしまう。だから修正を掛けた。

 2.「武蔵」の戦闘力を確保し、その力で各国に協力していく事。
  ×:「羽柴」の勢力下にある無数の大国との戦闘が不可避である。
  ×:「武蔵」事態に後が無いのに、賭けのような事をするのか。


 “「大罪武装」の回収と「末世」の解決と言っても、それがどのようなものか解らんのやろ? 謎解きの先行き不明な旅道中なら、私達を巻き込まんで、「生徒会」と「総長連合」の趣味人だけで行ってくれません? 現状、損ばかりの目的で、成功の確証も何も無い。《副王》ホライゾンの奪還のために言い出した大義名分は「三河」で役目を終わってんで? 少なくとも敗戦した「武蔵」の手に負えるものでは無いわな”
 
 大久保は一息入れて手を外に振る。人々がおおと声を挙げる。表示枠には否定の列が並ぶ。

 ●副会長「抵抗派」
 ・目的:「大罪武装」の回収と「末世」の解決によって極東の地位を戻し、平和を獲得する。
  ×:この大義名分は《副王》ホライゾン奪還のためのものではなかったのか。
  ×:「武蔵」の手に負えるものではない。
 1.「羽柴」の抑制を行う事。
  ×:「羽柴」に敗戦してるではないか。
  ×:「羽柴」の天下を認めないのは聖譜に対する反抗ではないか。
 2.「武蔵」の戦闘力を確保し、その力で各国に協力していく事。
  ×:「羽柴」の勢力下にある無数の大国との戦闘が不可避である。
  ×:「武蔵」事態に後が無いのに、賭けのような事をするのか。
 3.ヴェストファーレン会議で、暫定支配の解除と、世界の拡大を要請すること。
  ×:各国の協力の確証が無い。
  ×:支配解除の気配が一切無いのに、本当にそれが出来るのか。


 大久保は、現状はこんなところだと言い、話題の展開で変更があるかもしれないと、オリオトライに視線を向け、《副会長》側のターンを、と促そうとするが、オリオトライは右手を挙げている《副会長》を見ていた。それに引かれ、大久保は隣を見る。
 “すまん大久保。お前の挙げた「目標」やその達成項目について言うべき事がある。それは―――”
 来るか、と大久保は息を吸い、内心で軽く身構えた。

 “否定は無い。私達は《代表委員長》側の提示する未来について、否定を行う意味を持たない。その未来について価値があると認めよう。―――そういう事だ。”


 “フ、基本原理だね。別段、驚くことは無いよ”
 丘に建つ天幕の中、グラス片手にやってきた太陽全裸がそう言った。政治担当者は、ありとあらゆる人々の意見を聞く。有用な意見を取り入れるだけではなく、その権利を行使するためにも聞く必要はある。絶対王政でも、それは当然だ。
 隣の輝元が、カ、と小さく笑う。
 “つまり、「武蔵」の《副会長》はこう言ったんだ。――「武蔵」の政治を動かしているのは自分だ。覚えておけ、ってな”
 向いに座る人狼女王はテーブルに胸を預けるようにして、自分の表示枠を見る。
 “さあ、――ここからが打撃戦ですのよ?”

 大久保は息を吸った。一瞬、熱を持ちかけた身を、冷えた空気を入れる事でアジャストする。
今聞いた《副会長》の物言いは、こちらへの服従でも屈服でもない。「武蔵」の政治担当者として、受け入れるべきを受け、採用できるところはする、と線引きされた訳だ。しかし、と
 “私の言う事が、単に市民の意見をまとめただけやないと、理解出来ていますか?”
 “Jud.当然だ。だから、お前がここに居る事を認めている。《代表委員長》であるお前には、政治を動かす権利と義務がある。私に対して、お前が「間違っている」と言うならば、私はその言を思案しよう。
 政治担当者としての知識もあり、責任も掛かっての発言なのだろうからな。“

 言っている意味は良く解る、ここから先は自分達の立場を賭けろと、そういう事だ。
 大久保は眼下にいる人々を指し、言った。
 “勝利の意味は、解っていますか?”
 《副会長》は言った。
 “解っているとも。―――誰もついてこないのでは負けだ。そういう事だろう?”

 正純は息を一つ吐いた。肩の裏側から力を抜く。
 まだまだだ。大久保は本気になっていない。この後輩は襲名者だ。それも二重襲名者だ。親も襲名者で大久保家を任じていたが、こちらは親子共々、襲名に失敗した非襲名者だ。この場合、こちらが胸を借りるというのが正解だろう。
 大久保はそこそこある。何がだ。以前、ミトツダイラは胸を貸して失敗したと聞く。つまり、襲名者でも胸を貸すのには、油断と危険が伴うという事だろう。
 “《副会長》、さっきから私の胸が、何か?”
 “気にするな、前例と共に思案すべき事があっただけだ”
 さて、停滞の壁を壊していかねばな。二重襲名者の大久保が、停滞だけの政治をやろうとしている訳がない。反撃を視越し、議題の理解速度なども考慮し、真意を後ろに置いている筈だ。だから―――
 “いいだろうか。《代表委員長》から述べられた、こちらの政策への苦言。それらが、何故そうなっているのかをこれより述べ、全て解除していく”

境界線上のホライゾンⅣ(中)」 ENDE
4中

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 う~ん、長かった。
 ペースが大分落ちてしまった。
 下巻はもっとぶ厚いです (゚Д゚`*)エ~



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第410回 クロスボーンガンダムX2

Posted by ヒッター7777 on   0 comments   0 trackback

クロスボーンガンダムX2
クロスボーンX2

 これはTV版を観ていないので、どんな話なのかさっぱり解らんのだが(笑)

 プレミアムバンダイから、新製品の紹介メールが来たので覗いてみた。

 う~ん、マントを羽織っているのですか。白いのが1号機で黒いのが2号機なんかな?
 ユニコーンとバンシィみたいなものか。
クロスボーンガンダム
 Ver.Kaとなると欲しいなあ、と思ってしまう。
 
デカール貼りが面倒なんだよな~
クロスボーンデカール

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第409回 デビルマンG

Posted by ヒッター7777 on   0 comments   0 trackback

高遠るい「デビルマンG(グリモワール)」 既刊2巻
デビルマンG 2

 前作「ミカるんX(クロス)」以来のファンである。
 巨大全裸美少女ものも良かったが、今作は永井豪さんの名作「デビルマン」のリメイクであり、新設定がされている。
 魔鬼村ミキちゃんがいないと、アキラくんは変身できないんですね~
 つるぺたシレーヌが良かった・・・

 シレーヌ篇がひとまず終わったかと思いきや、まだまだしぶとかったようです。

 次巻も楽しみ~


 ミカるんX 全8巻も良いよ~
ミカるんX





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第408回 境界線上のホライゾンⅣ(27)

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川上稔「境界線上のホライゾン Ⅳ(中)」 Horizon on the Middle of Nowhere
Episode Ⅳ-Part 2 適当ダイジェスト⑯


「第五十七章 過去下の語り人」「第五十八章 遠方の発起人」
04-027.jpg

 東の空に光が消えたのを確認した里見・義康は、空気が変わっているのに気付いた。初夏の夜が更ける時分、気温が下がり始めたのだ。振り向いた先、最上・義光は空を見上げたまま、手元に酒の徳利ピッチャーを置き、“飲むかえ?”と聞いてきた。
 酒に弱い自覚はある。「ISUMO」でも散々な目にあった。北条・氏直への屈辱はいずれ返す。自分も大きくなるのだ。“私は、いい。”と断ると、アデーレが鼻を動かした。“甘酒ですか?頂きます!ノンアルコールですよね!”と言うのに、失敗した!と思った。気を取り直して、“義光、先程の話だが”と、問うと、義光は従士と甘酒の器を軽くぶつけて口に付ける。
 ややあって、不意に作られる言葉は、
“「約束」であろう。少しばかり酔うてきたものだし、少しは良いであろうよ。奥州から「上越露西亜」に至る、大共同体の夢見よ・・・。子供たちがそうとは気づかず、家族であり続ける事で、望んだもの。――子供達ならではの、夢よのう。”

 ホライゾンは女子用の居室のテーブルで、寝間着姿のメアリが眠気醒ましに淹れてくれた茶に会釈し、大共同体というものが、楽に作れそうに思うのは、自分がまだ世界の事を解っていないからなのかと思う。
 表示枠(サインフレーム)の中の正純は、共同体の捉え方がどこまでのレベル化によるだろうと答える。相互扶助の約束なのか、同盟なのか、後に行くほど構築は至難になる。
 メアリの妹、エリザベスも「英国」で他の三邦との協同を望んで努力しているので、その苦労は解るらしい。共同体とは意識の共有だ。
“Save you from anything. 子供の頃の「約束」とは守られるものです。私はそう信じていますよ。”

 ミトツダイラと本庄・繁長は、廊下に出てきたメアリから湯呑みを受け取る。非公式の外交だから立ち話だ。メアリが男部屋の方を見るので、《第一特務》を呼ぼうとしたら、ドアが蹴り飛ばされる勢いで開き、本人が転び出てきた。二人もお茶が欲しいようである。
 ホライゾンが二律空間から珈琲豆を取り出すが、挽機(ミル)が無い。しばらくして、メアリは点蔵へお茶を、トーリへ器に入った珈琲豆にネギ醤油を掛けたものが運ばれていった。ややあってから、繁長が“美味いのであるか?”と聞いてきたが、ミトツダイラは、“さて”と話題を戻す。
 “大人達が奥州と「上越露西亜」の未来を案じ、今代の指導者や、戦争の主軸となる者達を幼い内から交流させた、というのですね。”
“「上越露西亜」の意向としては「清・武田」や「北条」を巻き込みたかったようだが、「清・武田」は義経が長であり、「北条」も内部の跡目争いがあって、大きな関係は築けなかったようだ。後見人は「伊達」は義姫が、「最上」は義光が、「上越露西亜」は謙信公を襲名していた景勝と、マルファがついた。”
 ここで表示枠の中の正純が疑問した。
 “「伊達」、「最上」と最終抗争を行う本庄・繁長や伊達・政宗がその中にいるのは解る。だが、聖譜記述で、その後、死ぬ事になる小次郎と駒姫が、何故、入っている?”
 繁長は湯呑みを一度口に当て、息を己に入れる。
 “死が約束された二人。いずれいなくなってしまう二人は、しかし、私達の「家族」だ。―――だから私達は約束したとも。二人を守ると。―――死の歴史再現を解釈で乗り越え、以後は二人を自由にしよう、と。そう、「約束」したからだ。”

 正純は外交艦の中庭で、ふ、と重い息を吐いた。
 泰衡の言っていた、これが奥州の気質か。強固な、国や家庭を超えた同朋意識と、抵抗の意志。だが、それは果たされなかった。その原因は・・・。
 政宗による小次郎の殺害も、駒姫の自害も、解釈が無ければ成り立たない。「羽柴」が関する歴史再現を、奥州側が切り抜けるには、最大の前提になるのは「松平」が「羽柴」以上の存在になっている事だ。「清・武田」が一気に衰退し、「里見」と「江戸」も攻略され、「武蔵」は敗戦を得た。「羽柴」は《竜脈炉》も持っている。そうなれば、奥州は従うしかない。
 だが、おかしな部分がある。何故、奥州の気質を持ち、家族の意味を知り、「最上」の政治判断が出来る最上・義光は駒姫の自害を認めたのか。

 “鋭いのう” 義光が二つの月に向かって呟くのをアデーレは聞いた。
 “駒姫は、賢い、いい子よ。「羽柴」の申し出に対し、抵抗を示す私を、救けようとしたのであろうなあ。・・・私の見ていぬところで、自害したのよ。”
 ココ、と義光が声を絞り、肩を落とした。
 “あれは、効いたぞえ。――護る事が出来ぬと、信用されておらぬようでのう。―――無論、「伊達」も同じであろうが、な。”

 崩れ、一部が崩落した「仙台城」の主庭。中央にある大木の枝も折れたその下で、義姫は土の地面に座り込み、その膝に政宗の頭を乗せている。
 “政宗と小次郎は双子でね。産むときは苦労したもんだ。この子達、その時からちょっと角があってね。出す時、超激痛で、出してみたら産婆の手伝いで来ていた義光姉が、あ、もう一人いるぞえ、って”
 政宗の額に当てられた手には、治療用の符が重ねられている。
 “大体、竜神様の子だよ。神道のものじゃない、奥州の、この土地に住む第精霊さ。力は強大でね。私でも、耐えられるものじゃなかった。だから、「青竜」をこの子の守護に送ったのさ。二律空間に封じられ、加護役となり、竜神の力を消化する力を持つからね。”
 だけど、と半竜が言葉を挿した。
 “「青竜」が護るべき子は、双子だったというわけだな?”

