まるでダメな男の日記

このブログでは趣味のゲームや読書感想など非生産的な駄文を書き連ねていく予定です。

第391回 暦物語発売決定

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西尾維新 「暦物語」

こよみ

 次は「終物語」だと思っていたら5月下旬に「暦物語」が乱入して、「終物語」は夏に異動になったらしい。
 キスショットとの出会いから、ひと月に1短編の連作で、1年を振り返るもよう。
 サイドストーリーでも外伝でも正伝でもないという微妙な作品で、ページ数としては「化物語(上)」を上回るようだ。

http://www.bookclub.kodansha.co.jp/kodansha-box/topics/nishio/

 楽しみです。(^^

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第390回 境界線上のホライゾンⅣ(21)

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川上稔「境界線上のホライゾン Ⅳ(中)」 Horizon on the Middle of Nowhere
Episode Ⅳ-Part 2 適当ダイジェスト⑩


「第四十五章 絶景の傍観者」
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 佐々・成政は不破・光治が近づいてくるのを見ていた。光治は数キロ先の森の中へ落ちていく、マルファのハルク船を見つめる。随伴艦がマルファと生き残りの戦士団を拾い上げている。「上越露西亜」側へ去っていく本庄・繁長の艦群を見やるが、光治はなんか囮っぽい戦闘だったと成政に告げる。成政が疑問顔をすると、一枚の表示枠(インシャ・コープ)を出す。西の空に浮かぶ浮上都市「ノヴゴロド」。そこに今の戦闘の間に一隻の外交艦が入った。
「M.H.R.R」改派(プロテスタント)側の航路を通って来たらしい。旧派(カトリック)側の監視は巴・御前の警告で距離を置くしかなかったが、「阿蘭陀(オランダ)」の艦と判明した。女市長マルファの言っていた「客人」だとすると、彼女は「P.A.Oda」にも内緒の動きをしている様だ。「武蔵」が三国に介入する動きを読んでいたという事か。

 「武蔵」アリアダスト教導院の正面の陸橋に立つ大久保・忠隣/長安は、「総長連合」《副長》本多・二代の行方が不明との連絡を受けていた。隣に立つ加納も再確認と捜索続行の指示を出す
 “厄介やな、《書記》の時は失敗したけど、《副長》はちゃんとやったらんと” と言って「有明」ドック内の「武蔵」の全容を見る。人々や武神が至る所で働いている。
 “私のしてる事、間違うとるやろか?”
 大久保は「武蔵」が「英国」へ向かった時、「三征西班牙(トレス・イスパニア)」の襲撃を受けたことを思い出した。あの時、大久保達、代表委員は「村山」の機関部、左舷重力加速外翼部を走り回っていた。各横丁の安全を図るため、大気固定の術式符を家屋や建築物に貼ったり、流体経路のバルブ操作を整えたりしていた。自分は極東の歴史が動いていく、そのワンシーンに立ち会えることを楽しみにしていた。だが、あの砲撃で全ては変わった。
 「三征西班牙」のステルス艦が放った砲撃を、「武蔵」は「英国」の盾となることで、敢えて受けた。あの時は役職者達の乗った輸送艦も、「武蔵」から離脱し離れ離れになった。そして、自分の二重襲名者という肩書もなんの意味も持たなかった。あらゆる抵抗を無駄とする、無力の強制を行う力。暴力とも権力とも違う歴史の動き、「運命」というものがある。世界の動きは人には止められない。だが、被害を最小限にすることは可能だ。

「第四十六章 熱気庭の再会者」
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 向井・鈴は未知の場所に居た。ここは「仙台城」の来賓用居住区らしい、密閉の部屋だ。山をくりぬいて作った空間だからか。「武蔵」にも地下居住区はあるから慣れている。部屋の構造やドアの位置も知覚出来ている。隣の部屋はウルキアガ君の部屋だが、奥州舞台の方言を使う姉キャラゲームで心の態勢を整えると言っていたけど、そこには触れない方が無難だろう。
 主庭には自由に出入りが可能だと、案内人は言っていた。行ってみようと鈴はドアを開け、警備の女学生に声を掛ける。ここは地下だが、主庭ってどういうものだろうと通路を進んでいく。
 そこには仕切りとなるドアは無かった。熱気のような四角があり、厚みのある熱気の皮をくぐって抜けたところで鈴は呼吸を失った。
・・・濃い。知覚に訴えてくるものが、熱、音、匂い、湿度、空気の動きが異常な濃さを持っている。天井の低い密閉された空間で、空調は最低限、花は密集管理されており、木々の下で眠っている人達がいる。弾力のある湿った地面を踏み出し、時計回りに一周しようと小道を歩いて行く。正純から情報は可能な限り集めてくれと言われている。ただし、強引ではなく、危険な手段を用いてはならない。
 しばらく歩き、小川を一つ渡ろうとした時、脇の農園を世話する人影に顔を向けた。知っている人だ。「伊達家」の人ではないが、転校したのだろうか。気になったので声を掛けてみる。
 “あの、――猿飛、佐助、さん”

 佐助は戦慄した。昨夜から「仙台城」に潜入して、情報の確認をしようとしていた矢先だ。あの「武蔵」の前髪枠は、目が見えない故に知覚が優れているのは解っている。だが、外見はもちろん、骨格から変装した今の自分は山間部から来た予備役学生、モンキトビスト・サスキーだ。
 これは何かの間違いだと、無視することに決めた。
 “あの、―――佐助、さ、ん。才蔵さんと、農園の、お手入れ?”

 才蔵は戦慄した。風精の才蔵は、風となって姿を消している。調査の時には姿を作り、山間部から来た新入生、キーリカ・クレトシーゾンとして振舞うが、今は単なる風だ。
 これは何かの間違いだと、才蔵も無視することに決めた。
 “あの、――姿、違うけど、同じだよ、ね? 動きの揺れ、「武蔵」のも、入って、同、じ”

 佐助は改めて戦慄した。鈴がこちらの正体を見破った原理を理解したのだ。前髪枠がこちらに来ていて良かった。もし、「武蔵」に居つづけたら潜入している連中が看破されただろう。鼓動や血圧による体の波動はおいそれと変えられるものではない。戦国時代の最中だ。どんな技能持ちが出て来たっておかしくは無い。今度から鼓動やら何やらに変調を入れる訓練をしなければ、と思い、佐助は立ち上がる。
 “――久しぶりだな、お嬢ちゃん。何か用かい?”

 鈴は良かったと思った。忘れられてなくて良かった。
 “佐助さん、も、才蔵さん、も、また、お仕事?”

 佐助は内心、頭を抱えた。何と答えればいいのだろう。
 “あのな、お嬢ちゃん。一応、俺達の立場で仕事してんだ”と答えると
 “破壊活動? 頑張っ、・・・て”
 頷いていいんだろうか? スポーツか何かと思ってるんだろうか。両手を握ってポーズをとる鈴を見て、誰がこの娘に破壊活動なんて単語を教えたんだと考える。
 
 数分後、姿を現した才蔵は「武蔵」艦長代理の説明を聞いていた。大部分はこちらで調べた情報の裏打ちとなるものだが、「最上」や「上越露西亜(スヴィエートルーシ)」との連動とは意味が大きい。更に「K.P.A.Itaria」で地盤固めをしている「羽柴」の《十本槍》が出てきたというのは、「江戸」と「里見」を押さえている「P.A.Oda」との陽動だろうか。「北条」への監視として滝川・一益が来たともいう。問題は滝川を配下に置く《六天魔軍》のNo.2、丹羽・長秀まで関東に来たという事だ。
 「武蔵」にとって安全な場所は、もう何処にもない。「真田」も将来、二つに割れ、一方は「松平」と敵対することになる。
 “とりあえず、嬢ちゃん、取引と行こう。俺達のことを黙っていて貰う代わりに、何かして欲しいことがあるなら言ってみな。手配しよう。”と佐助が言うのに、鈴は、“じゃあ、トーリ君を、護って。と言う。
 それは佐助や才蔵の立場として、出来ない事だった。
 “お嬢ちゃんの約束は、ちょっと難しいところであるな。じゃあ、ちとサービスだ。この「伊達家」が抱えている問題。それに直接、触れられるようにしておく。俺達は「最上」、「上越露西亜」も回る予定だから、これが餞別だ。”
 “いいの?”と聞く鈴に、“夜、十一時になったら、ここに来るといい。面白いものが見られるだろうよ。外交官としての最高のネタがな。”
 佐助は笑みでこう言った。

 役職者達が隔離されている外交艦の甲板上、葵・喜美と浅間・智のユニット「きみとあさまで」が演奏を終えた。
 “御粗末様でした。”と軽式琵琶を置く浅間と、舞を止めて息を入れ直している喜美の向かいの直政は軽く酒が入っている様だ。そこから身一つ分離れて、表示枠(サインフレーム)の群れを相手にしている正純は、視線を甲板上に突き刺さった野太い竹竿を見る。
 “まさか空からカレーやバーベキューセットが降ってくるとは思わなかった。”
 それは太さ30㎝はある硬化加工された竹で、その房が全て格納ケースとなっている。先端を斜めに切った竹槍型の補給投下竿は、落下時のブレが無いよう研究試験しているもので、ステルス防護を通過しても目標に届くよう、マーク認識式になっていた。
 竹槍が突き立ったのがナルゼが描いた、六つの御広敷の顔の眉間のど真ん中を貫いている。これだけ正確だと武装転用したほうが良さそうだ。
 その時、不意に妙な感覚が足元から来た。前にもあったような気がする。そして霧が沸き出す。
 “奥州、「隠れ里」のステルスさね・・・”
 ステルス技術としては旧式の浸透型だ。結界が甘いため、防護結界とならず霧のような緩い形になってしまうが、結界保持の出力が要らない分、効率は結構良い。
 北側、左舷の方に人影が降りた。「清・武田」の制服を着た、背の高い長寿族の女性。「武蔵」が関東に来た時、迎え、匿ってくれた存在。
“奥州、「隠れ里」の長老・・・”
その女性は目を弓にして右手を挙げ、ゆっくりと言う。
“Tes.、奥州、「藤原」の最後の頭領。藤原・泰衡(ふじわら やすひら)ですなあ。「三国同時会議」、その前に、「臨時生徒総会」、その前にちょっと奥州の話も聞いて貰いましょうかな。私共としても、「武蔵」を助けたスポンサーとして、理解しておいて欲しい事などもありますし―――“


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第389回 シナンジュ・スタイン(1)

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シナンジュ・スタイン(1)

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 MG 1/100 MSN-06N シナンジュ・スタイン Ver.Ka が届いた。かと言って作っている暇はない。
 とりあえず中身を確認する。

 全体としてシャア専用シナンジュに改造される前の機体なので、バックパックやプロペラントタンクなどの仕様が一回り小ぶりである。
 早く作ってシナンジュと並べたいものだが、買ったまま手をつけていないプラモデルが20個以上山になっている。
 まだバンシィVer.kaも出来ていないのに ゚(゚´Д`゚)゚
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 付属のデカールも、また細かい。泣かされそうだ・・・
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第388回 ファイナルファンタジーXI

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ファイナルファンタジーXI 「アドゥリンの魔境 Seekers of Adoulin」 拡張データディスク

ファイナルファンタジーXI アドゥリンの魔境 拡張データディスク

 久々にでた拡張ディスク。「アルタナの神兵」から6年ぶりか。

 もう11年以上続けているMMO-RPGですが、飽きが来ない。

 新しい冒険の舞台となるのは「神聖アドゥリン都市同盟(アドゥリン群島)」と「ウルプガ大陸」 。
どちらもこれまで、ゲーム中や設定資料などで断片的な設定が語られていたのみの地域である。
 最初は中央の黒枠内世界での冒険だったのだが、「アトルガンの秘宝」の拡張ディスクにより、赤枠世界が追加された。
 今回は西側の大陸が追加され、冒険者たちは開拓に向かうが、そこは強力なモンスターのいる魔境であった。
ヴァナディール


 ゲームはPC-Windows版、プレイステーション2版、Xbox360版があり、元々は日本人プレイヤーばかりだったのだが、北米版、フランス語版、ドイツ語版が追加され、ゲーム内はわけがわからない言語が飛び交い、大混乱(w)が起こった。
 一応、定型文のカタコト会話でパーティを組んで遊ぶのも楽しい。


 拡張追加ディスク
 ・ジラートの幻影 Rise of the Zilart
 ・プロマシアの呪縛 Chains of Promathia
 ・アトルガンの秘宝 Treasures of Aht Urhgan
 ・アルタナの神兵 Wings of the Goddess

 追加シナリオ
 ・石の見る夢 A Crystalline Prophecy
 ・戦慄!モグ祭りの夜 A Moogle Kupo d'Etat
 ・シャントット帝国の陰謀 Shantotto Ascension

 拡張コンテンツ
 ・禁断の地アビセア Vision of Abyssea
 ・アビセアの死闘 Scars of Abyssea
 ・アビセアの覇者 Heroes of Abyssea

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第387回 境界線上のホライゾンⅣ(20)

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川上稔「境界線上のホライゾン Ⅳ(中)」 Horizon on the Middle of Nowhere
Episode Ⅳ-Part 2 適当ダイジェスト⑨


「第四十三章 路上の擦れ違い者」
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 点蔵達が居るのは本庄・繁長艦の甲板の最後部。極東式の平船型で、除雪や暴風避けのため甲板は平たく、艦の大きさに応じた広場のようなものである。周囲にいるのは本庄・繁長と彼女の麾下、魔神族を中心とした戦闘部隊だ。
 “正面にマルファ艦、接敵進路!距離三十秒に接近!”
 天地を逆にした黒いハルク船が、ほぼ真正面に見える。マルファが「P.A.Oda」に協力するのは「上越露西亜」の内乱扱いであり、外交役の自分達では介入できないものだ。しかし、聖譜記述には「ノヴゴロド」が粛清後に反乱を起こした事実はない。だから正純の判断は「現場に任せる」であった。点蔵は逆さまになったハルク船の甲板が急速に近づいてくるのを見つめる。向こうの甲板上に合成死体の戦士団の姿が見える。
 “構え――! 突撃だ同志!!”
  繁長の声と同時に擦れ違う両甲板の隙間が5mを切った。両の天面上にいる者達が武器を振りかざして疾走する。”交せ!「上越露西亜」」の「挨拶(プリヴェート)」を!!“

 両陣営の先頭を行くのは突撃合図の喇叭隊だ。脇に槍を構えた魔神と合成死体の戦士たちが艦の速度を加えて激突する。破壊の音が重層し、圧縮された響きの中で、魔神族や死体の甲殻や黒い血が宙を舞い、金管楽器の涼やかな音が散る。そして後続の玄翁隊が、杵型のハンマーを両腕や四つ腕や六つ腕に抱えて突進した。既にその後続も走っている。艦の速度を加え、攻撃も防御も一瞬で擦れ違う。両者はその一瞬の中で吠えた。
”こんにちは(ズドラートヴィーチェ)!“
全員が、お互いの敵を挨拶して吹き飛ばし、前に出る。
 ”こんにちは!“、”こんにちは!“、”こんにちは、同志!“
戦場はどこもかしこも挨拶と攻撃と被撃の場と化した。そして、隙と緩慢を見せた者は
 “さようなら(ダスヴィダーニア)”、“さようなら”、”さようなら、同志。”
と言って、二艦の間に起きる圧風に、外へと吹き飛ばされる。
 繁長が叫ぶ。“挨拶を重ねろ!―――それが礼儀である!”
 乱れた隊列に突っ込んでいくのは鶴嘴隊だ。鉄の三日月がその鋭角を前にぶち込む。行く三日月に並んで喇叭隊の残存が、身を仰け反らせて雷鳴の音を鳴らす。そして双力の本番として疾走するのは、お互いの主力、それぞれの長と側近の部隊で作られた突撃隊だった。
,
, 擦れ違いは中盤を過ぎ、双方、艦尾側に居るのは約三十人。繁長側は彼女を先頭として疾走し、マルファ側は白骨の馬に乗った彼女を、槍持ちの突撃隊で守り行く構えだ。繁長はまっすぐマルファを見据えて走る。だが、マルファの突撃隊は彼女を残して左右に散開疾走した。
 “・・・術式射撃隊か!”
 中距離から短距離に至る直前、攻撃を遠距離型に切り替えてきた。狙った行為だ。マルファが骨馬の上から合図のように首を振る。虎皮のマフラーが風に踊ると同時に、扇状に散開した術式攻撃隊が一抱えもある炎攻撃を八発発射する。
 繁長は大きく前に跳躍した。背後の側近たちを引き離し、右手を前に出して“・・・間に合え!”と放つのは、聖譜記述において、彼が敵の大砲を盾で防いだという、武勇絵物語に基づく「神格術式」。長方形の極東型タワーシールド。流体の光でできた《本庄盾》である。
 繁長は、その術式防盾を分化する。構成する光の色は薄くなるが、左右に走った数は十六枚。火炎攻撃は盾の表面で放射状に砕け散った。さらに肘を曲げて、右腕を再び突き込む動きでシールドアタックを掛ける。マルファ側の術者達が第二射を掛けようとしていた所へ、カウンターで入った。《本庄盾》も全て砕け散ったが、あとは正面にいるマルファだけだ。無防備に骨馬の上に膝立ちとなるマルファに、繁長は腰の一刀を抜いて突っ込んだ。
 マルファは静かな表情でこう言った。
 “お前は私を怒らせているぞ、繁長” 言葉が突き刺さった。どうしてか解らない。
不意にマルファが動いた。立ち上がり、背に手を回し、己の陰から引き出したもの。それは弓にも似た巨大な白と黒の武装。
“―――大罪武装(ロイズモイ・オブロ)!”
マルファは悠然と弓を振り仰ぎ、構える。だが、矢はない。繁長は己の加速よりも強い打撃力で、背後の宙へ飛ばされていた。
 吹き飛ばされたのは繁長だけではない。後続の「上越露西亜」戦士団の全てがいきなりの打撃に仰け反り、心臓の真上を穿たれ、胸部を陥没させ、胸骨を砕かれ、皆、平等に後ろに跳ね飛ばされた。
 繁長は天地の甲板を上下に二三度バウンドして、100m超の背後に叩きつけられた。その繁長を追うようにマルファは骨馬を走らせ、背に弓を担ぐと腰から一刀を抜く。馬上用の長大な一刀が、つるりと繁長に向かった。
 “政宗達との約束を果たさせることなく、すまんな。”
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 繁長は身を起こしかけていたが、上半身を起こしたところで、身体がそれ以上付いてこない。「大罪武装(ロイズモイ・オブロ)」《憤怒の閃撃(マスカ・オルジイ)》。その効果は、「怒りを向けた対象を見るだけで、度合いに応じた矢の一撃を叩き込む」。そして、今の一撃が、こちらの身を貫いていないということは
 “私に対する貴様の怒りは、そんなものか! 舐めるなよ!!”
 繁長は床を殴りつけ、膝を強引に引き寄せる。右の手指に引っ掛けるように刀を振りかぶる。狙うは一発。マルファの攻撃に対するカウンターだ。外せば死ぬ。決断した瞬間、狭い天地の左右から、巨大な四角い影が四つ、飛び出してきた。その物体には一つずつ、ある色のついた線がある。銀の鎖だ。

 “「武蔵」アリアダスト教導院、総長連合《第五特務》ネイト・ミトツダイラ。―――聖譜記述にそぐわぬ戦闘を払い、諌めようとする「上越露西亜(スヴィエートルーシ)」を援護致しますわ。”

「第四十四章 路上の分かれ者達」
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 ミトツダイラは四つの木箱(コンテナ)で左右を薙ぎ払い、マルファの後続の術者たちを、文字通り一掃した。切り離した銀鎖のタイトアームがフリーになると同時に、眼前、甲板の昇降リフトから上がってくるものがある。五つ目の貨物用木箱だ。リフトが上がり切るより早く、銀狼がその瞬発力で木箱を直蹴りする。
超重量級木箱がマルファ目掛けて風をぶち抜いた。

 マルファは正面から来る、威圧の塊を確認した。内心で得るのは感嘆の意だ。「上越露西亜」の「挨拶」としては異質だが、行っているのは「武蔵」の《第五特務》だ。これも有り得るのだろう。
 貨物用木箱の飛来に気づいたの繁長が身を伏せる。致し方ない。繁長に向けていた一撃を正面に突き込む動きに変え、貨物用木箱の真っ正面。刀に仕込まれた術式で、その前後扉を一息にぶち抜き、骨馬ごと中に飛び込む。短いトンネルの出口に出ようとした瞬間、左右から切断力が来た。 木箱の左右の壁を砕き、前から横打ちで一直線に迫る双の攻撃。”--《王賜剣一型(Ex.コールブランド)》か!”

 マルファは骨馬の首を押し下げ、自分は膝を縮めるように、軽く跳躍する。膝下を両剣が走り抜け
馬上にサーフ姿勢で着地する。一瞬、左右に忍者と英国王女の姿が見えた。残るは天地逆の視線の先にいる「武蔵」の《第五特務》だ。彼女を倒せばクリアだ。“先程の挨拶、返させて頂くとも”
 向こうが送ってきた挨拶は、確実に返すのが「上越露西亜」流だ、だから、マルファは行った。
 “・・・何!?”

 正面にヤキソバを食っている全裸エプロンが出現した。突然だった。全裸エプロンも、何がなんだか解らず、天地逆の構図で、“え!?”という声と顔をした。どういう理由かわからないが、障害物だ。マルファはサーフライド状態で骨馬の軌道を変え、全裸エプロンから逃れようとした。
 しかし、全裸エプロンはついてきた。・・・早い?。瞬間移動かと思える速度で、口からヤキソバを垂らしながらついてくる。表情からすると、まだ現状が解っていないらしく、“おお?”という顔をしている。マルファは逆手側に骨馬を返した。一気に脇を駆け抜けようとする。
 すると、再び前に全裸が出現した。そこでマルファは気付く。全裸の体を銀鎖が甘く噛んでいる。こちらの進行方向へと、四本の銀鎖にパスされているのだ。その姿は四本の銀鎖の間で残像が生じるまでになっていた。人間ピンポイント邪魔存在となった全裸に、マルファは刺突攻撃を打ち続けながら戦慄する。
 “「上越露西亜」ではこんな戦術、有り得ぬ・・・” 思考の向こうから声が聞こえる。
 “おおおおい!コラ!ネイト! 俺、手伝うって言ったけど、何この絶叫系は!!”
 “あ、いえ、こっちはこっちでやってますので、銀鎖に任せてるんですけど―――”
 つまりはインテリジェント・アイテムの暴走か。だんだん、障害物の扱いがぞんざいになってきて、パスを受ける際、全裸が“く”の字になったり、“⊂”の字になっているようだが、障害物には変わりない。ならば、と右の一刀を障害物込みで貫通するように《第五特務》に重ね向ける。が、眼前に大型の盾が飛び込んできた。
 《本庄盾》ではない。違う!「大罪武装(ロイズモイ・オブロ)」だ。《拒絶の強欲(アルピザ・フィラルジア)》を構えた「武蔵」の姫が背から下を銀鎖に支えられ突撃してきた。

 マルファの刺突が《拒絶の強欲》と激突した瞬間、マルファは失敗を悟った。「上越露西亜」は「英国」と繋がりがあり、「大罪武装」の情報も得ている。その能力は「受けた痛みを内燃拝気として蓄積する」。そして姫はもうひとつの「大罪武装」を右手で引き出した。
 “成程。―――あなたの今の攻撃は感情によるものなのですね。―――充分な補充となりました。《悲嘆の怠惰(リピ・カタスリプシ)》、出力三十%でお送り致します。”
 言葉と同時に天地の間に莫大な量の掻き毟りが突っ走った。

 ホライゾンから真上に発射された一撃は、マルファのハルク船の甲板を大きく抉った。そのまま擦れ違う速度で、掻き毟りは鑿のように甲板を削っていく。左右に散開した合成死体戦士団の間を掻き毟りは走り抜け、遂に複合装甲や緩衝材をごっそりと持っていき、天の底を見る。
 緊急加速で離脱したハルク船を見送る本庄艦の甲板で、残った魔神族の戦士は「武蔵」の姫が歌を口ずさんでいるのを聞く。
 “あれが《全竜(リヴァイアサン)》の姫か―――”

 マルファは銀の鎖が作った椅子に座り、竪琴のように白と黒の剣砲を構えている姫を見た。これが、いずれ戦国の後を作っていく者達の力か。感慨や、羨望という言葉で済ませられない感情が、腹の底から生まれてくる。しかし、それだけではない。姫の後ろで、いつでも障害物にできるよう、高速パスをされ続けている全裸。「武蔵」の姫は莫大な力を持つが、彼女達を率いてきたのは、あの“く”の字になってパスされている《総長》だ。自分も「三河」から「三方ケ原の戦い」までの帰結は情報として聞いている。「挨拶」すべきは《第五特務》ではなく、あの全裸にすべきであった。
 遠ざかっていく艦の甲板に、心臓の位置を抑えた繁長が立つ。まだ声の聞こえる距離だ。繁長が問う。
 “マルファ、―――私達の約束を邪魔するのであるか!?”
 考え、マルファは告げた。“私はお前たちに、こう教えたはずだ。肝心以外の思いは秘めろと、そして、肝心の思いであっても、肝心の機でなければ言うな、と。お前は雪の上に出るのだな。―――景勝に宜しく言ってくれ。終わらせたいならば、お前が動けよ、と。”
 地の側から繁長が声を作るが、もはや、言葉としての認識はできない。
 マルファは思った。“―――我が冬の終わりよ、早く来い。”

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第386回 宇宙戦艦ヤマト2199(6)

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アニメ「宇宙戦艦ヤマト 2199」第五章「望郷の銀河間空間」


 第15話「帰還限界点」
 第16話「未来への選択」
 第17話「記憶の森から」
 第18話「昏き光を超えて」

 PVを見たのだが、これはもうリメイクではなく別方向へ向かっているのではないかと思う内容だ。
 デスラー総統暗殺? ウーン (Θ_Θ;) 楽しみだ。
 パワードスーツみたいなのも出てきてるな。



 ちょっと知恵袋の質問で見たのだが、ヤマトが進行方向に直角に主砲を向けて撃つのだが、2199年でも三角測量のやり方で敵の移動方向、速度、距離などを算出しているのだろうか?
 現在でもレーザーの反射から測距する技術があるのにな~と思いました。

 
 やはりこの曲が好きだ・・・
【第7回MMD杯本選】 宇宙戦艦ヤマト -ドグウ帝国の逆襲-

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第385回 星界の戦旗

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森岡浩之 星界シリーズⅡ「星界の戦旗Ⅴ 宿命の調べ(リネーブ・ファゼトラグ)」

星界の戦旗V 宿命の調べ

 いや~、8年待ちました(笑) もう前回までの話がどうだったか忘れかけてました。
 このアーヴ世界の設定に当初、唸ったものです。よくできている。
 2001年に出た『星界の戦旗 読本』というのに、アーヴ誕生にまつわる物語、アーヴ根源二九氏族による「アーヴによる人類帝国」(フリューバル・グレール・ゴル・バーリFrybarec Gloer Gor Bari)建国の物語など、正伝を補完する話が載っていて面白かったのを覚えています。
 世界設定の背景は日本神話なのですね。

 言語設定もしっかり行われており、アーヴ語はヤマト語族トヨアシハラ語派に属するヤマト語族ニッポン語派(クロムシュタット・ヤマト語及びマツオ語)と設定されている。
 発音および表記、文法、アーヴ文字、名詞の格変化、代名詞の格変化、動詞接尾辞まで細かく設定されています。
 アーヴ語史による、日本語からのアーヴ語の変化も紹介されていて使われている単語は、日本語が語源なんですね。フランス語を弄ったのかと思いました

 高天原 tacamagahara の母音変化 →tacmgahar の子音変化 →lacmhacar の主格語尾-hの追加 
 → ラクファカール Lacmhacarh

 とりあえず第1部、完です。
 設定が良いのでもっと書いてくれ!


 既刊
 星界シリーズⅠ
1.星界の紋章I 帝国の王女
2.星界の紋章Ⅱ ささやかな戦い
3.星界の紋章Ⅲ 異郷への帰還
 
 星界シリーズⅡ
1.星界の戦旗I 絆のかたち
2.星界の戦旗II 守るべきもの
3.星界の戦旗III 家族の食卓
4.星界の戦旗IV 軋む時空
5.星界の戦旗V 宿命の調べ

 外伝 星界の断章
1.星界の断章I
2.星界の断章II

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第384回 境界線上のホライゾンⅣ(19)

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川上稔「境界線上のホライゾン Ⅳ(中)」 Horizon on the Middle of Nowhere
Episode Ⅳ-Part 2 適当ダイジェスト⑧


「第四十二章 枠内の抗議人」
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「有明」の下、「水戸」の空に浮かんだ外交艦の甲板で、プールの縁で足を水につけながら、正純は大久保の放送を聞いていた。
 実質、阻害されているのは生徒会と総長連合の要職者だけで、御広敷やハッサン、イトケン、ペルソナ君、立花夫妻は平常通りだ。シロジロとハイディは商人仕事限定という条件で中にいる。通神が制限を受けているわけでもない。ただ、広報関係に言を載せることは禁止されている。明日の「臨時生徒総会」までは、裁判を受ける側は拘置というわけか。
 プールの上の大型表示枠に水を掛けているのはクリーム色の水着の葵姉、白と赤の巫女服仕様水着を着て水飛沫を上げているのは浅間・智だ。こいつらは一般人だから元気だな、と思いながら、艦砲級射撃が出来る巫女に、「羽柴」の《十本槍》の攻撃を弾ける一般人か・・・。一般人とはなんだろうか、と哲学的に考え出した時、黒の水着を着た直政が、正純の頭に麦わら帽子を被せてきた。
 “まあ、明日に期待しとくさ。”と、盆に料理と酒を載せてプールへ入っていく。その後には魔女服の色に合わせた魔女達(テクノヘクセン)が続く。

 正純は大型表示枠(サインフレーム)の中の大久保の方針演説に意識を戻す。大久保の論旨は現・執行部のやり方を踏襲しながら方向性を変えるという、上手いやり方だ。「武蔵」の改修、「大罪武装(ロイズモイ・オブロ)」の回収、「末世」の解決、「ヴェストファーレン会議」への参加、国際的な「武蔵」の発言力を増すことなど、現在の「武蔵」の基本方針を否定しないし、踏襲すると言っている。
 ただ、大久保が主張するのは、「物事の解決のため、何故、戦わなければいけないのか?」だ。

 大久保・忠隣/長安は、ゆっくりと息を吸った。広報委員の構える撮影用小型社務を見据え、まだ笑は作らない。自分は裏方に徹してきたので、初めて見る者も多い。自分は挑戦者なのだから、下手な余裕を似せてはならない。まずは現状の再確認だ。
 “政治的な在り方を考えたら、今の「武蔵」の国力で十分、今後は平和を維持したまま。「末世」を迎えていくことが可能です。でも、「三河」の時とは状況が違う。「三方ケ原の戦い」での敗戦を得て、ここで今までの方針を見直して見ては如何と、私はそう思うのです。
 そうしなければ、今後は奥州や「上越露西亜」を巻き込み、逃れられない戦いに赴くことになります。そのための議論の場を頂く機会を、と思っているのですが――“
 次は視聴している皆へのお願いだ。だが、すぐには言わない。論述にはメリハリが必要だ。今まで行ってきたことは、基本的に無意味な事で、重要なのは人々を「臨時生徒総会」でこちらの味方につけておく事だ。こちらの言葉の意味も解らず、頷いているだけの人達に、自分を覚えさせるにはどうするか。前でこちらを映している受像機に対し、大久保は何も言っていない状態で、力を抜く。
 ふう、と声までつけて誰からも解るように、今までの弁舌の真剣な力と態度を捨てた。目を細め、お疲れ様やわ、といつもの言葉使いと同じ口調で、
“自分の事、―――宜しう、お願いしますわ”
大久保は、笑みの目を伏せ、改めて頭を下げた。
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 “うっわ、ズル・・・” ○ベ屋店舗の店先で、ハイディが口を横に広げて仰け反っていた。顔横に正純からの表示枠(サインフレーム)が広がっており、
 “オ-ゲザヴァラー、商人として、お前はどう思う?”
 そうだなあ、と店先で営業スマイル全開のシロジロが、婦人集に野菜を一つ一つ売っているのを見る。どういう手さばきか、揉み手をしながら大根やネギを手渡している。口上はネギ5本セットがネギ5本分の値段でご奉仕中らしい。
東が、なにか普通のことを言っているような気がするが、余がおかしくなったのか?と聞くのをさておき、ハイディは、眼鏡委員長は正純と私達の間みたいなキャラではないかと分析する。なぜか落ち込んで横になった正純を置いておき、頭の上の走狗(マウス)のエリマキが広げる表示枠を読み上げる。それによると、現在、「武蔵」警護隊は二代が動けないため、役職者と委員会の衝突は相対戦扱いにする気らしい。
 役職者以外は対象外になっているようだが、有名人の東の方はどうかと聞くと、ミリアムが月一のあれで看病に急しいが問題ないと答える。ついでに軽くする方法はないかと問うのに、ナルゼは鼻血を出しながら、二人でなら止める方法は知っているが本人に聞いてみなさいと促すと、うん、聞いてみる、と退場する。
 通神関係を担当する浅間は、隔離対象になったようだ。ここまで大掛かりなことを水面下で進めていたのは、大した手腕である。おそらく、「アルマダ海戦」のあたりから仕組まれていたのだろう。あの頃から、各委員会の横の繋がりが太くなった。「三方ケ原の戦い」以降、各委員会に陸港に降りた住民の世話や苦情処理を任せてきたが、その情報は代表委員会に集約されていったはずだ。それは向こう側の大きな武器であり、子供を戦場に行かせたくない親たちの意思も含んでいる。
 正純が纏めると、“大久保側だと、今後、戦争を行わなくていいかもしれない。”ということになる。それに対し、浅間は、“それじゃ不利じゃないですか。正純、戦争大好きなのに!”
 ちょっと待て、すごく語弊があるぞと抗議する正純を見て、皆が額を集めてひそひそと話し出す。最終的に浅間が輪から出て手を挙げた。
 “正純、非常に言いにくいんですが、―――正純が出た会議って、大体、結論が「戦争するぜ!」みたいな気がするんですが。”

 浅間に言われ、正純は考えた。そうだっけ? 正純は今までの記憶を蘇らせる。「三河」の時と、「英国」の時と、と指折り数えていきながら、軽装で足を脛まで水に突っ込んでいるのに、この脂汗はなんなのだろうと、落ち着け、正純、と自分に言い聞かせる。基本的にお前は非戦主義者の筈だ、不安な過去と未来が見えてきたが、
 “待て!お前ら!マクデブルクの時、会議の参加国のどれとも戦争するという結論にならなかったぞ!”
 ”アンタあの時、「自分たちが羽柴潰すぜ4649!」みたいな宣言しなかったっけ?”
 ナルゼに直球をぶち込まれ、正純は横に倒れぐったりした。しかし、現実は変わらない。身を起こし、言うだけ言ってみる。
 “あのさ、私は真面目に会議とか交渉してるよな?”
 “ああ、そうさね。―――最後は戦争になるけど。”
 “・・・私、一応、極東のことを考えて言動しているよな?”
 “うん、―――最後は戦争になるけど。”
 “・・・・・・・多分、私、他国と協調しようとしてるよな?”
 “ええ、多分。―――最後は戦争になるけど。”
 浅間は、それは正純に非道い、ちょっと今の流れは無いんじゃないでしょうか、と皆に抗議するが、ナルゼはトンボ枠型魔術陣(マギノフィグーア)を出して統計表を見せて説明する。
 ふんふんと頷き、正純を見る。
 “解りました。統計的に見て、正純は真面目に極東のことを考えて他国と仲良くしようとしています。―――最後は戦争になるけど。”
 お前ら、敵か!と叫ぶ正純に、とりあえず、明日の「臨時生徒総会」は内ゲバだから、戦争になることはないと、レベルの低い結論が出る。
武蔵通神3