 ウルキアガは幾つかの事を理解した。竜神という存在が、人に宿り、生まれる事で現世に出ようとしたならば、完全な形を欲する。男女、それぞれの形を作り、二人で一つとなるように、己を作ったのだ。政宗と小次郎の角が、片側一本なのは、そういう事なのだろう。
 “小次郎は自害したのだな?”
 成実が首を横に小さく振った。“竜神の力を持つ身が、そうそう自害を許す筈も無いでしょう。―――居室を血で染めた中、まだ、息があった小次郎様の願いで・・・、政宗はその命を奪ったの。「羽柴」は「武蔵」を追ってきた前田・利家の術式で二人を呼び出し、固定したわ。”
 義姫が政宗の前髪を掻き上げて言う。
 “面倒だねえ。霊体となった小次郎の影響を受け半実態と実態に分かれた「青竜」は、自分が小次郎と政宗の、どちらにつけばいいのか、何をすればいいのか、解りもしない狂竜となってしまった。「青竜」が護るべき政宗が、守るべき小次郎を殺してしまったんだから。”

 厄介だ、と正純は思った。これが、三国の事情か。
更には、“どうなってんのさ”と、「伊達」の《副会長》片倉から送られてきた資料を見て、直政が吐息する。三十年ほど前、「青竜」は極秘に送られてきたものだという。送り主は松平・元信。ホライゾンの父だ。西の「三征西班牙」に「白虎」。関東南部で発見された「朱雀」。「玄武」はまだ発見されていないが、元信公が極東四方の守りに置いたのか?
 三十年前に前倒しされた「島原の乱」。その乱を起こした旧派(カトリック)勢力の手で開発され、戦後、「白虎」以外が行方不明になった。元信公の狙いは何だったのだろう。
 思うべきことが増えた。いろいろな情報を得たのは確かだが、それをそのまま受け止めるのではなく、飲み込み、一度洗い直すと、どうなるだろうか。
 “少し頭を冷やすよ”と、ツキノワを葵姉に放る。正純は夜の水に倒れ込んだ。冷たさが神や服に染みてくる。空に二つの月がある。まずは「臨時生徒総会」だ。明日は、忙しいのだ。


 「武蔵」の朝は早い。早朝の光を浴びるアリアダスト教導院前の橋下で、「真田十勇士」の潜入組、三好・伊佐はそう思う。「有明」に潜入して、屋台を作ったり天幕を立てたりになるとは思わなかった。「臨時生徒総会」用の設営である。姿を見せない穴山・小助が、周囲の屋台が開店の準備を始めたのを見渡す気配がする。“昨夜はどうでした?”
 “んー、急場の人形としては、あんなもんじゃないかなあ。少しは名前が売れるといいよねえ、私達”
 “そうありたいものです。「武蔵」要人の暗殺。――この時期に、センセーショナルでいい話ですよ”


 晴れた空に巨大な影。椀状の基底部をもって宙に浮いた都市、「ノヴゴロド」がそこにある。太陽の側に術式遮光壁を立てた死人の街は、ゆっくり自転しつつ、空の一点を動かない。
 そのテラスに二つの影があった。長椅子に座って東の空を見る女市長マルファと、その執事、トビーだ。初老の男は極東式表示枠に「武蔵」《副会長》と《代表委員長》の画像を映す。遠く南の空には、黒いガレー船を中核とした、幾つもの影がある。
 “柴田・勝家の手勢。昨夜から、あの位置に来てますぞ。”
 “うちが何かしないかと、そう思っているのだろう。なかなかいい勝負勘だ。牽制であり、挑発であるのがなかなか面白い。なあ、ここが「七尾城」となった場合、ちゃんと、景勝は来るのだろうか。あの男は罪を被りたがるからな。女の私としては、過去など、着なくなった服でしかないのにな。” 
 マルファが視線をテラスの、もう一方のテーブルに向けると、そこには二つの人影がある。極東式の衣服を纏った中年の剣士と、「三征西班牙」式の衣服を黒く染めた中年の紳士だ。彼は相手の話を受けては笑い、時には表情を消して深く頷きもする。
 “極東の剣豪と、欧州の発火点ともなる政治家。――その接点をここで見る事になるとは。「P.A.Oda」に何を言われるか予測がつく。剣豪の方は、受け取るものを受け取ったら行くのだろう。用意をしてやれ。こちらも準備だ。「上越露西亜」の広報委員と連絡をつけておけ。そちらの通神帯(ネット)を乗っ取る形で「武蔵」と通神を行うと、な”

 昼前の空の下。白い雪原上に、空に浮かぶ巨大な椀を見上げる、三つの視線があった。前田・利家と佐々・成政、不破・光治の三人だ。表示枠(レルネンフィグーア)の望遠術式で巨大建造物を見上げる利家は、「ノヴゴロド」から出て行こうとしている艦を二人に示す。
 “「ノヴゴロド」が妙な動きをしている。”
 不破も自分の表示枠(インシャ・コトプ)を出して、北陸から欧州までの概要図を映す。
 “「ノヴゴロド」はハンザ同盟の東端ともいえる貿易都市。北においてはバルト海沿岸から「三征西班牙」まで、南は河川を利用し黒海、地中海まで管轄しているのよ。”
 つまり、あそこにいる艦船は欧州の船という事だ。利家の表示枠に映るのは白と紺を基調とした艦群と、黒と金を基調とした艦群の二国分だ。黒の方は「M.H.R.R(神聖ローマ帝国)」北部を通過しようとするのを阻止しようとして、巴・御前に介入された艦群だ。
利家は、あれはヴェストファーレン抜きで厄介な相手だ、と言う。

 正純は風紀委員の護衛で、アリアダスト教導院の控室に案内されていた、ナイトやナルゼ、直政ら「総長連合」とは離れての行動だ。浅間と葵姉は、何やら別で用があるとの事だったが。「青雷亭 BLUETHUNDER」の店主が「有明」の屋上で呼んでいるのだそうだ。
 不意に空に色が生まれた、大型、全域通神用の表示枠(サインフレーム)だ。「有明」艦長の“有明”が映し出される。
 “こんにちは、皆様。”有明“から外部通神の御案内です。内容的に「有明」内部の方達と共有すべきと判断しました。「上越露西亜」所属、「ノヴゴロド」からの通神です。―――以上”

 ノイズにまみれた映像に映っているのは、テラスに立つ一人の男。顔も手先も見えないほど、影で霞んでいるが黒の制服姿だというのは解る。「三征西班牙」だろうか。上着の裾を長くしているため、牧師風に見えるが、「三征西班牙」は旧派(カトリック)の筈だ。
 ノイズ混じりの男の声が、ゆっくり聞こえてきた。軽く右手を上げ、左手のカンニングペーパーを見ながら、“コーニチハキョクトノミナサァーン、――ァゲンキディスカァ”
 賢姉様:貧乳政治家! この程度で面白いと思っちゃ駄目よ? ここから三歩進まないと駄目なのを理解しておくのよ! いい?
 あさま:あ、すいません、喜美。ちょっと笑っちゃいました
 駄目なのか! と内心、衝撃を受けた正純は続く言葉を聞く。
 “私は、――独立「阿蘭陀(オランダ)」教導院、《総長》兼《生徒会長》、オラニエという者だ。”

 ミトツダイラは自分に与えられた居室で、浅間から回されている「有明」の情報を得ていた。
 “「阿蘭陀」? ヴェストファーレン会議の主役国の一つですのよ!?”
 三十年戦争の決着をつけるヴェストファーレン会議は、世界最初の国際会議と言われるもので、そこでは幾つもの問題の解決が図られた。「阿蘭陀」の独立もその一つだ。「三征西班牙」の飛び領地だったが、宗教改革で改派(プロテスタント)の国として、旧派(カトリック)の「白耳義(ベルギー)」と共に、「西班牙(スペイン)」から独立を果たしていく。
 その「阿蘭陀」を味方につける事は、「M.H.R.R」への牽制ともなり、ヴェストファーレンの戦勝国側に「武蔵」を近づける事にもなる。

 正純は息を殺して、空から聞こえる言葉に集中していた。
 “「武蔵」の臨時生徒総会の勝者よ。可能ならばここまで来て欲しい。君たちに伝えなければならない事がある。―――それは「末世」を解決する方法の一つ。「創世計画」がどういうものであるか。君達は知るべきだ。あれは死を―――”
 消えた。空の大型表示枠が砕け、光が散る。すぐに、《通信遮断》と書かれた表示枠が復活するが、次に現れたのは若干のノイズの入った明るい映像だった。
 “こんにちは、「武蔵」の諸君。「P.A.Oda」《書記》、「五大頂」の二、六天魔軍の二軍を預かる丹羽・長秀だ。”
 白の「P.A.Oda」女子制服を改造して着込んだ女が、薄い笑みで画像を埋めた。

 丹羽は空にいた。戦闘外交艦「聚楽第」の前部甲板で、伊達・小次郎であった羽柴・秀次と駒姫を背後の左右に置いている。そして撮影隊に向けて手を翳す。
 “「ノヴゴロド」に柴田が警告の砲撃を入れた。「阿蘭陀」からの呼び掛けは夢と知れ。身の程を知らずに「武蔵」が「ノヴゴロド」との関与を得るようであるならば、「聖連」は「ノヴゴロド」に「七尾城の戦い」の歴史再現を押し付けるだろう。”
 いいか? と丹羽は言った。
 “得ようと思うな、現在の敗戦国。それを行えば、失われずに済むものが失われると気付くがいい。”

 撮影隊の隊長が頭上に両手で〇を作る。
 “ハーイ、良好です! いい感じでえす。お疲れー!”
 “朝御飯まだの子は言いなさーい。仕出し手配するから甲板で一緒にねー”
 ・・・通神、切れてないぞ、と正純は和気藹々と甲板で仕出し弁当を囲み始めた丹羽と「P.A.Oda」戦士団を観つつ、一息を入れた。ややあって、画像の視界が動いていく。片付けが始まったのだろう。
 画面が一旦、ブラックアウトして“有明”が映し出された。
 “皆様、お楽しみ頂けたでしょうか。では、そのままで―――、これより、「臨時生徒総会」の開催契約を始めたいと思います。―――以上”

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第407回 傀儡謠

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傀儡謠

 先日、「アリシゼーション・ライジング」を読んで、続きはどうだったっけと次巻の分を読んでいたのだが、アリスが「右目の封印」を破るシーン。

 アリスの右目の、真円を描く蒼い光彩。
 その周囲に、赤く発光する微細な縦ラインが行列を作るバーコード。
 回転が停止し、アリスの収縮した瞳孔の真上を横切って奇妙な記号の羅列が、これも真紅に輝きながら浮かび上がった。

 それで思い出したのがこれである。
 作品的にはこっちが先なんだよな。

 映画「INNOCENCE」より、川井憲次「傀儡謠  怨恨みて散る」
  

 一日一夜(ひとひひとよ)に 月は照らずとも
 悲傷(かな)しみに鵺鳥(ぬえとり) 鳴く
 吾(あ)がかへり見すれど
 花は散りぬべし 慰(なぐさ)むる心は
 消(け)ぬるがごとく 
 新世(あらたよ)に 神(かむ)集(つど)ひて
 世は明け 鵺鳥 鳴く
 咲く花は 神に祈(こ)ひ祷(の)む
 生ける世に 我(あ)が身悲しも
 夢(いめ)は 消(け)ぬ 怨恨(うら)みて 散る

 やまとことばって、なかなか風情がりますね~

 傀儡謠 は三曲あって、この「怨恨みて散る」
 それと「傀儡謠  新世に神集ひて」、これは歌詞が一部、違います。
 http://www.youtube.com/watch?v=oSE6OwjpkfQ

 そして、一番好きなのは「傀儡謡 陽炎(かげろう)は黄泉(よみ)に待たむと」。名曲です。
 和太鼓、茂戸藤浩司さん がス・テ・キ!

 百夜(ももよ)の悲しき 常闇(とこやみ)に
 卵(かひこ)の来生(こむよ)を
 統神(すめかみ)に祈(の)む

 映画「GHOST IN THE SHELL-攻殻機動隊- 主題歌 謡Ⅲ~REINCARNATION」もいいですな。

吾(あ)が舞えば麗し女(くわしめ)酔いにけり
吾が舞えば照る月 響(とよ)むなり
結婚(よばい)に神降りて(かみあまくだりて)
夜は明け鵺鳥鳴く  夜が明け 鵺鳥が鳴く

遠神恵賜(とほかみゑみため)
遠神恵賜
遠神恵賜

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第406回 十二国記 4 風の万里 黎明の空(下)

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小野不由美 十二国記4「風の万里 黎明の空(下)」

風の万里 黎明の空(下)

 和州止水郷の郷長・昇紘(しょうこう)の馬車に轢かれ清秀は死んだ。鈴は復讐を誓う。
 同じ頃、和州に辿りついた祥瓊(しょうけい)は、磔刑をしている役人に石を投げ、陽子と桓魋(かんたい)に助けられる。
 三人の娘は昇紘と呀峰(がほう)への反乱へと加担していく。

 アニメでは大幅にカットされていた細かな設定が解った。
 結構、ストーリーが変えてあったのだな。

 アニメで桓魋が大熊に獣化して雲橋をひっくり返すとき、「すまんな」と言っていたのが意味が解らなかったが、あれは陽子に言った言葉だったのか。
 長年の疑問が解けた。、

 達王に仕えた飛仙、松柏こと乙悦のことも、きちんと書かれていた。
 終盤に急に言われても解らんよな~

 やはり初勅を発する場面が好きだな。

 次巻の発売が待ち遠しい。

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第405回 境界線上のホライゾンⅣ(26)

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川上稔「境界線上のホライゾン Ⅳ(中)」 Horizon on the Middle of Nowhere
Episode Ⅳ-Part 2 適当ダイジェスト⑮


 承前

 燃焼で真空となった空白はあらゆるものを切りつけた。「青竜」の全身が爆砕で揺らいでいる。激流として纏っていた流体光が乱れているのだ。討つには、今しかない。
 「青竜」の真下から上昇をかける鬼庭と、周囲を囲んでいた七機の武神が突撃を掛ける。だが、「青竜」は強引なカウンターを放った。爆砕の衝撃に身を震わせながら、腕より雷撃を放つ。柱状に放たれた七発の雷撃は、数十の雷柱に分裂し七機に襲い掛かった。
 突撃を掛けたところだったので、雷撃予測をする表示枠の展開が追いつかない。真下から上昇をかけた鬼庭が叫んだ! “片倉――!”
 直後、七機の武神の後頭部付近に、ノイズ交じりの表示枠が出現した。

 「仙台城」は激震していた。主庭で起きている政宗と「青竜」の支配権争いが原因だ。その中。中央部の航空管制室で《副会長》片倉・小十郎が全身を振り回していた。彼を中心に壁や天井、床をも覆い尽くす表示枠(サインフレーム)が、全方位から片倉を照らしている。頭部周辺に展開した鳥居型の術式表示枠は、彼の思考を直接読み取る「悟り」の術式。奥州に住まうとされた名前無き神々の技だ。スクナ系アビコの名を冠する術式の効果で、思考直結の文字列が表示枠に怒涛のように流れ込んでいく。

 襲い掛かる数十の雷柱の軌道予測を、一人でこなした片倉の指示で抜けた武神七機は、一気に「青竜」まで距離500に詰める。しかし、「青竜」は雷撃の発射パターンを直線で無く、弧を描くように周囲を回るように変化させてきた。先に前に出た三機が、その全身を焼かれ脱落した。そこへ、真下から鬼庭の「左月」が、大刀を構えて上昇してくる。
 竜を撃墜しようとする鬼に向かって、逆落としの八発の雷撃が放たれるが、それは先を考えぬ獣の、反射的な動き。
 “それで良い!”
 鬼庭は雷撃八発を全て受け止めた。ここは全て喰らわなければならない。全力の攻撃を敢て見せて、応じるのは残りの四機だ。今、「青竜」の全身には流体光の激流が無く、雷撃も撃てない。 
 “行け!!”
 叫んだ鬼庭は、不意に、ある光景を見た。
 ・・・政宗?