 雪の丘の上に立つ二つの影がある。「M.H.R.R(神聖ローマ帝国)」の制服を着た鬼型長寿族と、黒いダウンジャケットを羽織った「P.A.Oda」の制服姿。柴田・勝家と佐々・成政だ。二人の前にそれぞれの表示枠(インシャ・コトプ)が開いており、女忍者の姿を映す。関東にいる滝川・一益である。「武蔵」と奥州勢、「上越露西亜」との三国会議や、「臨時生徒総会」のことを探っているらしい。「白鷺・改」で三国の砲撃パターンや、砲弾の使用量を記録を送ろうかと言ってきたが、勝家は断った。今からでは間に合わない、と。
 新発田・重家を襲名した「ノヴゴロド」の女市長マルファは、本庄・繁長の護衛艦隊に向かった。勝家と成政が見ている東の空。繁長の艦隊の正面に、不意に影が現れる。黒い800m級の重曹戦艦がステルスを解除して、艦隊に飛び込んでいった。

 本庄・繁長の艦隊の進路前方11kmの空間に出現した、クラーケン級武装ハルク船に対し、焼きそばを口に詰め込んでいた繁長は表示枠(サンクト・アグノー)を開き、天面防護術式の解除を命ずる。
 突っ込んでくるハルク船は上下を逆にし、平たい上部甲板を下にしている。その長い甲板には合成死体の集団が乗っていた。その先頭に立っている「上越露西亜」の制服を黒塗りして、飾りを付けて着込んだ女性を、大型表示枠が望遠で映し出した。
 骨で出来た八本脚の馬を横に置き、首に虎革のマフラーを風に流し、そのマフラーの端には「景虎」の二文字がある。ミトツダイラはその意味を知る。元・「上越露西亜」の《副長》長尾・景虎。「ノヴゴロド」の女市長マルファだ。「ノヴゴロド」は「上越露西亜」を裏切り、「P.A.Oda」に付いたのか。
 本庄・繁長は眉を顰め、“秘匿情報だったが、ここで発露だな。正確に言えば、「上越露西亜」の後継者の一人であった者。現《総長》兼《生徒会長》上杉・景勝の親友であった存在、マルファ・裏切り自由(ヴェージマ)・ボレツスカヤだ。”
 断ずる口調とともに艦内放送が声を上げる。
 “接敵!「上越露西亜」名物「挨拶(プリヴェート)」まであと二分三十七秒です!”

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第383回 水の迷宮

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高千穂遥 クラッシャー・ジョウ 11「水の迷宮」

水の迷宮

 8年ぶりの新作! ということで、はて、前作はなんだったかと蔵書をチェックすると買っていなかったことが判明した(笑)

 amazonに10巻「ダイロンの聖女」を注文するついでに、どこへ行ったのか行方不明のペリー・ローダン426巻も注文する。
 今月、423、424、425巻と読み進めてきたのだが、ここで頓挫していたのだ。
 チェックしたところ427~444巻は全部揃って、買い置きの本の山で、読まれる順番を待っているのに・・・

 高千穂さんのクラッシャー・ジョウやダーティ・ペアが好きで、昔から読んでいたのだが、今読んでも飽きない面白さがある。
 やはりイラストは安彦良和さんしか似合わないな。
 ダーティ・ペアもそろそろ、新作を出して欲しいが、気になるのはタロスとケイの関係、ユリは果たしてジョウの母親?
 また、過去編のような話を書いて欲しいな。

既刊
1.連帯惑星ピザンの危機(1977年作・2000年に改訂)
2.撃滅!宇宙海賊の罠(1978年作・2001年に改訂)
3.銀河系最後の秘宝(1978年作・2001年に改訂)
4.暗黒邪神教の洞窟(1978年作・2001年に改訂)
5.銀河帝国への野望(1978年作・2002年に改訂)
6.人面魔獣の挑戦(1979年作・2002年に改訂)
7.美しき魔王(1983年作・2002年に改訂)
8.悪霊都市ククル(上)(下)(1989年-1990年作・2002年に改訂)
9.ワームウッドの幻獣(2003年作)
10.ダイロンの聖少女(2005年作)
11.水の迷宮(2013年作)

別巻 1.虹色の地獄(1983年作・2003年に改訂) - 「劇場版」のノベライズ
2.ドルロイの嵐(1986年作・2003年に改訂、ソノラマ旧版では「外伝1」) - 現役時代のダンと彼のチーム(タロス・バード・ガンビーノ)がダーティペアと共演するエピソード。
 ケイの一人称で描かれた「ダーティペアの大乱戦」と同一の事件をクラッシャー及び第三者的視点で描いたもの。

ダーティペア・シリーズ
1.ダーティペアの大冒険 第11回星雲賞日本短編部門賞を受賞
2.ダーティペアの大逆転  第17回星雲賞日本長編部門賞を受賞
3.ダーティペアの大乱戦
4.ダーティペアの大脱走
5.ダーティペアの大復活
6.ダーティペアの大征服
7.ダーティペアの大帝国

ダーティペア・シリーズ外伝
ダーティペア 独裁者の遺産

ダーティペアFLASHシリーズ
ダーティペアFLASH 天使の憂鬱
ダーティペアFLASH 2 天使の微笑(ほほえみ)
ダーティペアFLASH 3 天使の悪戯(いたずら)

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第382回 HELLSING

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アニメ OVA「HELLSING」10(最終巻)


HELLSING OVA X

 「ドリフターズ」を読んでいて、あれ?「HELLSING」のOVA最終巻を見ていなかったな思い出した。

 倫敦最終決戦。良い出来です。やはり「HELLSING」はセラス・ヴィクトリアで持ってますね。

 ベルナドット隊長も好きです。
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 これはもうハルコンネンⅢと言うしかない(笑)
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 サービス♫ サービス♫
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笑った

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第381回 境界線上のホライゾンⅣ(18)

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川上稔「境界線上のホライゾン Ⅳ(中)」 Horizon on the Middle of Nowhere
Episode Ⅳ-Part 2 適当ダイジェスト⑦


「第四十一章 上からの抑圧者」
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 「P.A.Oda」の戦闘外交艦「聚楽第」の後部にある大型展望台。直径50mの円形空間を満たすのは青白い流体光。それは中央部にある二つの寝台から漏れていた。その一つに横たわっているのは、左の頭に竜角を生やした霊体の少年、羽柴・秀次。傍らには駒姫が立っている。
 “私は、母様に嫌われることが出来たでしょうか。最後の一砲、どういう意味だと思われますか?”
 問いかけは、しかし、緩く崩れていく。ふと、秀次の寝台に触れた左手を伝うように、光が駒姫を支えた。耳が横に、狐の様相を強く帯び、霊体用インナースーツの尻の部分から尻尾が二本出る。緩やかに手指や口の端が変化しかけ、身震いをして寝台から離れようとするが、手がついてこない。無理やり右手で左の手を引き剥すと、徐々に姿が戻り始める。
 スーツの尻回りを直していると、展望台に上がってくる人影が見えた。丹羽・長秀だ。先程、奥州勢や「武蔵」勢に啖呵を切った時と違い、表情は笑みで、取り繕った感が無い。戦闘時と平常時を切り替えている様だ。「伊達」の片倉さんも切り替えの激しい人だったな、と思いだした。あれはどちらかというと、あれで頭がおかしい気もするけど、戦闘時にはあれはあれであれなのだからあれであれなのかもしれない。
 長秀が、ふ、と息をついて寝台に横たわる秀次を見る。
 “何とも申し訳ない話ですね。―――霊となって存在している秀次様が、実際は意識も定かでなく、こちらの言うなりの、人形のようになってしまっているとは。”
 “都合が良い、って言わないのは何故ですか?” 駒姫の問いに、“「P.A.Oda」は良い場所ですよ。意識さえ有ってくれれば、こちらの味方になってもらえると、そのくらいの自負はあります。”と長秀は答える。
 “生意気を言ってすいません。”と謝る駒姫に、いいですいいですと手を振り、“私としては、やっぱり、意識を持って貰った方がありがたいですよ。言動の説得力が違いますものね。ただ・・・”
 長秀が視線を上に移した。秀次の頭上の位置に青い波紋のようなものがあり、実態を持たない武神の腕が映っていた。
 “厄介ですね、これは。秀次様への流体供給をどんどん吸ってしまって、「聚楽第」の燃料管理者が悲鳴を上げてますよ。駒姫様、貴女と秀次様はこの世に残念を持っていた。だから、二人とも、ここまで形ある霊体になっています。しかし、お二人の残念は、どうしてか噛み合っておらず・・・”、長秀は言葉を止めた。動かぬ片竜角の少年を見て、“貴女に何を言っていいのか解らなくて、こっちへ戻ってこれないんです。もっと自分に負担を掛けるべきだったと、そう思って、落ち込んでるんです。”

 空を四つの影が離れていく。「羽柴」、「上越露西亜」、「最上」、「伊達」の主力艦隊が、それぞれの主教導院の元へ帰っていくのだ。
 正純はそれを見やり、「有明」からの迎えの輸送艦を待つ。あとは二代の状態が心配だ。大久保や広報委員に「羽柴」の《十本槍》を二代とミトツダイラが撃退したと報道するように仕向けた。もし、《副長》の敗北を追及する者が出ても、無事な姿を外に出す事で事態を取集しなければならない。
 この後は三国との交渉という大イベントが待っているが、戻っていった艦隊が態勢を整えるまで1両日かかるだろう。と考えている間に、迎えの艦が来た。
 側舷から直政が身を乗り出している。そして、甲板から夏服姿のナルゼが羽箒の乗って飛び出してきた。護衛にしては大げさで軽装だなと考えていたら、ナルゼが厄介なことになったと言う。
 “委員長たちが動いたわ。反乱? いや向こうにとっては、平和のための蜂起運動かしら?”

 “・・・は?”と疑問した正純に、ナルゼは迎えの艦を指指す。側舷に居るのは直政だが、数m離れた位置に、長銃を構えた学生、風紀委員の後輩達がいた。
 “委員長連合が、生徒会や総長連合に対して蜂起したという事か。”
理由は解っている。三週間前の敗戦だ。これ以上の戦争行為は危険でしかないと判断したか。ナルゼが無表情に呟く。“連中は「武蔵」と「有明」の各部を確保、了承を取り付けているわ。「武蔵」が出港可能となった段階でこそ、現生徒会、総長連合に「別の未来があるかどうか」確認と提案をしたいって。”
 「臨時生徒総会」の開催を申し込まれたのだ。

 “フフ、面白いわね。人事刷新を行うクーデターではなく、「武蔵」の方針を刷新する政変と言うべきかしら。上手い方法だけど、ゲスだわ。そのいい度胸の決断をしたのは誰? ナルゼ。”と葵姉が問う。
ナルゼに答えさせるまでもない、解っている。“《代表委員長》、大久保と《風紀委員長》の加納だな。”
正純は表示枠(サインフレーム)を出し、吐息をつく。
 “聖譜記述では、本多・正純は大久保達と政争を繰り返し、大久保一派を退けるものの、加納御前の謀略によって失脚、政界の戻ることは無かったとされている。”
 “アンタ、襲名してないじゃない。”と葵姉が小さく笑い、“それが慰めになるとは、予感したことも無かったよ。”と応ずる。だが、非襲名者に二重襲名者が破れたらどうなるか。築き上げた全てを失うことになる。向こうも本気で動いているという事だ。
 直政が、遠巻きに警戒している風紀委員達を視線で牽制し、“昨夜のネシンバラの襲撃や、二代のアレ。連中の仕業なのかね?”と疑問するが、今回の蜂起と、昨夜の襲撃はなにか噛み合わない気がする。そんなことをしたら、正当性が失われるだろう。
 浅間も昨夜、大久保に感じた違和感と、襲撃は違う気がすると言うので、直政も頷いた。浅間の勘は当たる。とりあえず、生徒会、総長連合関係者はVIP対偶で「保護」されるらしい。
 “一学期に二度も「臨時生徒総会」をやるなんて、ろくでもないぞ、うちの教導院―――”

 「有明」では「武蔵」が出港待機状態から、整備待機状態に移行した。「臨時生徒総会」まで現生徒会と総長連合の権限が一時停止され、各委員会が代行を行うという通達が、表示枠から流される。
 真田十勇士の伊佐は機関部を見渡せる橋の上で、遅めの昼食を取りながら神啓(レディオ)を聞いていた。主催側の大久保という襲名者が挨拶と、「臨時生徒総会」の目的を語る。「武蔵」の執行部の刷新ではなく、全体方針を決めるという趣旨だと言う。一般市民や学生の意見もここで聞こうと言うのだ。
 やり方が上手いと伊佐は思う。忍者が敵地で行う陽動に近いやり方だ。神啓放送が終わり、映像特化型の大型表示枠(サインフレーム)が「有明」各所で開く。映るのは大久保と自動人形の加納だ。
 テロップの黄色文字は「生徒会室より緊急謁見、今、「武蔵」の可能性」と書かれている。番組名は「本音貫通トーク番組 徹甲の部屋」というらしい。伊佐が見つめる大久保の眼鏡の奥の瞳に、こちらを見据えてくる力がある。厄介っぽい人だな、と忍びの勘で捉えた伊佐は、大久保の声を聞く。
 “「羽柴」、「P.A.Oda」、「聖譜連盟」という強大な力に逆らって「末世」解決を望む現生徒会、現総長連合に対し、別の方法。―――今後における「武蔵」の戦闘行為の放棄と世界の平和。その両立の可能性を、私は皆様に提示したいのです。”
   

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第380回 ドリフターズ

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平野耕太 「ドリフターズ(DRIFTERS)」3巻
ドリフターズ 3

 「HELLSING」の平野さんのコミックもはや3巻目。
 漂流者(ドリフターズ)たちと、廃棄物(エンズ)たちが異世界を舞台に戦う物語。

 こういう話、好きですねー、すでに漂流者、アドルフ・ヒトラーによって作られた帝国は、廃棄物たちの進行を受けていた。
 扉の並ぶ通路で、漂流者たちを集めている「紫」と、廃棄物たちを集めている「EASY」の目的は?

 まだまだ先は長そうです。

 漂流者たち
 主に古今東西の、生死不明のまま未帰還となった人物[3]で構成されている。
 元の時代に居た時と同じ人格、肉体を維持しているが、生きた人間そのものであるためコントロールがきかない。
 世界全体のバランスを考えた場合、召喚されたグループによっては廃棄物よりも危険な存在だと言える。
 島津豊久、織田信長、那須資隆与一、ハンニバル・バルカ ほか

 廃棄物たち
 主に古今東西の、非業の死を遂げたと言われる人物で構成されている。
 現世を憎む余り人格も生前とは変わり果てていると言い、大抵はまともなコンタクトも難しい精神状態になっている。
 黒王、土方歳三、ジャンヌ・ダルク、アナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァ、ラスプーチン 他

 

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第379回 輝天炎上

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海堂尊 桜宮サーガ「輝天炎上」
輝天炎上

 先に過去編の「バブル三部作」を読もうと思っていたが、こっちを先にしてしまった。
 初期構想の「崩壊三部作」のラスト、「桜宮オートプシー・イメージセンターの崩壊」を描く「ケルベロスの肖像」の補完を成す、「螺鈿迷宮」の続編。
 両者を読み比べるとニヤリとします。
 「ケル肖」で、まさか、あれじゃないか? と感じた部分が、やはりそうだったかという部分と、えーー? 聞いてないよ、という部分が有り、とても衝撃的な作品でした。

 第365回で書いた「ケルベロスの肖像」を買った理由というのは、この帯にありました。
 こりゃあ、読まねばならぬ、と思うでしょう。
おび1

 桜宮小百合と極北市民病院の産婦人科医・三枝久広の関係はそうだったのか、「極北クレイマー」では、そんなこと匂わせていなかったな。

 まだ他の作品群を全部読んでいないのだが、「ナニワ・モンスター」は読んでおきたい。

 一応、作品の関係図を作っているのだが、この「輝天炎上」に作品群が集約されてきているのがわかる。

桜宮サーガ

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第378回 境界線上のホライゾンⅣ(17)

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川上稔「境界線上のホライゾン Ⅳ(中)」 Horizon on the Middle of Nowhere
Episode Ⅳ-Part 2 適当ダイジェスト⑥


 承前

 風が消え、霧が消えた。宙を覆っていた《不転百足》の両腕や顎剣が力を失い、崩れていく。それらは全て、途中で光に飲まれて消えていった。
 空に残るのは三つの影。
 黒緑の四枚翼を広げて宙に立つ《不転百足》、その前に居る半竜、そして、鬼角を両肩部の飾りとした武神が、赤と黒の機体を《不転百足》に両腕を構えていた。その装甲には顎剣を受けた斬撃の跡がある。
 “白熱するな。成実、戦闘は終わりだ。”

 “―――戦闘終了?” 成実が気付けば砲撃の音も無くなっている。そして、鬼庭が艦の方を見たのに気付く。余所見という、戦場では有り得ない動作の先を視線で追うと、「武蔵」の外交官が艦橋の基部に立っている。半竜が最初に竜息を吐いた時、甲板は霧に覆われた。半竜は囮だったのか。
 “「武蔵」の外交官は、政治的な交渉を行わないと言う前提で来たのでしょう?”と、成実が問うのに、鬼庭は理由は二つあると言い、背後の空、南を指す。後部へ白い吹き流しを流した輸送艦が、「自動巡航」の表示枠を大きく前後に展開し、先に《鬼切》で撃墜された「伊達」の武神達を運んでいる。舷側に「武蔵暫定議会」と書いてあるのは、こちらに対する配慮だろう。
 不完全燃焼だが、と鬼庭の向こうに居る半竜を見る。本気の挙動を見せた自分に、短い間だがついてきた相手を吝かに思う意味は無い。感嘆がある。《不転百足》との地上戦についてこれる者は、「伊達」領内にはいない。今後は油断も見下しも無しだと考え、内心、息を吐きながら半竜に何か言おうと口を開きかけた。
 半竜は艦橋の方を見ている。鬼庭は戦闘を止めた理由は二つあると言った。そのもう一つは――、「武蔵」の外交官が話しているのは、黒の長髪を風に流す痩せ気味の少女、伊達・正宗だった
“見事! 今の拙僧の戦闘と頭脳的勝利を見せ、ちゃんとアピールしたか、向井?”
 この半竜はそっち系だった! と成実は顎を縦に開いて思うが、まず優先することがあった。
 “鬼庭さん! 何でここに政宗を連れて来たの? だって、小次、―――羽柴・秀次がいるのよ!”
疑問の叫びを断ち切るように、音が響いた。西の空から南の空へ。「山形城」からの狙撃にも似た実弾砲が「聚楽第」に着弾したのだ。

「第四十章 青場の竜」 
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 里見・義康は今の一撃の行方を“義”の上から見ていた。「最上」の主は、ずっと砲撃制御を行っていた。左右の砲撃を止めた後も、防護障壁が張られていたのは実弾砲の発射の衝撃波対策の為か。ならば、今までの左右への攻撃は隠れ蓑。全てはこの一発の為か!
 「山形城」の屋上に大狐がいる。九尾の踊りは最後の動きを作っていた。両の扇、右の物を上から正面に振り、広げて手首を返し、閉じる。直後に「聚楽第」に白の爆発が生じた。

 関東の南の空に控える艦群は、それぞれ別の動きを見せた。羽柴・秀次の艦群は「聚楽第」を中心に関東諸家のドラゴン級艦隊が、ゆっくりと北東側に移動する。だが、「北条」のバラック艦隊は違った。北からの砲撃を避けるように、南西に移動する。
 「北条」の旗艦「小田原城」、平らな陵角型戦闘艦の中央艦、艦橋上のテラスで声を作るのは、目を伏せた牛角の女性。肌の黒い鬼型の自動人形の身体を持つ北条・氏直が走狗(マウス)の“小次郎”に命ずる。
 “小次郎、総指揮艦に通神を。我が艦隊は物理弾高速砲対応の防御術式を整えていないため、これ以上の警護は無理だと、私の名前で伝えてください。”
 氏直が振り仰ぐ空の上に、雲の揺らぎがある。“「白鷺」ですね。” 忍者装束の少女型走狗“小次郎”の声が掛かる。上空からステルス状態で監視しているのは、「P.A.Oda」の滝川・一益の「白鷺・改」だ。
 「北条」の艦隊が退いたのに「羽柴」の艦隊本体に動きが無い。警報も鳴らず、無反応なままだ。防護障壁無しで高速砲の実弾直撃を受けた筈なのに、なぜだ?
 氏直は言う。この流れ、以前に見た記憶がある、と。

 「有明」天面部。「地摺朱雀」が不意に姿勢を崩した。膝を着き、横滑りし始めた「地摺朱雀」の肩上、直政が感覚したものは、真後ろに表示枠に囲まれて存在する“仮想水面”。朱雀のOSが起動準備の表示枠を幾つも立てる一方で、セイフティロックがそれを消していく。
 “呼ばれているのさね・・・?”
 バランスを崩した「地摺朱雀」が直政を振り落さぬよう、OS制御の自力で強引にバランスを保った。直政が命じていないのにだ。こいつも少し変わってきたのかもしれないと、そんなことを思いつつ、南西の空を見る。霧の破裂が晴れて、露わになっていく「聚楽第」の甲板に立つ竜の片角を持つ霊体の少年、羽柴・秀次。その背後に巨大な武神の影があった。周囲に幾つもの表示枠を展開し、ノイズを発しているその姿は。
 “四聖の、青竜さね・・・?”

 「山形城」の甲板、巨大な表示枠で望遠映像を見ていたアデーレは目を細める。手前に居る少年は霊体だから、陽光の下で微妙に透けるのは解る。だが、後ろに立つ武神が、こちらの放った高速弾を受け止めるように片手を突き出したまま、時折、ノイズを得たように掠れる。そして、いきなり、姿が消えた。光学ステルスではない。
 “哀れよの・・・、政宗”と義光が静かに言った直後、晴れた午後の空に、雷の一撃が生じた。場所は東側。「伊達」の艦群の中央部だった。

 「伊達」の武神空母「川井城」の甲板に、稲妻は烈音を上げ、四方と八方に雷撃の蔦を走らせる。ウルキアガは光の中で、あるものを見ていた。そこに居るのは政宗だが、彼女の背後に現れたのは。
“・・・武神?”
不意に政宗が口を押えて、身を屈める。彼女の背後から圧が来る。何か巨大なものが召喚されようとしている。政宗の動きを真似るように、見方によっては操っているように「青竜」の武神が出現した。だが、先程まで秀次の背後に居たように、透けていない。
実体化した「青竜」と同じ動きで政宗が動いた時、激突音が聞こえた。鬼庭の「左月」が上空から「青竜」に激突したのだ。

 竜の武神が鬼の武神の一撃を片手で受け、鬼の巨体を甲板に叩きつけた。態勢を戻す「左月」にカウンターの右拳撃を撃ち込もうとする。腕には雷光が纏わりつき、手首から先は白熱している。
 “政宗!”と叫びながら成実の機動殻が跳ぶ。長大な顎剣が八本引き出され、竜の武神の右腕を落とす勢いで振られるが、全て砕かれた。しかし、標的は鬼庭から成実に変更されたらしい。青の速度の正面に立つ成実は、左右三十二ずつの顎が宙を突っ走るのを制御する。
 “まったく・・・、私を恨んでいるなら、そう言って欲しいわ。―――政宗。”
 「青竜」の爪が直撃する寸前、「武蔵」の外交官の声が響いた。
 “駄目・・・!!”

鬼庭は何が起きたのか理解できていなかった。先程までと光景が変わっている。「青竜」の武神が消え、その周囲の流体光も全て消えてしまった。一瞬で静寂が戻ってから3秒しか経っていない。
艦橋下に政宗が倒れていて、「武蔵」の外交官が線の細い政宗の背を支えるように座り込み、淡く抱いて、気を失っている政宗に、“だ、・・・大丈夫だから、ね?・・・ね?”と呼びかけていた。

 鈴が感じたのは政宗の苦しみだった。彼女の中にあるものは不安なのだろうか。不安である人には、周囲の見えない人に対しては、―――トーリくんやホライゾンがしてくれたように・・・、彼女の痛みと苦しみを、どうにかしたいという叫びで、“駄目・・・!!”と呼びかけた。
 すると、向こうは僅かな時間において、こちらに顔を向けた。だが、そのまま、あいては力を失い、倒れていった。

 ウルキアガは正常な風を感じた。背の翼を広げ、両足の排気口を用いて立つ空で、右腕に《不転百足》を抱えている。
 “ちょっと、・・・離してくれるかしら?”と声を作る成実に、“死ぬ気だったな”と返す。そして、あの武神はなんだと問う。鈴が政宗を落ち着かせたら「青竜」が消えた。そして、それは半竜ならでの視覚で捉えた、羽柴・秀次の背後に見えたものと同じものだった。

 アデーレは、義光が両の扇を下げるのを視界の端に見ていた。目は正面の大型表示枠を捉えている。「聚楽第」の艦上で丹羽・長秀が秀次を支えるように、共に艦内に入るが、秀次の横に居た少女が前に出ていた。霊体の少女。耳の位置が白い三角の毛で覆われているのは、人狐。
 最上・駒姫は確かに最上・義明を見ていた。そして、深く頭を下げる。同時に「聚楽第」の周囲に霧が生まれ、仮想海の水飛沫が上がる。
 去っていく艦隊を見送った後、残ったのは森と山と大地と海と「有明」だけだ。
 “馬鹿者め・・・、親子の手切れの一撃に礼をするなど、・・・親離れの出来ぬ娘ぞえ”
 義光が肩を震わせ、扇で顔を隠す。そのまま数呼吸をこなし、扇を外した。
 “まったく、・・・笑い涙がでてしまったぞえ。”と笑い顔で目尻を拭い言葉を置く。
 “今後の奥州、否、極東どころか、世界を動かすための会議というのも、良かろうか?”

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第377回 SFが読みたい!2013

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SFが読みたい! 2013年版

 昨夜、灯油のポリ缶を両手に持って運んできて、下ろそうと屈んだらグキッと腰をやってしまった。
 さすがに体重の半分近い重量は、腰の許容量をオーバーしたようだ。
 椅子に長く座っていられなくて、うつ伏せに寝る。

SFが読みたい! 2013年版

 昨年発行された国内外のSF作品のベストを選ぶ「SFが読みたい!」は毎年、買っている。
 全部読みたいのだが、ハードカバーが多く手が出しにくい。

 今回、気になった作品

 国内編
 第1位 伊藤 計劃 ×円成 塔「死者の帝国」
 早世した伊藤さんの遺作を円成さんが引き継いで完成させた作品。
 遺稿の部分は読んでいたのだが、すごく面白くて未完に終わるのはすごく残念だった。
 完成させてもらって嬉しい。その内、買おうと思っている。

 第4位 野尻抱介「南極点のピアピア計画」
 これは買ってあるが読んでいない作品。買い置きの山に埋もれている。
 ボーカロイドが浸透した近未来が舞台の連作短編集。

 第5位 月村了衛「機龍警察 暗黒市場」
 機龍警察シリーズ第3作。
 実は第2作の「機龍警察 自爆条項」(第33回日本SF大賞受賞)を買ってあるのだが、まだ読んでいない。
 買い置きの山に埋もれている。(ノД`)シクシク

 第8位 上田早夕里「リリエンタールの末裔」
 同じ世界観の作品「華竜の宮」(第31回日本SF大賞受賞)を買ってあるのだが(以下略)

 第15位 小川一水「天冥の標 Ⅴ 羊と猿と百掬の銀河」
 シリーズの折り返し点となる第五巻。第1巻から買って(以下略)

 
 海外編
 第1位 チャイナ・ミエヴィル「都市と都市」
 SFミステリだそうで、非常に評価が高い。読みたいな~

 第5位 ロバート・チャールズ・ウィルソン「連環宇宙」
 「時間封鎖」三部作の第三部完結編。
 第一部「時間封鎖」、第二部「無限記憶」を読んでいるので、これは是非、読みたい。


 今年のSF界は2月にクラッシャー・ジョウの新作「水の迷宮」が出たのと、今月、「星界の戦旗 V」が出版される。
 年内は沖方丁「マルドゥック・アノニマス」、8月に「氷と炎の歌 第5部」、グイン・サーガ正編の続編刊行開始、V・ヴィンジの「遠き神々の炎」の続編、梶尾真治のエマノン・シリーズ「うたかたエマノン」など期待作が刊行されますが、読む時間が・・・

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第376回 岳飛伝(4)

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北方謙三「岳飛伝(4)日暈(にちうん)の章」
岳飛伝 四 日暈の章


 梁山泊軍と金軍の講和により、後背の憂いを断った金軍は30万の大軍を南下させる。
 対する南宋軍は岳飛軍6万を含めた20万で抗する。

 梁紅玉への恋に破れた王清は南宋水軍の造船所を離れる。
 韓成忠は南宋水軍に新型の船を増強し、梁山泊水軍への雪辱を晴らそうとしている。

 戦場が少なくなったことで梁山泊軍は、老齢者退役させ急激に若返っていく。
 退役者は南方の秦容のもとへ行く希望者が多く、徐々に南方の人員も充実していく。

 顧大嫂は西遼の耶律大石の皇后となり、政務の半分を取り仕切る。(笑)

 西域との交易も活発だが、海上交易は南宋にも推測の域を出ないほど活発化している。
 梁山泊は海を領土に加えたようなものだ。

 水滸伝からずっと読んでいるんで、水滸の登場人物が次々と歳をとっていき、死んでいくのが物悲しい。
 そした台頭してくる若い世代。そこにはもう老人たちの居場所はないのだ・・・

 兀朮と岳飛は何どもぶつかり合うが、二人の脳裏に共通して現れるのは梁山泊軍の指揮官たちと幻王・楊令だった。

 権力への反抗として興った梁山泊は宋が滅びた時点で、その目的をどこへ持っていくか。
 楊令は宋と同じような国を造るのを拒んだ。その流れの中に今の梁山泊はある。
 西夏、西遼などの西域から秦容の居る南方、日本の十三湊、物流は金国や南宋にも食い込んでいる。
 今や梁山泊からの供給が無ければ岳飛軍も戦線を維持できなくなる
 二万の水軍、八万の騎馬、歩兵軍を維持する梁山泊は再び戦いに出るのだろうか。

 金国と南宋軍の戦いは半年を経て、広がっていた戦線が収束されてくる。
 岳飛の新戦法に金軍は苦戦を強いられる。

 胡土児も岳飛にまるっきり敵わぬと知り涙ぐむ。
 巨大な壁となった岳飛。胡土児にとって岳飛は、岳飛にとっての楊令なのか。

 一歩、北へ前進する岳飛、一歩退く兀朮。しかし、南宋も徴発には限界が来ている。
 これ以上、岳飛が北進すれば兵站が持たなくなるし、金軍の納吾の三万騎が江南に入っている。

 李俊は秦容達の居る南方にも造船所を作り、南方水軍の構想を抱く。
 呉用は金国と南宋の講和が成れば、南宋は北進を諦めねばならず、南方に目を付けてくるだろうと推測を立てる。
 金国も南宋との講和が成れば、梁山泊が邪魔になるだろう。

 まだまだ先の展開が読めません。

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第375回 境界線上のホライゾンⅣ(16)

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稔「境界線上のホライゾン Ⅳ(中)」 Horizon on the Middle of Nowhere
Episode Ⅳ-Part 2 適当ダイジェスト⑤


承前。

 「最上家」旗艦「山形城」中央艦甲板上。“城主御用席”という札が立つ畳と日傘の下。里見・義康とアデーレ・パルフェットは座布団に正座してお汁粉の膳を頂いていた。周りでは砲撃の揺れと被弾の震動があり、散る光が頭上に届いている。アデーレは薄甘い小豆の汁粉を口にしながら、艦橋上で踊る最上・義光(もがみ よしあき)を見る。
 先程、彼女が不意に通神を送って来たのだ。笑みと共に言われたのは、“「最上」は自分達の約束の為、己の為すべき歴史再現を優先しよう”、と。

 “では、「最上」もこちらと同じことを考えていたのでしょうか?”と浅間が正純に尋ねる。それに対し、“「最上」に交渉を持ちかける案はあった。「最上」の対「上越露西亜」の歴史再現と、「伊達」との歴史再現を持ち出せば、謀略の人、最上・義光は従わぬまでも無視はしまいと。しかし、自らそれに踏み込むとは、予想外だった。”
 「約束」という言葉が聞こえた。それが“鍵”なんだろうな。正純は表示枠(サインフレーム)を開き、指示を出す。
 “外交官、「最上」と「上越露西亜」は「羽柴」の干渉以前から衝突が生じていた。だから基本的にかかわるな。だが、両国が平和的に収めたいと考えているなら、その手伝いをしろ。一方、「伊達」側の先程の武神攻撃は行き過ぎだ。向井とウルキアガは「最上」に対する「伊達」の攻撃を止めろ。”

 “歴史再現としてみた場合、現在の砲撃戦は有りという事ですね。ですが、私達はそろそろ「上越露西亜(スヴィエートルーシ)」に向かった方がいい頃合いではないでしょうか。”と、自動人形の姫が告げる。
 その言葉を受ける魔神族の女、本庄・繁長は眉を立てた顔と、鋭い視線を姫に向ける。
 “武蔵の姫、ホライゾンよ。「上越露西亜」に対し、下がれと言うのであるか?”
 ホライゾンの横の全裸浴衣が、“おいシゲ子、オメエ、さっきから「約束」とか話にでてきたけどよ。―――オメエ、今の状況で守れんのか? 邪魔してんの、あっちの狐の姐ちゃんじゃねえよな。あの姉ちゃんも、それが出来なくてストレス溜めてた側だ。だったら「伊達」か?”
 “違う!” という叫びが祭りの場の空気を震わせた。 
 “では、決まりですね。あれが貴女達の「約束」を差し止める原因という事ですね。”と、ホライゾンの指差したほうにあったのは「武蔵」であった。
 皆がそれぞれ疑問の顔を見合わせる中、俯いたミトツダイラが無言でホライゾンの腰を掴んで、ゆっくりと回した。ホライゾンの指が南を指したところで止める。 
 “―――ま、まあ!ホライゾン。やはり示すのは羽柴・秀次の艦ですのね!?”
 双の剣を持つ傷有りの王女が前に出る。“どうなさいますか?”
 “やっかいな言葉を聞かれた”と、繁長は眉を下げると視線を外し、背を向けた。そして、表示枠(サンクトアグノー)を出して言った。
 “「伊達」側の対応、見届けさせて貰おう。貴様らがどれだけの覚悟を持っているのか。「最上」と「伊達」、どちらも奥州の大勢力だ。不確かな力では敵わぬぞ。”

「第三十九章 不転場の百足」
039.jpg

 アデーレは砲撃を続ける「山形城」の屋上に招かれていた。正座で座布団に座る正面には、狐の様相を持つ女性が踊っている。銃士に比べ、背の高い姿は大きな動きで扇を振るい、その度に砲撃の音が鳴り、光が散る。悠然と舞う狐の後ろでアデーレは大判煎餅を両手で持って齧っていき、その口元から、左右の砲撃の音と別種の、やや粘りのある破砕音が響く。
 左と右、右と左と腕を交差させて鉄弾を送り込みながら、“本庄が下がったかえ、あの子も随分と大人になったものだのう。”と言う。そして、足元の前部甲板にいる里見・義康に声を掛ける。“おい、犬”と呼ばれた義康は、“誰が犬だ、「羽州の狐」と呼ばれる分際が”と声を返す。
 “二人とも、お知り合いですか?”と聞くアデーレに“関東と奥州の調和会議は、各教導院の学園祭に招待された時、個別に行われているからな。”と礼装の“義”に手指示を出しながら義康が答える。そして、武神に自立駆動で半身の構えを取らせると、“そろそろやめておけ”と義光に言う。
 “「最上」の「上越露西亜」と「伊達」への攻撃は歴史再現だから、実害が無ければ政治的に問題は無い。だが、「羽柴」が睨んでいるまま、迂闊に進めることもできない。後の奥州の国境裁定をする「松平」にお墨付きをもらうという貸しを作りたいのだろう。”
 “ココ”と狐が笑みを作り、“しばらく、ゆるりとこのままで”と扇を大きく回し、踊る。
 “さて、――竜は、どうするかえ?”