 「青竜」の動きは伊達家当主・政宗の動きそのものだった。司法を担う《第二特務》としての鬼庭の、物事を俯瞰して判断した結果は、「青竜」が政宗の動きを覚えているという事だ。
 虚空の何もない場所から流体の水飛沫が上がった。一息に引き抜かれた、三日月にはやや甘い光の二刀。雷を纏う二撃が迫る四つの力と激突した。政宗に剣術を教えているのは鬼庭自身と成実だ。その通りの動きを「青竜」が放っている。それは「青竜」が政宗側からのフィードバックを受けているということだ。

 撃墜された四機は辛うじて致命傷を逃れている。主庭で過ごすことが多い片倉の、政宗の剣跡を知っていた上での軌道補正だ。
 両の腕に電光の刀を持った「青竜」は振り抜いた姿勢だ。その正面に「左月」が激突した。既に主装甲板はおろか、副装甲板まで焼かれ、全身に陽炎を纏っている。四枚翼の内、二つは起動していないので速度も重量も足りないが、雷撃の際にも離さなかった大刀を「青竜」の背に回す。その先端を握り、「青竜」を抱きしめた状態になった「左月」を、鬼庭は半壊の四枚翼で押し込んだ。反射的に「青竜」は背の六枚翼で押し返してくる。
 鬼庭はこの一点に勝機を掛けた。押し返す「青竜」の力を利用して、「左月」の身を反らせる。
 “背面浴びせ式のフロントスープレックス・・・!“
 一回転して「青竜」を下にして大地へ向かって落下していく。ロックしていた右肘で「青竜」の腕を内側からかち上げ、固定し、一度押さえた部分を起点に、腰や背だけでなく脇や腿まで圧迫し、高速で固めていく。そして―――
 “撃てっ!!”
 「仙台」の重奏領域間際からの対空砲火。対艦クラスの連撃が「青竜」と「左月」を打撃した。

 主庭は、暴風と雷撃の圧を一気に上げていた。外の戦闘が激化し、「青竜」が身の危険を感じているのだ。吹き飛ばされたかけた身体を、地面に刺した顎剣で堪え、成実は姿勢を強引に前に持っていく。足元が揺れ、主庭の地殻部分だけではなく、底のパレット部まで振動で分解を始めている。このまま、床が抜けてしまえば、この破壊は各フロアのフレームに向かい、最悪、「仙台城」の崩壊になる。
 だから成実は前に出る。己の四肢を高速に再展開し、剣を杖に行くだけだ。しかし、咆哮は続き、周囲が歪むほどに、爆圧が向かってくる。追い込んでいる。「青竜」も危機を得ているのだ。
 しかし、破砕の音は背後の外交官用の居室がある廊下の方から来た。
 “やかましい! 今、告白シーンだというのに、何を騒いでおるか!!”

 「武蔵」の半竜だった。

「第五十六章 風の突撃士」
056.jpg

 成実はおかしなものを見た。現在、ここは爆圧と雷撃と流体の波が押し寄せている空間だ。それが・・・、全身の加速器官を展開し、半竜は暴風を呼吸していた。
 “やかましいのは、そこか!!”
 眼前に迫る爆圧を半竜は真正面から前翼で叩き割った。そして
 “鎮まれ!”
 旧派(カトリック)結界術。それも審問官クラスが用いる処刑場確保のための整調術式で、一瞬で自分達の周囲、数mの足場が固まる。
 “有難う、助かったわ“と礼を言う成実に、半竜はこちらを振り向き、ふむ、と鼻を鳴らす。
”貴様のような姉でもない女に頼られてもな。
 “行くわよ。一仕事して、あとで酒でも飲みたい気分だし。”
 圧が少し緩んでいる。鬼庭が成果を出したのか、小川に沈むように隠れていた外交官が顔を上げている。半竜がこちらに何かを差し出した。風に飛ばされないように受け取ると、幾つかのハーツに分かれた布だった。
 “紐パンだ。先程から風でチラつかれて、婦女子として如何なものかと思うぞ。今、プレイしているエロゲの特典だ。神に感謝し、黙って穿いておくがいい。”
 いろいろ考えたが、防御の足しになるかもしれないという判断で身につける事にした。
056-2.jpg

 “待って、確認したいことがあるの。今の足場術式、処刑用なのよね。戒律に従い、神の名の下に処刑を行わなければ、天罰が貴方に下る筈。”
 “気にするな。処刑は完遂する。それに足場については、ただ、拙僧の着地場所が欲しかっただけだ。それと、拙僧の誕生日は九月七日。好きな食べ物はラム肉のトマト煮であるぞ。”
 成実は己の剣を半竜に付き出した。
 “聞きたくないことを聞いたわ。急いで聖別して頂戴。旧派の処刑に相応しい剣にして。そして、手伝うわ、審問官。そして、手伝って貰うわ「武蔵」の《第二特務》。私達の《総長》兼《生徒会長》を取り戻すのを、ね。”
 Jud.と半竜がこちらの剣を左手で張った。震動と共に符が貼られ、剣が青白い光を帯びる。

 主庭の中央で光が膨張した。武神の上半身が主庭の中央に突き出してくる。
 鈴は妙なものを感じた。憤りや怒りのようなもの。己の持つ力に耐えきれず、震え、悲鳴にも似た叫びで、力の行き場所が解らなくても、力に突き動かされざるを得ない苦痛。それに混じって、別の色がある。
 ――どうして謝っているの?
 この武神は、悲しいんだ。鈴は知っている。ずっと昔、悲しいことがあって、どうにかしたくて、そしてどうすればいいのか解らなくて、自分には力が無いから、自分を無くしてしまおうとした人がいた。
 やがて、その人は泣くことが出来て、何かが変わり、何かが戻った。同じだ。この竜も、何か悲しいことがあったのだ。ただ、力があるから、それを信じてしがみついている。
“・・・まさむね、さん。”
 声をあげた直後、頭上の「青竜」が一気に身を乗り出してきた。鈴は小川を渡る小さな橋の下に吹き飛ばされた。そして、鈴は知覚した。爆圧を突き抜け、高速で力任せに来る二つの影がある。

 成実は《不転百足》の連続展開による高速アジャストで、足場を確保しながら半竜の後ろに己の身を続かせる。今まで「青竜の門」から出てくることが無かった「青竜」を押し返さなければならない。至難の技だが、勝機もある。鬼庭は随分と凌いだのだろう。「青竜」の纏う流体の激流が、ほぼ消えている。
 “どこを狙う?”と半竜の疑問は鋭い。竜ならば当然なのだろう。
 “首の上側。顎と首の境界に、逆鱗が存在するわ。駆動部のクリアランスで取らざるを得なかった空白を、フレーム歪めて埋めた装甲よ。大きさは5cm四方。”
 機密事項だが、元より武神や砲撃で狙えるサイズのものでもない。
 “貴様に任す。共に来れるな?”と半竜が右の半身になると、左の前翼にある三本指でこちらの空いた手を握った。全身の呼吸器を開き、流体の溶け込んだ大気を己の身体に取り込み、全身を強く前にぶち込んだ。
 ―――え?
 疑問詞を上げた瞬間、全ての翼と加速器を使った、迷いの一切ない大加速が掛かった。

 半竜は右の前翼を前に出し、膝蹴りを打つような姿勢で加速していく。距離20mで「青竜」がこちらに気付き、咆哮する。透明な圧力が大気の歪みとなって飛んでくるのを、半竜は右肘の加速器を全開にして圧力を砕き切った。
 “ひとつ聞く! あの武神は政宗のものか?”
 “Tes.(テスタメント)”と答えると、“下に回り込んで逆鱗を穿て!”とこちらの手を離した。

 片倉は管制室で流れてくる映像を見ていた。半竜は政宗を狙っているのか。「青竜」は政宗と連動している。政宗を動かせば「青竜」も動く。それが狙いだ。
 成実も加速を初め、右から回り込む。半竜は政宗の正面に加速し、橋の欄干を砕き、予測通り、膝を着いている政宗に腕を伸ばした。そして、「青竜」は完全に半竜の動きを読んで、無造作に裏拳を叩き込んだ。

 成実は疾走しながら転びそうになった。金属物が激突したような打撃音で、視界の端を半竜が大の字になって五回転ほどする光景が映った。
 「青竜」は今度はこちらを見た。身をわずかに引くのは咆哮の準備だ。顎刀の突撃で爆圧を抜くことはできるが、そこから逆鱗を狙えるか、だ。
 自問に答えたのは、宙を舞う半竜だった。
 “―――向井!!”

 鈴は動いた。ウルキアガが壊した欄干から身を乗り出し、政宗の手を取り、全身で強引に引く。力ない身が橋から落ちてきた。真上から圧力が来る。自分が年上だから、と政宗に覆い被さり守ろうとする。
 “成実、さぁ、ん・・・!”
 “Tes.(テスタメント)”
 応ずる動きは確かに来た。横から飛び込んで切る姿は、巨大な大剣を下から上にスイングさせながら、竜の喉上を打撃した。

 片倉はノイズだらけの表示枠(サインフレーム)の中、強く仰け反った「青竜」が大咆哮で天井を破壊しながら、「青竜の門」の中へ落ちて行くのを見た。管制室の中で上がった皆の歓声を聞きつつ、
 “倒してはいないんだぜ。・・・次はどうすんだよ?”と呟く。
 吐息を床に落とし、出口に向かいながら総務委員会に内部補修を、武神団に鬼庭達の回収を指示し、“明日から忙しくなるぞ!”と声を掛ける。
 皆が頷く中、不意の声が片倉を正面から射抜いた。
 “明日から? 今から、だねえ。”
 管制室、廊下にいる者達が動きを止めた。片倉の視界の中、薄暗い廊下の中で、赤の「上越露西亜」式夏服に身を包んだ片鬼角の女性が、顎でこちらに来いと招く。
 “なんでしょう。義姫学長。”
 “主庭に行くよ。政宗を拾いに。―――そして、「武蔵」の連中に、多くの事を話しておこうじゃないか。先程、「平泉」の年寄り女から催促が来たのさ。連中は、恐らく、信じられないほどのお人好しだから、世話してやってくれ、とね。”

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第404回 ファイブスター物語

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永野護「ファイブスター物語」再開 Dedicated to FATIMA

 第6話 =時の詩女= Gothic Made
 パート3 アクト1 「黒騎士 ダッカス・ザ・ブラックナイト」 
 #6 Magestic Stand Part3 Act.1 "DACCAS The Black Knight"

Newtype (ニュータイプ) 2013年 05月号

 いや~、変わり過ぎじゃないですか(笑)
 デザインや設定部分やジョーカー星団年表まで!
 なに!MH(モーターヘッド)の時代が終わり、GTM(ゴティックメード)に名称が変わったのか!!
 ヒッターの住んでいる地方では「花の詩女 ゴティックメード」が上映されなかったので、観ていなかったのだが「ファイブスター物語」と融合するのね。

 ともかく、FSSファンは今月号は買っておいたほうがいいでしょう。
ダッカス・ザ・ブラックナイト


 でもデコース・ワイズメルは少し好きになりました・・・

 くっそう! ジィッドめ、おれの”シュペルター”にこんな装甲つけやがって!
 名前も”デムザンバラ”なんで、ダサいぞ!
デムザンバラ

星団歴7777年。”氷の女皇帝”ディー・カイゼリン(ゼノン・アプターブリンガー)とLEDミラージュ(ツァラトゥストラ・アプターブリンガー)の最後の戦い。
フォーチュンで”花の詩女”から渡された種が蒔かれ、アマテラスとラキシスの娘、カレンが出現するのを見ることができるのは何年先だろうか・・・・

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第403回 ソードアート・オンライン(11)

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川原 礫「ソードアート・オンライン」(既刊12冊) 

 第12巻 「ソードアート・オンライン12 アリシゼーション・ライジング」
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 表紙のふたりの女の子は誰だろうと思っていたが、Web版に出ていなかったキャラだったのか。

 いや~、予想以上に進まなかった(笑)
 ベルクーりさんのとこまで行きつけなかったな、次巻は「アリシゼーション・ウォール・クライミング」だろうか?
 ヒッターは高所恐怖症なので、セントラル・カセドラルの外壁をよじ登るのは勘弁してもらいたい。
 次はユージオとベルクーリのお風呂場バトルのはず。「アリシゼーション・スーパー銭湯・ファイティング」もありえるな。
 そろそろ「~~ング」のネタは尽きるのではないかと思う。

 さて、これで、前半の残りのセントラル・カセドラル突破編と、アドミニストレータ編終了まで、あと2冊半くらいだと予想できた。
 全体的に加筆修正されて、Web版より完成度は上がっている。
 リアル・ワールドの話が必ず入ってくるはずなので、あと3冊で前半終了だろう。
 ダーク・テリトリーでの話が少なかったので、補間されるかもしれない。
 実際、前半といってもそこまでが全体の6割くらいだったのだが、Web版第六章はまるまる削られているから半分と言っていいだろう。