 “じゃ、こっちは止めねばならんな”と半竜の男の声に。ドレスの女が反応した。風を無視して義体の四肢を広げ半竜の前に立つ。
 “仕事の邪魔だ、どいてもらおう。”、“こちらも同じよ、馬鹿を止めろと。” 砲撃音と、着弾の防護障壁が砕ける音が響く。
“馬鹿はどちらだ” 男の台詞に、“そうね、今の「伊達」は相当な馬鹿な状態に陥ってるわ。だけど・・・”、
“言っておくが、「武蔵」には凄い馬鹿がいるから、馬鹿自慢ならうちの勝ちだ。”とカタパルト・レーンで発進準備をしている武神を止めに行こうとする。
 “貴方を止めることで、私が馬鹿だと証明することになるのね。”身を一度、張るように振り、一歩下り、“《不転百足》・・・”と召喚の声を放つ。

 成実は昨夜の状況の再来を悟った。成実の背後で大気を押しのける音と圧が生じ、後ろから抱きしめるように装甲が閉じる前に、眼前に白の色が来ていた。装甲が閉じるより半竜の方が早い。恐らく、話の最中に、流体を体内に溜めて加圧し続けていたのだろう。莫大な初速で全背部排気口から流体噴射し、さらに半身で空気抵抗を無くす。咄嗟に一歩下って高速の回避を入れるのを追うように、半竜が突きだした腕を大きく振る。“右で打ったら、左でも打て―――! 聖職者ダブルラリアット!!”

 打撃音と装甲の軋みがウルキアガの右腕から全身に届く。ぶつかり合った大気が行き場を失い、自分と成実の間で弾け散っている。砕いたと思ったら違った。右腕は機動殻の自動装着の流れに食い込んだだけだった。そして巨大な前翼となる腕の先端、腕の内側の三本指がしっかりと食い込み、ホールドしているもの。それは柔かいようでいて、芯と張りがあり、どことなく熱を持って湿っていた。
 成実を見れば、赤面の口を波に歪めて横に広げ、見開いた眼で己の胸を見ている。
 “不可抗力だな。―――神は右の手に奇跡を与え申す。姉じゃないから要らんが。”言った直後、ウルキアガは身構え無しの全力直蹴りをぶち込まれて宙に舞った。

 成実は動いていた。ものを考えてはいけない。対象を鎮圧することだけを重点として、その通りに動かねば。心の中で、揺らぎとも震えとも取れるものが暴れている。それに気づいてはならない。視界が揺れているのは涙なんかじゃない。口元が震えているのも、頬が熱で張ったようになっているのも、鼓動が胸を押し上げているのも、全部、全部、考えるな―――。

 ウルキアガの正面に《不転百足》が来る。黒緑と朱の竜に似た機動殻。ここが勝負処だと悟った。前に進み、下がらぬがゆえの百足。だが、この百足には翼があった。やはり黒い緑色の四枚翼から黒緑の光片を爆発させる。半竜の視覚が高速域対応のため視神経を全開にさせたため、瞳が金色に光り、熱を持つ。
 “拙僧、格好いいな!”と考えていたら、一瞬、《不転百足》を見失った。姿を消したわけではない、左右に移動したわけでもない。《不転百足》が地面を這ったのだ。竜に似た頭部の顎が、甲板の上を2cmと離れていない。
 ウルキアガは体内の竜息を、脚部と腰部の加速排気口から吐き出し左前に己を飛ばした。本来は竜が口から射撃するものだが、航空系の半竜は全身の排気口から発射し、飛翔や加速を行える。半竜の後ろで大気が白の光に爆発し、甲板上に温度差で霧が発生する。
 両の爪先のみを甲板に接したショートジャンプに近い滑走で、右にすれ違った《不転百足》を振り返るが、既に《不転百足》がこちらを向いていた。低い位置の左右の虚空から朱の飛沫と共に、朱色の剣をずるりと引き出す。剣は6mの長さで三節で出来ていた。先端の一本は鉤状に曲がった両の顎だ。両の腕が交差するように背中側で交差している。搭乗者が両の義椀であることを利用した、人の限界を超える関節駆動だ。
 半竜は身体を旋回させ大気を取り込み、圧縮して喉底にある竜息の発生器官から圧の光として吐き出した。
 左右から迫る両の三節を強引な速度で後ろに回避する。攻撃のタイミングを外したが相手は《副長》でこちらは《第二特務》だ。戦闘の実力比較で言えば、向こうの方が頭がおかしいのが普通だ。だから、まだ先がある。
 《不転百足》が当たらずに外した剣を両腕ごと捨てた。直後に両肩に新しい腕が、義椀込みで空間射出され、接続される。合致する頃には新しい腕が、次の両剣を抜こうとしている。明らかにおかしい。全力で後方に跳んでいるのに、距離が変わらない。よく見れば、脚も人では有り得ない方向へ曲がっていた。
 ウルキアガは百足を止める定石として、地を行く頭に刈り取るように前腕を振るが、それは回避されれる。前傾する身体全体がスライドし、四肢を一旦、捨てて胸と腹を仰け反らせる。再び、「接続確認」の表示枠を光らせて四肢を接続し、半竜を大きく取り巻く。次に抜かれた両剣は五節になっていた。
 動きを読んだウルキアガが前に出る。背部排気口、両手両足の全ての排気口を全開し、全力加速でぶつかるのが《副長》相手にはベストだ。対して《不転百足》右腕を前に伸ばし、人差し指を伸ばし、ウルキアガに触れた。ただそれだけだった。半竜の動きが速度を失って止まったのだ。
 仕掛けは簡単。《不転百足》に指がウルキアガの身体に触れる瞬間、衝撃で砕け散っていく。その瞬間、新しい指が召喚され、また砕け散る。何百、何千という連続召喚が衝撃を吸収していく。止まったウルキアガに対し、《不転百足》は軌道を横にずらしえ、背後から三十二節の顎剣を取り出した。すれ違いざまに、鋸のように削り切るつもりだ、ウルキアガの逃げ場は上しかない。

 上空へジャンプしたウルキアガを見て成実は身を起す。
 “追えないと思っているの? ―――不転百足、展開「百道千万」!”
 《不転百足》がまず腕を捨てた。両脚もいったん解除され、新規両脚が召喚される。その数は千を越え、空に列を成して道を作る。そこを《不転百足》の胴が走った。接続と解除を繰り返し胴体が前進していく。
 30mを超えるジャンプをしたウルキアガの頭上をぐるりと回る百足の足は、弧を描いてウルキアガを捉えている。そして腕が来た。一息で八本の腕が召喚され、直径五〇〇mの球体柵を切り込むように五節、六節、七節、距離によっては十節、二十節の顎剣が現れる。
 “「万千道百」”、逆読み名称で召喚された百組の左右椀が二百本の百節剣を構えた。脚部パーツが全て消え、顎剣だけの球状結界が出来上がる。その中で半竜は動かずに言った。
 “拙僧の勝ちだ。不転の女。”

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第374回 数寄です! 完

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山下和美「数寄です!」(参)

 第107回で紹介した「数寄です!」の第1部完結編。

 未完成の家に引っ越しするとは(笑)
 この本の売り上げでローンを払ってください。

 いや~、数寄屋造りの家を建てるって大変なんですね。大工さんの匠の技が光ります。
 日本文化の真髄の一部を紹介する本とし、て是非、子供達にも読んでほしい本です。

 今回で第1部完ということですが、まだ、お家は未完成なので完成まで書き続けてください。

数寄です! 3

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第373回 宇宙戦艦ヤマト 2199(5)

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アニメ「宇宙戦艦ヤマト 2199」第四章 銀河辺境の攻防

第四章を観る。これはもう旧作のリメイクとは言えんな。
完全に違う作品に仕上がってきている。(良い意味で)

第11話「いつか見た世界」(旧第13話、第15話に相当)

ガミラスVSガトランティス戦。ドメル上級大将かっこいいな。
ガミラス人って地球人とDNA配列が同じなのか。
艦内でやってるアジテーション映画を見てると「宇宙の戦士」を思い出すな。
地球とガミラスとのファーストコンタクトに何があったのか?
やはりお風呂シーンは良いな、山本玲と森雪のサービスカット。

第12話「その果てにあるもの」(旧第14話、第15話に相当)

ヤマト艦内でもガミラスでも、いろいろな勢力がそれぞれの目的で動いているようです。
ガミラスって銀河系内にあるの?
大マゼラン銀河のイスカンダルの連星っていう旧設定ではなくなったのか?
ガミラスのデスラー>ドメル陣営って銀英伝のラインハルト陣営みたいで面白い。
ガミラス本星の遷都? 環境悪化か? ガトランティスが優勢なのか?
デスラーのホットラインの相手は?
なぜヤマトに開かずの間が?
森雪の尻が印象に残る。
島大介は超ロリコンだったのか

第13話「異次元の狼」(旧第17話に相当)

次元潜航艇登場! 戦艦VS潜水艦、潜望鏡を索敵する哨戒艇。
ドメルがトリさんを肩に乗せたのはキャプテン・ハーロックへのオマージュか(笑)
痛み分けという事か、また出てくるだろうな。 
新見情報長の言う”血を争えない”って誰との関係だろう?

第14話「魔女は囁く」(オリジナル エピソード)

髪をアップにした森雪が気にいった。
押井守的な展開だと思ったほど謎に満ちた回。
森雪→故郷は地球→森雪はユリーシャ・イスカンダル?→イスカンダルは未来の地球?
ゲートを作った種族とは?
岬百合亜が見たのは何者なのなのか? だれかに憑依されてた?

第五章が楽しみ(^^




次は第五章「望郷の銀河間空間」
第15話「帰還限界点」
第16話「未来への選択」
第17話「記憶の森から」
第18話「昏き光を超えて」

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第372回 境界線上のホライゾンⅣ(15)

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川上稔「境界線上のホライゾン Ⅳ(中)」 Horizon on the Middle of Nowhere
Episode Ⅳ-Part 2 適当ダイジェスト④


「第三十八章 天城の狐」
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 向井・鈴の捉えた感覚。それは「伊達家」の武神空母の後部甲板に上がってきた人型の竜の姿だった。
 伊達・成実はスカートの裾を押さえながら鈴に告げる。“「武蔵」外交官。それなりの覚悟をして欲しいわ。
総勢十二体。どのように「有明」を護るか、見せて欲しいものね。“
 成実は内心で吐息を落としながら続ける。“警告はしたのよ? 今から帰り、奥州に二度と来ないとするならば、歴史再現を諦めて「水戸」の辺りで大人しくしているならば、攻撃も止めて、「羽柴」への講和仲介をしてもいいわ。”
 “駄目。” 即答が来た。“することが、あるの。” それで十分だと言うように、外交官は口を噤んで締めた。芯の入った言葉かどうかは解る。反射的な抵抗ではなく、信じている口調だ。
 これは厄介だ。こちらの申し出が駄目なのではなく、彼女の為す約束があって、それと噛み合わないから駄目なのだろう。しかし、現実は動いている。

 一機目の武神が飛び立つ。最初は旗持ちだ。
 青い機体。鏑笛のついた旗は、高音の響きを伴う。人は竜笛と呼ぶ。一気に四枚翼を広げると上昇した。他の二国に武神団が出ることを知らせるために。その前面に過剰なまでの装甲が付いていることを成実は確認した。顎に手を当てて空を見上げている半竜に視線を向け、“止めないのね。”と尋ねる。
 半竜はあっさりと答えた。“止めるのは拙僧達の仕事ではない。拙僧達は目的を持ってここに来ており、姉を出せ、それ以外は眼中にない。”
 “今。・・・・途中に何か洩れなかったかしら。「有明」が砲撃を受け武神の攻撃を受ける、と言う現実に貴方はどうするの?”
“幻聴だろう。神もサブリミナルがお好きなのだ。拙僧達は、役目を持ってここにきた。それ以外の役目は、それぞれの者達が担当する。それが、現実攻略に対する、拙僧達の武器であり、使用法だ。”
成実はなにをもどかしく思っているのか、自分でも解らぬままに叫んだ。
 “だったら、その現実で、この現状の何が変えられるって言うの!?”と声が空に響いた時、異変が起きた。カタパルト・レーンを行く武神一機が、身体をくの字にして吹っ飛んだのだ。
被弾だ、と成実は思った。副砲クラスの小型弾だ。だが、どこから? 「武蔵」からでは遠すぎる。武神は横にくの字になった。すると、西からの砲撃。
 “「最上家」かっ!”

 どういうことだ?と正純は目を見開いた。実のところ、「最上」には、これから聖譜記述通り、「上越露西亜」と「伊達」への攻撃を依頼するところだった。「羽柴」の監視下、三国は「有明」への砲撃を行う流れだた筈。しかし、「最上」が逸脱したのなら、それを指揮したのは、最上の《総長》兼《生徒会長》。
 “最上・義光かっ!”
 告げるなり、ナルゼから通神が飛んできた。
 “「最上」が「上越露西亜」側にも砲撃を開始! ―――応撃も始まるわよ!”

 「最上」の旗艦、三胴式の「山形城」は前部双胴の両翼を展開していた。その開く構造体から、定期的な金属音と共に表に押し出されてくる、鳥居型の防護術式発生機構。一辺20m四方の上下が逆転した鳥居型金属板は、両翼艦の前後長500mを七枚で覆い、青白い光を放つ。
 艦上を黄色く染めた露西亜式制服が注連縄型の伝導ケーブルを各所に接続し、「山形城」が鳥居を逆さまにした流体防護壁で囲まれた。
 「上越露西亜」からの流体砲の砲撃が、三重化した防護壁に当たり、空に光の破片が飛散する。「山形城」の随伴艦は側面防御に切り替え、「山形城」の下へ入る。そこに「伊達」からの応撃が来た。「山形城」が左右からの流体砲撃を浴びる。光の飛沫の中で砕かれた防護障壁が何度も再装填され、巨艦が振動する。
 その艦橋上部で、光を浴びる女がいた。肩抜きに袂を付けた白いシャツ。狐色のサイドスカート。茶色い髪と、白毛で覆われた耳が風に靡き、耳に付けた鈴を鳴らす。
 “け――-” 高い声で一つ鳴くと、両の袂から1m強はある扇子を引き抜いた。両手に開いた扇子の骨に貼り物は無い。扇状になった表示枠(サインフレーム)に「山形城」の砲門制御術式が連動し、「接続:――確認」の文字を映す。彼女が踊り、両の扇子を振るうに従い、「山形城」が音と火を放つ。
 「上越露西亜」と「伊達」への応撃だ。その射撃は彼女の踊りに合わせ、両腕を振ると左右の翼の先、前から後ろへと一斉に砲撃する。。
 “ははは! 浅ましきかな歴史の住人! 正道を行く定めの巡礼者! その道を行かざるを得ぬために足枷を可愛がりて磨き、縛りの鎖の端を伝うだけになった見分け者達よ! 笑うに値するぞえ・・・!”
 連射が波のように空を突っ走り、その直後から速度を上げた。

 本庄・繁長の艦隊も「伊達」の艦隊も互いに有効な射程距離に入っていた。
 ミトツダイラは銀鎖(アルジョント・シェイナ)を地面に這わせ、自分の背に居る皆を軽く囲んだ。そして繁長に、“どういうことですの?”と首を傾げて言う。
 繁長は指揮関係に幾つかの対処パターンの選択を送り、手元の表示枠(サンクト・アグノー)を開く。そこに映るのは、ミトツダイラと同じ変調型に種族、“人弧”だ。狐に獣変調できる彼女らは“人狼”ほど変身条件が難しくなく、狐型が本性ということもあって、踊っているテンションで狐の耳や尻尾が髪の間や衣服の尻から漏れている。尻尾の数は九本。大狐だ。
繁長がこちらに一度、視線を送りながら、人狐に対し叫ぶ。 
 “どういうことであるか! 最上・義光! 貴様は奥州の安定を望まぬのであるかっ!!”