 Web版と変わったのは、といってもかなり変わっていたが、
・《行動原則キー》は《敬神(バイエティ)モジュール》に変更された。
・ユージオがデュソルバードを倒した技が、アインクラッド流剣術(+o+)技「チョメチョメ」ではなく、二連激技『バーチカル・アーク』であった。(あぶない。そのまま技名を検索したらWeb版掲載ページに繋がってしまった)
・ただの整合騎士見習いだった二人の少年が、二人の少女フィゼル・シンセシス・トゥエニナイン、リネル・センセシス・トゥエニエイトに変更された。(名前も変更された。なぜならWeb版がバレてしまうからだ)
 整合騎士レンリのナンバーはアリスのひとつ前だったので、トゥエニナインになるんじゃないかと思っていたら、違ったようだ。
・ファナティオの部下が9人から4人に減った。まあアリスがフィフティからサーティになったことで、大幅な人員削減が行われたのだろう。
 まあ、キリトはよく9連撃を避けていたものだ。
 《せんしきゅうけん》が《四旋剣》に変更されている。(ここを漢字にして検索するとWeb版の後半掲載ページにつながってしまったので、あえてひらがなで)

 よくネット上で、ユージオが死ぬという記述を見ますが、死ぬわけではないので・・・
 ラストに現れますしね。

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第402回 境界線上のホライゾンⅣ(25)

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川上稔「境界線上のホライゾン Ⅳ(中)」 Horizon on the Middle of Nowhere
Episode Ⅳ-Part 2 適当ダイジェスト⑭


 承前
 夜の十一時。隣の部屋ではウルキアガ君がゲームに熱中しながら、、点蔵君と通神している声が聞こえる。
 廊下は淡い熱を帯びている。奥にある主庭の方が湿った大気をこちら側に送ってくる。警備の人が居ないのは佐助さんの手が関わっているのだろうか。そう思いつつ、鈴は主庭に向かう。夜の主庭に純粋に興味があったのだ。「武蔵」の農園区画よりも密度の濃い草木の場所だ。
 期待に歩を進め、足音を立てないよう壁際を一歩一歩進む。主庭から廊下に漂ってくる知覚情報を、冷たく弾けていると鈴は思った。口が笑みに変わる自覚を持ちながら、鈴は足を速め、主庭に入った。

「第五十三章 記憶域の欠落者」「第五十四章 夜更かし時間の外交人」「第五十五章 青き場の制止者」
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 鈴は主庭をあらためて理解した。約100m四方。向かいの壁まで知覚できる。密度が澄んだ状態になり、昼間の地面からの熱や匂いがせめぎ合っていない。手を左右に広げるだけで、この場所にある花や草木、地面や水の流れを捉えることができる。だが、人の気配はない。これも佐助さん達の手配だろうか。
 しばらく進むと小川を渡るの橋の上で、蛍を知覚した。自分には光は解らないが「綺麗」なのだろう。ウルキアガ君を呼んできて、見せてあげたいと思ったが、姉ゲームに盛り上がっていいるのを邪魔するのも悪い。
 鈴は主庭の中央にある広場に辿り着く。中央に大きな木があり、そこにも「綺麗」が舞っていて、大きな石の上には・・・・蛇が纏わりついている?
 いや蛇ではない。なぜなら、角があったからだ。片方の一本だけ。
 “・・・政宗、さん?”

 政宗は突然の呼びかけに身体を震わせ、戸惑いを覚えた。精神集中で己を周囲と同化させ、鎮める。そんな訓練をしていたのだ。まだ未熟なのだろうか。座した姿で、前を見る。
 “貴女は―――?”

 鈴の正面、で政宗が姿を確かにするのを知覚した。
 “始めまして、「武蔵」の外交官殿だな?―――話は聞いている。私が伊達・政宗だ。”

 え?――― 鈴は理解できなかった。どういう事だろう?とりあえず、挨拶をする。
 “Jud.、向井・す、鈴です”
 政宗も笑みで安堵の息を漏らす。彼女も今の状況をどうしたらいいのか、解らないのだろう。ただ、何故、政宗はこちらを覚えていないのだろう。
 “向井殿、私がここを案内しようか。もう一人の半竜も。”と言うのに、居室のある廊下に顔を向けると、ウルキアガ君の充実しているのが聞いて取れたので、首を左右に振る。
 政宗は鈴の手を取ると、不意に周囲に舞っている蛍に気付いた。まるで咲き誇るようだな、と呟く。
 “色、何色?”と鈴が聞くと、薄緑の淡い色だ、と応えが返る。


 晴れた高い空に二つの月があり、月光が雪の大地を照らしている。地上に開いた巨大な縦穴の中、掘り込み式の陸港に収まっているのは、巨大な戦闘艦「山形城」だった。「最上」の旗艦であり教導院でもある三胴の艦の天守閣兼艦橋から、月光だけで補修や交換、補給をしている人影や武神を見ているのは里見・義康。なるほど、ここまで艦を沈めると、遠方からの砲撃は無理だし、爆撃もピンポイントでならなければならない。視線を北西に動かすと丘の斜面に重層の街がある。その規模は数キロ四方だ。
 後ろの最上・義光(よしあき)は畳の上で寝そべって団子をつまみ、時折、瓶徳利の酒を手酌で飲んでいる。鮭の形をした走狗(マウス)が、今日は飲むペースが早いと注意するのを、アデーレは、“あのそちらは?”と聞くのに、“《会計》兼《書記》の鮭延・秀綱(しゃけのべ・ひでつな)だぞぇ“と、義光が紹介する。義光は20cmほどの大きさの走狗を掴んで、前後に引き伸ばした。
 “ほうれ従士殿、里見の。――鮭延” 酔ってるだろう、お前、と言い掛けて飲み込み、義康は義光に問う。
 “聞きたいことがある。駒姫の事だ。”
 義光は口元に小さな笑みを残したまま、目を伏せる。義康は駒姫や「伊達」の小次郎と同学年で、奥州の祭りなどで顔を合わせたこともある。房総を治める「里見」は関東の東端であり、奥州勢が関東以南へ出る際の海上交通を押さえている。奥州西側の「最上」にとって、「里見」は「伊達」への牽制できる位置に居るのだ。
 “聖譜記述による歴史再現で、駒姫が羽柴・秀次の側室になるのは解るが、何故、駒姫が霊属になっている? そして小次郎が羽柴・秀次になっているのは何故だ?”

 どういう事だ? と、正純は中庭の天幕の中で首を傾げた。ネシンバラがいれば相談できるのだが、自分で調べるのは大変だ。先程、ハイディから、シェイクスピアが壁プリントの解除に掛かったと連絡が来たが、とりあえず、走狗(マウス)のツキノワに情報取集をさせる。恐らく極秘事項だったはずだ。
 正純は里見・義康にもっと情報を引き出してくれと依頼する。義康と義光の会話は、リアルタイムで正純に届くが、先程の藤原・泰衡との会談の情報も義康に伝わっている。「武蔵」勢だけではなく、「里見」の人間にも影響を与えた様だ。義康は問う。
 “「約束」とは何だ? 駒姫や小次郎、政宗や本庄・繁長を含みで掛けられる「約束」とは、―――一体、何の事なんだ?”

 “「約束」について問うてくるとは、――「里見」も踏み込んだものであるな。”
 ミトツダイラは赤い絨毯の廊下で本庄・繁長と向き合っていた。「上越露西亜」の夏服をラフにまとい、腕や首に回復用の符を貼っている繁長が、非公式の話をしたいと言うので廊下での立ち話になったのだ。《第一特務》をアシストに付けて、ミトツダイラは繁長に問う。
 “「約束」とは「上越露西亜(スヴィエートルーシ)」でもまだ、意味を持っているのですか?
 “「約束」、それは我が国や奥州を平和に保つための、小さな誓いだったのだ。古来から「平泉」の長寿族を中心に、奥州、「上越露西亜」、関東諸勢力は、聖譜勢力に従うのを極力避けるため。歴史再現の多くを談合で済ませてきた。だが、「最上」は現《総長》最上・義光の後、急速に衰退する。”

 正純はミトツダイラから送られてくる繁長の話を検討する。「最上」が「武蔵」側に付くのは、衰退の前に、なるべく多くの物を得ておきたいからか。「松平」に早く与し、最大の領土を「松平」や諸勢力への交渉材料に用いる。ああ、そうか・・・・
 ホラ子:なんでしょう。正純様。
 “さっきアデーレが言っていたが、最上・義光が団子を食っていたのは、談合という事を示唆していたのか”

 義康が半目で幾つかの表示枠(サインフレーム)を消すのを、義光は見ていた。
 “「伊達」、「最上」、「上越露西亜」はな? 来たるべき最後の争いの時代に向け、談合を重ねておったのよ。三国はその時代を過ごす世代を、子供時代から親しく付き合わせていた。政宗、小次郎、成実、駒姫、「上越露西亜」の本庄・繁長、上杉・景勝、そしてマルファ。”
 “小次郎と駒姫はいつまで存命だったのだ?”
 “まず、小次郎が死亡したのは二週間前だ。実の姉、政宗の手に掛かって、殺されたのだ・”
 
 アデーレはその歴史を知っていた。「元・不良の長男が働かない次男を成敗、次男溺愛の母、屈折」という午後のゴシップ番組「惨事の貴殿」で見たのだ。問いかけた義光は、やや考えてから首を振った。
 “情報が漏れ出たか、偶然か解らぬのう。ただ、――それが起きたのは事実ぞえ。”
 歴史再現では「独眼竜」となる政宗をどう解釈するか、誕生前から論議されていたが、政宗を生まなければならない母の義姫は、良い結婚が出来るようにと願掛けに行くのだが、慌てて夜に出かけて、縁結びではなく戦勝祈願の竜神の社へ行ってしまったため、翌日、“キャンセル!、神様、昨夜のキャンセル!!”と祈願したが、精霊と相性が良かったのか竜神と縁結びになってしまった。
 義姫を妹分とする義光は、当時の事を懐かしげに語った。だが、不意に表情を沈める。
 “駒姫も同じ頃に亡くなった。”

 正純は肩のツキノワに手を添え、後ろに倒れ込んだ。二週間前。それは「武蔵」が敗戦を得た時。「羽柴」が自分達に従う気があるなら、「歴史再現を確認する」と要請した時だ。
 恐らく、「最上」には羽柴・秀次への駒姫の輿入れ。「伊達」には政宗の当主確定と、伊達・小次郎の死をもって、その存在を羽柴・秀次として預かる、と言うものだろう。「羽柴」の歴史再現は死亡を前提としながら、死者の数を少なくするという傾向が見えるが、「武蔵」の歴史再現には、人の死を前提としない、という方針と真っ向からぶつかるものだ。
 考えていると、不意に艦が動いた。低い震動と共に艦首が北を向く。「伊達」側の空に、一定間隔で雷光が閃いている。

 伊達・成実は事態が悪化のレベルを超えたことを悟った。明日の朝、会議前に行われる舞踏会の服をどうしようと、途方に暮れていた時に報告が入った。「伊達」領南方面へ「水戸」西側から高速飛翔体が接近。鬼庭達の航空武神団が向かったという。ならば、自分が向かうのは主庭だ。走りながら《不転百足》を四肢強化で呼び出す。脚部と腕部だけ結合し、主庭への最短コースを「総務委員会」に算出させる。
 主庭の真上に達すると、背後の格納空間から百足の牙剣を抜いて、床に突き立てる。一瞬で三十数度の再展開を行使し、己の周囲をぐるりと回すと、高振動の刃が床に円弧を描く。
 落ちた先。主庭に溢れていたのは青い光。流体光の稲光の連打が、闇に満ちているはずの空間を薙ぎ払っていた。

 鈴は力の真正面に居た。突然だった。全てが始まったのはいきなりだった。手を握る政宗の力が抜け、膝をついた政宗の背後に力が出現したのだ。

 成実は政宗の背中から間欠的に吹き出す、青白い気流を見る。政宗に与えられた二律空間の出口、「青竜の門」。そこに封じられた武神・「青竜」がいる。その出現プロセスは未だ、解っていない。
 鬼庭達が戦っている実体化した「青竜」が、二律空間に撤退すると同時に政宗の背後にある「青竜の門」を閉じなければ、暴走した「青竜」が「仙台城」内部に飛び出すことになる。そこで成実は、「青竜の門」の真下で尻もちをついている「武蔵」の外交官に気付いた。なぜこんな所に? もう行くしかなくなった。

 数キロ範囲の落雷空域で鬼庭・綱元の武神・「左月」と長銃を構えた七機の武神が「青竜」を取り囲んでいた。有効射程距離ぎりぎりからの追尾弾、一機に付き三十発の一斉射撃を「青竜」は高速移動で振り切っていく。そこへ「伊達」家の《第二特務》の「左月」が巨大な一刀を持って交差した。
 「青竜」は確実に「仙台城」へ近づいていく。絶対に「仙台」の空を飛ばせることはできない。鎮めなければならない。豪刀を叩きつけるが、攻撃は向こうに届いていない。「四聖」の武神が持つ“山川道澤”の力。「青竜」が持つのは“川”の力だ。「激流を扱い、水源に水を落とす雷雲の力」、それは「竜の御技」だ。
 「鬼」である自分の力も、武神の力も寄せ付けない。右の一発で「左月」は真下へ、大地へと吹き飛ばされた。そして、来た! 「青竜」の“川”が落雷空域の中で、暗雲と、その下に流れる激流の光景が流体光で再現されていく。
 「三征西班牙(トレス・イスパニア)」の「道行白虎」の“道”が「どんな場所も足場として回避を行う《大道》を作る」ように、「武蔵」の「地摺朱雀」の“澤“が「無限に落下加速する平面空間《矛盾の湖沼》を作るように、「青竜」も落雷の水流を己の周囲に現出させる。
「雷撃の豪雨」。数キロ四方の空域が、ほぼ完全に光で満たされた。

 その発光現象は遠く西の「山形城」でも視認できた。あれが「青竜」の力か。暴走状態の故、過剰な発動だが、と義光は笑う。
 “結果はどうあれ、強引な解決。鬼の見上げる月は捻くれの左構えか。”

 大の字になって落下する鬼庭は、回避運動を行わなかった。“川”が展開した瞬間、対空砲の術式狙撃の光の線が七本、「左月」の真下に撃ち込まれた。芯弾入りの弾筒から仕込まれた符弾を撃ち出す。雷光の激流を下から破るように、七発の術式表示枠が展開し、
《展開:流体強制転化:高圧型:爆砕―――確認》
 「左月」と七機の武神が全身に対爆防護障壁を展開した。青い雷光を、赤い爆砕の炎が膨張し空を彩っていく。

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 境界線上のホライゾンVI<上>が五月十日発売だそうで、表紙は「六護式仏蘭西(エグザゴン・フランセーズ)」エコール・ド・パリ教導院・生徒会長、毛利・輝元さんのようですな。
毛利・輝元

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第401回 十二国記 4 風の万里 黎明の空(上)

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小野不由美 十二国記4「風の万里 黎明の空(上)」

風の万里 黎明の空(上)

「月の影・影の海」から繋がる話。三人の少女の物語。
 アニメで一番好きだった話ですね。

 木生火(もくしょうか)の話ってアニメであったっけ? これは納得のいく話であった。五行説ですな。

 十二国の政治形態が良く解った。 
 言葉(セリフ)を聞いただけでは漢字が思い浮かばないが、やはり、活字文化は偉大だ。
 カカンチョウ(夏官長)、シュウカン(秋官)、チョウサイ(冢宰)などと言われても、頭の中で漢字変換ができん。

  三公:宰輔(サイホ)=台輔(タイホ=麒麟)の臣下。天子(王)への助言、諫言、教育も行うが実権はない。
 太師、太傅、太補

 六官:六官の長を冢宰(チョウサイ)と呼ぶ
 天官、地官、春官、夏官、秋官、冬官

 太宰(たいさい)―天官長。宮中の諸事を司る。
 大司徒(だいしと)―地官長。土地・戸籍を司る。
 大宗伯(だいそうはく)―春官長。礼典・祭祀を司る。学制。
 大司馬(だいしば)―夏官長。軍事を司る。
 大司寇(だいしこう)―秋官長。法令を司る。外交。
 大司空(だいしくう)―冬官長。造作を司る。武器を用意。

 このそれぞれの役割がわからないと、話の筋が見えない。
 なぜ三公と冢宰も罷免されたのか、長年の疑問が氷解した。

 位階の順列、度量衡単位の換算、人が二人暮らすのが家、八家で廬(むら)、三廬で里が政(まつりごと)の最小単位とか、やはり、丁寧に物語が語られるのはありがたい。
 赤子(せきし)・陽子が遠甫(えんほ)から学ぶ十二国の基礎知識が、読者への説明となっている。
 神籍、仙籍を持っても言葉が解るだけで、文章が読めるようになるわけじゃないのね。

 アニメでは表現できなった鈴と祥瓊(しょうけい)深い恨み、愚かさ、陽子の戸惑いと不安が伝わってくる。

 アニメオリジナルキャラの浅野郁也は何のために登場していたのだろうか?
 杉本優香も一緒に十二国くる必要なかったんじゃないか?

 このまま、下巻に進もう。

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第400回 パーフェクトストライクガンダム

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HG 1/144 R-17 GAT-X105 パーフェクトストライクガンダム
R-17 GAT-X105 パーフェクトストライクガンダム
  先日、ヤマダ電機のポイントが貯まっているが使わないとなくなってしまうぞ、と友人に言われ、行ってみた。
 特に買いたいものがあるわけではなかったが、プラモデル売り場に行って目に付いたのがこれである。

 旧盤には出てこなかったが、「機動戦士ガンダムSEED」HDリマスター版に登場した「パーフェクトストライク」である。

 武器換装ができるのが売りのストライクが、エールストライク、ソードストライク、ランチャーストライクを全部装備するという荒業を使っていた卑怯な兵器である(笑)
マルチプルアサルトストライカー01
 本来1/144は作らない主義なので、また押し入れの肥やしとなるだろう。


 これは先月、「ロボット魂」からでた<SIDE MS> パーフェクトストライクガンダム の背面写真である。
 なんかごちゃごちゃしてますな~
ロボット魂 パーfクトストライク

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第399回 境界線上のホライゾンⅣ(24)

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川上稔「境界線上のホライゾン Ⅳ(中)」 Horizon on the Middle of Nowhere
Episode Ⅳ-Part 2 適当ダイジェスト⑬


「第五十一章 屈み所の屈折娘」「第五十二章 窓外の友人」
04-023.jpg

 「青雷亭 BLUETHUNDER」の中は狭いと言うには広く、広いと言うには狭い。テーブルやカウンターという障害物がある。周囲は闇に満ちている。手元には、未だ発動を許さぬ《蜻蛉スペア》があり、ここは自分の仕える姫の働き場所だし、店主の事も気に掛かる。
 二代がふと思い出したのは、昼、「水戸」での戦闘の事だ。自分が得たのは敗北なのだろう。もし、ここで再び、敗北したら―――。

 “動いたか”と表示枠(サインフレーム“から大久保の声が聞こえた。「多摩」表層部の商店街の陰に潜む侍女服姿の加納は、”何とか間に合いました。お嬢様。“と答える。

 二代は、またやってしまったと、内心の冷えを感じていた。思考が悪い方へと流れていく。昼の戦いの中、福島・正則に腑抜けている、と言われたではないか。この戦場を前にしながら、迷い、考えることが多くあり―――。
 光が見えた。入り口側の席に居た影が抜いた双の白刃が、逆光に光を帯びたのだ。左手側にある入口から小柄な影が飛び込んできている。右手側、奥の方へ大窓から飛び込んできた三つの影が着地しようとしている。状況は見えているが、どうすべきか考えている自分がいる。
 ―――拙者は、おかしくなってしまた。今、動けぬ己に二代はそう思った。戦いに向かう意思が足りない。二代は理解した。マクデブルクで《蜻蛉切》を失ってからだ。「大罪武装」のアーバレストの狙撃を受けたのは何故だ。柴田・勝家を相手に自分は勝ちを取りに行くのではなく、足止めに専念した。命を懸けて勝ちを取りに行っていたら、あんな狙撃は受けることは無かった。自分はここに居て良いのだろうか? 覚悟の無いことを不覚という。そう思う身が、不覚に動かない。
 “敵順!”
 鋭い声が店内に響いた。

 二代は聞こえた声に背を震わせた。それはこちらに攻撃を掛けてくる敵の順番を確認すること。身体が反応した。自分の目ではなく、視界が敵の位置と動きを追う。誰が最初か。窓から飛び込んできた敵は、一度着地し、暗闇の中で状況を確認するはず。入り口から飛び込んできた小柄な影も同様だ。ならば、最初から店内にいた双刃の影だ。
 “確認!”
 次の声で段階が一歩進む。気が付いた。このフードの影は先夜の太縄通路の敵だ。入り口から入ってきた影が双の白刃に気付き、身を翻す。
 “機先から回避!!”
 二代は戸惑うように、確かめるように槍を手に前へ出る。双の白刃の右が遅い。敵の懐、左下へ入り回避しようとしたが、何か危険なものを感じてクラウチング・スタートのように前に飛び出す。次の瞬間、背後の床が断裂した。小振りな側転を入れて相手に向き合うと、入り口から入ってきた影を避けるようにテーブルの上に着地している。その影は打撃武器、ハンマーを手にしていた。この者も、先夜の襲撃犯か。
 “回避!”
 《蜻蛉スペア》の伸縮機構で背後の壁を石突きで穿ち、仰向け姿勢のまま、店奥の床すれすれに二代は水兵に跳ぶ。潜ったテーブルの天板が真上で二条に裂かれる。その軌道上に、窓から飛び込んで来た三つの影が一刀を立てて落下してきた。どうする?
 “対応!!”
 二代は下からテーブルの天板を蹴り上げ、椅子を落下する影の方へ弾き上げる。三つの影がカウンターで飛んで来る椅子を貫いている間に、再び伸縮機構で奥の壁へ《蜻蛉スペア》を突き刺し、身体を引き寄せる。戦闘が始まってから、幾度となく死にかける状況が生じている。何故、自分は今、生きているので御座るか? よく解らない。
 “対応!!!”
 二刀を振るうフード姿とテーブルの間の三つの影、入り口側に小柄なハンマー持ち。その三者を通る軌道で石突きを低い位置で発射させる。右端の一体が破砕された。自動人形? と思う間に《蜻蛉スペア》が二刀持ちの左脇に挟み取られた。ここで伸縮機構を縮めれば二刀が近づくだけだ。武器を取られた!
 “補充!”
 声と共に左手側から何か飛んできた。武器だ。受けた止めた二代はその太いグリップと感触に、手元を見る。バゲットタイプの1m近いパンだ。二代はやっと悟った。今までこちらを動かす凜の声を放っていたのは。“―――店主殿!!”

 二代の視界の端、カウンターとキッチンの間のスペースに彼女はいた。エプロン姿の笑みが、両手にバゲットを持って立っている。そのまま、
 “対応!”
 正面の二刀持ちが白刃を振ってくる。二代は右の白刃を躱し、左の店主の居る側に身体を寄せる。すると、二刀の軌道が変わった。右手の一刀が空中で手首を返し、柄を逆手で握り直す。逆手打ちの一刀が死角の背後から、その先端を振り抜いてくる。
 “回避!”
 二代は反射的に身体を回し、後ろから来る剣の軌道に肩の丸みを沿わせた。身体の動きはぎこちないが、切られる被害は最小限にとどめる。そのまま、店主側に跳んだ。窓から入ってきた三体の自動人形の残り二体は、二刀持ちの向こう側になる。その二体が前後に列して、身を低く突っ込んでくる。
 “そうね、二代ちゃん。こっちに来たのは良い判断。テーブルの間の二人は手前の一人が壁になって、後ろの一人は意味がない。二刀のお姉ちゃんも同じように手前の一人が邪魔になって、ベストな攻撃を放てない。”と、店主がバゲット二本を腰の高さに構えた。
 “いい?” 凜とした声が聞こえた。直後、店主が動く。低く突っ込んでくる自動人形の前に、バゲットを一本放る。
 “張りの応用。” 店主の手首を使用した高速の右スナップヒットが、バゲットの尻を捉える。割れ砕ける音と共に、砲弾のような勢いで自動人形の顔面に炸裂した。その一撃で人形の姿勢が崩れていた。
 “初速で御座るか!”
 手に持って振るのではない。浮かせ、加速した手を引っかけて発射したのだ。バゲットは半ばまで潰れ、砕けた。“潰れたのはクルトンにしないとねえ。” そして、全てはそこで終わらない。
 “切落しの応用。” 姿勢を乱した自動人形の右腕。短刀を持つ手首を、店主の左のゲットが外から内へ打った。短刀を手離す瞬間、店主の身が一歩前に出る。高度な足捌きによる体軸の移動だ。
 “拂捨刀の応用。”宙に浮いた短刀を手にし、後ろ手に二代へ投じてくる。顔面狙いで飛んできた柄頭を払うように受け取り、“迎撃!” 二代はカウンターアタックで前に出た。逆袈裟の一撃を放つ。左脇腹から右肩にかけての斬撃。手応えに来るのは断裂と砕きの震動。自動人形の背骨を断った。
 “対応二回!”
 逆袈裟で右上に振り抜いた刃で、こちらの首狙いで振ってきたフード姿の右一刀を受ける。火花と鉄のぶつかる音の中で、二代はフードの奥の顔を見た。自分より年下の女だ。だが、その事実に構っている余裕はない。自動人形の最後の一体が刃を突き込んでくる。二代は手の短刀を自動人形の腕に叩きつけた。連続するダメージで短刀が折れたが、自動人形も腕を失った。
 店奥へ距離を取る二刀使いと、カウンター側へ跳躍する自動人形を視界に入れたまま、二代は《蜻蛉スペア》を拾い上げる。いつの間にか、ハンマー持ちの姿が消えている。
 腕のない自動人形がドアの方へ身を飛ばし、二刀持ちのフード姿は割れた大窓から外に跳んだ。逃走する敵を追おうとした二代は、ふと、床にあった白刃の突き刺さった椅子を蹴り上げた。宙に舞った椅子が散り割れる。射撃だ。先夜もそうだった。この相手に襲われた時、狙撃を受けた。敵の逃走を助けるための援護射撃。そう思った時、連射が来た。数にして二十一。店内を左右から往復する穿ちの連続はパンや神肖筐体(モニタ)を破壊する。
 だが。その往復射撃は一度で終わった。吐息で、“終わったかねえ”と言う店主に、二代は頷き、座り込んだ。汗が一気に噴き出してくる。荒れた息の中で疑問が浮かんでくる。
 “―――店主殿。何者なので御座るか? 貴殿は・・・”

 「青雷亭」の店主。彼女は調理用のミトンを外す。
 “わたしは、昔、襲名者だったこともあってね。一時はホライゾンの母親の警護役をやってたんだ。「松平」が天下を取った後、初代剣術指南役となる小野・忠明。それがうちの旦那でね。私は小野・善鬼を襲名してたのよ。ホライゾンの母ちゃんの警護役から「葵」の名字をもらってね。葵・善鬼。ヨシキって呼ばれてる。”
051-2.jpg


 “まだまだ、動けるもんだねえ。現役バリバリの二代ちゃんから見て、どう見える?”
 なんとまあ、こんな身近に達人がいたのか、と思う。だから、ただ、暗闇の中、戦場の真ん中において二代は槍を置いて店主に平伏した。
 “お願い申す。拙者に師事をして頂けぬで御座ろうか!”
 その返事は、数泊おいてから来た。
 “わたしは人に教えるのが苦手でねえ。旦那が帰ってきたら頼みたいところだが、そう都合よく帰るはずもないし、手頃なところで頼んでみるけど―――。とりあえず、片付け手伝ってくれる?”
 “それだけじゃ駄目だ。配膳頼むよ。”
 店の奥のカウンター席から少女の声がした。