 最上・義光は、本庄・繁長の言葉に、空へと笑いを捨てる事で応じた。扇を広げ、先を狙い、両の腕から指先を祓って砲撃に繋げ、身を回してjは左右の管理を入れ替えていく。額の汗は風に散り、身を折って背を膨らませ、義光は笑った。人の笑いを作った後、、のけぞり、空を喰らうように口を大きく三日月に裂き、け、と快の音を連続してたてる。
 “け、け、け――――! 浅ましい。浅ましきかな奥州、―――意味は解らぬかえ?”
 表示枠からの声に、“「羽柴」のことであるか!?”と、繁長が問う。
 もはや敵の砲弾に、己の砲弾をぶつけるような応撃を行いながら、義光は叫ぶ。
 “その程度か本庄・繁長! その程度で、奥州の終わりを飾る者を名乗る気かえ!?”
 義光は弓となった目で、瞳を捻るように繁長に向ける。飲むような視線を繁長に落とし告げる。
 “浅ましいぞえ、本庄・繁長。――約束を果たせぬを「羽柴」のせいとし、もはや待つ事のせぬならば、我が落ちる浅薄の冥道に、貴様も踏み込んだ事になるぞえ・・・”
 不意に義光の頭上に影が差した。武神だ。

 頭上に来るのは一機、遠くに二機目がフォロー役のように居る。「武蔵」に襲撃を掛けようとした「伊達」の武神団が、当面の脅威はこちらだと判断したのだろう。しかし、鬼庭の指示ならば、こちらを知っているが故に、当たりには来ないだろうと義光は思った
 だが、先に来る武神は長銃を構え、確実にこちらを撃つ軌道で向かってくる。警告ではない。鬼庭の指示外の行動だ。新入りの武神乗りか。義光は左右の扇を空高く投げた。
 “身内は大事にせえよ、若者。”
左のサイドスカートから、彼女は一本の刀を抜いた。古びた、飾りもろくに無いような、長さ80㎝ほどの一振りだ。その緩く反った背に手の平を当てて垂直に構え、言葉を作る。
“振り向け。――鬼切”
 言った瞬間、《鬼切》の刃から、あるものが放たれた。
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 距離1200m。高速で飛翔する武神なら3秒の距離で、先頭を行く攻撃手は勝機を知覚した。鬼庭には禁じられていたが機会として考えるならば、義光を討つのは為すべき行為だ。《第二特務》鬼庭・綱元は“不意を打てぬならば避けろ”と言っていたが、最悪、鬼庭の言が正しかったとしても、犠牲は自分一人で済む。
 距離500mを切ったところで砲撃を掻い潜り、「山形城」へ単騎で跳び込んだ彼は視覚に義光を捉えた。だが、武神と合一している彼の意識を誰かが通り過ぎる感覚が、ずるりと前から後ろへと抜けていった。次に彼が見たものは、己の記憶だった。高速で過去から現在へ走る記憶の映像の中で、家族や友人や仲間達が映る場面で速度が落ちる。それは誰かを探しているように。
 “―――これを頂こうかえ”
 直後、攻撃手は悲鳴を聞いた。苦悶とも驚きともいえる悲鳴は一つではなかった。そして、悲鳴と同時に空の各所で、「伊達」の武神の爆散する花が開いた。その数は八つ。
 だが攻撃手の武神は無事だ。どういうことだ?と彼が思った瞬間、視覚が《鬼切》をサイドスカートに収め、落ちてきた扇を手にした義光を捉える。
 砲撃管制を行う扇をこちらに向け、義光は言った。
 “どおん―――”

 伊達・成実はそれを見ていた。「山形城」に乗り込んだ武神は砲撃を受けなかったが、その機体はゆっくりと地上に落ちていく。搭乗者は、恐らく、死の恐怖に晒され失神しているだろう。
 “やられたわね。”と呟く成実に、半竜は“今、何が起きたのだ?”と問う。
 “あれは平安の時代に作られた「古式神格武装」《鬼切》。一時期は義経公達の手を経て、南北朝の将、源義貞の自害から、「最上」に受け継がれたとか。鬼、つまり穏を切る。その者を対象として切るのではなく
、その者を支える者達を、その者の記憶から導き出して切る。“
 あの武神の搭乗者は無事だろうが、「武蔵」に向かった武神や、格納庫に居る整備員達や同級生達も不可避の一刀を浴びた筈だ。鬼庭が《鬼切》の詳細を教えなかったのは、その能力を知ってしまえば、自分の大事な存在を意識せざるを得ないからだ。
 成実は鬼庭・綱元に通神を取った。“鬼庭さん・そちらは大丈夫?”との問いに、八人撃沈、整備、管制が四人やられたと、淡々とした返事が来る。こりゃ、怒ってるわね、と考えながら、表示枠の中の鬼庭に、“微妙に落ち込んでる?”と聞く。“うん、わし、無事だもん・・・”
“畏怖される鬼教官だったって喜びなさい。”と、慰めの言葉を掛け、成実は「武蔵」の外交官と半竜を見る。なぜ、「最上」がここで動いたのか。それは互いが挑発と脅迫の線引きを違えたからだ。「最上」は「伊達」や「上越露西亜」より厳しい立場という事。だから。
 “後は「武蔵」勢と共に行く。「最上」は、そう決断したんだわ。”

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第371回 悲痛伝

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西尾維新 伝説シリーズ 2「悲痛伝」Hi Two Den

悲痛伝

 伝説シリーズ2作目。謎の四国住民消失事件の調査に向かった、主人公、空々 空(そらから くう)。
 300万人の住民が消えたのは「地球」の新たな攻撃なのか?

 英雄(ヒーロー)と対決するのは5人の魔法少女。
 果たして”魔法”とは一体何なのか?
 左 在存(ひだり ざいぞん)の母親、「地球撲滅軍」不明課長の左 右左危(ひだり うさぎ)博士の目的は?
 香川県民の主食はうどんなのか?

 なかなか面白かったです。

 予告によると、今年中に完結するようです。

 第三弾「悲惨伝」 2013年6月発売予定
 悲惨な少年と、飛散する少女達。

 第四弾「悲報伝」 2013年9月発売予定
 不明VS不滅。そして報復兵器「悲恋」。

 第五弾「悲業伝」 2013年12月発売予定
 心なき少年の、悲業の死。

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第370回 タチコマなヒビ ⑤

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山本マサユキ 「攻殻機動隊S.A.C. タチコマなヒビ⑤」

 前回、紹介してから1年たつんだな~

 トンデモ兵器のウンチクが面白い。

 オペ子ちゃんが脱がされていたが、あのパターンは続けて欲しいものだ。(なぜアンドロイドに乳首が・・・)
 AI(人工知能)の情報評価が人間に劣るというのは、「境界線上のホライゾン」でも語られているので理解できるが、その辺がファジーなAIは作れないのだろうか。
 やはり、ボトムアップ型で経験値を積ませないと駄目なのかな。

 首長竜が恐竜ではないというのには驚いたが、なるほど、そういう事か。
 生物の分類って面白い。

 攻殻機動隊タチコマなヒビ(5)

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第369回 境界線上のホライゾンⅣ(14)

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川上稔「境界線上のホライゾン Ⅳ(中)」 Horizon on the Middle of Nowhere
Episode Ⅳ-Part 2 適当ダイジェスト③


「第三十六章 会う場所の上下」「第三十七章 天空の翼使い達」
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 羽柴・秀次の来訪情報を聞いた正純は、思案の為に腕を組んだ。“羽柴・秀吉が関東へ乗り込む、―――そう来たか。”、羽柴の甥は後継者として期待されていた人物だ。そして、奥州とも縁がある。
 浅間が“確か「聖譜記述」によれば、秀吉の怒りに触れて・・・”と言うのに続けて、
 “Jud. 秀次は自害する。側室として連座したのはシベリア北西一帯を管轄する「最上家」の娘、駒姫だ。ここに「聚楽第」付きで羽柴・秀次が来ているという事は、既に駒姫は「羽柴」に渡っている。「最上」は愛娘を人質に取られた訳だ。”
 これも自分達の敗戦が招いた結果か。「最上」は「松平」が「P.A.Oda」から関東を守れないと判断したのだ。これまで黙っていた葵・姉が問うてくる。“だったらどうするの?”
 “「羽柴」の戦術は簡単だ。駒姫の実家への挨拶として、三国が私達の外交官派遣にどう動くか、監視しようと言うのだな。”
 それに葵・姉が笑みで首を横に振る。
 “私達が、黙ってやられてる筈、無いじゃない。”

 上空から周囲の状況を「武蔵」側に送っているナルゼ達は眼下を見下ろす。八つの陸港にいる住人や、停泊している輸送艦の甲板にいる人々が見上げている。
 “衆目を浴びると言う状態ね。このまま何もしないでいると、私達は敗戦した上で、もはや、抵抗の意志すら持てないのだと思われるわ。”

 正純は頭を掻き、息を吸って平静な口調で表示枠(サインフレーム)を開く。
 “外交官として出ている皆に告げる。各国、各教導院が「有明」に攻撃を行っても、それを止めるな。防御はこちらで行う。君達は「武蔵」と「有明」に構わず、外交官として振舞ってくれ。”

 風の中、未だドレスの裾と格闘をしながら伊達・成実は砲撃の光と音を感じていた。「伊達」の砲撃だけではなく、遠く「最上」と「上越露西亜」の砲撃音も届いてくる。「有明」ほどの巨大建造物にダメージを与えるのには主力級の艦が必要だが、「武蔵」の出方が解らないので距離を取らざるを得ない。
 そのため、超長距離射撃も出力を上げている。艦内の情報処理担当は、他国の艦の砲撃から連射性や耐久力を測定しているだろう。
 “「武蔵」は防御専念? それで奥州や「上越露西亜」に対し、反省の意を示しているつもり?” と、南の方を見ている半竜に問い掛ける。
 “反省? ―――それはどういう意味だ。伊達・成実。貴様は反省していると感じられる相手を撃つのか?””
思わず言葉に詰まった成実に対し、言葉を続ける。“今の状況は、奥州と「上越露西亜(スヴィエートルーシ)」がどれだけ不安を得鷹の裏返しであろう。”
 確かにそうね。としか言えない自分が恨めしい、と成実は思った。現状、「P.A.Oda」という強大な存在を相手に、場当たり的な対処しか出来なくなっているのが自分達だ。打撃されている「武蔵」の方が、こちらを冷静に正しく見ている気がする。
 半竜の言っていることは解るが、今、敵と味方は明確だ。すると、さらに半竜は言葉を続けた。
 “だが、旧派(カトリック)では「程度を知れ」とも言っている。叩かれ過ぎて一定のラインを超えると、それが気持ちよくなるらしくてな。「武蔵」が気持ちよくなり始めたら、困るだろう、貴様ら。”
 “途中から何を言っているのか解らなくなったけど、攻撃は止めないわよ。それに、「上越露西亜」の方がもっと強く動くと思う。「P.A.Oda」と交戦中の「上越露西亜」は「羽柴」にナメられる様な事をしたら、一気に侵攻されるかもしれないもの。”

 その「上越露西亜」から来た艦群の外交艦「福島城」は中庭部に夏を積んでいた。広場を囲む屋台の群れ。中央には櫓がある。神社があり、縁日のようだ。顔合わせのためのドレスコードは浴衣を指定された。
 魔神族の多い「上越露西亜」の乗員や、その家族が神社の広い泉で水遊びをしている。肌色の全裸迷彩浴衣を着た全裸が、ホライゾンとメアリを見て、“やっぱり、浴衣の下は着てねえの?”と問うのに、メアリは“点蔵様が、シキタリだと仰るので”と顔を赤くする。
 祭りの中の人々は「有明」への砲撃の音と光に“たぁまやあーー”と声を上げているのを見て、ミトツダイラは、何か間違っている気がすると思った。
 さてどうしようかと、皆が思案していると神社の方から声が掛かった。
 “初見であるな。面通しを行いたい。”
 そこにいたのは、肌の白い魔神族の女性だった。子供達が水遊びしている神社の泉から来たのだろう。「上越露西亜」制服のハードポイントに白い水着を接続し、上着を一枚着て長剣を引っ掛けている。灰色の長髪を流して、サンダルを履いているが、その足運びは余計な音を立てない。
 護衛も兼ねているミトツダイラが一歩前に出て、“どちら様ですの?”と問う。
“「上越露西亜」《第三特務》、南東部担当、本庄・繁長という。で、突然で済まないが・・・”と、繁長が右手の指を鳴らすと、風が起きた。外交艦の右を一隻の輸送艦が一隻、高加速で「有明」方面へ飛んで行く。繁長はうんうん、と頷きながら言う。
 “マクデブルクで「P.A.Oda」が行った航空艦攻撃。「上越露西亜」にも不可能なものではない。「有明」と「武蔵」が、どう対処するか見せて貰いたいものである・”
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 “やってくれるわね” ナルゼは「上越露西亜」の意図を悟った。西を任せていた「ノヴゴロド」の裏切りで「P.A.Oda」の侵攻を許している状態で、東を「羽柴」の影響下に置かれたら、「上越露西亜」は東西を制されてしまう。だから「武蔵」を攻撃し、迂闊に攻め込むとどうなるか、という力を見せつけるつもりだ。それで、西の柴田軍に釘を刺せるし。空中都市「ノヴゴロド」への警告にもなる。
 ならば、とナルゼは正純に告げる。“外交としては向こうの攻撃を阻止しない。だけど、「有明」では向こうの攻撃を止めてもいいんでしょ?”
 “出来るな・”」と言う正純に“アンタ、眼鏡より指揮官向きじゃない?”と答え、空中で向かい合っているマルゴットに“そうよね?”と声を掛ける。
 西から飛んで来る輸送艦まで距離15km。“白嬢(ヴァイス・フローレン)”の航路制御術式(ナヴィゲート・プログラム)の数値設定をし、二人の魔女は同じタイミングで機殻(シャーシ)を真下に向けた。自由落下を利用し、滑り落ちるように西の空に向かう。

 “・・・あれが”双嬢(ツヴァイ・フローレン)“。空を行く白と黒の軌跡を見上げるのは、福島・正則と加藤・清正の二人だ。「水戸」南部の森の小さな岩山の上。正則が清正の左腕に治療用の符を貼っていた。
 空から大きな音が響く。二人の魔女が強烈な加速を入れたのだ。水蒸気の輪を作り、加速力に優れる黒が先に行き、白を引く。“義光と長安が、あれを見たら・・・”と、清正が吐息をつく。
 “止めねばなりませんね、彼ら、「武蔵」の覇道を。”
 Tes.と頷き、正則は言う。
 “「武蔵」を止める事を出来るかどうかは、対「武蔵」要員の私達次第で御座りましょう。”

 二人の魔女が選んだ方法は、非完全破壊措置。撃沈は可能であることを見せつけながら、しかし、行わない事だ。後部加速器を破壊することで進路を逸らす。残りの距離は3kmに縮まった。
 生存反応のない輸送艦から、自動で迎撃術式が発射された。輸送艦の各部から三十二本の「露西亜聖譜協奏派(オルソドクシア):攻撃術式:多弾頭分割:追尾式」術式を賢水(オレイ・オーロ)に溶かし込んだ氷の槍が発射され、空中で八本に分かれ、後部に加速術式を展開して向かい来る二人の魔女に迫る。
 更に二段、三段と氷結弾頭弾をばら撒きながら、温度差で生じた白い霧の中を輸送艦が飛翔する。
 ナルゼはマルゴットを強引に追い越し、膝で“白嬢”を挟み込むとアクセルを強引に押し込んだ。輸送艦に2kmまで迫った瞬間、右上に上昇し、四本の誘導硬貨弾を連射しながら氷の槍の大群を引きつける。右上集中の密度で追いすがる氷の槍を連れて、輸送艦に下に潜り込むように弧を描く。“白嬢”の機殻(シャーシ)後方のペン先が描く白線をマルゴットの“黒嬢(シュヴァルツ・フローレン)”がなぞっていく。
 トンボ型魔術陣に手にしたペンで、追ってくる氷の槍へと白い線を描く。
 “―――Hellrich!!”、放たれた硬貨弾が白線の数と同じだけの氷槍を破砕する。
 マルゴットの方は輸送船から流体砲からの砲撃を交わしつつ、ナルゼを追い越し、輸送艦と擦れ違う瞬間、装甲の薄い後部甲板の上から機関部を狙う。しかし、輸送船は正面から見て、時計回りに回転しだし、各部に展開した流体砲が、狙いも定めず宙を薙ぎ払い始めた。一瞬、離脱機動を取った黒魔女を補助するように、白魔女が輸送艦を林檎の皮を剥くように装甲を這い、黒魔女への誘導ラインを描く。ペンを握っていない方の手で魔術陣に制御情報を送り、軌道を離れかけた黒魔女を誘導ラインに捉えて輸送艦の回転に合わせていく。“黒嬢”の機殻制御を“白嬢”に任せ、マルゴットは5千円分はあろうとい長尺の100円棒金を後部加速器へチャージした。
 “―――Hellrich!!”魔女達が輸送艦から遠ざかって行った直後、後部の硬化木材の外殻が膨れ上がった。白い水蒸気爆発を伴う、内部機関の破裂がぶちまけられる。輸送艦の軌道が大きく逸れて落ちていく。だが、その下にあるのは「水戸」の町だ。

 正則と清正が見上げる空を、輸送艦が落ちていく。その輸送艦が前から後ろに強力な力が撃ち抜いた。「武蔵」側へ戻っていく魔女達の仕業ではない。空に爆圧の空震と、炎の赤、流体の飛散による光の波状が広がる。輸送艦が爆砕した。

 “物理弾丸に、破砕系の術式を仕込んだものだろう。有効射程距離は10km前後。輸送艦の竜骨を砕ける威力か。”と望遠表示の聖協表示枠(サンクト・アグノー)で確認しながら本庄・繁長は言う。
その目が見る東の空に、巨大な陰影が出現しつつあった。
“「有明」がその姿を現すか。―――祭りの空に見るのも、また格別であるな。”