 何時の間に? いや確かに戦闘前からカウンター席に白衣の人影はあった。しかし、戦闘中、一切、気配が感じられなかったのだ。店主も同じらしい。軽い口笛を吹いて
 “変わったステルスだねえ。極東じゃないようだけど。トーストがまだだったけ?”
 “「英国」式。創作術式だよ。――「有明」のイベント受付に出張るついでに雑用とやらで来たんだ。今日初めての食事でね。スクランブルエッグも追加で欲しい。”
 雑用で御座るかと二代が問うのに、あいては視線も向けずに眼鏡を鼻の上に押し上げ、
 “馬鹿な作家志望者が、自分を壁面プリントでグッズ化してね。先輩作家がそれを解除してあげようというんだよ。”と言った後で、彼女はようやく、薄くした目で二代を見た。
 “「武蔵」《副長》、後で案内してくれる? 「英国」オクスフォード教導院所属、「女王の盾符(トランプ)」の6、トマス・シェイクスピアが招聘に応じたってね。”

 
 “向こうの方は落ち着いたようですね。”と、薄暗い道上で、槍を持った男子夏服姿の立花・宗茂は呟いた。酒井から預かった《瓶貫》を軽く回し、左舷側の建物の上を見る。
 建物の上には誾が《十字砲火(アルカプス・クルス)》を一本、展開し、照準用の表示枠(サインフレーム)で艦尾側を見渡している。
 “動体補足、途中で途切れました。逃走ルートに隠形術式が掛けられているようです。それとは別で気になることが。”
 “射撃の動線が複数ありましたね。しかし、複数の逃走をこちらが見落とす筈はないし、なにか特殊な術式ではないかと思います。”と、宗茂は足下の人形を見る。自動人形は《瓶貫》で背骨を貫かれていた。
 逃走者は四人と換算していた。一人はこの自動人形。二人は二刀の使い手と狙撃手。もう一人はハンマー使いだが、何か噛み合っていない。首を傾げる宗茂の陰影が明らかになった。「多摩」の照明が元に戻ったのだ。

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第398回 男樹

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本宮ひろ志 「男樹 村田京一(四代目)」

 1,2巻同時発売というので買ってくる。
 「男樹 初代・村田京介」を読んだのは何年前だったろう。

 本宮さんの作品は暴力礼賛ではなく、社会や大人に反抗する悪ガキたちの話が多いような気がする。
 「猛き黄金の国」、「夢幻の如く(ゆめまぼろしのごとく)」、「赤龍王」など歴史モノも好きだな。

 「サラリーマン金太郎」の新作を描いて欲しいものだ。
男樹~村田京一〈四代目〉~1


 男樹シリーズ

1.男樹 初代・村田京介 全6巻
2.新・男樹 京太郎編 全4巻
3.男樹 四代目 全4巻
4.男樹 村田京一(四代目) 既刊2冊 

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第397回 ARIEL(1)

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笹本祐一 「ARIEL」完全版

 むかし、朝日ソノラマ文庫で出ていた「ARIEL」全20巻とARIEL番外編1「侵略会社の新戦艦」は買って読んでいたのだが、ARIEL番外編2「家出艦長の里帰り」をなぜか買い逃していた。
 もう手に入らないので諦めかけていたが、新装完全版として発売され始めたので買い始めていたもの。
TVアニメを意識して4クール全52話で書かれているw
 2005年に星雲賞(日本部門・長編作品)を受賞した。

 とりあえず2巻まで読む。

 設定は
 国立科学研究所ことSCEBAI(スケベイ Science、Chemical、Electronics、Biochemical and Aerospace Industry)の所長、岸田博士は、女性型の巨大ロボット兵器ARIEL(エリアル ALL ROUND INTERCEPT & ESCORT LADY:全領域要撃/支援レディ)を開発し、そのパイロットに姪の美亜と孫の絢と和美の3人を指名する。
 銀河帝国から惑星侵略業務を請け負っている三流侵略企業ゲドー社は銀河辺境にある恒星系を侵略すべく、アバルト・ハウザー艦長率いる大型宇宙戦艦オルクスを派遣し、太陽系に到着したハウザーは第三惑星すなわち地球に向け、侵略の開始を宣言する。

 というハードSFであります。

ARIEL 01 
 旧文庫版1,2巻+巻末特別書き下ろし「マイナス1話 はじめて歩いた日」150枚併録。
 美形艦長アバルト・ハウザーの率いる宇宙からの侵略戦艦オルクスが地球にやって来た。あわてふためく各国首脳を尻目に、日本の誇るマッドサイエンティスト、国立科学研究所所長・岸田博士は、自からの開発した女性型巨大ロボット・エリアルに、姪と孫娘二人を乗り込ませて迎撃を開始したが―。
 受験生・絢に試練の日々は続く。年に一度のバレンタインデーにも目をつぶり、ひたすら入試を乗りきろうと奮闘する絢の前に現れたのは、時代錯誤の学帽に詰襟マント姿の学生だった。
 タイム・トラベラーを自称するその学生に、つい関わってしまった絢の「未来」は…?

ARIEL 1
第1話  狙われた惑星
第2話  宇宙からの挑戦
第3話  怒りの受験生
第4話  年末宇宙人
第5話  タイム・トラブラー
第6話  市場最大手の侵略(前編)
第7話  市場最大手の侵略(後編)
第8話  市場最大手の侵略(完結編)


ARIEL 02
 旧文庫版3,4巻+巻末特別書き下ろし「マイナス2話 姫君と士官候補生」220枚併録。
 ゲドー社の経営状況の悪化から、小出しの侵略業務に終始せざるを得ないオルクスだが、迎え撃つ金喰い虫のエリアルにも難問山積。行政府に目の仇にされ、常に運用停止・廃棄の圧力がかかっている。かくして、省エネの侵略と強引な迎撃参加を狙う双方の思惑が交錯し、珍無類の駆け引きと戦いが日本と宇宙空間に展開されることになる。戦えエリアル、されど道は険し。
 バイト代わりに引き受けた数ダースのレポートと格闘中の美亜に、SCEBAIから出動要請が入った。珍博士なる謎の中国人が、巨大ロボット・機娘々を用いて日本征服をたくらんでいるというのである。真紅のチャイナドレスに身を包んだ機娘々と、エリアルの凄絶かつ華麗な戦いが始まった。そして明かされる珍博士の驚くべき正体とは―? 他に、帝国の美形艦長の妹・究極のお嬢さまシェラの恋と冒険の物語や、昭和初期の雪の日を発端に繰り広げられる、タイムトラベラー・ユリと岸田家の因縁の物語。
 平和な日本に今日も強大な敵が来襲した。衛星軌道上に陣取る侵略者のミサイル攻撃をものともせず、謎の火吹竜が隆り立ったのだ。米大陸とヨーロッパを次々と恐怖に陥れながら飛来した怪物は、兵器か生物かはたまた怪獣か?宇宙人の秘密兵器すらはねのけた怪物を相手に、エリアルは闘う策があるのか?企業生き残りを賭けたハウザーの闘い。

ARIEL 02
第9話  ARIEL対機娘々{めかにゃんにゃん}
第10話 愛は銀河を越えて
第11話 続 ・タイムトラブラー
第12話 星のシャルロット
第13話 決算大戦略-年度末調整編-
第14話 決算大戦略-受験生の逆襲-
第15話 エリアル番外編 戦え! 秘密戦隊エリアル3

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第396回 境界線上のホライゾンⅣ(23)

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川上稔「境界線上のホライゾン Ⅳ(中)」 Horizon on the Middle of Nowhere
Episode Ⅳ-Part 2 適当ダイジェスト⑫



「第四十九章 黎明の住人」
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 「武蔵」アリアダスト教導院の後側校舎一階の図書室。東(あずま)は入口の大きな神棚に一礼して、半透明の少女の手を繋いで中へ入る。いつもは葵姉がバイトで立っていたカウンターには、別の図書委員の女子生徒がいて“東宮様も、完全にお父様ですね”と、半透明の少女へカウンターの下から雨やビスコッティを出す。
 東が進むのは奥の歴史のコーナー。奥州について。下の外交艦でそのことのついて会議が行われているはずだ。御所で自分が教えられたのは、「帝(みかど)」が極東全土を地脈制御で安定させるため、平定を行った土地だという事。無論、それは勝者である帝側の始点によるものだという事は解っている。こんな所にある資料はネシンバラ君なら全部読んでいるんだろうけど、現在、重傷らしい。
 どういうことかアデーレに聞いたら、“いやあ、それが見事な壁画でアイロンプリントなんです。でも、壁になって守った訳じゃないですよ? あれは壁になってやられたというか・・・”と理解不能なことを言われたが、うちの周辺が理解不能なのはいつものことなので問題ないだろう。と、奥のコーナーへ向かう途中、東はまばらな人影の向こうに、一つの人影を見た。
 あれは、たしか二年の代表委員長。大久保といったか。こちらの視線に気づいて慌てて無言の一礼をされる。東も一礼を返し、奥へ進むと足場台を使って三要先生が本を取ろうとしていた。
 「極東書紀・原初編」。全滅から始まるシーンが完全改訂された版を取ろうとしていたのだ。何故?と聞く東に、自分と同じだと三要は言う。オリオトライ・真喜子から下の会議のことを聞いたそうだ。
元・皇族が奥州の過去を調べに来るとは歴史的快挙だと言われ、ここは教員に聞くのが良いだろうと。“歴史に詳しいですか?”と聞いてみる。
 三要先生は、ここにある知識のレベルがどのようなものかを調べていると言う。例えば、原初の時代、世界を現実側と重奏側に分け、聖譜を生み出した「非衰退調律進行計画」について、とかを。

 外交艦の中庭。自分達を隠すように衝立が周りに立つ会議の場で出た言葉。「非衰退調律進行計画」。正確に言えば、「非衰退のための世界調律化の進行と計画」。遥かな昔、この世界の在り方を決めた計画だと言う。
浅間達が小等部では神話として、中等部では知識として、高等部では一年あたりで歴史として学ぶ、この世界のスタートの事。浅間の属する神道で言うと天にて神々が争っていた神代が終わり、この星に下りてきて人の現世が始まろうとした時代、この世界の取り決めがあったこと。
 そう思った時、泰衡が自分の方を見た、と思ったら視線は自分の背後の衝立を見ていた。その衝立には絵物語で一枚一枚に教科書や絵本に描かれている歴史が描写されていた。
 泰衡がゆっくりと言葉を続ける。“過去にあったことを機軸に、大きくなっていった「聖譜連盟」と近づいた関西や近畿近辺と違い、関東や奥州では過去の黎明の時代の事が、未だに強く残っている訳ですなあ。”と、こちらを見つめる泰衡。
 “久しぶりに過去の物語を聞いてみたいものですぞ。―――その理解度と試し如何で、こちらの教える内容も変わりましょうからな。”

 ナルゼとマルゴットは衝立の並べ直しを始める。黎明の時代とは人が天から降りてきて以降、聖譜以前までとされる時代。今でも小説草子や漫画、ゲームの題材になるが、実際に見た者など、もはや何処にもいない。しかし、奥州の入り口、「平泉」は長寿族の土地である。
 ナルゼは泰衡に問う。“「伊達」や「最上」なんて、アンタ達の過去なんて忘れてるんでしょう?”
 泰衡は、“忘れられても構いませんな。ただ、――「伊達」にしろ、「最上」にしろ。「上越露西亜(スヴィエートルーシ)」の一部や関東諸勢力には、一つの意思が伝わり、生きているのは確かです。それは、抵抗の意志です。”と返した。
 浅間はハナミに表示枠(サインフレーム)を出させ、歴史年表を一気に先史時代まで回す。紀元前一万年。ここから聖譜による「歴史再現」が始まる。そして、八枚の衝立の並べ替えが終わった。「武蔵」勢と泰衡の横に八枚の衝立が並んだ。

一.空から落ちる流れ星の雨と、それを見上げる人々。
二.巨大な森の中に暴れる竜や大獣達と、抗う人々。
三.戦い合い、滅ぼし合う人々。
四.話し合い、妥協し合う人々。
五.地下へと向かう人々。
六.位相の地へ作られていくもう一つの神州と、それを見る人々。
七.別れ、立ち去る人々。
八、天から彼らを常に支える、―――聖譜。
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 ナルゼも「武蔵」に来る前、家族から昔話で聞かされた記憶がある。魔女(テクノヘクセン)の技術はこの時代に大いに発展し、各国に形を変えて受け継がれていったと。
 浅間は衝立の一枚目の絵を見ながら、その内容を告げる。
 “かつて、黎明の時代。地上に下りた神々は何らかの理由でほとんどの力を失っていました。神々の時代の遺産は劣化か崩壊、または使用回数の制限とかそんな状態だったそうです。そこで、神々は困ったことに気づきます。かつて、神々がこの星から離れたのは環境が悪化したためで、その修復を行う環境神群が根拠地にしていた神州以外を、二度と壊れないようにと過剰修復していたからです。”
 浅間の会釈で、ナルゼが二枚目の衝立を照らす。
 
 三要は図書館の奥にあるテーブルを一つ借りる形で、東や、興味深げに寄ってきた生徒達に講義を始めていた。神職の他にこの時代の事を語れる職業がもう一つ存在する。教員である。
 黎明の時代を描いた子供用の絵本をめくり、三要は話を続ける。
 “神州の外の環境の苛酷さは、想像以上のものでした。砂漠は灼熱に、雪山は極寒に、森は背丈100mを超える大密林に、竜や大獣が闊歩する、神々スケールの仕様の世界になっていました。神々時代のジオフォーム技術の大半が失われ、開拓団は定住と発展が出来なかったのです。”

 泰衡はその通りだと言った。“人は行っても住まねばならぬ、住んでも産まねばならず、育てて受け継がせ、繰り返し、そのサイクルを安定させ、一度も寸断させてはならない。黎明の時代の苛酷環境化では、良くて産むところまでだったと聞きますぞ。”
 喜美がエロい事やったまでは到達したのね、と言うのに馬鹿が食いついてきた。浅間は幾人かが通神帯(チャットルーム)に入っていることに気づき、これまでのログと、圧縮版をハナミに作らせて送る。
 《平泉の泰衡さんが黎明の時代の恨みがあるから明日以降協力するかどうかツンデレで、実はまだ正純さんが戦争撤回してないけど黎明の時代の解説入いっちゃったの――》
 イトケン、ノリキ、ハイディ達はこれで理解できたらしい。
 浅間は話を戻して、三枚目の衝立に進む。
 “極東に閉じ込められた人々は開拓団を出すときに、血筋を分析し、自分達の祖先の出身地を割り出していたのですが、人口過密になった極東で、各国がそれぞれの勢力に分かれて領土戦争を始めたんです。当時の術式と、幾つかの技術が使用された結果、二週間で人口は半減。更に、その戦争でまた多くの技術や大規模術式が失われ、前よりも生活が厳しい時代になってしまったんです。”

 <会議中>の札を貼った図書室の奥。東は三要の講義を聞いていた。それは還俗の際に御所で教育されたものと同じだ。その黎明の話し合いが、後の「聖譜連盟」の始まりだという。その時の話し合いで幾つかのことが決まった。

一.絶対に人類を滅ぼさず、保護し、存続させる力を得る事。
 これは「聖連」や聖譜などを始めとする装備、全体のモットーの事。
二.環境神群との対話を通じ、世界の激化を止める事。
 これは地下深くにいる環境神群に《七百人隊》と呼ばれる探検隊が派遣され、多大な犠牲と共に果たされた。
三.外界の激化環境への対応と克服。人口増加への対応として、極東をコピーした重奏神州を位相空間に作ること。
 これは第二にて対話した環境神群の手伝いで、地脈で作られた位相空間に重奏神州を作り、極東以外の人々が移住していった。
 そして、四つ目。
四.人々が争いによって滅びないよう、共通マニュアルを作る。
 人々がかつて神として天に昇った歴史。それを繰り返すならば、滅びることなく安全に発展ができる。戦争の歴史も、談合や解釈でうまく乗り切っていけばいい。それを重奏神州での開拓ペースの基準とし、全ての勢力の「平穏と発展の基本ルール」とする。運命を補強し、滅びぬ運命を手にしていく事。古き良き歴史の譜面を調律し直し、進行する。
 私達は《奏者》であり、襲名者を基軸に歴史を再現していく。この第一から第四までを「非衰退調律進行計画」と言います。
 神州を除く各国は紀元前一万年から紀元前一千年までを百倍、紀元前一千年から紀元元年までを十倍解釈で手早く終わらせ、 紀元元年からは倍速解釈をせずに歴史再現を進行し、近世まで平穏に進められました

 さて、と泰衡は前置きし、話し始める。
 “「非衰退調律進行」が始まり、世界各国は重奏世界で自分達の領土を生み、自分達の歴史を再現し始めたわけですな。しかし、現世側の神州ではその技術を支えるため歴史再現を一歩進める必要がありました。それを可能としたのが、神格化した不死者「帝(みかど)」の存在ですなあ。、紀元前一万年から圧縮した歴史再現を行う各国とは違い、奈良時代前後からの記述で始まる聖譜の抄本が極東側に預けられ、他国の再現が追いつくまで待ったわけです。”
 京の都の中央。《御所》と呼ばれる要塞に現人神「帝」が居る。極東の神社組織の長である「帝」は通神や運輸などのインフラに関わり、環境神群経由で地脈を操作する存在を各国は警戒し、極東支配に二の足を踏むのはこのためである。
 泰衡は長寿族の祖先達はその時、重奏世界に渡り、北方での人々の開拓の支援に回ったと言う。
 ここで直政が義腕の右腕を挙げて疑問を呈した。まだ酒が残っているのか、頬に色がついている。
 “黎明の時代に人々の開拓を支援できたというのはどういう事さね? 各国の連中でさえろくに開拓地での生活が出来なかったのに、長寿族は今でも残っている。どういう仕組みさね?”

 泰衡は、いい質問ですな、と内心で感嘆した。「武蔵」《第六特務》は人種的に「清・武田」の出身だろう。肌色から南部方面出身だろうが、あそこも豪雪地帯だ。では試しだ。
 “逆に私から問い掛けましょう。私達は何をもって、重奏領域の北方を支援したのでしょうなあ?”

 ホラ子:さあ、誰か白状しましょう。素直に言えばホライゾンは怒りません。
 金マル:バラやんがいれば嬉々として答えたんじゃないかなコレ。
  義 :すまんが聞いたことも無い。里見にも長寿族は多いが、奥州を出て行った派だからな。
 銀 狼:「IZUMO」で義経公と話した時、そういう情報は得ていませんの?
  俺 :ここは、―――ちょんまげしかねえな。
 ホラ子:奇遇ですねトーリ様。ホライゾンも同じ事を考えていました。それを乗せるだけで相手がデレる不思議な行い。
 賢姉様:ええ、二人とも、私も今、それを思ったわ。恐らく黎明の時代、極寒の地で人々は寒さを凌ぐためにお互いをちょんまげして、温めあったのよ。
 あさま:いや、凍傷になりますし。――正純、あなたも結構、義経公と話した機会を得てましたけど、なにか思い当たることはありませんか?

 正純は答えた。“「天津乞神令教導院」、義経が教えてくれた最古の教導院だ。黎明の時代が終わった時、激戦区だった奥州には、安定のため、「帝」の勢力からなる組織が常駐したはずだ。それは、重奏神州の開拓に力を貸すものではなかったのか?”

 ナルゼは笑い声を聞いた。泰衡の、空を見て発される三日月の口の哄笑だ。
 “なかなか面白いとこまで踏み込んでこられる。そして、―――奥州を知るコンセンサスとしては、その辺りが貴女達の知識の限界と、そう捉えても良いのでしょうな。これ以上、知りたいと言うならば、私から話さねばなりませんが、今は止めておきましょう。”
 泰衡は腰を上げた。“私達の先達は歴史の敗者としてではなく、私達を敗者の子とせぬため重奏神州への支援に乗り込んだのではないかと思っています。明日の「臨時生徒総会」、勝ちなさいな。勝てば、黎明以後の話をしましょう。そして、「天津乞神令教導院」について、知る限りの事を伝えましょう。”
 正純は周囲に霧が満ちてきているのに気付き、音も無く藤原・泰衡の姿が消えた。
 ひとまずの交渉が終わったのだと、皆が一息を大きくつく。が、正純は通信用の表示枠(サインフレーム)が新たに展開しているのを見た。「武蔵」からだ。浅間が出ると、慌てた動きで顔を上げる。
 “行方知れずになっていた二代が見つかりました! 「青雷亭」! BLUETHUNDERの方です!!”


「第五十章 狭所の休憩者」
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 「武蔵」アリアダスト教導院の図書室は、夜だというのに声で溢れていた。その一角で大久保・忠隣/長安は加納からの通神報告を受けながら、三要達の話を聞いていた。加納からの連絡は《副長》本多・二代の位置を捉えたというもの。前回のような失敗は許されないと、手近なものを向かわせる。

 二代は椅子の上で首を仰ぎ、二三度、まばたきをする。自分は「水戸」での戦闘の後、「有明」行きの艦に乗り込み、そこで気を失ったはずだ。負傷していたので医務室か施療院か、どちらかに運ばれたと思ったのだが―――
 “あ、起きた? 二代ちゃん。”
 え? 声のした右の方を向くと店主がいた。何かおかしい。何故、「青雷亭」にいるのか。確か福島・正則と戦い、《蜻蛉スペア》が発動せず、負傷したはずだが、身体を触れてみるが痛みが無い。傷を得ていない? 壁の時計を見ると夜の十一時。店内には白衣姿が奥に一人、入り口側にフード姿が二人いる。
 どういう事で御座ろうかと店主に聞こうと思ったら、こちらの眼前に竹ボトルとパンの紙包みを置き、
“うちの旦那から情報封書(ビデオレター)届いたんだよ。見る?”と言ってきた。

 亭主殿?と二代が言葉を失っていると、店主は神肖筐体(モニタ)の上に、映像や音声情報を封じた専用の符を貼り、手元の表示枠でスタートさせる。画面には青空と白、そして黒が映る。地面に広大な穴が開いている。あれだけ雪があるという事は「上越露西亜」だろうか。吊り橋の上の男が
 “やあ、久しぶりだ。どうだ、トーリ、喜美、この風景は。”
 店主が映像を切った。最初は嫁だろうがと筐体を半目で見る。
 二代は先程の映像に見覚えがある気がした。吊り橋と闇の底。思い出した。昨夜だ。太縄通路を渡ろうとして襲撃を受けたのだ。あの時も負傷して通路から落ちた筈だ。気が付いたらここに居て・・・。
 “店主殿・・・” どういう事でと言いかけた瞬間、“忘れ物”っと《蜻蛉スペア》が投じられた。同時に二つの動きがある。入り口側に居たフード姿の客が立ち上がりながら、腰の二刀を抜き放つ。もう一つは開いた入り口から、“《副長》!”と見知らぬ小柄な影が飛び込んできた。
 そして三つ目が来た。「青雷亭」の大窓をぶち破って、三つの影が飛び込んできた。
 更には、“・・・!?”
 闇が落ちた。「多摩」管区の照明が一斉に落ちた中で、多重の戦闘が発生する。

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第395回 バルサの食卓

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上橋菜穂子&チーム北海道「バルサの食卓 」
バルサの食卓

 守り人シリーズ、獣の奏者の上橋菜穂子の小説に出てきた料理を実際に作ってみようという企画。

 両シリーズに出てくる無発酵のパンのようなもの。パムとファコを作ったり、冬篭りの間食べていた「オルソ(甘い麦粥)」、ヨゴ料理「湯気のたつスチャル(鳥と野菜の鍋物)と汁かけ飯」、「サンガ牛の炙り焼き(牛肉のローストビーフ風)」、「マッサル(ひき肉上げ団子)」、「ハラク(蜜入りハーブ茶)」など、材料とレシピ、写真付きで紹介しています。

 実際に作ったチーム北海道の方々はすごいイマジネーションですね(^^

既刊
1.精霊の守り人(バルサ30歳、チャグム11歳)
2.闇の守り人(バルサ31歳、チャグム12歳)
3.夢の守り人(バルサ32歳、チャグム13歳)
4.虚空の旅人(バルサ33歳、チャグム14歳)
5.神の守り人 来訪編
6.神の守り人 帰還編(バルサ34歳、チャグム15歳)
7.蒼路の旅人
8.天と地の守り人 第一部 ロタ王国編(バルサ35歳、チャグム16歳)
9.天と地の守り人 第二部 カンバル王国編(バルサ36歳、チャグム17歳)
10.天と地の守り人 第三部 新ヨゴ皇国編(バルサ37歳、チャグム18歳)

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第394回 ベルセルク

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三浦建太郎「ベルセルク」BERSERK37巻
ベルセルク 37

 最新刊。幻造世界(ファンタジア)編・妖精島の章海神編が終了した。
 これからガッツたちは妖精島へ向かう。

 過去編、遠い日の春花を収録。

 久しぶりにリッケルトとエリカ登場。次は鷹都(ファルコニア)の章かな。

 三浦先生は体調が優れず、生きている内に頭の中のものを全て描ききりたいとおっしゃっているとか。
 休載が多くても構いませんから、完結まで描ききってください。
 応援しています。

 劇場版「黄金時代編」三部作をまとめて観たいので、早くDVD化しないかな~

 

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第393回 境界線上のホライゾンⅣ(22)

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川上稔「境界線上のホライゾン Ⅳ(中)」 Horizon on the Middle of Nowhere
Episode Ⅳ-Part 2 適当ダイジェスト⑪


 「第四十七章 畔の勝負師」
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 外交艦から上陸した「上越露西亜」の宮殿「春日山城(カスガガーラ・クレムリン)」の来賓居室で点蔵はドアのチェックをしながら表示枠(サインフレーム)の応答を待っていた。生徒会、総長連合の通神(チャット)会議である。
 「平泉」の藤原・泰衡が介入してきたことで三国会議ではなく、事実上、四国会議になった。三国会議が始まれば時代の流れに押しつぶされまいと、諸勢力が介入してくるとは、これは正純が狙ったものかと点蔵が問う。
 これに正純はJud.と答えた。三国がまとまれば諸勢力は三国の下に入らざるを得なくなる。その前に“力のない「武蔵」を援助する“と恩を売るならば、三国会議が始まる今しかない。藤原・泰衡は滅亡した「奥州藤原家」を隠れ里として存続させている長老だ。そして、鎌倉時代の始まりの頃、政権を取った源・頼朝公に義経公を討って匿った許しを得ようとしたが、結局、「奥州藤原」は滅ぼされた。それを「隠れ里」として残し、存続させている人物だ・松永・久秀公の先輩格ともいえる梟雄だ。それを前提に、油断なくいかねばならない。それに「平泉」は純血の長寿族ばかりの国で各国に散らばった長寿族の長たる集落でもある。国交を確かにするメリットは大きい。
 点蔵は長寿族勢力というのも難しいで御座るなと頷く。“難事と思うで御座るが、正純殿ならばアドリブでこなせるで御座ろう。最後は戦争になっても通常運行なので、気にしないで行くのが良かろうと。”
 憤る正純を置いておいて、点蔵やメアリの方の様子を聞くマルゴットの言葉に点蔵は後ろを振り返る。壁まで覆う絨毯の掛かった部屋の中に天蓋付きのベッドが置いてあり、その上で金髪の全裸が寝そべり、笑みでゆっくりと手招きをしている。
 “ナイト殿、ここは男部屋で御座るよ。”