 「武蔵」を収める専用ドックの白い鉄塊の上に一つだけ赤の色があった。その身を「有明」の上部装甲に伏せて構えているのは「英国」式艦砲を武神用狙撃銃に改造したものだ。狙撃姿勢は即座の動作では取れない。「有明」がステルス防護を解除したのは、「地摺朱雀」の狙撃能力を見せるためと、武神側からの敵補足が難しかったからだ。
 “武神による可動砲。確かに各艦が個別に移動でき、高速運行も可能な「武蔵」では可動砲台が友好だろうな。実際の運用では各所に狙撃台を設けて、膝立ちでも狙撃出来るようにするのだろう?”
繁長が点蔵の方を見ながら話す。周りを見るとどうやら話し相手は任されたらしい。馬鹿は馬鹿だし、ホライゾンはホライゾン理論を展開するしミトツダイラは「水戸」で戦闘後でテンションが上がっているし、メアリに任すのも情けない。だが、繁長の問いに実際の運用まで答える意味は無い。
 “どうで御座るか、実体弾。良いで御座るな。男の浪漫で御座る。”と話をずらす。
ほう?と繁長が口の右端を立てて頷いた。そして、顎で西の方角を指し、“「K.P.A.Itaria」が陥落した時のように、放っておいた敵艦に《竜脈炉》があると危険だと、そのような対応であるのか?今の撃沈は。”
 点蔵は微妙な綱渡りを感じながら、“「上越露西亜」は《竜脈炉》を危険とお思いで御座るか?”と尋ねる。
 繁長は頷きもせず、語る。“遥か昔、「上越露西亜」の地でも地脈炉が暴走し、大規模な崩壊が起きた。”
 点蔵はそれを噂というレベルで聞いたことがある。歴史再現の解釈として、“無かったこと”にされた出来事だ。しかし繁長は言葉を続けた。
 “言い伝えで、歪みも誤認もあろうが、「重奏統合争乱」が生じる前、旧モスクワで歴史再現に準じた内乱が生じたと言われている。その結果、旧モスクワは消滅した、「重奏統合争乱」以後は春日山宮殿(カスガガーラ・クレムリン)をモスクワとしているのが現状だ。私の母は《重奏領域》から《現世》へ来た出戻り組でな、「上越露西亜」の地脈炉の暴走がどれだけの意味を持っているか、理解しているつもりだ。”
 ならば、と点蔵は売り込みを掛ける。“お互いに《竜脈炉》の危険性は知っている。「武蔵」には後航空艦突撃を防ぐ戦力があり、関東北部で奥州側への「羽柴」の影響を緩和できるで御座ろう。”
 だが繁長は鋭く細くした目を点蔵に向け、“いや、奥州への守りは貴様らに任せるわけにはいかん。適任がいる。その者が戻るまで、私は西を守る役目がある。とりあえず、貴様らの力は見せて貰った。それだけだ。”と、言い切られた。ふん、と鼻を横に向けられ、拒絶されたのだ。
 だが、繁長は吐息をつき視線を向け直した。
 “どうする「武蔵」? こちらの砲撃は続くぞ。三国は今、「有明」に近づきつつある。砲撃の威力も増していくことになる上、それに・・・!”
 三年梅組の通神帯(チャット)にウルキアガから連絡が入る。「伊達」の方から「有明」に対し航空戦可能な武神が出るようだ。繁長が笑う。“そうだ。「伊達家」の誇る対艦戦武神による、竜騎士団だ。”
 それだけではない。緊急指定付きで展開した表示枠(サインフレーム)に“武蔵野”から報告が入る。
 “南方、「聚楽第」に動きがあります。羽柴・秀次様と思われる姿が出場されました。―――以上。”

 「有明」上空に戻っていたナルゼは魔術陣(マギノ・フィグーア)に映る情報を見ていた。青の空を背景に立つ少年は。痩せた身体で力無く立っている。その特徴は穏やかな眉の上、左の頭から生えている竜角だ。そしてその身体を透かして、後ろの艦橋が見えている。
“竜人の霊体?“、現世に未練を残して、それを果たすために行動する者達。やっかいだ。その少年に横に、もう一人、少女が並ぶ。長い耳の彼女は長寿族かと見えたが、耳には毛がある。人間型に近い半狐の少女だ。そして彼女も霊体だ。
 その二人の後ろから、更に人影が追加された。「P.A.Oda」の制服を着た、長身の結髪の女性が話し始める。
“「武蔵」勢。羽柴・秀次様と最上・駒姫様の挨拶をここでしておこう。” 彼女は肩に、犬に似た走狗(マウス)を乗せていた。制服の上に刺繍された「2」の文字を見たナルゼは眉を上げる。
 “まさか・・・、「P.A.Oda」の六天魔軍の二番?”
 走狗連れの女は名乗りを上げる。“私は「P.A.Oda」《第三特務》。六天魔軍、五大頂の二番。―――丹羽・長秀だ。いいか、秀次様、駒姫様、共に自害の聖譜記述を目の前にした者同士。各国、各教導院。それぞれ粗相のないようにな。”
 砲撃の音を向こうに丹羽は言った。
 “さあ、祝いの祭りを続けてくれ。”
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第368回 ベアゲルター

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沙村広明「ベアゲルター」1巻

 いや~、チャイナドレスっていいですね。
 それはさておき、「ハルシオン・ランチ」並に面白そうな話であります。

 一部、子供が見ちゃいけないシーンがありますが、あれは沙村さんの趣味でしょうか?
 あのヌンチャク型拳銃は暴発しないのだろうか?

 さて、あのカバンの中身は何だろう?

 ベアゲルター


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第367回 悲鳴伝

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西尾維新 伝説シリーズ 1「悲鳴伝」

 シリーズ化するようなので買ってくる。

 西暦2012年10月25日。「大いなる悲鳴」によって人類の三分の一が削られた。
 何の脈絡もなく、無関係に、ランダムに、悲鳴を聞いた三人に一人が死亡する。
 その半年後、十三歳の少年、空々 空(そらから くう)がヒーローとしてスカウトされた。
 敵は「地球」。主人公がスカウトされた「地球撲滅軍」は「地球」と戦い、「地球」の派遣する「怪人」と戦うことを少年に求める。

 西尾維新版のヒーローもの。(これでどれだけ世間の常識とかけ離れているか解るだろう)
 ヒーローとは何か、正義の組織とは何かを突き詰めるとこうなるのかな~という物語。

 「怪人」がいると言う情報があれば、幼稚園を襲撃し、幼児たちを切り刻むヒーローたち。
 人間と同じ外見、同じ能力、「怪人」だという意識さえない「怪人」を抹殺するため戦う「地球撲滅軍」。
 ヒーローというものに対するアンチ・テーゼであり、アンチ・ヒーローものではありません。
 あくまで主人公はヒーローでした。

 本作では敵である「怪人」より、味方、仲間、友人の方を多く殺している主人公ですが、次巻以降の活躍が楽しみです(笑)
 ラストシーンはなかなかお気に入りです。

 アーサー・C・クラークの第三法則、「高度に発達した科学は魔法と区別がつかない」を逆に考えた、「高度に発達していない魔法は、科学と区別がつかない」は次巻「悲痛伝」への布石か?
 次は「魔法少女」の登場です。


 英雄になりたければ、誰もそれを邪魔したりしない。君が誰かの邪魔者になるだけだ!
悲鳴伝

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第366回 境界線上のホライゾンⅣ(13)

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川上稔「境界線上のホライゾン Ⅳ(中)」 Horizon on the Middle of Nowhere
Episode Ⅳ-Part 2 適当ダイジェスト②


「第三十三章 個室の説教魔」「第三十四章 三方の行者」
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 「上越露西亜(スヴィエートルーシ)」西側の国境。
不破・光治は昨日の失態に意気消沈して毛布に包まっていた。なかなか起きてこない不破の部屋の鍵をぶち壊して、佐々・成政と前田・利家とおまつが入ってくる。
 「ノヴゴロド」との契約は《会計》の前田が既に終了して「不可侵、不干渉、不協力」を取り付けた。後は「ノヴゴロド」が「上越露西亜」に攻め込まれる「七尾城」になるかどうかだが、「P.A.Oda」としては信長暗殺に繋がる「手取川の戦い」に進むの遅らせたい。だが、もはや「聖譜連盟」と同化したに等しい「M.H.R.R(神聖ローマ帝国)」としては歴史再現を進ませなければならない。痛し痒しだ。
 今、前田達が準備しておくのは奥州と「上越露西亜」に大使を派遣し始めた「武蔵」への対処だ。交渉による、今後の「武蔵」の戦力推移の分析は、関東に向かった滝川・一益や丹羽・長秀から依頼が来ている。
 《現地会計》の不破の仕事は「武蔵」と三国の単体・協力・同盟、それらの複合時の戦力推移の計算だ。さらに羽柴・秀吉から何かが送られてくるらしい。

 伊達・成実はクローゼットから出した正装の群れの前で、どれにするか迷っていた。黒い髪、白い肌、緑のインナースーツに赤く塗装された鋼鉄の四肢。吐息で腕組みする「伊達家」の《副長》は戦うのが仕事だ。元々、外交役ではないのだ。着飾ってもしょうがない。一仕事終わったら、純米酒をカップでグイっといきたい。自分の気にすべきは「伊達」の行く道であり、これから奥州、「上越露西亜」、関東を絡めた歴史の捌き合いだ。
 窓の外を見ながら成実は呟く。
 “まずは「武蔵」を犠牲にして・・・。”

 「水戸」領地の陸港。管制小屋の屋上テラスから、本多・正純と浅間、喜美達は望遠仕様の三枚の表示枠で三つの艦群を眺めていた。「伊達」側と「最上」側では外交艦の合流がなったらしい。艦群を取り巻くように防御障壁が解かれている。「上越露西亜」組は出発が遅れたため、向こうの艦隊を待たせている状態だ。
 二代は気を失っている状態で、表通りの店先で座り込んでいるのを発見され、先行で「有明」に送らせてある。立ち上がり、歩いて陸港まで戻ろうとしたのだろう。菓子店の店先で一息つこうとしたのだろうか、槍を抱えたまま、縁台に腰かけて気絶していたのが二代らしい。
 「羽柴」の麾下が乗り込んでくるのは予想しなかった。自分より先の年代に干渉することは、意図しなかったはずなので、後の時代まで生きる事になる、麾下武松が独自の意志でやって来たのだろう。
 通神を見ていた浅間が「伊達」側の艦群の倍率をアップし、武神空母「川井城」を映し出す。甲板上に居るのは米粒程度の大きさだが鈴よウルキアガ、それに続く自動人形を始めとする外交補助員達だ。そして「川井城」艦橋から出てきたのはドレスを着た伊達・成実だった。

 伊達・成実は後悔していた。装甲のない軽いものを着てきたのが失敗だった。飛行甲板は風があるのを忘れていた。右側から吹いてくる風に、ドレスのスカートが手で押さえておかないと、すぐめくれ上がってしまう。とりあえず、出迎えをすることにして、“キヨナリ・ウルキアガ。貴方が外交官?”と問う。
 “いや、こちらの向井《艦長代理》が本式の外交官だ。拙僧付き人でしかない。―――さっきから貴様、何をしているのだ?”
 “べ、別に何もしていないわ、何を言っているのかしら?”と誤魔化す成実に、ウルキアガは“ふむ”と頷く。その横にいた鈴が、前髪とスカートを押さえて、“風、強い、――よ。”と、彼を見上げる。
 ウルキアガは、“向井、「伊達家」を見習え。――この程度の風、別に何ともないそうだ。”と言うのに、成実は本気で張り倒そうかと考えた。
 後ろの「総長連合」の者達がひそひそと“やっぱり、緩衝障壁の出力を強くすべきだったんだよ。鈴さん大変じゃないかよ。”、“いや、でも、今の状況だから、鈴さんの、こう、くねっとしたのが見えるというのが。”、“すまぬと思いつつ、否定しないのは、人間の業であるなあ”と会話している。
 随分とこの子は有名なようだ、と鈴を見る。その間に、いくつかの手続きの表示枠(サインフレーム)を出した半竜が近づいて“では、外交の握手といこう。”と右前翼から三本指の手を出す。
 成実も笑顔で、右の義手に思いきり力を入れて握り返した。半竜はそれを確かに受け止めたが、その時、、右から風が来た。押さえを失ったスカートが勢いよく翻ったのを見て、半竜は“すまん、拙僧ではなく、向井が先だったな。先走ってしまった。”と手を離す。
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 この―――っ!と笑顔を固めたまま、外交官の方と握手を交わすが、相手のスカートは左手で押さえられている。戦場の位置取りを誤ったか思ったら、艦橋の方を眺めていた半竜が言った。
 “まあ、《副長》として不慣れな衣装であることは察する。似あっておるし、場が悪かっただけでな。”
 こちらを見透かすような、この半竜は何しに来たのだろう。まさか、うちの政宗は女性だ。そして小次郎という弟がいる。つまり、政宗は姉だ。だから、成実はそのまま問うてみた。
 “「武蔵」《第二特務》、貴方が「伊達家」に来た理由を教えて欲しいの。いい?”
 半竜は吐息交じりに、当然のようにこう言った。
 “解らぬか? 拙僧の目的とは、―――外交としての、姉キャラ攻略である。”

 その頃、「最上家」の担当外交艦の格納庫。里見・義康は「極東」夏服の背にレンチを担いで“義”の整備をしていた。そこにアデーレが来て、外交の挨拶に行かなくていいのかと尋ねる。「最上」に詳しい義康はアデーレに「最上」の仕来たりをレクチャーする。
 “「最上」側も略式要求だけなので、この時分では挨拶は従士殿の担当だ。「最上」家は基本的に《総長》兼《生徒会長》の最上・義光(もがみ・よしあき)のワンマン運営だ。《副会長》、《副長》を置かず、秘書役として《会計》兼《書記》の鮭延(しゃけのべ)という走狗(マウス)がいる。義光はその経歴において、土地の氏族を抹殺したり、謀略をもって騙し討ちや仲間割れを誘い、勢力を拡大した《総長》だ。”
 アデーレはさらに「最上」の土地のことを尋ねる。義康は北の方に目を向け、“陣営を絞った小規模な教導院に見えるが、そうではない。奥州の西半分を治めているのだ。極寒の地だが,大規模な開墾と水産物、森林資源による生産力が高いのが特徴だ。領民の繁栄については確かで、だからこそ、義光は人が付いて行くカリスマを持っているのだろう。”
 その時、義康は遠くから小さく響いてくる音を聞いた。音は二つ。「武蔵」の方から聞こえているのは、
 “―――魔女(テクノヘクセン)か。三国接近のこの時間に空の見張りを行っているのだな。”

 ステルス状態の「有明」から跳ね上がるように飛び出してきたのは黒と金の魔女だった。粘るような大気を突き破って加速上昇する、水蒸気の尾を引く二本の線。トンボ枠型の魔術陣(マギノフィグーア)を開いているのは堕天の白魔女、マルガ・ナルゼ。スピードメーター型の魔術陣を開くのは墜天の黒魔女、マルゴット・ナイト。「有明」がステルス管制を行っているので、外部情報が一部入ってこない。そのため、周囲探査に上がってきたのだ。
 宙に静止し、正対した二人は数十枚の魔術陣を周囲に展開し、それは二機の機殻箒(シャーレベーゼン)の周囲を回るリングとなる。水平360度を基礎とする光学視覚を確立。定倍、十倍、三十倍で全周撮影を行い、「武蔵野」艦橋へ転送する。
 ナルゼがふと気づくと新しい魔術陣が開いている。先輩格の「山椿(ヴィルトカメリー)」だ。眉をひそめて通神を開くと、何処からか回ってきた情報を伝えてきた。様々な経歴を持つ人間が「武蔵」には集まっている。「山椿」は「M.H.R.R(神聖ローマ帝国)」の対「上越露西亜」派遣魔女旅団の元・副団長だ。その主敵は「ノヴゴロド」。「P.A.Oda」と和議して「上越露西亜」を裏切った情報と共にある噂が入ってきたという。
 “三者面談に親が来る可能性がある。”
 同時にマルゴットに「武蔵野」から精査された周辺情報が戻ってきた。先程と逆の順で周囲360度の精査画面が魔術陣に表示される。自動人形の高速判断による文字やアイコンの書き込みの中に、赤く表示されているのは他国の艦隊。北に「伊達」、北西に「最上」、西に「上越露西亜」の艦隊が居る。そして、南にも赤い光があった。それも百を超える物量だ。
 “「羽柴」の艦隊?”とナルゼが考えた時、砲撃の光が見えた。だが、南からではない。超長距離攻撃用の流体砲の光が、三国の外交艦に随伴する護衛艦から放たれている。「有明」が被弾した。

 ナルゼが魔術陣を開いて「武蔵」と「有明」に向かって叫ぶ。
 “敵襲!―――敵は「上越露西亜」、「伊達」、「最上」、そして「羽柴」!!”