 役職者が隔離されている外交艦の甲板上の縁台で、藤原・泰衡との会議が始まった。浅間が持ってきた茶を口に運びながら、正純は正面の縁台に座る影を見る。奥州長寿族の長、「有明」を匿ってくれた人物。そして源平の乱世を浴びた荒者だ。そのことを理解した上で問いかける。
 “奥州入口、「白河」の代表とすべきか、泰衡公。この度は一体、どのような用件で私達の前に姿をみせた?”と問うた正純への反応は、軽い吐息だった。笑みとも失望ともとれるものだったが、正純は続ける。
 “大体、何が聞きたいか解っている。三国会議後の未来図と、お互いのコンセンサスを取りたいのだろう?「奥州藤原」、隠れ里の安定と存続。――それが目的か、泰衡公“
 “どうでしょうなあ。だって、――「武蔵」が掲げるのは世界征服。それは我ら「平泉の隠れ里」も含むのでしょう。私達は噛み合わない。我々をどうするか、それ次第で奥州勢や長寿族勢力は「武蔵」を図ることになりますぞ?我々を存続させて世界征服を妥協するか、よく考えましょう。”
 随分と強気の売込みだなと考えながら、正純は長身の長寿族の女性を見る。次の言葉はいきなり来た。
 “さて、世界征服云々と言っても、大事がありましょう。明日の「臨時生徒総会」、「三国会議」を押し切る自身がおありですかな?”
 予備動作無しで、いきなり、刃を突き付けられた感覚がある。義経公とは逆か。長寿族として人の在り方などを見過ぎて麻痺する一方、我を保ち、我が儘に国を動かしていた義経公と違い、自分を隠して国を動かす人物だ。これが「隠れ里」の存続を行うやり方なら、こちらは前に出よう。

 泰衡は「武蔵」《副会長》の態度を見た。相手は退かずに前に来た。こちらを下から、しかし上目使いではなく、ただ視線を見上げた形で、態度を隠しているのは解っているぞ、と。義経公と相対したのは解っているが、そこで、何かを得たのだろうか。それとも彼女自身のセンスなのだとうか。これは面白い、と泰衡は思った。なぜなら、これはまるで演劇のようですなあ。
 この相手はこちらの反応を見切ろうとしていない。無反応なのが当然なのだから、最後まで無反応でいられるかという長寿族のプライドを足先で転がしに来る気だ。お互いの殴り合うポジションを確認した上で、
 “――明日以降の勝算は、お有りで?”

 “勝算はあるとも”と、正純が答えるのに間を開けず、“しかし、貴校の眼鏡委員長は別の考えのようで”と切り返す。話題の連関も、本論への飛び込みも早い。根回し無しで、自分の情報だけで切れ味重視の交渉を掛けてくる。狼狽えれば一気に畳み込まれる。それを押さえるには緩急だ。
 正純は相手の顔を見て観察する。
 “大久保の持論について、彼女はこちらとは別の考えを持っている。だが、彼女は私達の後輩で、「武蔵」住人であり、極東の未来を考える者だ。最終目的が同じならば最終的に私も彼女も同じ所を向く。”
 “では聞きましょう。貴女の最終目標とは?”
 何という速さだ。明日以降の事、大久保の事という、たった二つの受け答えで、いきなり最終目標ときた。有り得ない速さで、これは危険だ。今まで何処でも何時でも自分達の最終目標を掲げてきた。「大罪武装」回収と、それによる「末世の解決だ。だが、いつも通りの返答をすれば確実に切り返される。ならば。
 “最終目標は明確だ。貴女も先程言った通りだ。――この世界を征服する。”

 泰衡はその言葉を真正面から受け止めた。それは奥州の「隠れ里」も制圧するということだ。こちらを揺らす隙はないかと探っている。では、“――そのプランを明確にできますかな?”と問うのに《副会長》は“それは出来ない。”と返してきた。
 “奥州の「隠れ里」について聖譜記述による歴史再現に違反すると言われれば、「武蔵」は「隠れ里」を護るどころか、場合によっては敵にせざるを得なくなる。そのような相手にプランなど出せるだろうか。”
 “脅迫ですかな?”と相手の良心を突くが、“事実を言っているだけだ”と否定をしない。更に、自分が言った内容が事実であると前置きし、同意を迫っている。その上で彼女は真っ直ぐこちらを見て言った。
 “私としては「平泉」と戦争をする気は無い。何故なら、理由が解らないからだ。「平泉」が何故未だに「隠れ里」として存在しているのか。理由を話してくれ、泰衡公。そうやって極東から距離を取りながら、何故、今、私達の事を気にかけてくれるのか。”

 正純は「平泉」が「隠れ里」という形をただ守っているのではなく、極東から距離を取っているのだと考えた。何故かといえば、奥州は抵抗の土地だからだ。かつて、聖譜以前の黎明の時代、戦乱があったという。領土問題から始まった、極東勢と各国勢の戦いの激戦区だった故に長寿族は、その歴史を人間よりも遥かに正確に伝えているはずだ。それは奥州の気風として残っている。
 “奥州は、未だ、極東を許していないのか?その全てを明かすことで、君達のわだかまりを消すことは可能か?”
 “御待ちを、少し飛躍しておられる御様子。こちらとしては「平泉」の存続と不可侵が約束されればと思っているのですよ。”と泰衡は平然と言う。
 正純はゆっくりと言う。「それは無駄な望みだ。時代はもはや、そのような事を許さない。私達は世界を征服することで、全てを解決する。奥州と関東のパイプラインとなっている「平泉」を潰そうと、各国に居る長寿族の勢力を敵に回そうと、私達は「大罪武装」を集め、「P.A.Oda」と「羽柴」の脅威を取り除き、「松平」の世を創っていく。そして君達が隠れずに済む世界を創る。それが私の考える世界征服だ。“

 浅間は空気が変わったのを感じた。それは今まですぐ切り替えしてきた泰衡公が黙ってしまったからだ。
 “あんな頭おかしい宣言で、泰衡さんが態度変えるなんて・・・”
 “言っておくけど、世界征服言い出したのは私じゃなくて葵だぞ!”
 皆も、纏う空気が変わっている。ナルゼとマルゴットはいつでも動ける態勢を取っているし、喜美も走狗(マウス)のウズィを出している。喜美がウズィを出すのは術式の準備だ。直政も近くの椅子に腰かけながら組んでいた脚を下ろしている。
 私も何か・・・、確認だ。――弓、ある・――矢、ある。確認していたら、正純から奥州の古い歴史について確認を取ってくれと指示が来た。神道の代表者としてだ。
 正純は静かに言葉を重ねた。“私達は世界を征服する。それに対し、「平泉」はどうする?藤原・泰衡?”
 問いかけに対し、反応はあった。
 “抵抗するしか、ありませんなあ。”


「第四十八章 歴史の勝者」
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 奥州は抵抗の地。黎明の時代に起こった戦乱の平定は、最終的に奥州で行われたとされている。これを朝廷が行った東征の前倒しとしたため、長寿族を中心とした異族が力を持った。しかし、源平争乱で疲弊し、多くの勢力が失われた。だが、未だ不明な部分が多い、それが、「隠れ里」が許されている理由なのか?
 “藤原・泰衡。長寿族の貴女は黎明の時代に抵抗を行った勢力の末裔だろう。今、私達が行う世界征服において、私達の「勝算」を聞きにここへ来たのだ。再び、「平定」が私達によって行われるのではないかと。――違うか?
 泰衡は表情を変えた。口を小さく、弓にしたのだ。
 “ほほう。―――足りませんなあ。”

 なかなか、良いところまでは来ていますな。「武蔵」《副会長》の言うとおり、奥州には歴史がある。その歴史を支えてきたのは、自分達、純血の長寿族だが、今では黎明の時代を知る者は一族の中にもいない。
 「平泉」は自分の代で潰されるのは解っていたから、あらゆる手段で存続を果たしてきた。
 “私どもが、何故「平泉」を存続するのか解りますかな?”
 泰衡は《副会長》が、「純血長寿族の国を残すため」と答えたなら、「武蔵」への協力を、敢えて了承しようと思っていた。この《副会長》は「平泉」に理解があるからだ。だが、「武蔵」《副会長》はこう言った。
 “奥州の歴史を私は知らない。黎明の時代の騒乱が、何故、朝廷の東征として採用できたのか。時代が八百年近く離れている。だがこの平定が行われていなければ、奥州は平和に貢献していたはずだ。そして、源平争乱に時代に長寿族が絶対数を減らす以前は、奥州は異族たちが多く住んでいて、巨大な共同体を構成していた。長寿族はそのリーダーだった筈だ。”
 まさか、と泰衡は思い、ならば、と促す。
 “「平泉」が望むもの。それは「長寿族の国」ではないな。異族も含めたあらゆる種族の大共同国家だ”
 成程、義経との交流は意義があったという事か。だが。
 “―――足りませんなあ。”

 正純は更に空気が変わったことを悟る。冷えた空気が泰衡の方から来る。彼女は表情を笑みのまま固め、穏やかに言葉を這わせてきた。
 “「平泉」の意味、確かにそれはありますぞ。だが、足りませんなあ。”

 “黎明の時代ですね。” 夏服姿の浅間が、ゆっくりと会釈をくれる。神道の巫女でも上位クラスの存在。極東の神々を扱うもの故、極東の発祥や歴史にも密接な関係がある。
 “ちょっと時間を下さい。情報を整理しますので。黎明の時代の奥州、聖譜すら生まれていない時代。少し、神道の禁忌に触れてしまうかもしれません。”

 小休止の後、浅間は神話を語る。
 “神々が地上に戻ってきた黎明の時代。環境神群による過剰な修復により、極東以外の地域は人の住めない環境になっていました。そして領土争いが起きます。極東勢対他国連合の争い。数の上で劣勢になった極東勢は近畿地方に追い込まれますが、「帝(みかど)」という存在を作りだし、環境神群との間接的なアクセスを得、気候操作も可能な環境神群の力で他国連合と対等の状態にまで持ち込みました。まず、欧州勢が極東側と休戦します。”
 ここまでは記録が残っている事実だ。逆に徹底抗戦をしたのは近畿南部、三河、関東から奥州にかけての東国勢だ。ここから先は私の予測も含みますと言い、浅間は続ける。
 “泰衡さん、貴女達は有史以前、神々がこの星に降りた黎明の時代に、極東の敵に回った極東人の末裔なのではありませんか? 朝廷が極東を平定する以前、神道とは違う土着の神々が存在し、恭順したものは国津神や補助役に組み込まれましたが、逆らうものは名前を残さぬ「奉ろわぬ神」として、上に神社を置いて魂鎮めました。貴女方は「奉ろわぬ神」の眷属なのではないですか?”

 聖譜勢に恭順せず、極東勢力でありながら極東に抵抗し、しかし他国勢になり得なかった居場所無き者達。しかし、開拓のため奥州勢は好むと好まざると、聖譜の歴史再現による利点を使わざるを得なかった。
 だから、と正純は言葉を継ぐ。“貴女達は、今でも聖譜勢力や極東の権力と距離を取りながら、それを利用しているのだな。奥州や関東の基礎にあるのは、自己欲より他者を思って行う信頼と共同国家としての抵抗。相互扶助の精神は根付き、残っているという事なのか。”
 正純は考えた。同じ極東勢でありながら裏切られ、滅ぼされたことにされ、そう言った過去さえ消されながら、その敵の力で生きざるを得なくなっている。まるで、義経を裏切り、頼朝に顧みられなかった泰衡の生き方のようなものだ。同じ極東人として相対するには、強固な壁がある。
 気をつけねばと心に刻んだ時、表示枠(サインフレーム)の中から馬鹿が話しかけてきた。
 “浅間の言ったこと、どうだったんだよ、って聞いてくれ。”

 “浅間はアンタから助けを引き出すために、自分トコを悪役にするような事言ったんだ。過去に何があったって、そういうのは別に、浅間がやったわけじゃねえ。俺はいい方法ってのは解らねえから、アンタに聞くよ。アンタは浅間の言った事どう思ったのか、教えてくれねえかな。”

 “「武蔵」という極東勢の代表が、過去を知り、その上で私達と関係を作ろうとしているのは確かでしょうな。神道勢力の片から言葉を聞けて、正直、肩の荷が下りたのも確かです。” 泰衡が一息つくように、身を前に倒した。頭を下げたように、そう見えた。
 正純は再び、身を前に乗り出す。
 “どうだろうか、藤原・泰衡。先に求めた通り、聞かせてくれないか。――奥州の人々が、どういった存在であるのか。その話を。”

 泰衡は椅子を座り直す。“―――お互いの協働のためのコンセンサスとして、そして奥州の基礎として、遥か昔の話をたぐっていきましょうか。”
 話をする。その意味を正純は思った。こちらとのコンセンサスを、深く、取りに来るという事か。
 “頼む、初夏の夜だ。昔話には丁度いい。

 “―――これは勝者の歴史には触れられていない事。奥州の民の多くも忘れてしまったこと。今や、「奉ろわれぬ者」達の話です。この世界が今のルールを得た始まり。聖譜の時代の始まり、「非衰退調律進行」というものを、どの程度、知っていますかな?”

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第392回 蔵書管理2013年3月

Posted by ヒッター7777 on   0 comments   0 trackback

蔵書管理 2013.03

 月イチの個人ネタ。単なるメモである。3月に読んだ本をチェックする。
 ACCCESSデータベースに登録した蔵書は2013年3月31日で 20,861冊(先月増+18冊)となった。
 ペースがだいぶ落ちているのは、忙しかったのと、RPGゲームをやっていたのと、読んだ本がどれも異様に分厚かったからである。

 内訳は
 小説  6,514冊
 コミックス 13,910冊
 エッセイ、NF他 437冊 である。
  

・4月の予定

 ペリーローダンの翻訳版今月、やっと425巻まで進んだが、すでに445巻まで買ってある。先が長い。
 
 氷と炎の歌第4部「乱鴉の饗宴」は第5部が出るまでに読むか・・・。8月出版だったな


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 かっけ 八戸名産 そばかっけ(むぎかっけというのもある)
かっけ2

 お湯に通してにんにく味噌を付けて食べるのだが、酒が勧む食べ物である。
かっけ

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