「第三十五章 南方の使い」
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 「水戸」の陸港。管制小屋の屋上テラスで表示枠(サインフレーム)を見ていた浅間が疑問の声を作る。
 “三国に大使を送っていい感じになる筈がビーって砲撃でドカン入って更には江戸方面からも何か一杯来てヤバイなんてよく意味解りませんよ!?”
 “あー、言ってる意味が大体解る私、もう駄目かもなー・・・」
 「有明」に当たった流体砲の残光を見て、俯いてしまいそうな自分を何とか堪え、正純は空を見上げる。
 「水戸」の町では半鐘が鳴り始め、町の各地で避難場所やその方向を示す、大型表示枠が展開する。更に空に大型の表示枠が五つ開き、薄茶色の髪を長く流した、伏せ目気味の細面の顔が映った。
 “皆様、こんにちは。「有明」艦長の”有明“と申します。―――以上”
 「水戸」の町から、おおお、と歓声が上がった。
 “八発、着弾します。―――以上。”
 言った通りの爆発が起こり、人々の声が、おおお!?と変わる。
 “全長9キロ、全幅4キロ、全高2キロの本艦がクラーケン級の護衛艦の超長距離砲撃で被害など得るはずが、―――「伊達家」が武神を出すのですか?、流石にそれは危険と判断します。皆様、退避をお願いします。―――以上。”
 おおお、と「水戸」の町から人々が南西方面、海側に退避していく。
 正純は現状を理解するために、目の前の事実を言葉にした。
 “「上越露西亜」、「伊達」、「最上」は既に「羽柴」の監視下にあり、「武蔵」の敵に回ったわけだ・”

 「武蔵」の機関部に潜入している真田十勇士の「要らずの四番」三好・伊佐は整備員達に紛れて走り回っていた。機関部は待機状態にある、という事は「武蔵」はいつでも出港可能なのか? 今の「武蔵」は完全な状態ではないはずだ。居住区は仕込みを終えておらず、装甲板もまだ貼っていない部分が多い。それでも、戦闘可能なのだろうか。各艦の表面はカバーが掛かっているが、戦闘力の向上なら装甲板の拡充や砲台の追加だろう。だが、それでは「羽柴」が持ち込んだ「安土城」とは勝負出来ない。
 気になるのは「武蔵野」橋状艦橋の下に、重力加速器の連続加圧器が、前後に長く添えられていること。「武蔵野」のバウに衝角(ラム)らしきものがあることだ。さらに左右舷後艦の「青梅」と「高尾」の重力加速器に手が加えられている。操作系の変更があったのだろう。前進用、左右ターン用の制限解除を可能としている。それも外側にではなく、内向きにだ。左右舷の艦が内側に重力加速器を向けたら、中央艦が防御障壁を張らなければならなくなる。伊佐には、この仕様が解らなかった。
 考え事をしていると、「有明」へ三度目の砲撃が来た。さっきより近い。本格的に砲撃してくるようだ。

 「有明」内に停泊中の「武蔵野」艦橋は最近は「武蔵」改修における情報処理管制室になっていた。上空の魔女達からの情報に加え、地上観測点からの通神を統合して天井前面側の大型表示枠に映されたのは、
 “「羽柴」側の艦群です。「羽柴」麾下が七十二、「北条」が十六、「P.A.Oda」が二十四と確定。戦闘艦が突出しています。―――以上。”
 艦群の先頭にいるのは装飾の施された白い戦闘外交艦だった。自動人形たちは雲の装飾を金縁で飾った艦を見て、それぞれの記憶を照合した。
 “照合情報によれば、あれは「羽柴」麾下の戦闘外交艦「聚楽第(じゅらくだい)」です。所有者は羽柴・秀吉の甥、羽柴・秀次だと判断できます。―――以上。”

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第365回 ケルベロスの肖像

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海堂尊「ケルベロスの肖像」田口・白鳥シリーズ第6作(最終作)

 桜宮サーガ・過去編「バブル三部作」の既刊2冊を読もうと思っていたのだが、本屋さんで平積みされていたあるハードカバー本の帯を見て、これは是非読みたい、読まねばならぬと思い、その本と一緒に買って来た。

 この巻で桜宮サーガ「田口・白鳥シリーズ」は完結です。

 遂に遭遇した田口先生と姫宮香織。会いまみえる天馬大吉。オールスター総登場です。
 
 決戦の地、浪速市へと物語は続く。

ケルベロスの肖像

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第364回 宇宙と惑星と(そらとほしと)

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機動戦士ガンダムUC EP.6
 アニメ版「機動戦士ガンダムUC Episode.6 宇宙と惑星と(そらとほしと)」が公開されました。

 あいかわらず、かなり話を端折ってますね。「細かいとこは原作を読んでください」仕様です。

 大きく設定変更されたユニコーン2号機”バンシィ・ノルン”。
 フル・フロンタルにも新しい機体が!(脚が無い?)

 次がラストエピソードですが、最終話「虹の彼方に」は上下巻の内容だぞ! どうやって1時間枠で作る気だ?

 マリーダさんはやはり原作どおりになるのか?

 今回、終盤でフル・アーマード・ユニコーンが出てきたので押入れからプラモを引っ張り出してみた。
 何かイメージしてたのより、プロペラントタンクが短くて太いような気がしたのだ。

 なかなか作りだせなくて1年以上、押入れに入れっぱなしだが(笑)
 最終決戦仕様のサイコフレームが緑色のユニコーンである。
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 気のせいだったようだ。

 機動戦士ガンダムUC episode 6 プロモーション映像(ロングバージョン)

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第363回 境界線上のホライゾンⅣ(12)

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川上稔「境界線上のホライゾン Ⅳ(中)」 Horizon on the Middle of Nowhere
Episode Ⅳ-Part 2 適当ダイジェスト①


 表紙は本多・正純の政敵、大久保忠親/長安。
 中巻では「三方ヶ原の戦い」の敗戦責任を生徒会執行部に問う大論戦が展開します。
 そして生徒会執行部の中から裏切り者が!
境界線上のホライゾン4〈中〉―

「第三十一章 双璧の二対」「第三十二章 上からの参観者」
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 「水戸」の空の下、二代と正則の戦いは決着を迎えた。二代の《蜻蛉スペア》が発動しなかったのだ。何故、力を貸さないのか解らない。ただ、無言でいつづけるだけだ。
 既に敵は動いている。正則の持つ《一ノ谷》の穂先が真っ二つに開いた。危険を感じ、二代は強引に《翔翼》を展開し、通常と逆の使い方をする。加速術式を自ら崩し、反動で弾かれ数十m離れた民家の屋根を砕き、木箱(コンテナ)倉庫へ激突した。

 正純は吹っ飛んでいく二代の行方を視線で追った。木箱の構造材が砕けた波のように空に吹き飛んでいる。そして、福島・正則が、その加速術でこちらに向かってきている。だが、顔は俯き、歯を強く噛んでいるのが解る。その表情は、―――不本意か。二代が自爆したとしか見えない決着は、相対していた正則に、思うところがあるのだろう。
 彼女が一気に15mの距離まで迫り、《一ノ谷》の開いた穂先に光が生まれた。それに反応したのは浅間だった。防御系術式の符を準備しながら、“あれは本物の竜砲です!人造の砲撃用のものではありません!”と告げる。
 何故、人の武器から竜の砲撃が?と考えている間に光の一撃が放たれた。

 《十本槍》の二番、加藤・清正が発射した《カレトヴルッフ》の光砲は、正確に銀の髪があった位置を薙ぎ払った。着地した清正は艦尾側を振り向き、成果を確かめようとした時、頭上から影が降ってきた。攻撃の意志のない落下物に反応し、咄嗟に回避する。自分が立っていた場所に突き立ったのは、先程、右舷側に残してきた右の《カレトヴルッフ》だった。なぜこれが? わずか一拍の間と言える呆然のタイミングで、艦尾側から銀の風が突っ込んできた。輸送艦の長い甲板を利用して、銀の狼が最大の助走で連続瞬発してくる。解った。滑走する輸送艦の裂け目に全力回避したのだ。そのまま上がれば迎撃を受けるから、艦尾へ回り込んだのだ。
 狼の咆哮と共にフェイント無しで銀の色が迫る。清正は力を解放していない右の《カレトヴルッフ》を引き抜き、カウンターで真正面から水平砲撃をした。
 その光が二つに割れる。戦闘の推移を見守っていた「水戸」の領民達は領主が《王賜剣(エクスカリバー)》を投げるのを見た。実際は投射モーションを取った場面しか捉えられなかったが、光の飛沫と共に《英国王の剣》は光砲の槍そのもの目がけて突っ込んでいく。
 清正の判断は一瞬だった。《王賜剣》の打撃を受ける意味は無い。腰を落とし、光砲の持続発射のまま、銀狼の足元を狙う。人狼の攻撃で恐ろしいのは、爪や手指による貫き手や打撃だ。見切りにくく、跳び込まれると厄介だ。足元を狙われ、跳躍するだろう銀狼に左の《カレトヴルッフ》を構えた時、その刃に光が反射するのを見た。咄嗟に上半身を伏せたのが清正を救った。
 背後から《王賜剣一型(Ex.コールブランド)》が戻ってきた。気配を察知できぬほど遠回りした銀鎖(アルジョント・シェイナ)が、《王賜剣》を掴んで主に投げ戻しのだ。全身を仰け反りから戻すバネを利用した、大上段の一撃が降ってくる。受ければ折れる。触れれば裂ける。上半身を伏せた態勢で左右や背後に回避できない。行くのは前しかない。
 銀狼の跳躍を掻い潜るように前に跳ぶ清正。ここでミトツダイラは手に持つ《王賜剣》を前方上方にぶん投げた。そして、下を通過する清正の背を甲板に縫い付けるように蹴り込んだ。打撃音と共に俯せに甲板に叩きつけられた清正と、その反動でさらに高く跳ぶミトツダイラ。二本の《カレトヴルッフ》を握る腕を立て、振り向こうとした清正は、いきなり空にぶち上げられた。
 「水戸」の街中に輸送船が屹立していく。清正が最初に地面に穿った溝の終端に輸送艦が達し、勢いよく乗り上げたのだ。左右に断ち割られた輸送艦の残骸は南北に、二本の塔のようにそそり立った。
 右の槍の石突きから流体光を放ち、強引に南の残骸の艦首に降り立った清正と、身体に高速スピンを入れて北の残骸の艦首に降り立ったミトツダイラ。攻撃はミトツダイラが先だった。放り投げた《王賜剣》を掴んだ銀鎖が、全身の膂力と、人狼の瞬発力と、引き戻す銀鎖の慣性力で水蒸気爆発を起こしながら清正に叩き込まれた。

 福島・正則の《一ノ谷》から発射された竜砲は、正純が見たことが無い方法で防御された。後ろから馬鹿の全裸が股間に「大罪武装(ロイズモイ・オブロ)」の盾を下げてやって来たのだ。
 “ははは、馬鹿だなオメエ、そんなものが俺の強欲なコカーンに通用すると・・・”
 “あっ、トーリ君!あれが本物の竜砲だと、最後の一息で伸びます!”
 正純の眼前で、馬鹿が後半の伸びを受けて吹っ飛んでいき、先にいたホライゾンの直蹴りを喰らって地面にぶつかって止まった。
 “大丈夫ですか?トーリ様。ホライゾン、形式的に心配してみましたが。”
 正純は最後の一撃が一番カウンターできつかったのではと思っていたら、福島・正則が馬鹿とホライゾンに突っ込んでいき、快音と共に弾かれて宙を舞った。

 ”フフ、そんな程度で高嶺の花に手が届くとでも思ったの?”
 通りの中央に葵・喜美が平然と立っていた。通りの南西側の屋根に着地した正則は問い掛ける。
 “貴殿、今の技は・・・”
 喜美は笑みで己の身体を軽く抱いた。胸を持ち上げ、顎を乗せるようにして
 “ふっ、―――巨乳防御よ。”

 正則は喜美を見た。胸を見た、そして顔を見て、“う、嘘は無しで御座りますぞ!”
 “ククク、動揺してるわね! でもアンタ。疑問に思うならなんで私が無傷なのか説明してみなさい!
 巨乳という言葉を使って二十文字以内句読点含まずハイスタート!“
 “巨乳防御でいい気がしてきたで御座ります。” 一応、正則は自分の胸を見た。結構あるはずなのに。
 狂女の横の巫女を見ると立てた手を左右に小さく振っている。真偽は如何に、と思っていると、東側、通りの向こうで轟音が響いた。「水戸」の領主と加藤・清正の戦闘に一撃が生じた音だ。

 打撃を与え、その勢いで回っているミトツダイラの眼前、8mの位置で清正が構えた左の《カレトヴルッフ》の柄が砕け、彼女の纏う装甲類も、ほとんどが右から左に向かって砕け散っていた。半顔を血に染め、左腕は折れた槍を握っているだけだが、右の《カレトヴルッフ》の穂先はミトツダイラに向いている。
ミトツダイラは砕けた装甲類の裏面が、流体光を発していることに気付く。
 “自動離脱具足(リアクティヴ・アーマー)?”
 腕一本、《カレトヴルッフ》一本で消せぬ衝撃を全装甲パージで逃し、―――最後に我慢ですね。
 見事だ。騎士道か武士道か解らないが、勝利に対する覚悟がある。これから来る右の《カレトヴルッフ》の水平撃ちは、回転している状態で避けようがない。視界の中央に捉えた刃が光を強く放った。
 見切って跳び込むかと思った瞬間、目の前に金髪巨乳が上から降ってきた。
 “あら、大丈夫ですか?ミトツダイラ様。少々お怪我をされているようですが。”
 メアリだった
 自分の持つ、もう一本の《王賜剣一型(Ex.コールブラント)》を邪魔だと思ったのか、後ろ手に甲板に突刺し、“まあ、血が出ています。治療が必要ですね。”と両手を頬に当てた瞬間、清正の《カレトヴルッフ》が発射された。光弾はメアリの《王賜剣》にぶつかり、真っ二つに割れてメアリの左右を通過する。
“あら?”と左右を見やるメアリには当然、何も見えない。彼女は一応、脇の下や、膝を軽く曲げてみるが、足の下にも何もない。
 笑みで“気のせいですわね。ミトツダイラ様、すぐに治療しますね。”
 “メアリ! 後ろ! 後ろですの!!”
 え?と振り向くとそこにいるのは清正だった。
 “まあ・・・。大丈夫ですか? そんな大怪我をされて! 一体、誰が!”

 ミトツダイラは、口を横に開いて動きを止めた清正を見て、俯いた。王達の方を見ると、相対していた福島・正則も、清正を見て軽く手を挙げている。戦闘は終了したのだ。正則は一瞬だけ正純達に一礼し、高速移動で撤退した。あちらには《第一特務》が行ったから大丈夫だろう。
 “ええと、あの、メアリ? 戦闘中なのですけれども・・・”、“まあ!戦闘? どちら様と?”
 ミトツダイラの指差す方を見て、“まあ、敵の方だったのですね? あの、お名前は?”

 清正は血の半顔を一瞬、俯かせ、一度息を吸い、表情を改める。“「M.H.R.R」A.H.R.S.所属。二年、加藤・清正。―――羽柴様の麾下にあります。”
 “有難う御座います。武蔵アリアダスト教導院所属。《第一特務補佐》メア・スチュアートと申します。今日は戦闘とのことですが、どのような御理由で?”
 “・・・け、警告のために出場を!”
 “宜しければ、警告を終えたら帰られた方がいいのではないかと。私共は少々、立て直しをしている最中です。羽柴様は歴史再現に則って行動されていると存じます。乱暴な流れを持つことは出来ないでしょう。”

 織田・信長が生きている間は、羽柴・秀吉は「水戸」に手出しは出来ない。加藤・清正と福島・正則が「水戸」に来たのは警告の為だけで、それ以上の行動は悪手となり羽柴の戦略に禍根を残す。
 メアリは清正から視線を外さず続ける。“ミトツダイラ様もお元気になって良かったです。「三方ヶ原の戦い」以降、本調子で無かったですものね。ずっと、おちんこでてましたから。”
 呆然といった顔でミトツダイラを見ている清正を余所に、“仕方ないですわ。皆様、大なり小なりおちんこでてましたから。” 
 “大なり小なり?”、“Jud. 人それぞれですからね。ダメージの受け方は。”意味が解らず、清正は問い返す。
 “ダメージでそうなるのですか?―――逆では?”
 “そんなことはありません。叩けば叩くほど強くなり、大きく成長します。”メアリはきっぱりと断言する。 清正は額に手を当て、何かを考えていた。
 “あ、ああ。鍛えるという事ですね?雑誌の広告にあるような。” 何かよく解らないが、話は通じたようだとメアリは笑みを得た。
 “ともあれ、今回の戦闘でミトツダイラ様のおちんこでたのが治られたようです。有難う御座います。”
 清正がミトツダイラの方を無感情な目で、口を開いて見つめた。

 メアリは礼儀として《王賜剣》を抜き、立てた刃を相手に向け、“お別れですね”と告げる。そして、“清正様は「英国」の血を引かれる方ですね? 英国由来の精霊があなたを恐れません。”と、清正に一つのものを風の精霊に運ばせる。
 “「英国」の精霊術と「極東」の忍術を合わせて作った治療術具です。貴女の腕の傷に会うでしょう。”
 “いずれ、また、お互いの道が交差する時に。”と言って、清正は跳躍し、消えた。

 メアリとミトツダイラに「上越露西亜」行きの外交艦が近づいて来る。側部から乗船用ネットが下がっているのは、それを使って乗り込めという事だろう。見上げる空には西と北、北西の三方から先導役の三国の艦隊が近づいてきている。メアリはそれら全てを見渡し、呟いた。
 “「武蔵」を中心に、奥州や「上越露西亜」といった全てが動き出したようですね・・・”

 福島・正則は「水戸」の町から南へ離れつつあった。南の森林地帯の入り口が、清正との集合地点だ。足を止めて、ここでの成果を思う。二年生ながら対「武蔵」部隊として、悔しいながら未熟だ。だが、自分は《副長》を相手に痛手を与えたのは事実だ。自分の中に引っ掛かりがあるのは、相手が戦闘中に不抜けていた手応えがあるからだろう。
 清正が勢いよく横に着地した。彼女は「水戸」の空から離れていく外交艦に背を向け、右手で顔を覆う。手にした治療用の符で目を隠すと、不意に涙を零した。
 “キヨ殿・・・”
 と、声を掛ける正則に、肩を震わせ、頬に付いた血を流すように、“哀しいですよ、私・・・”と零す。
 正則もゆっくり頷いた。“拙者もで御座りますよ、―――キヨ殿。”



 三国に向かって外交艦が旅立つが、各国の思惑は「武蔵」勢の予想を超えていた。
 次回をお楽しみに!

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第362回 ν(ニュー)ガンダム(1)

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ν(ニュー)ガンダム(1)

 注文していたブツが届く。
 MG 1/100 νガンダムVer.Ka
 MG 1/100 ダブル・フィン・ファンネル拡張ユニット
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 νガンダムVer.kaには6機のフィン・ファンネルが付属しているのだが、それの拡張キットである。
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 ビーム・エフェクトシートがついていてディスプレイ時に↓ のようにすることもできる。
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 まだ当分、作る暇はなさそうなので、押入れにしまっておこう。

 またデカール地獄だ。

 νガンダムとダブル・フィン・ファンネルのデカール。同じものがついてきた。
 余るから使いまわせそうだ。
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